ビジネスモデルについて

ビジネスモデルとは
顧客満足
ビジネスモデルの特許

ビジネスモデルについて

1.ビジネスモデルとは
 ビジネスモデルはお金を儲ける仕組みであり、自社と顧客および協力者と競合相手との関係で捉えることができる。ビジネスモデルの基本的な構成要素には、顧客価値の提供手段が重要であり、価値の調達手段や価値の変換手段が必要である。顧客価値は、顧客に対して提供する価値であり、顧客が望む本質的価値と基本的価値及び付加価値、イメージやカスタム化が求められる。提供手段は、商品情報の提供に始まり、商品の注文方法や代金決済方法等が含まれる。価値の調達手段や価値の変換手段は、メーカーの場合、資本や設備や人材や資材等の価値の調達であり、開発・設計・生産等を用いて、調達された価値を製品やサービス等の顧客価値へ変換する仕組みである。特に、ビジネスモデルは、顧客価値に関する対価回収の仕組みが重要であり、商品の直接販売以外に、広告料やスポンサー料、売買手数料や取引手数料、会費収入や登録料、あるいは情報掲載料等を考える。

 顧客が望む本質的価値は、顧客に提供する商品やサービスそのものではなく、その商品やサービスにより、顧客が求める究極の欲求を満たすものである。例えば、AV機器やCD等の製品自体ではなく、映像や音楽を楽しむということを求めているのであり、その提供手段は技術環境や市場環境によって多様に変化するのである。基本的価値は、商品やサービスに付随し、性能、デザイン、品質、価格、納期等の要件とされる。付加価値は、商品やサービスに対する補助的なサービスであり、製品の情報提供と見積対応や無償のアフターサービス等である。イメージやカスタム化は、信頼を伴うブンンドや製品や企業のイメージであり、顧客の好みやニーズに合わせたカスタム化である。


2.ビジネスモデルの代表事例
 最も代表的なビジネスモデルを考えると、自社が協力者から原料や資材を仕入れ代金を支払って、自社で付加価値を付与し、顧客へ商品やサービスを販売して対価を頂く、伝統的な従来型の仕組みがある。この仕組みは、自社と協力者と顧客がすべて何らかの利益を得ることによって成立している。すなわち、自社は顧客へ販売することで利益を獲得し、協力者は自社との取引によって利益が得られる。また、顧客は顧客価値を満たすことによる便益が享受できる。しかし、この市場は独占でない限り、常に競合相手が存在し、競合相手は顧客を誘い込むように行動する。同時に、競合相手は、協力者に対しても、より良い取引条件を提示する可能性がある。つまり、自社はより有利なビジネスモデルを開発して、それを持続させなければならない。



 次に、新しいビジネスモデルとして、「Yahoo」の事例を考える。「Yahoo」は顧客に対して情報を提供するが、その対価は協力者から頂く仕組みであり、情報技術を用いて、インターネット上にビジネスモデルを構築している。協力者は、この顧客に対し商品やサービスを提供して代金を徴収する。この場合、「Yahoo」は顧客への情報提供に対する対価を広告料又は顧客紹介料という名目で入手することになる。類似のビジネスモデルは、日本のリクルート社がすでに行っていた。リクルート社は、就職情報を顧客へ無償提供するが、協力者(取引先)である企業から情報と掲載料を頂戴するという仕組みをベースにしている。この場合、協力者(取引先)である企業は、優秀な人材を確保し、継続的な事業展開を行って、利益を生み出すことが前提になる。「Yahoo」のビジネスモデルとの違いは、インターネットというIT技術を使用しているかいないかであり、対象とする顧客が世界規模の個人ではなく、学生等の一部分という限られた領域であるということである。広義に解釈すれば、広告代理業のビジネスモデルも類似すると言える。このことは、本来のビジネスモデルとIT技術が別物であり、インターネットというIT技術の存在が人手を介さずに利便性を高め世界規模の顧客に拡大でき、IT技術が新たなビジネスモデルを構築する上で不可欠であることを意味する。

