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矩形導波管内電磁波の合成モードの解析

電磁波
ミリ波帯
電磁波合成
モードマッチング法
矩形導波管

矩形導波管内電磁波の合成モードの解析

1.まえがき
 プラズマの追加熱に電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)の研究がなされ、高い電力レベルを持つミリ波帯の電磁波が要求された。 簡便な事例を考えれば、大電力クライストロン等により増幅された電磁波をさらに高い電力レベルにするために、 幾つかの導波管から放射された電磁波を合成する方法がある。

 複数個の導波管から放射された電磁波の放射パターンの解析は、C.P.WuとV.Galindo が試みている。 その目的はミリ波レーダ等に用いる開口型アンテナの特性を解析することであった 。 また、不連続境界を持つ導波管モードの一般的な解析法は、R.MittraとS.W.Lee が統一した記述を与えている。 この方法によれば、電磁波の連続性を用いて、不連続境界でのモードマッチングを考慮した無限級数の方程式が得られ、 留数展開による解析が可能になる。 不連続境界を持つポテンシャル場問題の解析法は、Hsu−Chieh Yeh も研究しており、適切な整理方法によって、 無限の元数を持つ連立一次方程式系を得る方法が示されている。

 ここでは、モードマッチング法による矩形導波管モードの電磁波合成の定式化をして、マトリックス計算を用いて解析する。


2.磁気的HertzベクトルによるTEモードの表示
 磁気的Hertzベクトルπ を用いて、電界と磁界は、

          =−jωμ・∇×π      ・・・・(1)
          =∇×∇×π         ・・・・(2)

で与えることができる。そして、π は、

  ∇×∇×π −∇∇・π −kπ =∇π +kπ =0  ・・・・(3)

となる。ここで、k=ωμε=(2π/λ) である。

 いま、電磁波がz方向に伝送するTEモードを考えると、磁気的Hertzベクトルは、

         π =jπ(x,y)      ・・・・(4)

で表わされ、Helmholtz方程式、

         ∇t π+kc π =0   ・・・・(5)

を満足する。ここで、kc=k+γである。そして、矩形導波管モードに対して、スカラー関数πは、

  πmn=cos(mπx/a)・cos(mπy/b)・exp(±γmnz)
      m=1,2,・・    n=1,2,・・ 
      但し、m=0 又は n=0 の時、 m≠n
                           ・・・・(6)

が成立する。そして、伝搬定数γmnは、

  γmn=kc−k=(mπ/a)+(nπ/b)−k    ・・・・(7)

で与えられ、次に示す電界および磁界の各成分を得る。

      Ex=−jωμ(∂πmn/∂y)   ・・・・(8a)
      Ey=jωμ(∂πmn/∂x)    ・・・・(8b)
      Ez=0                ・・・・(8c)
      Hx=∂πmn/∂x∂z       ・・・・(8d)
      Hy=∂πmn/∂y∂z       ・・・・(8e)
      Hz=−(∂πmn/∂x+∂πmn/∂y
        =(γmn +k )πmn   ・・・・(8f)


3.解析モデル


図−1 矩形導波管の電磁波合成モデル

 図−1に示すような16個の矩形導波管内の電磁波(TE10モード)がz≧0で大きな矩形導波管内の電磁波モードに 合成される場合を考える。但し、16個の矩形導波管の境界の肉厚は十分に薄く無視できるものとする。

 そして、z≦0の反射波はTEmnモードを取り、z≧0の合成波はTEpqモードを取ると仮定する。 すなわち、z=0の不連続境界で、入射波(TE10モード)に励起されたところの、高次の減衰モードを伴う反射波と 合成波が発生して、電磁波の連続性を保つと考える。

 また、16個の導波管内の電磁波(入射波)はすべて同位相、同振幅のTE10モードの基本波成分のみが伝送しているとする。 入射波が同位相、同振幅の場合、各領域毎のスカラー関数π は、

 0≦x≦a/4 および a/2≦x≦3a/4 , z≦0
    π10=cos(πx/(a/4))・exp(−Γ10z)   ・・・・(9)
 a/4≦x≦a/2 および 3a/4≦x≦a/ , z≦0
    π10=−cos(πx/(a/4))・exp(−Γ10z)  ・・・・(10)

