環境問題−地球を食い潰す原因と対策を考える−

環境問題
エネルギー
地球温暖化

環境問題−地球を食い潰す原因と対策を考える−

 環境問題は人間の愚かさと知恵との戦いである。自分勝手な生き方と周囲のことを考える生き方との競争である。有名な「人間は考える葦である」と言ったのは、フランスの哲学者・数学者・物理学者であったブレーズ・パスカル(Blaise Pascal:1623−1662)である。人間は、遠くに住む人、他の生物、地球や宇宙、ミクロの世界など、あらゆることを考えられる愛と英知を持つ生物である。

 地球の環境問題は人類の未来を決める最も重要な課題である。それは開発途上国での人口増加、先進諸国での資源やエネルギーの大量消費、戦争と平和、食料問題などとも深い関係がある。それは、地球の温暖化、土や地下水や川や湖や海の汚染、森林の減少と砂漠化、生物種の減少、オゾン層の破壊など、顕著な自然界の現象として顕在化してきた。その原因は20世紀の爆発的な地球の大量消費、すなわちエネルギー消費の増大、農産物収穫量や漁獲量の増加、木材生産や工業生産の飛躍的な拡大から始まった。

 地球温暖化の原因は大気中の二酸化炭素の増加にあるという。地球には、地球自体の持つ内的エネルギーと地球外から与えられる外的エネルギーが存在する。そして、地球のエネルギーは、大部分が地球へふりそそぐ外的エネルギーとしての太陽エネルギーであり、年間約5.5×1024Jとされる。この内約1/3が宇宙空間に直接反射され、残りの約19%が大気に吸収し、約47%が地表面に到達する。地表面に到達した約23%は水蒸気の潜熱となって大気に逃げ、約24%が伝導・対流・放射の形で大気中に移る。この場合、大気は直接吸収する太陽エネルギーの約19%と地表面から戻る約47%を受け取り、熱放射の形で宇宙空間へ放出し、大気温度を一定に保っている。地球上の風や波に使われるエネルギーは、大気循環や海流や台風等すべてを含め、地球にふりそそぐ太陽エネルギーの0.2%程度である。

 地球表面で起こる太陽エネルギーの影響を考えると、太陽エネルギーが地球の気温を一定に保ち、風や海流を起こし、植物や動物の生命を維持する。岩石は長期間大気や水にさらされ、風化作用により変質したり砕かれたりする。また、流水や波浪や氷河によって岩石が削り取られ浸食作用を受ける。風化作用や浸食作用等の物理的・化学的・生物的な影響は、地球の外的・内的エネルギーが関与して、河川や海底に堆積物を作り、固結化して各種の堆積岩になる。生物の遺骸等が堆積して熱的影響を受けると化石燃料になる。なお、地球内部の内的エネルギーは地球にふりそそぐ太陽エネルギーの1/5000程度である。

 天然資源をエネルギー的に考えると、現在の人間社会が使用する全エネルギーは年間約3.0×1020Jであり、地球にふりそそぐ太陽エネルギーの約1/20,000、地球の内部エネルギーの約1/3が消費される。人間が生きていくのに必要な最低限の食料エルネギーを1日当たり約2,000kcal/人とすると、1人当たりの平均活動エルネギーはその20倍程度(日本は約45倍)の計算になる。資源としてのエネルギー使用量は、人口増加の影響等で年々増加傾向にあり、その約90%が化石燃料である。これは絶対量の不足と熱的収支の不安定性が問題になる。地球上の化石燃料の確認可採埋蔵量は、石炭が約10,400億トン、石油が約1,410,000億リットル、天然ガスが約1,070,000億m3とされ、エネルギー換算で約3.3×1022Jとなり約百年で枯渇する。しかし、ウラニウムやトリウム等の核燃料を含めると数千年分を確保できるが放射性廃棄物等の問題がある。そこで、太陽エネルギーの有効利用に注目されるが、エネルギー密度が低く、気候変動の影響を受け、雨天や夜間にエネルギーが得られない。また、地球上の植物に固定されるのは地球にふりそそぐ太陽エネルギーの約1/6,000であり、生物の食物連鎖の関係もあったりして、効率的な利用が困難である。最近では効率の良い太陽電池が開発され、経済性の面で改善されれば実用化の可能性も高い。

 生物資源については生物体に不可欠な主成分である炭素の循環システムに着目する。大気中の炭酸ガスは植物の光合成によって酸素に変換され、植物が約4.4×1014kg/年の炭素を固定する。これらの一部が動物の食料となり、呼吸と共に炭酸ガスとして大気中へ放出され、大部分が有機物として地殻へ埋没する。生物資源はアミノ酸で作られており、炭素等の構成物質の質的及び量的な制約を受ける。大気中の炭酸ガスは海洋で制御され、約8.6×1014kg/年の炭素交換があり、大気中に容積比で約0.03%が保たれている。炭素はマントル等の地球内部から火山噴火等により炭酸ガス等として放出されるが、その量は海洋との炭素交換の1/10,000以下である。むしろ、人間社会が消費する化石燃料の燃えかすとしての炭酸ガス等の放出が海洋との炭素交換の約1/20を占め、大気中の炭酸ガス濃度を上昇させて地球温暖化の原因になっている。

 地球環境を考えた場合、地球に与えられるエネルギーの制約、有限な資源の配分問題、人間が生態系として存続できる環境維持が重要課題になる。特に、人工的な大気汚染、水質汚濁、土壌破壊等は人類滅亡の危機と直面している。大気汚染は石炭や石油の消費量が飛躍的に増大したのと関係しており、窒素酸化物や硫黄酸化物や一酸化炭素等が主な汚染物質であり、酸性雨や光化学オキシダントの原因になる。化石燃料の燃焼や森林(熱帯林)破壊は大気の二酸化炭素濃度を増加させ、太陽光の赤外線吸収による温室効果が地球温暖化を進めている。地表の生物を有害な紫外線から守る働きをするオゾン層はフロンガスで破壊されている。水質汚濁は生活排水や工場排水等の影響を受け、湖沼や内海や内湾等の閉鎖性水域で汚濁物質の蓄積が著しい。また、地下水や河川や海洋の汚染も進み、トリクロロエチレンや合成洗剤や海底油田開発とタンカーからの石油汚染が問題である。土壌汚染は水銀やカドミウム、PCBやダイオキシン等の化学物質の影響が大きく、農薬や一般廃棄物や産業廃棄物に含まれる有害物質が人体に悪影響を及ぼす。原子力発電の事故等による放射能汚染は、放射線が生きた細胞に忍びこみ生体を破壊する。この他にも世界人口の増加、野性生物の種の減少、砂漠化と土壌侵食、地下水の過剰採取が原因の地盤沈下、騒音問題等、人間活動が環境に与える影響と環境破壊が人間の健康に及ぼす影響は密接な関係がある。環境保全には汚染物質が環境へ漏れないようにすることと汚染物質を除去するか無害化することが必要である。

(文責:yut)

戻る