伝熱現象と流体力学への興味とシミュレーション

温度
エネルギー
熱の仕事当量

伝熱現象と流体力学への興味とシミュレーション

 伝熱は、熱伝導、熱伝達、熱輻射により、熱エネルギーが移動する現象である。熱伝導は固体内で熱交換が起り、微視的には、固体内部の分子や原子あるいは電子の格子振動によってエネルギーが伝わる。熱伝達は固体と流体との間の熱交換であり、対流による場合、沸騰や凝結等の潜熱の出入を伴うことがある。特に、対流熱伝達は流動する物質が熱エネルギーを運び去る現象と同時に流動する物質中での熱伝導が考慮される。熱輻射は熱エネルギーが電磁波の形で放出したり吸収する現象である。これは絶対零度以上の温度を持つ物質表面から発する熱放射線に関するエネルギー分布を基礎とする。いずれにしても、伝熱現象を数学的にモデル化して捉えれば、その解析が可能になり、対象とする伝熱現象のメカニズムを理解することができる。

 流体は連続的に捉えられるが、微視的には分子や原子さらには電子や陽子等あるいはそれ以下の素粒子からなり、不連続的な構造を持っている。しかし、流体力学では、微視的な構造状態を平均化し、巨視的な連続体として捉え、その物理量に基づき、連続体の変化や運動等の現象を力学的に記述する。一般に、物質は固体、液体、気体の3態様がある。この内、液体と気体は自由に変形し、気体は圧力を加えるとその体積までが大きく変化する。この液体と気体の性質を備えた物質を流体と呼ばれ、流体の力学的モデルは連続の方程式とナビエ・ストークスの方程式が知られている。これは流体の密度と運動に関する方程式であり、流体の内部摩擦を力学的に組み入れた粘性が考慮されている。また、流体は層流と乱流があり、層流から乱流への移り変わりを遷移と呼ばれる。乱流は流体の速度や圧力が不規則に変動する流れであり、カルマン渦に代表される乱れのメカニズムを知りたいと考えた。結局、連続体の力学的モデルに魅せられ、現実の自然現象について、仮説や法則に基づきモデル化して理論を組立て、その擬似的なシミュレーションと人工的な実験と対比する方法を模索し始め、興味がさらに強くなっていった。

 シミュレーションは対象とする現象の構成要素や相互関係をモデル化し、その基本法則や基礎方程式から複雑な自然現象を解明する手段である。この場合、現象のモデル化が重要であり、仮説的な構成モデルの妥当性がシミュレーション結果を左右する。その手順は現象をよく観察することから始まり、論理的な特徴を捉え、構成モデルを組立て、数値解析等のシミュレーションによって、初期条件や境界条件などのパラメーターの値を変え、その振る舞いを知り、結果の評価と現象や実験との対比を行う。このことにより、製品の設計品質を高めることができ、試作回数を減らし、開発コストの低減を可能にする。

(文責:yut)

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