2003年11月8日の行状

 鳴り響くラップ音。姿なき訪問者。突然、聞こえなくなるBGM。怪しげなお札をひらめかす子供の手。霊感のある客は異様な寒気を覚え、消失した財布はいつの間にかもとあったところで発見される・・・。
 これぞ、赤羽霊園の黒い奇跡。まつろわぬ霊たちが彷徨う辺境の地の収容所、”あかばね番外地”の実体なのだ。

 今日は人外倶楽部の公演で、居酒屋「赤羽霊園」に籠もってたのですが、いやあ、いろいろあった一日でした。
 以前にもやってることだし、今回は仕込みは楽チンだなと高をくくったのが大間違い。思いの外、時間がかかってしまいスケジュールは大幅にずれこみます。
 あらかじめ予想していたことではあるのですが昼間はこのままドタバタとしたまま本番突入。リハがすんげえ駆け足だったよ。
 昼間は客が少なかったなあ。リハのドタバタを引きずってか、本番もトラブル続出。最初に書いた怪奇現象の数々もほとんどが昼の部に起こったことなのですが、一番困ったのはテープの不調です。私の出番と守田幻蝶さん&田宮ガクさんの出番で、違うラジカセで違うカセットテープを使ったのに、両方とも本番だけ音が出なくなったのです(あとで試したらちゃんと出た!)。
 さらには私が自分の番を終えて中二階の楽屋にいるとき、扉をドンドンと叩く音が執拗に聞こえました。遅れてきた客かな、質が悪いなと思ってましたが、いつまで経っても止みません。ようやく霊園のお姐さんが応対にでたのか、ぼそぼそと話し合うような声が聞こえ、なんか文句を言ってるような感じの声でした。これはもしや、音がうるさいという近所からの苦情が出たのではと思って、しばし途方に暮れましたよ。
 ですがね、後でお姐さんに聞くと、誰も来なかったらしいんです。下にいた人で音を聞いた人は上から聞こえたと言うしね。上(楽屋)でしていた騒音といったら本番中に昼寝してた、とある出演者の娘の寝息くらいですよ(笑)
 財布もよく失くなりましたね。まず、スタッフのA嬢が失くしました。もっとも、この人は普段からよく失くすらしいんですが。幸いすぐ見つかったから良かったもの、よくもあの狭い空間でと首をかしげてたものです。ところがお買い物を頼もうと思ってポケットに手を突っ込んでみると、私のも無いじゃん! これも霊現象ですかねえ?
 話は前後しますが、朗読の智ちゃん(昼・夜の部ともに安定してた。センスがあるのでしょうね)、私、幻蝶さん&ガクさんと、トラぶりながらも進み、最後の全体パフォーマンスのシーン。
 基本的に田宮ガクさんの音で踊る(智ちゃんは座って、ウネウネと動いていた模様。踊り手じゃないので、ちょっときつかったかな?)のですが、この音がいい! 打楽器で(ただリズムを叩くだけでなく)雰囲気のある音を出してくれる人だとほんとに踊りやすいのです。
 また、守田さんとのデュオというのも面白い。自分の踊りをしつつもうまく絡めて楽しく踊れます。
 しかしこの人と踊るときは命の保証が無い。昼の部はビンタを喰らいました。それも2発! ちなみに夜の部では首に掛けてた数珠で首を絞められました。この女、まさに凶悪犯罪者です(笑)
 このまま野放しにしていては世のため人のためにならず。早急に退治しといた方がよいと思うのですが、いかがなものでしょうか?

あかばね番外地・勝負下着(赤フン)揃い踏み!

 ともかく、ようやくこれで感じもつかめてきました。やっぱり特殊な空間ですから、リハをきちんとやらないと空間の感覚が判らないのですよ。
 夜の部では怪現象もやや収まりをみせ(霊感が強いお客さんが体調を崩したというのを後で聞きましたが)、全開バリバリです。
 私の時も幻蝶さんたちのときもトラぶることなく順調に進みました。幻蝶さんはほんとは宙吊りをしたかったようなんですが、吊り師の人がスケジュールが合わないということで、急遽逆立ちにすり替えました。でも一応足は縛ってたようです。夜の部は成功と言って良いでしょう。
(実は後で聞いたところ、彼女は昼の会の方が良かったそうです。夜は眠くなっちゃったんだってさ。)
 いろいろとお客さんと話すのも面白かったです。特に今回のチラシで絵師を務めていただいた”生”月丘リリィさんとお会いできたのは嬉しかったですね。お友達で漫画家の有田景さんともお会いできました。

 最後に、これはあまり文章で書くのはどうかとも思うのですが、今回の公演”あかばね番外地”ならびに個人作品の「星の智慧教団の秘密」では、確固としたとしたテーマがあります。普段、私たちは肉体や、社会的モラル(人間的モラルとは必ずしも一致しない)、物理法則(世界の事象を無理矢理現代科学の枠で定義しただけ)の檻に閉じこめられて、閉塞的な暮らしをしています。表現活動をする上でこれらのことは全くの有害無益。たちの悪い足枷です。肉体の奥の奥、暗い深淵に閉じこめられている本当の自分に、一瞬だけでもいい、娑婆の空気を味あわせてあげたい。そんな想いが私を突き動かしたのです。

 
 次回は、死刑執行後の世界が舞台になるでしょう。
 そこで展開されるのは、この世では受け入れられることの無かった人外の者どもが織りなす暗い童話。報われることのない暗黒のメルヘンにご期待下さい。

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