「アマゾン(Amazon.com)」の初期のビジネスモデルは、インターネットというIT技術を使用し、ホームページ(HP)上に店舗を開き、書籍等の情報に付加価値を付与して、顧客へ情報を提供する。顧客は提供される情報の利便性を利用して書籍等の注文を「アマゾン社」に出し、「アマゾン社」はその注文情報を協力者へ転送する。そして、その協力者は自分の在庫から物品を顧客へ配送する。この時、顧客は物品を受取り、代金を「アマゾン社」へ支払う。最終的に、「アマゾン社」は書籍等の物品の代金と配送料を協力者へ支払う。このビジネスモデルの特徴は、「アマゾン社」が物品の倉庫を持たずに、物品輸送等の物理的な荷扱いをせずに、顧客への情報提供のみで、売上や仕入等の企業経営の仕組みを実現している。また、「アマゾン社」は、顧客の商品購入に使用するクレジット番号を安全に伝達する仕組み、通信ネットワークを介して顧客の購入注文がワンクリックで行える仕組み、関連情報を自動的に検索照会する仕組み、複数サイトに存在する情報を瞬時に構造化して表示する仕組み等、自社のビジネスモデルを特許で武装化している。


3.ビジネスモデルの特許事例
 ビジネスモデルの特許は、情報技術を用いて実現できる新しいビジネスの仕組みや方法に関する特許である。代表的な特許として、プライスライン特許があり、インターネットを利用して、買手が指値で購買を申込み、売手はその条件に合致すれば販売するという仕組みである。これはリバース・オークションと呼ばれる手法であり、従来のオークションと逆の手法をシステム化したものである。すなわち、従来のオークションは、商品を陳列して、それに価格を付与して入札する仕組みである。リバース・オークションは、入札者が価格を決め、その価格に見合う商品を膨大なデータベースから選択する仕組みである。プライスライン・コム社はこの仕組みを航空券販売に使用して設立した。現在、この仕組みは、食料品やホテルの予約、保険セールス等にも使用されている。つまり、ビジネスモデルの特許は、ビジネスモデルそのものを特許化するのではなく、ビジネスモデルを実現している情報技術を特許にしたものである。

 本来、ソフトウエアは特許として認められなかったが、米国において、ソフトウエアの権利を巡って裁判が勃発した。この結果、ソフトウエアの審査基準が整備されたが、インターネットビジネスに関する裁判が勃発し、その審査基準が加わることになった。また、インターネットに関係しないビジネスにも適用され、審査対象の範囲が拡大している。従来の特許と比較すれば、製造業を中心とした領域が小売業や流通業およびサービス業や金融業等の広範囲の産業に特許取得の機会が与えられ、研究開発中心からすべてのアイデアが対象になり、発明者は研究者や技術者のみだけでなく、営業職や企画職および情報技術者に特許取得の機会が与えられたことになる。また、特許取得のための膨大な研究費や技術蓄積を必要とせずに、比較的低コストでアイデアを特許化することができ、短期的に特許出願が可能で短い期間で事業化を可能にすることができる。特に、保護対象が製品や生産プロセス等の「製品」に関するものから、ヒジネスモデルという「事象」に関するものが対象になった。それは情報技術(IT)の発展により、それを活用したヒジネスモデルが出現し、その仕組みが容易に模倣される危険性があり、その権利や利益を保護する必要性が生じたという時代的な背景があった。

 なお、米国特許の場合、注意すべき問題として、サブマリン特許がある。サブマリン特許は、出願後、数十年間潜伏して、ある時期、突然に特許になる場合である。特に、米国内において、特許権が成立するまで、その内容が公開されないために、重複研究や重複投資がなされ、企業の事業展開に対して損失や障害が生ずる危険性がある。この問題は、1999年の米国特許法の改正にて、出願後18ケ月後にその内容は原則公開されるようになったが、外国出願されていない出願、外国出願に含まれていない内容は請求により、特許成立まで非公開にできるという例外が存在する。過去のサブマリン特許の事例として、FMS(Flexible Manufacturing System)の特許がある。これはコンピュータ制御を用いた多品種少量生産システムに関するものであり、1966年に出願されたが、特許として権利化されたのは1986年であった。つまり、米国の継続出願制度に基づき、20年間も誰の目にも触れることなく、審査されずに潜伏していたのである。これは米国と日欧との特許制度の違いに基づくものであり、米国では特許取得後17年間の権利期間を持ち、日欧では出願後20年間権利が保証される。


4.トヨタかんばん方式に関する特許
 トヨタ自動車は、トヨタ生産方式に基づく電子かんばんの仕組みを実現するために、4件の特許を1999年に取得している。部品納入指示装置(特許第2956085号)、発注指示カードの管理方法(特許第2956086号、特許第2956087号)、発注指示装置(特許第2956088号)である。これらは「必要な物を、必要な時に、必要な量だけ」というJIT生産の思想に基づき、作りすぎのムダを徹底的に排除することを基本にしている。それは「平準化」「シングル段取り」「かんばん方式」という要素技術からなり、その要素技術を電子化することによって、特許化を可能にしている。

