自然界を支配する数式モデルによる方程式体系


「自然界を理解する言葉、数学言語」

 自然界を支配する数式モデルによる方程式体系、人類による自然界の観測と偉大な知性と直観、そして創造的な思考により、現象や構造と数式モデルとの対応関係を見出し、そこに人類が理解できる言語としての方程式体系が生み出された。

 方程式は「同等」あるいは「等しい」(不等号を含む)という意味から、時空や物理的な変化を捉える。その前提に、自然界のあらゆるものは高度に秩序付けられていると考え、広大な宇宙から、極微細な素粒子のレベルまで、さらには人類を含む動的な行為についても、法則や秩序に基づく、何らかのルールが存在すると考えている。


自然界を支配する数式モデルの方程式系

1.ロジスティック方程式
   dN/dt=rN(1−N/k)
   N(t)=k/(1+(k/N−1)exp(−rt))

 ロジスティック方程式は、自然界の成長と崩壊の過程を示し、1階の常微分方程式で記述される。興亡の方程式とも呼ばれる。反応方程式の一つの形態でもある。
 Nはある量の時間的な変化、tは時間、rは成長(崩壊:r<0)速度、kはNの限界値を意味する。

2.運動方程式とニュートン力学
   p=mv , v=dr/dt
   F=ma , a=dv/dt
   F1→2=−F2→1
   F=G(m/r

 一番目の方程式は、質量mの物体の運動量を意味し、速度vは位置の時間的変化である。
 二番目の方程式は、物体に働く力Fによって運動が決定されることを意味する。力Fを働かせることで、この力と同じ方向に加速度aが引き起こされる。この時、加速度aは速度vの時間的変化で示される。また、力Fが働かなければ、速度vには何の変化もなく、運動量pは保存されて一定のままである。なお、力Fには、摩擦力、空気抵抗、電気力などがある。
 三番目の方程式は、力の作用と反作用の関係を意味する。ある物体に力を働かせれば、その物体には反対方向の力が等しく作用する。
 最後の方程式は、重力(引力)に関する公式である。質量mとmを持つ2つの物体は、それらの質量の積に比例し、その距離rの二乗に反比例して、力Fで互いに引き合うことを意味している。この場合、比例定数Gはニュートンの万有引力定数(G=6.6742×10−11 N・m・kg)である。
 いま、mを地球の質量M、rを地球の半径Rで置き換え、地球の重力加速度gとすると、質量mの物体に働く力Fは、F=mgであるから、地球の重力加速度gは、g=GM/Rとなる。

3.力の概念とその種類
   F=ma , a=dv/dt ・・・ 加速力
   F=cv , v=dx/dt ・・・ 粘性力
   F=kx       ・・・ 弾性力(フックの法則)
   F=q(E+v×B) ・・・ 電磁力(ローレンツ力)

 力(ちから、英語 force)の概念は、二つ以上の対象の間で影響を及ぼしあうような作用があるときのその作用のことをいう。力学における力は物体に運動の変化であるところの加速度を生じせしめる。これは加速力であり、この時、加速度と力の比例係数として質量(慣性質量)という概念が導入される。力は物体(あるいは場)の間で行われる相互の運動量の交換を示し、ベクトル量で表される。力の時間による積分(力積)は物体の運動量の変化量に等しい。つまり、運動が変化することと力が作用することとは等価である。

4.熱力学の方程式
   dU=dQ−dW
   dS=dQ/T . dS/dt≧0
   T→0 ⇒ S→0
   PV=RT , R=N

 第一式はエネルギー保存の法則を意味する。熱はエネルギーの一形態、エネルギーの変化dUは、系によって吸収された熱量dQから、その系によってなされた仕事量dWを引いたものに等しい。

 第二式はエントロピーSの定義式、低温の熱源が熱を取り出し、それを何もせずに、高温の熱源に引き渡すような熱力学過程はありえない。熱を低温の熱源からより高温の熱源に移動させるために仕事がなされなければならない。これはエントロピー増大の法則を意味する。