で与えることができる。したがって、各領域毎の入射波の電磁波成分は式(8a)〜(8f)から容易に導入される。 このような入射波の電磁波モードパターンを図−2に示す。


図−2 入射波のモードパターン

 反射波はTEmnモードの集合と考えられ、スカラー関数を次に示す級数展開式で与えることができる。

 (1) 0≦x≦a/4 , 0≦y≦b/4 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(1)mncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
         ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(11)

 (2) 0≦x≦a/4 , b/4≦y≦b/2 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(2)mn(−1)ncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
         ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(12)

 (3) 0≦x≦a/4 , b/2≦y≦3b/4 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(3)mncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(13)

 (4) 0≦x≦a/4 , 3b/4≦y≦b , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(4)mn(−1)ncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(14)

 (5) a/4≦x≦a/2 , 0≦y≦b/4 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(5)mn(−1)mcos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(15)

 (6) a/4≦x≦a/2 , b/4≦y≦b/2 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(6)mn(−1)m(−1)ncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(16)

 (7) a/4≦x≦a/2 , b/2≦y≦3b/4 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(7)mn(−1)mcos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(17)

 (8) a/4≦x≦a/2 , 3b/4≦y≦b , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(8)mn(−1)m(−1)ncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(18)

 (9) a/2≦x≦3a/4 , 0≦y≦b/4 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(9)mncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(19)

 (10) a/2≦x≦3a/4 , b/4≦y≦b/2 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(10)mn(−1)ncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(20)

 (11) a/2≦x≦3a/4 , b/2≦y≦3b/4 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(11)mncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(21)

 (12) a/2≦x≦3a/4 , 3b/4≦y≦b , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(12)mn(−1)ncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(22)

 (13) 3a/4≦x≦a , 0≦y≦b/4 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(13)mn(−1)mcos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(23)

 (14) 3a/4≦x≦a , b/4≦y≦b/2 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(14)mn(−1)m(−1)ncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(24)

 (15) 3a/4≦x≦a , b/2≦y≦3b/4 , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(15)mn(−1)mcos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(25)

 (16) 3a/4≦x≦a , 3b/4≦y≦b , z≦0
       ∞ ∞
  πmnΣΣ(16)mn(−1)m(−1)ncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(Γmnz)  ・・・・(26)

(4)(8)(12)(16)
(3)(7)(11)(15)
(2)(6)(10)(14)
(1)(5)(9)(13)
図−3 導波管の位置関係

 ここで、反射波の展開級数 A(i)mn のサフィックス(i)は、図−3に示すように、16個の導波管の位置関係を表している。 また、合成波のスカラー関数に対しても反射波と同じようにして次の級数展開式が成立する。

z≧0
       ∞  ∞
  πmnΣΣmncos(mπx/(a/4))
      n=0 m=0
          ・cos(nπy/(b/4))・exp(−γmnz)  ・・・・(27)

そして、式(11)〜式(27)のスカラー関数π は、式(8a)〜式(8f)を用いてそれぞれの電磁波成分を求めることができる。

 なお、入射波TE10モードの電磁波成分は、Ey,Hx,Hzのみが存在する。 しかし、反射波と合成波の電磁波成分は、Ex,Hyも存在可能である。そして、 この電磁波成分はy方向にスタンディング(不整合波)を持つTEモードを考えるときに重要な意味を持ってくると思われる。 ここでは、とりあえずEy,Hx,Hzの電磁波成分についてのみ取り扱うことにする。


4.モードマッチング方程式
 不連続境界(z=0)において、入射波によって励起される反射波および合成波の電界(Ex,Ey,Ez)と 磁界(Hx,Hy,Hz)は連続条件を満足する。したがって、矩形導波管TEモードの電磁波成分Ey,Hx,Hzは、 z=0において、次のモードマッチング条件式が成立する。

       (合成波)=(入射波)+(反射波)         ・・・・(28)

