構造設計の考え方

応力

材料の強さ
応力集中

構造設計の考え方

 すべての物体は小さな粒子の集合体、粒子相互間には互いに力が作用している。このような物体に外力(荷重)を加えれば、粒子間力は変形に対して抵抗し、各粒子状態はある程度まで変形して、外力との力の釣り合いを保つようになる。この時、粒子間に生じた抵抗力は内力と呼ばれ、単位面積当りの内力のことを応力という。

 応力は荷重方向に直角な断面に対して、σ=P/Aで表される。ここで、σは応力、Pは外力(荷重)、Aは断面積である。また、角度θを持つ斜断面(その面積A')に対しては、σ'=P/A'=σ・cosθで表示される。

 物体内のある一点に働く応力は、それがどの面に作用するのかによって、その大きさが異なる。つまり、応力の作用面と作用方向を指定しなければならない。一般的には、作用面に直角な面と平行な面に分け、直角な面に働く応力を垂直応力、直角な面に働く応力をせん断応力と名付ける。物体内に座標軸を考え、作用面と作用方向を考えて表示した応力は応力成分と呼ばれる。

 一般に、応力成分は、物体内の座標軸をx,y,zとすれば、x面に作用するx方向の垂直応力をσx、y面に作用するy方向の垂直応力をσy、z面に作用するz方向の垂直応力をσz、x面に作用するy方向のせん断応力をτyx、y面に作用するz方向のせん断応力をτzy、z面に作用するx方向のせん断応力をτxz、x面に作用するz方向のせん断応力をτzx、y面に作用するx方向のせん断応力をτxy、z面に作用するy方向のせん断応力をτyz、と表示する。つまり、物体内のある一点に働く応力は、9つの応力成分によって完全に代表される。

 この時、物体内の一点を通る任意の面に作用する垂直応力およびせん断応力の大きさは、作用面の方向によって異なる。垂直応力が最大あるいは最小になる面を主応力面、その方向を主応力軸、その面に生じる垂直応力を主応力という。主応力面にはせん断応力は生じない。また、せん断応力が最大になる面を主せん断応力面、その面に生じるせん断応力を主せん断応力という。なお、主応力面と主せん断応力面とは45゜に交わる。

 物体に荷重が作用すれば、物体の各点は変位し、すべての点の変位が同一でなければ、物体は変形する。いま、物体のx軸方向に引張荷重を加えると、x方向に伸び、それと直角の面は縮む。この時、単位長さの伸縮量を垂直歪εという。また、x軸の周辺にせん断荷重が作用すれば、その荷重によるズレが生じて、微小な二辺の角度が変化する。この角度の変化はせん断歪と呼ばれる。一般に、物体が変形すると、垂直歪とせん断歪を生ずる。

 物体内の一点に生じた歪の大きさは、考える方向によって異なり、物体内に座標軸を考えると、歪の方向を示す歪成分が応力成分と同様に存在する。歪成分は、x軸方向の垂直歪をεx、y軸方向の垂直歪をεy、z軸方向の垂直歪をεz、xとy軸に関するせん断歪をγxy、yとz軸に関するせん断歪をγyz、zとx軸に関するせん断歪をγzx、yとx軸に関するせん断歪をγyx、zとx軸に関するせん断歪をγzy、xとz軸に関するせん断歪をγxz、と表示する。つまり、物体内の一点の歪は9つの歪成分によって完全に代表される。そして、主応力と主せん断応力と同様に、主歪軸、主歪、主せん断歪が存在する。この時、応力と歪の関係が正比例する範囲では、主応力軸と主歪軸は完全に一致する。

 一般に、物体(工業材料や建設資材など)は、荷重を加えると変形し、内部応力が生じす。この時、応力があまり大きくなければ、荷重を除去すると、元の形状に戻り、このような物質の性質は弾性と呼ばれる。弾性を示す最大限の応力は弾性限度と呼ばれる。この弾性限度内の応力と歪の関係を取り扱う場合、その物体は弾性体と呼ばれる。一般的な弾性体は、応力と歪の関係が正比例すると考えて取り扱うことができる。厳密には、応力成分と歪成分の関係から、18個の比例定数が考えられる。しかし、物体が均質等方性ならば、2個の比例定数で応力成分と歪成分の関係を表現できる。

(均質異方性体における応力と歪の関係式)
σx =a11・εx+a12・εy+a13・εz+a14・γyz+a15・γzx+a16・γxy
σy =a12・εx+a22・εy+a23・εz+a24・γyz+a25・γzx+a26・γxy
σz =a13・εx+a23・εy+a33・εz+a34・γyz+a35・γzx+a36・γxy
τyx=a14・εx+a24・εy+a34・εz+a44・γyz+a45・γzx+a46・γxy
τzy=a15・εx+a25・εy+a35・εz+a45・γyz+a55・γzx+a56・γxy
τxz=a16・εx+a26・εy+a36・εz+a45・γyz+a56・γzx+a66・γxy

(均質等方性体における応力と歪の関係式)
σx =a11・εx+a12・(εy+εz)
σy =a11・εy+a12・(εz+εx)
σz =a11・εz+a12・(εx+εy)
τyx=(a11−a12)・γyz/2
τzy=(a11−a12)・γzx/2
τxz=(a11−a12)・γxy/2

(材料定数)
縦弾性係数 :E=(a11+2・a12)(a11−a12)/(a11+a12)
横弾性係数 :G=μ =(a11−a12)/2
体積弾性係数:K=(a11+2・a12)/3
ポアソン比 :ν =(1/m)=a12/(a11+a12)

 あらゆる構造物の強度設計は内部応力の応力集中をどのようにして緩和するかにある。構造物に外力や歪(変形)を与えると、内部の各部分に耐えようとする応力が生ずる。この応力は構造物の形状や材質の違いによって、部分的に応力集中が生ずる。この応力を構造物全体で吸収し、部分的な応力集中を緩和する形状を見出すのがポイントになる。

 構造物に亀裂や欠陥が存在すると、内部応力はその部分に集中して破損・破壊に至ることになる。外力の大きさや材質固有の耐力にも問題はあるが、熱応力や振動による共振などによって、構造物が破損や破壊に至ることがある。圧力容器の設計においても構造物の形状に起因する応力集中の問題が存在する。

(文責:yut)

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