川勝平太静岡県知事様

                             20101118

           天城三筋山風力発電を考える河津町民の会  相馬敬次

           風車問題を考える住民の会(東伊豆)      藤井廣明

           伊豆山並み景観研究会           斉藤俊仁

           伊豆半島くらしと環境を守る連絡会     沢登英信

前略

東京電力他が河津町及び東伊豆町にまたがる天城三筋山での風力発電計画については、私たちは数年前から“命と暮らしを守る”うえで大切な自然環境に重大な影響を及ぼす問題点があることを率直に訴えてきました。私たちの呼びかけによる天城三筋山風力発電の中止を求める署名は、地元河津町を中心に伊豆半島全域から1万名を超える人々の賛同をいただきました。この署名の全ては川勝知事に提出させていただきました。今、天城三筋山では秋の終わりから冬を迎える時期となり、野鳥のオオタカやクマタカ等のペアリングが始まり、大海原の様な草原のススキの波が揺れています。また、身近にはほとんど見ることが出来なくなった日本リスやムササビも厳しい冬仕度を進めているようです。花の百名山の一つに数えられ、伊豆七島や相模湾全体が眺望できる伊豆半島随一の景観を有するふるさとの山です。この三筋山を風力発電などの乱開発から守りたいという思いがつのるばかりです。こうした立場から県当局に対しまして風力発電問題に関する質問をさせていただきました。そのつど御解答をいただきましたが私たちの提起した景観や自然環境の保全・水源の確保・三筋山遊歩道の存続など諸点について納得できる回答を戴いたことはありませんでした。
つきましては、改めて下記9項目について要請並びに質問へのご回答を下さるようお願い申し上げます。

1)   本年111日、川勝知事の提唱している伊豆半島ジオパーク構想についての説明会が河津町役場(ふれあいホール)で開かれました。講師の小山真人静大教授並びに県観光政策課長のお話のなかで、河津町におけるジオパーク構想の拠点としての天城三筋山の重要性が指摘されました。伊豆半島全域を世界ジオパークとして認定させるために官民一体となって推進する立場を表明されており、三筋山山頂における21基もの風力発電建設は根本的に矛盾するものであり、県当局として事業者に対し中止を求めるよう要請します。  

2)   すでに述べたとおり天城三筋山は伊豆半島随一の景観を有し、静岡県が昭和63年から平成元年にかけて2年の歳月と3,000万円を超える公費をもって作られた天城三筋山遊歩道は、供用開始以来今日まで県内外の多数の山歩き愛好家に利用されてきました。この公共の施設である遊歩道上に一私企業の風車建設を許可することは、地方自治法上も許されることではないと考えます。遊歩道の廃止や付け替えなど絶対に許可しないよう要請します。

3)   昨年8月、東京電力他が静岡県に申請した風車建設に伴う林地開発の許可がなされております。この東京電力他の森林法に基づく許可申請は、開発面積30万平方メートルを超える巨大な開発です。開発地域の下流域には河津町の水道水源となっている田尻川があります。昭和50年と51年の両年にわたって南伊豆地域を襲った集中豪雨によって、田尻川流域においても大きな被害がでました。当時、国・県が進めた田尻川上流における大規模な土地改良(畑地造成)が大きな被害を引き起こした一つの原因と言われています。森林法が定めている林地開発の許可にあたり、下流域での被害についてどのよに検討したのか具体的な説明をお願いします。

4)  静岡県が林地開発の許可申請にあたって、申請者にたいして下流域住民との協議・その結果についての県への告知及び地元自治体との協議を定めた県要項がどのように適用され実施されたかご説明下さい。

5)   本年8月、私たちが東京電力他の林地開発申請にかかわる地権者の同意文書について土地に所有権のないものの同意書をもって申請をなしたる事実を指摘したことに関して、県当局からの回答文書によると、土地の所有者ではないけれども見高財産区議会副議長の署名と公印が押印されているものであり、土地の所有者である財産区の開発同意が判断できるとして問題は無いという驚くべき見解が示されました。本年9月2日に開かれた見高財産区議会において林地開発同意書問題をめぐって大問題となり、署名押印も副議長によるものではなく別の人物が東京電力の要請により作成された文書であることが判明しました。私たちは、森林法によるところの虚偽の事実をもってなしたる申請と考えますが、県当局として申請者である東京電力や見高財産区議会関係者からの事情聴取を行うべきだと考えますが如何でしょうか。明確にお応え下さい。

6)   東京電力他が申請した30万平方メートルを超える林地開発の申請地内の河津町有地の同意について、事業者である東京電力他と河津町との間で、開発同意に関して協議された事実はありません。平成20年5月の当時の町長の、一般的な風力発電開発についての同意文書をもって、林地開発同意がなされたという県の見解もとうてい一般的に通用されるものではないと考えます。こうした経過から東京電力他の林地開発許可の根本的見直しを要請します。

7)   東京電力が本年2月、風力発電建設用地として7万平方メートルを超える大規模な水源保安林解除の申請を県に提出し、私たちはこの問題に関して多くの問題点を指摘してきました。飲料水や農業用水また、河川の氾濫や渇水をふせぐために保安林の持っている公益的役割は、一企業の利益追求のために損なわれることは許されるものではないと考えます。解除の申請を受けた県は、水道水源の問題や遊歩道の問題などいくつかの補正事項を申請者である東京電力に指示していますが、本年8月には、県の補正事項すべてについて申請者からの説明を了解していると言われています。県が指示した補正事項に対する事業者の改善点を明らかにして下さい。

8)   保安林解除の必須要件として、代替保安林の確保が求められております。東京電力他の申請書によると、見高財産区有地を確保されているとのことですが、代替保安林同意についての管理者である河津町の文書はありません。この取り扱いはどのようになっているのかご回答下さい。

9)   東京電力は「人家と風力発電が11q離れているから騒音・低周波は心配ない」TVで発言しています。(現地責任者 征矢氏)何を根拠としているのか、不明です。これまで国内外で2q、あるいはそれ以上の距離で被害の発生が多数報告されています。河津町、東伊豆町では風力発電から2q以内には人家がかなり存在していますが、本当に大丈夫でしょうか?
水俣病以来、公害発生に関しては“疑わしきは建設しないとの予防原則が確立され、事業者は安全であるという証明がなければ建設を強行することはできません。それなしに許認可すれば静岡県もまた被害発生時には責任を免れないのは当然です。県は新たな公害として掌握し、事業者を指導しているのでしょうか?

草々