 第三式は系が絶対温度Tが絶対零度に近付くならば、熱運動は次第に停止し、その系は秩序正しくなるなり、エントロピーSは零になる。

 最後の式は状態方程式、理想気体の圧力P、体積V、温度T、気体定数Rの関係式であり、ボイルとシャルルの法則を意味する。ここで、Nは分子の数を明記する基礎定数でアボガドロ数(=6.0221415×1023/mol)、kは温度をエネルギーに関係つけるボルツマン定数(=1.3806505×10−23J/K)である。

5.熱伝導方程式
   q=λ・dT/dn
   cρ・∂T/∂t=λ・∇T+Q

 第一式はフーリエの法則、固体内の任意の一点において、その単位面積を通して単位時間に高温部から低温部へ流れる熱量qは、温度Tの傾斜dT/dnに正比例する。この比例定数λが熱伝導率である。
 第二式は熱伝導方程式である。拡散方程式と同じ形をしている。ここで、cは比熱、ρは密度である。

6.反応拡散方程式
   反応方程式
   ∂u/∂t=F(u)

   拡散方程式
   ∂u/∂t=D・∇

   反応拡散方程式
   ∂u/∂t=F(u)+D・∇

 反応拡散方程式は、2変数の連立偏微分方程式に従う、物質の濃度変化を化学反応と拡散(物質移動)によって捉える。反応方程式は、物質の増加や減少を表す。拡散方程式は熱伝導方程式と同じ形をしている。

 この方程式の特徴は、物質濃度の多種多様な空間パターンを生み出すことにある。反応によって生み出された物質濃度は、拡散によって、濃度の高い方から低い方へ移動する。ただし、均一になった状態からは新たなパターンは生まれない。エントロピー増大の法則から、均一状態はエントロピーが最も高くなるからである。

 代表的な反応方程式の関数F(u)として、F(u)=u(1−u),F(u)=u(1−u)(u−a)などがある。

7.マクスウェル方程式(電磁波方程式)
   ∇・D=ρ
   ∇×H=J+∂D/∂t
   ∇・B=0
   ∇×E=−∂B/∂t
   D=εE=(ε+χ)E=εE+P
   B=μH=(μ+χ)H

 第一式は電荷ρの存在に起因する電場を決定する。ガウスの法則に相当する。電場(電束密度)Dは電荷密度ρから放射状に湧き出るように発散する。

 第二式はアンペールの法則であり、電気と磁気の現象を結び付けている。渦状に回転する磁場Hは電流Jと時間変化する電場(電束密度)Dから作られる。

 第三式は第一式の電場を磁場に置き換えているが、右辺が「0」になっていることから、電荷に対応する磁荷の存在を否定している。つまり、自然界に存在するのは、磁荷ではなく、磁気双極子のみであり、あらゆる磁気現象は電荷が動き回ることで引き起こされた結果である。磁場(磁束密度)Bには始点も終点もなく、閉じたループ状であり、湧き出す発散は「0」である。

 第四式はファラデーの法則であり、磁場の変化が電場を誘導し、この電場が電荷の運動を引き起こすことを示している。渦状に回転する電場Eは時間変化する磁場(磁束密度)Bから作られる。

 第五式は電場Eと電束密度Dの関係であり、第六式は磁場Hと磁束密度Bの関係を示している。ここで、εは誘電率、μは透磁率である。

8.電磁波の波動方程式
   ∂E/∂t−∇E=0
   ∂B/∂t−∇B=0

 波動方程式は伝播する波を特徴付ける。波長λ、速度v、振動数fとの間に、λf=v の関係が存在する。マクスウェルは電磁波の波の伝播速度が光速度c(=2.99792458×109m/s)に等しいことを示した。

