流体の性質を捉える

流体とは何か
粘性

流体の性質を捉える

 物質の状態は、固体、液体、気体の3つに大きく分けることができる。この内、液体と気体は、総称して、流体と呼ばれる。流体は固体と異なり、自由に変形でき、固有の形をもたない。液体と気体の違いは、その密度変化の大小で区別され、気体は液体に比べて密度変化が容易に起こる。一般に、気体もその流速が音速を超えない限り、液体と同様に密度変化をほとんど考慮せずに取り扱うことができる。流体の密度変化は音を伝える性質であり、流体の圧縮性の影響を無視できない場合も多い。しかし、一般的には、流体の密度を一定とする場合、非圧縮性の流体として扱うことができる。特に、流体の粘性や熱は流れの様子に大きく影響する。

 粘性とは、流体に働く摩擦力によって流体の運動をできるだけ均一にしようとする性質である。粘性が高ければ、流体の運動を均一にする性質が強くなる。このため、渦のような回転運動をしている流体は、粘性の低い流体よりも回転運動が早く止まるようになる。もしも流体に粘性が無ければ、摩擦が生じないので、流体運動を止めることが困難になる。流体に粘性があるから、物体表面の流体の流れは静止していると考えることができる。一般に、物体表面で静止した状態から、大きく速度が変化する薄い領域を境界層と呼んでいる。流体運動を捉える時、この境界層の扱いが極めて重要になる。

 流体の運動には、定常流れと非定常流れ、層流と乱流、という区別が存在する。定常流れとは、流れの様子が時間とともに変化しない場合をいう。流れのあらゆるところで、ある固定した位置の流速や圧力が時間的に変化しなければ、流れが定常であるという。この場合、流れの場所ごとの流速や圧力は異なっていてもよく、流れは上流から下流へ時間とともに流れることになる。一方、非定常流れは、流れの様子そのものが時間とともに変化する。私達が目にする身の回りの多くの流れは非定常流れである。

 層流と乱流の違いは大まかには流れの乱れに関係する。一般的に、層流は秩序ある整った流れ、乱流は乱れた流れであり、流速に関係している。層流と乱流の違いを区別するもの、それはレイノルズ数と呼ばれる無次元量で決まることが知られている。レイノルズ数は、Re=ρLU/μ=流体の密度×流れの代表長さ×平均流速/流体の粘性係数、で表される。

 流体の運動を支配するのは、連続の式、ナビエ・ストークス方程式、エネルギーの式、の3つの式である。これらの式は、質量保存則、運動量保存則、エネルギー保存則に対応する。

 連続の式は、流体の質量が不変であることを表現する式、流体の圧縮性を考慮すると、流体密度は変化するが、流体がどのように変形したしたとしても、その質量は不変である。

 ナビエ・ストークス方程式は、ニュートン力学の運動方程式に相当し、流体に加わる力によって、流体がどのような運動をするかを記述した式である。一般的には、流体が慣性によって運動を持続しようとする力(慣性力)、圧力の分布が均一でないために生ずる力(圧力勾配による力)、流体の持つ粘性が運動を均一化しようとする力(粘性力)、さらにこれら以外の力(重力などの外力)が考慮される。

 エネルギーの式は、エネルギー保存則を意味するが、外部からの仕事や流体に与えられる熱量などは、流体の持つエネルギーを増加させる。流体の一部分に着目すると、この部分の持つエネルギーの変化は、この部分に入ったり、出たりするエネルギーを足し合わせたものに等しい。エネルギーの式は、このことを表し、慣性力や粘性力、あるいは圧力によってなされる仕事、流体が加熱されたり冷却されたりして流出入する熱量も含まれる。これらすべてのエネルギーの総和は増減せずに不変であることを示している。


 (流体運動の支配方程式:但し、ρは密度、pは圧力、μは粘性率)

 ∂ρ/∂t+∂ρ・vk/∂xk=0

 ∂ρ・vi/∂t+∂(p・δik+ρ・vi・vk)/∂xk=∂{λ(∂vj/∂xj)・δik+μ(∂vi/∂xk+∂vk/∂xi)}/∂xk

 ∂e/∂t+∂(e+p)vk/∂xk=∂{λ・vk(∂vi/∂vk)+μvi(∂vi/∂xk+∂vk/∂xi)}/∂xk+∂(κ∂T/∂xk)/∂xk

(文責:yut)

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