社会と法律

社会とは
法の意義
法の正体
社会規範

社会と法律について
 社会とは、人と人との関わりであり、共同生活をする一群の人々、同類の人々の範囲、世の中や世間のこと、人間としての集団生活、特に市民としての様々な関係で結ばれている多くの人による共同生活というような意味を持っている。特に、社会を英語のソサエティ(Society)と結び付ける時、人が身分の上下なく、権利として平等に、意見をかわし、冗談を言ったり、娯楽を楽しむような、多様な人と人との関わりとしての西洋の市民社会をイメージすることができる。この場合、慶應義塾の創始者の福澤諭吉は、社会(西洋のソサエティ)の本質を「人間交際(じんかんこうさい)」と訳した。つまり、社会は人と人との関わりであり、関係する人の数で形式的に整理すれば、1対1の関係、1対複数の関係、1対多数の関係、複数対複数の関係、複数対多数の関係、多数対多数の関係に区分することができる。ここで、複数と多数の違いは、複数を即座に数えられる人数、多数を即座に数えられない程度の多くの人数と考えてもらえばよい。また、関わり方の違いにより、一方向的か、双方向的か、あるいは、協同的か、競争的か、味方なのか、敵なのか、などの区分も可能であろう。

 一般に、人間は、家族・会社・各種の組織や団体・国家等の複数の社会に属して、扶け合いながら生活を営んでおり、本能的に生存を維持しようとする。つまり、社会は、人間の存在を前提に、複数の人々が相互に結合する関係や状態であり、この関係や状態を発展・持続させるため、諸々の条件が必要になる。特に、人間が社会生活を営むためには、何らかの規則・掟て・きまり・ルール等が必要であり、道徳、倫理、宗教、習俗、習慣、風習、儀礼、流行等の各種の社会規範が存在する。

 特に、倫理規範は、個人の持つ善悪の概念をベースにするが、その絶対的な基準は存在しない。歴史的に、力のある者に従って、その生活環境で養われ、多様な形態を形成する。家族や親族あるいは仲間など、多種多様な組織と社会が形成されると、その社会に正義や不正の合意形成が生まれる。これが社会規範の基礎となり、時間軸と空間軸で多様な規範を形成する。つまり、歴史的にも、地域的にも、多様な規範が出現したり消滅したりした。個人的な善悪の判断基準に基づき、正義と不正の社会的な判断基準が形成される。

 社会規範は、特定の目的や価値を前提として、社会生活を維持するために守らなければならないとされる。特に、人々の持つ無限の欲望に対して、欲望充足の手段が有限であるため、その利益や感情の衝突から生じる紛争が存在する。法的な規範は、人間の社会的行為のみを対象として、人々の紛争を権利と義務の関係に置き換え、命令や禁止が義務付けられ、実効性のある強制や制裁が科せられる。法の目的は、正義にあり、人々が平等に扱われること(均分的正義)、人の価値に応じてものが配分されること(配分的正義)、この双方の正義が互いに補い合って、法的安定性と合目的性により、実質的な内容(一般的正義)が与えられる。法的安定性は、法自体が安定していること、法により社会が安定することの意味がある。そして、法を確実に認識でき、明確な内容を持ち、実効性が確保され、変更に対しての制限が課せられる。法の合目的性は、国家や社会体制等によって異なり、法の目的を選択する重要な要素となる。日本の場合、欧米社会の法を受容したことから、個人主義的及び民主主義的な世界観に基づき、公共の福祉によって私的な行為が制約されることがある。法の効力は、法が禁止したり、強制したり、許容したり、法律行為を実現するために、妥当性と実効性を必要とする。妥当性は法が本来の規範として有する自己実現の要求のことであり、実効性は法の要求が実際に実現されるという意味である。

(文責:yut)


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