年金問題について

経済政策
情報の非対称性
所得分配

流体の年金問題について

 経済政策は政府が経済に関与する。その政策目的は、経済的厚生の上昇と増大にある。それは効率性と公正性と安定性の価値基準に基づいて評価される。効率性は資源配分に関する価値基準、公正性は所得分配に関する価値基準、安定性は主にマクロ経済に関する価値基準である。

 年金保険は情報の非対称性(不完全性)及び公正性に関する所得分配が問題になる。特に、保険市場では、契約前に予測したことが契約時に変化するという道徳的危険(moral hazard)、望ましくないものが残るという逆選択肢(reverse selection)がみられる。これらは保険に関する市場の失敗であり、公的年金保険が強制加入であることの存在理由になっている。また、公的年金は、私的(任意)から公的(強制)にすることで、老後に困る人を国が面倒をみる温情主義の立場がある。さらに、長期存続が保障されない私企業の保険会社でなく、長期保障が確実な政府に依存する意味がある。つまり、公的年金の役割は、老後の最低生活を保障するため、個人の自助努力の補完と年金価値の長期的維持にある。

 最近の厚生年金の保険金引上げに関する議論は、所得分配をどう変えるかにあり、ある世代が他の世代に対して与えた給付と他の世代から受けた給付の差が指摘され、世代間の再分配が重要になる。

 この背景には、世代会計の考え方があり、世代間の再分配がなく世代毎に収支が均衡する積立方式と毎年度収支の均衡を前提に世代間の再分配があり得る賦課方式の対立がみられる。そこには人口成長が負になることによって発生する貰える給付が支払より少なくなるという現象が存在する。

 このため、人生の労働期の負担が重く、経済成長が期待できなくなり、年金に加入せずに抜け出る人が生じ、年金が成立しなくなる可能性が指摘されている。

 そこで、年金を保険制度でなく、税金(消費税)で賄うという消費税の福祉目的税化が提唱されている。しかし、賦課方式ならば所得税が望ましく、消費税を福祉目的税にするならば積立方式にすべきとの意見がある。

 そこには労働期と老後期を所得階層別に比較すると、賦課方式の場合、経済成長を引き起こす所得階層が中所得者層なのか(八田説)、高所得者層なのか(政府説)の違いがみられる。

 消費税を福祉目的税にした場合、積立方式は人口構成が変化してもその税率は不変であるが、賦課方式にすると年々苦しくなることが明らかである。しかし、積立方式は財政余剰を生むため、均衡財政を前提にすると、黒字化を赤字補填し、使いたくなる傾向が生じる。

 一方、税の公平性について、同一の収入のある人は同じ税にすべきとする水平的公平性と高所得者層から余分に税を徴収して低所得者層の負担を軽くすべきとする垂直的公平性の問題が存在する。すなわち、消費税は水平的公平性を重視し、所得税は垂直的公平性を重視しているといえる。

(文責:yut)

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