ところが、Hzに対して得られる条件式はEyおよびHxに対して得られる条件式から導入することができ、 独立な2組の条件式だけが成立する。ここでは、y方向にスタンディング(不整合波)が存在しない場合を考えており、 反射波TEmnモードおよび合成波TEpqモードにおいて、n=0,q=0と置き、EyおよびHxに関する式を用いて、 両辺に、

       sin(pπx/a)   p=1,2,3,・・    ・・・・(29)

を掛けて、xに関して0からaまで積分する。そして、Eyについて得られた式の両辺にγpq(q=0)を掛けてから、 Hxについて得られた式との差と和を取り、それぞれを整理して、反射波の展開係数A(i)および合成波の展開係数B を未知数とする次の2組の方程式を得ることができる。

     32π
  [―――――――― sin(pπ/2){1+2cos(pπ/4)}]p≠4
    a(Γ+γ
     
   =[Σ(ma/2)(Γ+γ){(A(1)+A(2)+A(3)+A(4)
     m=1
         +(−1)m(A(5)+A(6)+A(7)+A(8)
           +(A(9)+A(10)+A(11)+A(12)
     +(−1)m(A(13)+A(14)+A(15)+A(16))}]p=4m
         16πm
   −[Σ――――――――〈{(−1)m・sin(pπ/4)}
     m=1 a(Γ+γ
             ・(A(1)+A(2)+A(3)+A(4)
      +{(−1)m・sin(pπ/2)−sin(pπ/4)}
             ・(A(5)+A(6)+A(7)+A(8)
      +{(−1)m・sin(3pπ/4)−sin(pπ/2)}
             ・(A(9)+A(10)+A(11)+A(12)
      +{−sin(3pπ/4)}
          ・(A(13)+A(14)+A(15)+A(16))〉]p≠4m
                                  ・・・・(30)

  p・a・γ・B
     32π
  [―――――――― sin(pπ/2){1+2cos(pπ/4)}]p≠4
    a(Γ+γ
     
   −[Σ(ma/2)(Γm−γp){(A(1)+A(2)+A(3)+A(4)
     m=1
         +(−1)m(A(5)+A(6)+A(7)+A(8)
           +(A(9)+A(10)+A(11)+A(12)
     +(−1)m(A(13)+A(14)+A(15)+A(16))}]p=4m
         16πm
   +[Σ――――――――〈{(−1)m・sin(pπ/4)}
     m=1 a(Γ+γ
             ・(A(1)+A(2)+A(3)+A(4)
      +{(−1)m・sin(pπ/2)−sin(pπ/4)}
             ・(A(5)+A(6)+A(7)+A(8)
      +{(−1)m・sin(3pπ/4)−sin(pπ/2)}
             ・(A(9)+A(10)+A(11)+A(12)
      +{−sin(3pπ/4)}
         ・(A(13)+A(14)+A(15)+A(16))〉]p≠4m
                                    ・・・・(31)

ここで、入射波、反射波、および合成波の伝搬定数は、

     入射波 :  Γ =(4π/a) −k         ・・・・(32)
     反射波 :  Γ =(4mπ/a) −k        ・・・・(33)
     合成波 :  γ =(pπ/a) −k         ・・・・(34)

から与えられる。

 なお、式(30)は無限の元数を持つ連立一次方程式であり、反射波TEm0モードと合成波TEp0モードを 対応付ける関係式になっている。このことはM個の反射波TEm0モードとP個の合成波TEp0モードとの間に、

             =4                 ・・・・(35)

の関係があり、1個の反射波モードに対して、4個の独立な方程式が存在することを意味する。 すなわち、P元の連立方程式を構成することが可能となり、式(30)はマトリックス記号を用いて、

          ]{              ・・・・(36)

で表わされる。そして、解ベクトルは展開係数A(i)に対応し、式(31)に代入すれば、 合成波の展開係数B が得られる。


5.数値計算
 モードマッチング方程式(30)と式(31)から、a/λを与えることにより、 反射波TEm0モードに対応する展開係数A(i)および合成波TEp0モードに対応する展開係数Bp を得ることができる。 そして、反射波TEm0モードと合成波TEp0モードとの間に次の関係を与えることにより、 式(35)に対応するp元の独立な一次元連立方程式系が形成できる。

