マクロ経済モデル
サミュエルソンの乗数加速度モデルに基づく動態分析

マクロ経済モデル
国民経済
国民所得
国民生産
国民支出
消費支出
民間投資
公共投資

マクロ経済モデル(サミュエルソンの乗数加速度モデルに基づく動態分析)

 人々は生活のために、財やサービスを消費する。そのために、財やサービスの生産が行われる。この場合、幾つもの生産段階を経て消費にいたる。この財やサービスの流れを社会全体として捉え、その経済活動を考えることができる。一般に、経済活動はひとつの国をその範囲として考え、国民経済という単位で考えることができる。つまり、生産から消費にいたる財やサービスの流れは、国民経済の循環として観察できる。

 ひとつの国民経済において、一定期間(例えば一年毎)に生産され、消費あるいは蓄積された財やサービスの価値の正味の総額は、貨幣額で表され、国民所得、国民生産、国民支出なる概念が用いられる。この時、貨幣額は多種多様な財やサービスの価値を表す共通の尺度となる。

 大局的に捉えれば、t期の国民所得Ytは、消費支出、民間投資、公共投資を、Ct、It、Gt、として、

   Yt =Ct +It +Gt

の関係がある。この場合、消費支出は前期の国民所得の何割かに相当すると考えられ、

   Ct =αYt-1

で与えられる。とすれば、民間投資は消費の増加の何倍かになり、

   It =β(Ct −Ct-1 )=αβ(Yt-1 −Yt-2

と表される。公共投資は定数と仮定して、G=Gt とすれば、

   Yt −α(1+β)Yt-1 +αβYt-2 =G           ・・・・・(1)

を得る。なお、初期値は、C0 =I0 =0であり、

   Y0 =G 、 Y1 =C1 +I1 +G=(1+α+αβ)G

である。もし、β=0ならば、

   Yt −αYt-1 =G

   Yt =(1+α+α2+α3+・・・・+αt)G=G(1−αt)/(1−α)

となる。なお、α=1ならば、Yt=(1+t)Gであり、さらに、0≦α<1ならば、tの増大によって、G//(1−α)に漸近する。いま、G=0として、

   Yt−α(1+β)Yt-1+αβYt-2=0

に対して、Yt=A・exp(λt)とおけば、

   A・exp(λt)−α(1+β)A・exp(λ(t−1))+αβA・exp(λ(t−2))=0

   A・exp[λ(t-2)][exp(2λ) −α(1+β)exp(λ) +αβ]=0

であり、一般に、A・exp[λ(t-2)]≠0であり、exp(λ) =xとおけば、

   x2−α(1+β)x+αβ=0

という特性方程式を得る。そして、判別式D=α2(1+β)2−4αβを持ち、もしも重根(D=0)ならば、根xは、

   x=α(1+β)/2

であり、実根(D>0)ならば、α>4β/(1+β)2の条件で根x1,x2 は、

   x1 =[α(1+β)+√D]/2 、 x2 =[α(1+β)−√D]/2

となる。また、複素根(D<0)ならば、α<4β/(1+β)2の条件が成立して、根x1,x2 は、

   x1 =a+bi=rexp(iθ)  、 x2 =a−bi=rexp(−iθ)

   a=α(1+β)/2     、 b=√[4αβ−α 2(1+β)2 ]/2

   r2=a2+b2=αβ    、 tanθ=b/a

となる。式(1) は、0≦α<1,0≦βで、均衡状態がG/(1−α)となり、この時の一般解は、

   Yt =G/(1−α)+(A+Bt)xt       (D=0)・・・・・(2)

   Yt =G/(1−α)+Ax1t+Bx2t        (D>0)・・・・・(3)

   Yt =G/(1−α)+rt[Aetθi+Be-tθi

     =2Rrtcos(tθ+δ)             (D<0)・・・・・(4)

となる。つまり、0≦α,0≦βの時、D>0ならば、Yt は波動的な変化を起こさないが、D<0ならば、Yt は波動的な変化が起こる。また、0≦α<1,0≦βの時、αβ<1であればYt がG/(1−α)に漸近し、αβ>1であればYt が発散する。したがって、D<0であれば、αβ<1ならr<1となるので、Yt が減衰振動となり、αβ>1ならr>1となるので、Yt が非減衰振動となる。結局、0≦α<1,0≦βの領域で、Yt の変動形態は次の様に分類される。

   A型(D>0):0≦αβ<[1−√(1−α)]2
           Yt は波動的な変化を起こさずに、tが無限に大きくなると、G/(1−α)に漸近する。

   B型(D<0):[1−√(1−α)]2<αβ<1
           Yt は減衰振動となり、tが無限に大きくなると、G/(1−α)に漸近する。

   C型(D<0):1<αβ<[1+√(1−α)]2
           Yt は非減衰振動となり、tが大きくなるにつれて、振幅が次第に大きくなる。

   D型(D>0):[1+√(1−α)]2<αβ
           Yt は波動を示さずに、tが大きくなるにつれて、一方的に増加する。

なお、0≦α,0>βの時は、Yt が波動的な変化を示さない。逆に、0>α,0<βの時は、Yt が波動的な変化を示す。また、α<0でβ<0の時は、判別式の条件により、波動的な変化を示す領域と波動的な変化を示さない領域に区分される。

 この理論の意味するところは、不況時に公共投資を実施することによる有効性を指摘し、景気の過熱や過度の後退を避けることで、前進的な経済成長を維持できるとしたことにある。

<変動形態1>

<変動形態2>

<変動形態の数値事例>


 この理論を日本のマクロ経済に適用し、その変動形態に動態分析を試みる。この時、消費支出の傾向を示すαと民間投資の動向を示すβに着目すると、その動きを表示することができる。このことから、経済を支える基本は消費に依存するが、その動向をコントロールしているのは、民間投資の度合い、つまり企業経営に対する人為的な投資への思惑が大きく影響しているといえる。

<日本経済の変動形態1>


<日本経済の変動形態2>


(文責:yut)

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