 部品納入指示装置は、製品の需要変動により納入された部品が長期間使用されないという事態を解消する装置の提供を目的にしている。このために、部品の内示情報と確定情報を出力する生産計画手段、この計画から各部品1日当たりの発注指示カード(かんばん)を算出する手段、これを予め設定された発注下限値と比較する手段および部品納入L/Tや部品使用L/Tと比較する手段、発注指示を確定指示に切り換え、かんばん指示にする発注形態切り換え手段を具備することを特徴とする。

 発注指示カードの管理方法は、生産変動に順応した発注指示カード(かんばん)の流通管理を行う方法である。それは発注数と使用数の不一致を調整する仕組みであり、欠品と過剰在庫による生産効率の低下を防止する方法の提供を目的にしている。そして、この管理方法は2つの特許によって実現される。第1の方法は、納入業者の納入「かんばん」を管理する方法であり、予め計算された必要「かんばん」を納品実績に基づき適正に調整する仕組みを持ち、納入L/Tを考慮し、トラック便毎の納入「かんばん」を読み取り、発注すべき「かんばん」枚数をトラック便毎に発注指示することを特徴とする。つまり、計画の変動を分散させて、欠品や過剰在庫を防止する。第2の方法は、先行確定生産計画を出力する手段を持ち、生産ラインに設置された端末から読み取られる「かんばん」に基づく発注情報を処理する場合の方法である。この場合、「かんばん」の使用量を考慮し、生産計画の変動に基づき、基準在庫を満たすように「かんばん」の発注を調整する仕組みを提供している。

 発注指示装置は、組立工場から部品工場へ部品を発注する場合、経理処理のための納品書の運搬工数を低減し、部品の未納入を防止する仕組みを提供している。それは納品書による未納品の抽出、多量の納品書の処理を軽減し、「かんばん」を読み取る手段と連番を付与する手段を持ち、部品の製造者側から使用者側への情報伝送手段とその情報を認識する手段、これらの情報の記憶手段と未納品等の判定手段、納入品の経理システムへの伝送と実績把握手段を具備している。

 この特許は生産システム全体から捉えると部分的な技術であるが、特許の影響度を考慮すると、「かんばん」方式を採用している企業の動向が注目される。


5.ライオン社の在庫管理システム特許(特開平11−203368)
 これは効率的な在庫管理システムを提供することを目的としている。従来、製品在庫と部品在庫を独立に管理していたため、重複作業が生じて作業能率が悪く、製品数が多くなると、管理が煩雑になり、出荷対応に適正さを欠き、欠品が生ずるという問題があった。このシステムの特徴は、生産計画に基づき「MRP」により、必要な部材を算出するという方式に、部材在庫と不足する部材数から「逆MRP」を展開して、不足する製品量を求めるという仕組みに特徴がある。

 特許請求の範囲を見ると、生産に必要な原材料の記憶手段、目標生産量の設定手段、必要原材料の量を求める演算手段、不足原材料の演算手段を具備することを特徴とする。また、この仕組みに、必要な原材料と原材料の在庫量から製品の不足量を求める不足製品量の演算手段を備えていることを特徴とする。さらに、これらの仕組みを複数の製品や原材料に対して適用し、複数の必要な原材料を求め、原材料の在庫量から複数の製品の不足量を求める演算手段を備えた在庫管理システムとなっている。

 この仕組みは、在庫管理を製品ベースで揃えることにより、原材料の調達から、製品の販売店に至るすべての拠点で、情報を共有化することで在庫管理や生産管理が一元的に行うことができ、管理効率が大幅に向上すると主張している。


6.NEC半導体事業のビジネスモデル
 NEC半導体事業の場合、顧客は国内と海外と社内に区別して管理されている。国内顧客と海外顧客は、それぞれ特約店を介しており、一部に直接取引が存在する。そして、海外市場は、NEC海外販社を拠点にして、NEC海外分身生産会社に発注・生産を直接依頼する。また、海外販社からの注文は国内のNEC生産事業部に対しても行われる。社内からの受注はデバイスポート社を介して取引される。NEC生産事業部は、NEC販売部門を介して、国内や海外等の半導体市場から、所要情報や受注情報を受け、国内の分身会社や協力会社および海外の分身会社に対して生産を依頼する。この生産依頼は発注行為であり、後工程を受け持つ生産基地にはウエハーやチップの要求に基づき必要数を有償支給する。この場合、国内の分身会社と協力会社以外および海外の生産基地からのウエハーやチップの要求は、NEC生産事業部から捉えると正規の受注と見なされる。資材等の調達は、生産基地が調達するのを基本とするが、NEC生産事業部が調達して生産基地へ支給する場合もある。生産基地で生産された製品は、NEC生産事業部へ納入され、物流を受け持つNECロジスティクスの倉庫へ納品される。倉庫へ納品された製品は、NEC生産事業部からの出荷指示に基づき、国内顧客や海外顧客へ出荷される。

