エネルギー問題

エネルギー
エントロピー
熱の仕事当量

エネルギー問題

 エネルギーは私達の経済活動や家庭生活に欠かせない重要な基礎物資である。人類が火を発見してそれを使用するようになってから次第により多くのエネルギーを使うようになってきた。地球上に降り注ぐエネルギーは太陽エネルギーがほとんどすべてである。それで地球上のすべての生物の生命や自然の諸活動が賄われている。いま私達が使用している石油や石炭や天然ガスは化石エネルギーと呼ばれ、過去の太陽エネルギーが地球上に蓄積されたものである。現代の高度な文明社会はこれらのエネルギーに支えられている。しかし、化石エネルギーはその埋蔵量に限度がある。また、人類が大量のエネルギーを消費することで、地球環境への影響が顕著になってきた。

1.物理的なエネルギー
 物理的なエネルギーとは物質に蓄えられた仕事をする能力のことである。また、熱がエネルギーと同等であることは、イギリスのジュール(1818年−1889年)によって確かめられ、熱の仕事当量が測定された。現在、精密な測定結果によると、「1カロリー=4.1855ジュール」であることが確かめられている。ここで、ジュール(J)はエネルギーの単位、1ニュートン(N)の力を加えて、物体をその向きに1m動かす仕事が1ジュール(J)である。物理的な力とは、物体に運動の変化である加速度を生じせしめるもの、加速度と力の比例係数として質量(慣性質量)という概念が存在して、定義される。つまり、力とは物体(あるいは場)の間で行われる相互の運動量の交換を示すものであり、ベクトル量であらわされる。力の時間による積分(力積)が物体の運動量の変化量に等しく、運動が変化することと力が作用することとは等価である。

 熱がエネルギーと同等、また、仕事と熱は互いに変換する。このことから『ある閉じた系の中のエネルギーの総量は変化しない』という物理学での最も基本的な法則『エネルギー保存則』が成立する。この法則は熱力学第一法則とも呼ばれている。つまり、熱と仕事との間には換算係数が存在する。そして、仕事は容易にそのすべてを熱に変換できる。しかし、経験的に熱をすべて仕事に変換することは難しく、その一部のみが仕事に変換される。これは熱が高温側から低温側へ移動するが、逆に低温側から高温側へひとりでに移動することができないという性質に依存する。また、熱の移動が生じた時は、その一部が仕事に変換されるが、残りの熱は低温側へ捨てられるという性質がある。これは熱力学第二法則であり、エントロピー増大の法則とも呼ばれ、エネルギーの移動の方向とエネルギーの質に関する法則である。

2.エントロピーの概念
 エントロピーという概念は、熱力学的に捉えると、気体を圧縮するケースを考えるとよい。温度Tの気体にゆっくりと圧力を加え、体積をVからV'(<V)へ縮むとする。この場合、気体の持つエネルギーはほとんど変化しない。圧縮するための仕事Wを加えると、そのエネルギーは熱量Qに化けて周囲に放出される。大切な点は、仕事が熱に変わる場合、非可逆的であるということにある。それでは圧縮前の気体と同じ温度の圧縮後の気体は何が変化したのか、この変化の違いがエントロピーである。クラジウスは、この時、気体を圧縮する過程で外部に逃げた熱量Qを温度(絶対温度)Tで割った値Q/Tが気体の持つエントロピーの変化分(減少分)と考えた。つまり、熱力学的なエントロピーとは、熱が伝わる時に現れる物理量と考えられる。

 このエントロピーを統計的な物理現象として捉えると、物質が原子の集まりであり、その本質は原子・分子の自由な運動である。

(文責:yut)

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