科学と技術

科学と技術の違い
自然や世界を理解する力
モデル化の方法

科学と技術の違い
 科学は自然界のあらゆる現象や構造を人間が理解できるモデルに置き換える学問である。それは経験的に論証し、システマティク(系統的)に合理性を持って人が認識でき、その法則性を明示することにある。その手段に言語があり、特に自然界との対話には数学的言語が用いられている。しかし、このようなモデルを理解する能力や表現する能力は個人によって若干の差があると思われる。また、この分野は、人間の長い歴史において、先人達の努力に負うところが多い。科学は英語でサイエンス(Science)と呼ばれ、その語源はラテン語の動詞「知る(Scio、名詞はScientia)」に由来する。また、近代科学の成立は、一般に、ニュートンやデカルトの時代、17世紀頃に制度的な枠組みが形成されたと考えられている。

 技術は、科学によって人間が理解(経験や勘で得たものを含む)した自然界の現象や構造を用いて、人間のため又は人間が意図する目的のため、自然界へ人工的な変化を与える操作である。一般には、物事をたくみに行う「技(ワザ)」とされ、技巧や技芸とも言われることがある。技術は英語のテクノロジー(Technology)に対応するが、その語源は古典ギリシャ語でわざ的なもの全般を指す言葉「テクネー(ラテン語ではars)」に由来するとされる。そして、人間は多くの道具を、見つけ・考え・作り・使いこなしてきた。人間のため又は人間が意図する目的のためとは、人間が生存するため、競争に勝つため、戦いに勝利するため、時には個人のあらゆる欲求を満たすためであった。特に、自然界の物理的な現象がモデルとして描けるようになると、何をどのように変化させれば、何がどのように変化するか、という関連を理解することができるようになる。技術的な感覚(センス)とはこのことを意味している。さらに、技術が社会および自然に及ぼす影響や効果に関する理解力や責任など、技術者として社会に対する責任を自覚する能力、つまり、技術者倫理が求められる。

 また、技術を身に付けることは、人生を生き抜くための道具あるいは武器を身にまとうことでもある。それは自然科学を味方にして、あらゆる戦略と戦術を駆使することでもある。そのためには、自然界の仕組みや現象を正しく理解して、それに忠実に従うことでもある。自然に逆らえば、人間は生き抜くことができない。自然界のルールを知る方法が科学でもある。そのための基本的な言語が数学であり、そのモデル化を対応つけることで、自然の本質を知ることができる。

 人間にとって、科学と技術は、文化や平和を維持することと密接な関係を持ち、現代社会において、人類の生存を左右する力を持つようになった。しかも、科学と技術は、急速に進歩を続けており、その進歩を止めることができない。私達はこれらのことを再度見直す必要がある。科学と技術の新しい出発点をどのように考え、どのような方向付けを試みるべきか、日頃の私達の行動と私達をとりまく環境との関係が問われている。科学と技術が自然界と調和のとれた形で発展していく条件を考える時期が到来しているようだ。

 20世紀には、科学的な原理を技術に応用して、軍事上あるいは産業上の目的に役立てようとする考え方が顕著になった。そして、積極的な研究開発によって、原子爆弾から遺伝子操作まで、多種多様なものが開発された。しかしながら、善なる未来、善なる社会、善なる創造、善なる夢を追い求め、科学と技術が人類の利益と安全に貢献する人工的な創造物を生み続けられるよう願うものである。

(文責:yut)


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