9.ソリトン方程式
   ∂u/∂t+∂3u/∂x3+6u(∂u/∂x)=0

 ソリトンとは、安定したパルス状の孤立波のこと、波の形状や速度などが不変、粒子の「慣性の法則」に相当する。ソリトン方程式には幾つかのタイプのものがある。

10.ボルツマン方程式
   ∂f/∂t+v・(∂f/∂r)+(F/m)・(∂f/∂v)=∬(f'f'1−ff1)gdΩdv1

 左辺は確率分布関数f(r,v,t)の時間的変化を記述する。右辺は衝突項、粒子間の衝突が分布関数の変化に及ぼす効果である。括弧内の第一項は衝突によって速度vの粒子が生まれる過程、第二項は衝突によって速度vの粒子が失われる過程を表す。gは衝突する2個の粒子の相対速度g=v1−vの大きさ、dΩは衝突の微分断面積を表し、2粒子間に働く力と相対位置を決めれば定まる量である。

 この場合、単位体積中にある粒子の個数(数密度)は、n(r,t)=∫f(r,v,t)d3vとなる。また、、熱力学的平衡状態において、気体分子の速度が従う分布関数(マクスウェル=ボルツマン分布)が得られる。

11.ナヴィエ・ストークス方程式(非圧縮性粘性流体の運動方程式)
   D/Dt= − (1/ρ)gradp+(η/ρ) ∇
   D/Dt=∂/∂t+(・grad)

   ∂ρ/∂t+ div(ρ)= 0
   div(ρ)=ρdiv・gradρ

 ナヴィエ・ストークス方程式は流体の運動を記述し、2階非線形型偏微分方程式で表される。ここで、(・grad)は対流項、 − (1/ρ)gradpは圧力項、(η/ρ) ∇は粘性項である。
 この非圧縮性粘性流体の運動方程式は、未知数として、圧力pと流速を含む。したがって、未知数決定には、質量保存則がら導かれる連続の式が必要になる。

 第一式は非圧縮性流体のナヴィエ・ストークス方程式、粘性がなければオイラー方程式になる。
 第二式は流体に対する連続の方程式である。

 圧縮性の場合は、
   ρD/Dt= −gradp+η∇+(ζ+η/3)grad(div
 となる。但し、非圧縮性とみなされる場合、div=0

12.相対論的運動方程式
   w=(u+v)/(1−uv/c
   t'=t√(1−v/c
   E=mc=√(m0+p

 第一式から光速度より大きな速度に達することができない。
 第二式は運動している物体の時間はよりゆっくりと時を刻むことを示している。
 第三式はエネルギーと質量が等価であるという関係を意味している。

13.アインシュタイン方程式
   Gμν−λgμν=−κ{Tμν−(1/2)gμνT}

 重力現象は、時空(時間と空間)の曲率として捉えられる。エネルギーと運動量が時空を曲げ、時空の曲率が物質の運動と放射に影響する。

 左辺は時空の幾何学的な特性に関するすべての情報が与えられる。Gμν(x,t)はすべての時空点で時空方向における曲率の成分を表す。左辺の第二項は宇宙定数と呼ばれる補正因子である。

 右辺は物質と放射に関するすべての情報が与えられる。Tμν(x,t)は時空におけるエネルギーと運動量の密度を記述する多成分場である。

 μとνは時空の指標、0,1,2,3の4つの値をとる。但し、0は時間成分である。

 この式は左から右に読めば、時空が物質や放射に対して、どのように運動すべきかを表す。右から左に読めば、物質や放射が時空に対して、どのように湾曲すべきかを告げる式となる。

14.シュレディンガー方程式
   i(h/2π)(∂/∂t)ψ(r,t)=[−{(h/2π)/2m}∇+V(r)]ψ(r,t)

 量子論の基本方程式、波動関数ψは状態の確率、粒子の確率であり、ある粒子がある位置で検出される確率を表し、この量子状態は時間とともに変化する。この時、粒子と波動の二重性は、位置と速度についてすべてを同時に知ることができない。つまり、位置凾の不確定性と運動量凾垂フ不確定性は、ハイゼンベルグの不確定性関係「凾凾吹(1/2)(h/2π)」を満足する。

15.ディラック方程式
   {γμ(i・(∂/∂Xμ)−eAμ)−me}ψ(Xν)=0

 関数ψは4成分を持つ電子場、meは電子質量、γμはガンマ行列(4つの数からなる4×4の行列)である。
 Aμは電磁ポテンシャル、電子が運動する電磁場を記述する。
 添字μは0,1,2,3の値をとることができ、時間と空間成分を表す。