         P=4m,4m−1,4m−2,4m−3
           (m=1,2,3,4,・・・・・・)

このことは、例えば、反射波にTE10モードを選べば、P=4,3,2,1が対応する。 しかしながら、P=4m以外は独立な方程式系を形成するために、次の対応関係を満たす任意の次数を選ぶことができる。


 ここでは、低い次数を優先に独立な方程式系を形成するものとして扱うことにする。 この理由は、次数の低い伝送モードの計算精度を維持することにある。

 数値計算は、式(36)の形で行うが、複素マトリックス計算を施すことになる。すなわち、式(36)は、

          +j                 ・・・・(37a)
          +j                 ・・・・(37b)
          +j                 ・・・・(37c)

とおいて、実数部と虚数部に分離すれば、

   
 −(


                                 ・・・・(38)

が与えられ、2P元の実数系のマトリックス計算になる。

 具体的な数値例として、

            a/λ = 3.369

を取る。これは16個の矩形導波管の断面の長軸寸法がRバンド(ミリ波帯)の標準寸法a=7.11mmとして、 伝送波(入射波)の周波数f=35.5GHzが対応する。この場合、反射波の伝送モードはTE10のみとなり、 合成波の伝送モードとしてはTE10,TE30,TE50が存在可能となる。 そして、他の多くの高次減衰モードが不連続境界を基準にして、両側に発生すると考えられる。 図−4と図−5は、反射波にTEm0モードを取り、計算上で考慮するmの次数を大きくしていった場合の 合成モードの振幅と位相の変化(収束性)を示している。 図−6は全入射電力に対する合成波電力の比を各電磁波モード毎に示している。 なお、伝送電力の計算方法は(Appendix)に示しておいた。

 結局、入射波が同位相で同振幅の場合の反射波および合成波への伝送電力の配分は次の結果で示される 。

反射波(TE10モード)
位置全入射電力に対する比位置全入射電力に対する比
1 ,130.01795%5 , 90.09462%
2 ,140.01795%6 ,100.09462%
3 ,150.01795%7 ,110.09462%
4 ,160.01795%8 ,120.09462%
合 計 : 0.90056%

合成波
電磁波モード全入射電力に対する比
TE1084.289%
TE30 9.246%
TE50 5.396%
総計:99.83156%(残0.16844%は誤差)

 なお、y方向のスタンディングを考慮した場合、反射波TEmnモードに対応する合成波TEpqモードをもって、 不連続境界で入射波との整合を取ることが可能と思われる。例えば、y方向の導波管の振幅が揃っていなかったり、 位相が揃っていなかったりすれば、反射波や合成波はy方向にもスタンディングを持つようになり、 nやqの次数が大きな高次の伝送モードや減衰モードの発生が予想される。 この問題は今後さらに検討すべきものの1つと思われる。


6.むすび
 複数個(16個)の矩形導波管から放出される電磁波の電力合成と励起される導波管伝送モードとの関係を解析し、 各導波管伝送モードに対する電力配分を明らかにした。そして、入射波が同位相、同振幅で、 Rバンド(ミリ波帯域)の標準導波管(7.11mm×3.56mm)を用いて、 周波数f=35.5GHzの電磁波を合成した場合、合成された電磁波は、 大きな矩形導波管をTE10、TE30、TE50の導波管モードで伝送し、それぞれの電力配分比が全入射電力に対して、 84.3%、9.2%、5.4%となる。また、各導波管内の反射波はTE10モードで伝送し、 その電力比は16個を合せて全入射電力に対し0.9%となる。なお、反射伝送電力は、x方向に対して、 中央にある8個の導波管が両端の8個の導波管よりも大きく、その電力比が1:0.19であった。

 ここで展開した方法は入射波が同位相、同振幅の場合についてであるが、 異なる位相や振幅を持つ場合についての拡張が可能と思われる。その時、y方向に導波管内の伝送モードの振幅を揃え、 x方向に対して中央にある8個の導波管内伝送モードの振幅を両端の8個の導波管内伝送モードの振幅よりも大きく取れば、 合成波の導波管内伝送モードTE10の成分を持つ電力の割合を大きくすることができるであろう。 なお、より厳密な解析を行うには、小さな導波管の間の壁厚の影響を考慮する必要があろう。