NEC生産事業部から捉えたビジネスモデルを考えれば、受注行為は販売部門と技術部門の連携によってなされる。この場合、販売部門は市場のニーズ情報に基づき、受注活動を展開し、品名・規格・価格・納期等を特定する。技術部門は市場からシーズ情報を選択して、製品の開発活動が展開され、商品となるべき製品の特性・仕様・信頼性品質等を確立する。受注は販売部門又は特約店が販売システム(SOPS)に受注情報を登録することによって確定する。NEC生産事業部は受注情報に基づく生産の管理を行うが、販売部門との需給調整や技術部門の戦略的ビジネスユニット(SBU)をベースにし、生産基地への生産指示(含む、生産計画)や納期管理および物流部門への出荷指示を行うことになる。生産基地は大きく分けると前基地(拡散基地)と後基地(組立基地)に区別され、必要な設備と資材の手配を進め、適正な生産能力を確保し、技術部門からの技術指定や信頼性保証および品質管理に基づき、製品の生産が実施される。すなわち、ここで製品に付加価値が付与され、原始的な原材料が社会的な価値へ転換される。完成された製品は、一旦製品倉庫へ納入され、NECの物流部門(NECロジスティクス)にて、梱包・配送等の処理がなされ、顧客の指定地へ納品される。この時、NECと顧客との間に債権債務関係が発生し、売上管理が実施され、製品に対する品質保証義務を負うことになる。

生産のモデル化を考えると、生産は、何かを新しく作り出すことであり、土地や天然資源、人間の頭脳的・肉体的労働、工場・機械・装置・工具・資材等を揃えるための資本、つまり生産要素を必要とする。また、生産活動として働きかける生産対象、生産対象に作用して産出物を生成する生産手段、個人や組織による生産労働力、効率的な生産をするための技術や方法等の知識としての生産情報に分けられる。そして、生産は、生産要素をインプットとして、生産産出物をアウトプットするための、生産工程を持つ生産システムとして捉えられる。生産システムは、「購買→製造→流通→在庫→販売」という活動を通して、職能の連鎖を構成する。製造業の場合、原材料の取得、加工による変換、流通段階等の生産工程からなり、素材を製品に変換して価値形成が行われる。この場合、これらの生産システムを運用するために、全体計画、プロセス計画、スケジューリング、生産実施、生産統制等の行為としての生産管理が存在し、その情報の流れが形成される。

 事業展開を活動のサイクルで捉えると、新製品開発活動を生産活動に転換する仕組み、生産活動から得られるアウトプットを顧客へ配送する仕組み、顧客からの要求を受ける仕組み、その受注に対する計画を立案して生産する仕組みが存在する。この場合、製品開発から生産活動への転換は、商品戦略と関連し、市場に出荷すべき品種群(品揃え)の多さと関係する。具体的には、研究開発活動をベースにして、新技術・新部品・技術導入等の新規技術、修得技術・経験・改良技術等の進歩技術を酷使し、新製品の開発が進められ、信頼性評価や品質改善を経て製品になる。製品は生産管理活動に基づき、採算性が評価され、企業利益の追求に耐えることを確認し商品になる。そして、生産から顧客への出荷、顧客からの受注に基づく生産と供給というサイクルのスピードと量的な拡大が展開されることになる。


7.ビジネスモデルの多様化とその対応
 情報技術(IT)の飛躍的な発展は、次々に新しいビジネスモデルを生み出した。同時に、特許取得の可能性を拡大させ、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」という発明の条件が拡大され、プログラムやデータの記録媒体が発明の対象になってきた。本来、計算方法やゲーム手法は、「人為的な取り決め」として、特許の対象外であった。しかし、情報技術を組み合せることにより、特許になる可能性が生じたのである。