 この方程式は、1個の電子の2つのスピン成分と正電荷を持つ陽電子の2つのスピン状態をも記述している。

16.量子色力学
   £QCD=−(1/4)Faμνμνa+買ユf(i∂−M+gAaaf
   Fμνa=∂μνa−∂νμa+gsbcaμbνc


 量子色力学はクオークの振る舞いと強い力を記述する。強い力は、グルーオンと呼ばれる粒子が媒介し、クオークを結び付ける膠(にかわ)のような働きをする。この強い力の残留が中性子と陽子を結びつけている。

 この式は量子色力学の基本方程式である。£QCD第一項はグルーオン(添字a)とそれらの間の強い相互作用を記述する。量子色力学では8つの異なる粒子(グルーオン)を扱う。色の場FはポテンシャルAによって定義される。

 第二項は2つのψ場に関係し、6つの異なる種類(添字f:フレーバー[香り]と呼ばれる)を記述する。クオークとグルーオンの相互作用を決定するAa場を含む。ディラック方程式との類似性を考えれば、電場とクオーク場、光子場とグルーオン場が対応する。

17.電弱相互作用
   £E-W=£g+£f+£H+£m

   £g=−(1/4)Gaμνμνa−(1/4)Bμνμν
   £f=買ユLi(i∂+g'Waa+gBy)ψRi+買ユLi(i∂+gBy)Ri
   £H=−(Dνφ)+(Dνφ)−μ+φ)+λ(φ+φ)
   £m=−(cijψLiφψ'Rj)


 弱い力は核分裂エネルギーの背後にある力、ウランのような放射性原子核の自発的崩壊を引き起こす原因になる。現象としては、原子核の中の1個の中性子が陽子になり、電子と反ニュートリノがそれぞれ1個放出される。弱い力は、電子やニュートリノだけでなく、クオークにも作用する。

 電弱相互作用は、力を媒介する4つの粒子によって記述される。その内、3つが弱い力(W,W,Z)に関係する。

 £gは、力を媒介する粒子と、それらの間の相互作用を記述する。

 £fは、すべてのディラック粒子と、それらと力媒介粒子との相互作用を記述する。ラベルiは、電子、クオーク(フレーバー)、ニュートリノなど、さまざまな粒子種を示す。

 £Hは、スカラー部分、ヒッグス粒子を記述する。ヒッグス粒子は、他の大部分の粒子に質量を与えるのに必要な粒子であり、質量の起源を説明する。

 £mは、この相互作用を通して、ディラック粒子の質量を与える。

18.超弦理論
   £s=−{1/(4πa')}√(|g|)[gαβαμβμ−iψ∂ψ]

 自然界の最も基本的な実体は点のような粒子ではなく、10-35m程度の極めて小さな弦(ひも)から成り立っているという。この場合、各素粒子の種類は超弦(超ひも、スーパーストリング)の異なる振動モードに対応する。

 この考え方に基づいて、それらに対するエネルギー式あるいは適切な関数 £(ラグラジアン)で定式化して、最後に量子原理を適用する。

 最初の項は、弦が時空を運動する間に形成する局面の面積に相当する。この面は世界面と呼ばれ、閉じているか、開いているか、どちらかである。

 ラグラジアン £sの第二項は、世界面上を伝播する場、超対称性を満たし、理論全体の整合性を保つために必要である。

 閉じた弦は重力を記述し、開いた弦は他の相互作用に関係付けられる。そして、この理論は、時空の次元が4次元ではなく、10次元であると主張する

 最新のM理論によれば、弦だけでなく、p−ブレーンと呼ばれるより高い次元を考え、1−ブレーンは弦(ひも)、2−ブレーンは膜(面)であり、より高次元の膜の類似物が提案されている。M理論のMは、マザー(母)、ミステリー(神秘)、マトリックス(行列)などの意味が込められている。

(文責:yut)

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