電子の世界(電子の性質)

電子とは何か
電磁現象
荷電粒子の運動

電子の世界(電子の性質)

 物質は、正の電荷を持つ原子核と、その周囲を取り巻く負の電荷を持つ電子から成り立っている。原子核の電荷量は、原子の種類によって異なるが、すべての原子は、水素の原子核の電荷量の整数倍である。一個の電子の電荷量は、水素の原子核の電荷と反対符号の同じ電荷量(電荷の素量)を持っている。電荷の素量は、クーロン(coulomb)という単位が使われて表示される。1クーロンの電荷は1アンペア(ampere)の電流を1秒間流した時に運ばれる電荷として定義され、電荷の素量eは約1.602×10-19 クーロンに等しい。

 電流は電荷の移動(運動)によって生じる。空間内に電子が存在すると、電子の持つ電荷によって、電子自身が電界を形成する。この時、電子の電荷の素量eに対して、その個数Nとすると、全電荷量qは、q=Neで与えられる。電子の静止質量はSI単位系で約9.1094×10-31 kgであり、運動することによって、相対論効果が働き、その質量は光速に近づくにつれて次第に重くなる。電子の静止質量m0とし、電子速度vで運動すると、電子の質量mは、m=m0/√(1−(v/c)2)で与えられる。ここで、cは真空中の光速度c=2.998×108 m/secである。

 電子は電荷を帯びた粒子と考えられるが、量子力学によれば、粒子であると同時に波動でもあり、観測方法によって、干渉や回折などの波動的な性質を備えている。その波長λは、粒子としての電子の運動量p(=mv)に対して、λ=h/pの関係にある。ここで、hはプランク定数h=6.624×10-34 ジュール・secである。このような電子の性質から、電子は電磁界や各種の物質と多種多様な相互作用を起こす。

 電子に関して、2つ、3つの簡単な現象に関する事例研究を試みる。いま、固体を熱すると、固体内部の電子は熱エネルギーを得て、活発に運動するようになる。そして、その一部が固体の表面から飛び出すようになる。このようにして放出された電子を熱電子と呼ばれている。真空中で熱電子放出された電子に電圧Vを加えると、電子はさらに加速されて電界中を運動する。この場合、電子の運動エネルギーは、eVに等しい仕事に変換され、eV=mc2 −m0c2 の関係が成立する。これを電子速度vについて解くと、v=c√(1−1/(1+V/V0))を得る。ここで、V0=m0c2/e=511kVである。

 さらに、空間に電子の流れがある時、電子の密度が小さければ、電子は電界や磁界の中を個々の電子が互いに独立して運動する考えても問題はない。しかし、電子の密度が大きくなると、電子の持つ電荷量の影響が無視できなくなる。このような場合、空間電荷量の影響(空間電荷効果)を考慮した電位分布に基づき、電子の運動を考えなければならない。

(文責:yut)


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