鏡のような 泉
神秘的で
白銀の光をたたえて
その光が
俺を包んで
引き寄せる
俺も……
俺も皆のそばに……
この泉に身を投げれば
また逢える……?
躊躇いは無かった
目をしっかりと開いたまま
俺は冷たい水の中へ
身を沈めた
一面の銀色
水泡が
軌跡を描いて
俺を包み込む
優しく
冷たく
全身の熱を奪ってゆく
涙をこぼし続ける
瞳だけが
暖かかった
悲しい歌が聞こえる
歌詞の意味はよく分からない
でも
物悲しいメロディ
そして
悲嘆さの中に
甘い熱を含んだ
伸びやかなテノール……
声はすぐ耳元で聞こえた
全身が疼くような
甘い声
濡れた瞳を開くと
世界は
朱に染まっていた
夜明けが来ていた
俺は
泉の辺で
夢を見ていたのか
いや
濡れた服
濡れた髪
全身から匂い立つ
水の香り
夢ではない
銀色の泉は
朱に染まって
暖かく豊に
その水をたたえていた
歌が聞こえる
泉の中から
そして
俺は見つけた
泉の中に
半身を浸した
人の姿
不思議と恐怖は感じない
白い肌に
銀色の髪が揺れて
きらきら
光っていた
その歌声の主は
ゆっくりと
俺に視線を合わせると
静かに
微笑んだ
今にも
泣き出しそうな表情で
微笑んでいた