 新しいビジネスモデルの構築は、競争優位を確立するための手段であり、何が実現できれば、他社と差別化でき、自社のビジネスが成功するかを明確にすることである。この場合、他社のビジネスモデルの変化に応じて、自社のビジネスモデルを変化させる必要があり、その柔軟対応の手段の多さと即時性が勝敗の鍵を握っていると考えられる。具体的には、売上増加のために、新規顧客の増大施策、従来顧客への納入増等があり、認知度の向上や新しい販売チャネルの開拓、コストダウンや回答納期厳守およびサービス向上等が求められる。さらに、生産投入頻度を上げ、小ロット化生産、L/T短縮、梱包や発注出荷の簡易化、直出荷直送の実現等が考えられる。そして、生産提示の月次から週次を経て日次へ、自動化による立案・発注・検収等の処理拡大、Web活用による情報共有化等の推進が求められる。問題はビジネスモデルの構成要素である創造活動、生産活動、販売活動等に着目し、開発・設計・技術、調達・生産・物流、マーケティング・サービス等、要素毎の差別化と優位性確保が重要であり、このことが新しいビジネスモデルを生み出すと考えられる。

 結局、ビジネスモデルは差別的な優位性を持つ市場への仕掛けであると捉えられる。ビジネスモデルの典型として、デルコンピュータのダイレクトモデルがある。デルは一般的な販売チャネルを活用したビジネスモデルを考えなかった。デルのダイレクトモデルは、最も良い最先端の部品を使用して、自分が最も気に入った最先端の製品を作り出すことのできる直販のビジネス構造にその特徴がある。この場合、製品はコンピュータであり、顧客との取引はすべて直販で行われ、コンピュータで最先端部品調達を展開して、組立工場から部品供給パートナーへ直接発注・直接納入され、提携している物流ロジティクスを介して、組立工場からの製品出荷を最終顧客へ直接納品する。つまり、代理店なし、小売店なし、電話注文・FAX注文・インターネット注文を集中管理し、すべて受注生産であり在庫を持たずに、物流はサードパーティ・ロジスティックス方式を採用し、リスクヘッジと専門特化を同時に可能にしている。この方式は、直販であり、途中に流通マージンがなく、需要を直接把握でき、顧客からの生の声がダイレクトに入手できる。  特に、インターネットビジネスは電子商取引とも呼ばれ、電子商取引の仕組みは市場への仕掛けであり、コミュニティ(情報交換の場)の形成が重要になる。代表的なコミュニティとして、BtoB(Business to Business)、BtoC(Business to Consumer)、CtoB(Consumer to Business)、CtoC(Consumer to Consumer)が知られている。これを地球規模の市場で考え、200弱の独立国家、膨大な企業と組織、世界人口約60億人の個人を階層的に捉え、各セグメントに区分して管理することになる。コミュニティ(情報交換の場)の形成は、自発的なものが基本であり、チャネルメディアの選択、チャネル構造の特定、ビジネスドメインとビジネス構造の整合、顧客を囲い込むためのユーザー機能の充実、顧客満足に基づくソリューションと受益構造の確立、自社の収益構造の検証が求められる。  ビジネスモデルは、ビジネス構造やビジネス構成等のビジネスの仕組みを明確にし、ビジネスの流れをシステムとして把握する必要がある。その上で事業推進の方向付けを明らかにして、意志決定のルールやビジネスを推進する戦略と自社の事業の持つ差別的優位性に基づくビジネスを特徴付ける必要がある。この結果が市場への仕掛けとしてのビジネスモデルを生み出し、ビジネスプランとして全体のシナリオ化を可能にする。


8.むすび
 情報技術(IT)の発展はビジネスモデルの多様化を可能にした。ビジネスモデルは企業が利益を得るための仕組みであり、古いビジネスモデルに固執すると、企業存続の条件を見失う可能性すらある。多様化するビジネスモデルに対応して、競争力のあるビジネスモデルを展開しなければ、これからの企業は生き残れない。問題はこれらのビジネスモデルに情報技術(IT)を付与することで特許権が認められる可能性が高くなっていることにある。それは特許権を取得すれば、そのビジネスを独占することが可能になることを意味する。そして、権利の侵害者に対して、侵害行為の差止請求ができ、損害賠償も請求可能になる。事実、米国では、特許取得後、1ケ月後にはライバル企業を提訴し、使用中止の仮処分や補償金請求訴訟等が多く見られる。

 現在、ビジネスモデルの特許事例は、インターネット関連や金融ビジネス関連やSCM(Supply Chain Management)関連等、すでに数十件以上の国内特許が権利化を完了しており、数百件以上の特許が出願公開されている。国内や海外のビジネスモデルの特許調査と情報収集が急務であり、今後のシステム開発等に組み込まれるビジネスモデルに特許侵害の恐れがないかの検討が必要である。また、SCM展開等にみられるシステム改革について、現状の業務への影響度を調査分析する必要がある。さらに、ビジネスモデルの特許に対する法的対応の準備も進める必要がある。

(文責:yut)

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