Appendix

 TEモードの伝送電力は複素ポインティングベクトルを電磁波の通過断面積で積分することによって得られ、

        P=(1/2) Re(×z dS
         =(1/2)ZTE dS    ・・・・(イ)

で与えられる 。ここで、ZTE=jωμ/γmn は TEmnモードの電磁波インピーダンスである。また、Reは複素数の実部を取ることを意味し、「*」は共役複素数、zはz方向の単位ベクトル、の添字「T」はz軸に垂直な面内の成分を示している。

 式(イ)は、磁気的Hertzベクトルに用いたスカラー関数πmnで表現でき、

  P=−(1/2)jωμ・γmn(γmn+k|πmn dS ・・・・(ロ)

を得る。したがって、入射波が同位相・同振幅の場合の電力Pinは、

  Pin=−(1/4)jωμ・(b/a)π・Γ          ・・・・(ハ)

となる。また、反射波TEm0モードの電力Pref および合成波TEp0モードの電力Pmix は、

  Pref=−(1/4)jωμ・(b/a)mπ・Γ |A(i)  ・・・・(ニ)

  Pmix=−(1/4)jωμ・(b/a)pπ・γ |B    ・・・・(ホ)

となる。ゆえに、入射波が同位相・同振幅の場合、全入射電力に対する反射波電力および合成波電力の割合は、 式(ハ)、式(ニ)、および式(ホ)を用いて、

                  16
  Rref=(1/16)(m/ΓΣΓ |A(i)   ・・・・(へ)
                  i=1
  Rmix=(1/16)(p/Γ)・γ |B        ・・・・(ト)

となる。



(補 論)

 以下、入射波の各種条件について、励起される各導波管内の伝送モードに対する電力配分を求めたので追記する。

1.条件−1

導波管の位置関係(a/λ=3.369)

反射波(TE10モード)
位置全入射電力に対する比位置全入射電力に対する比
1, 2, 3, 40.02271%9,10,11,120.01583%
5, 6, 7, 80.05153%13,14,15,160.00219%
合 計 : 0.09266%

合成波
電磁波モード全入射電力に対する比
TE10 7.211%
TE2019.362%
TE3026.918%
TE4025.000%
TE5015.747%
TE60 5.590%
総計:99.92% (残りは誤差)
(計算で考慮したモード数 : m=10,q=40)


2.条件−2

導波管の位置関係(a/λ=3.369)

反射波(TE10モード)
位置全入射電力に対する比位置全入射電力に対する比
1, 2, 3, 40.05153%9,10,11,120.15249%
5, 6, 7, 80.24443%13,14,15,160.01583%
合 計 : 0.46428%

合成波
電磁波モード全入射電力に対する比
TE1042.028%
TE2019.362%
TE30 4.618%
TE4025.000%
TE50 2.702%
TE60 5.590%
総計:99.764%(残りは誤差)
(計算で考慮したモード数 : m=10,q=40)


3.各種条件での電力比

条件−3       条件−4       条件−5


条件−6       条件−7       条件−8


反射波(TE10モード) 4個当り
全入射電力に対する比 %
位置 条件−3 条件−4 条件−5 条件−6 条件−7 条件−8
1, 2, 3, 4 0.0713 0.0379 0.0195 0.0622 0.0845 0.0601
5, 6, 7, 8 0.2602 0.1915 0.0622 0.3915 0.4121 0.2392
9,10,11,12 0.1333 0.1915 0.0622 0.3915 0.3405 0.1842
13,14,15,16 0.0149 0.0379 0.0195 0.0622 0.0532 0.0348

合成波
全入射電力に対する比 (%)
モード 条件−3 条件−4 条件−5 条件−6 条件−7 条件−8
TE10 42.028 42.028 14.422 84.406 81.653 46.836
TE20 38.724 0 0 0 6.454 6.454
TE30 4.619 4.619 53.837 9.237 0.264 22.564
TE40 0 50 0 0 8.333 8.333
TE50 2.702 2.702 31.494 5.404 0.154 13.199
TE60 11.179 0 0 0 1.863 1.863

(文責:yut)

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