今の装置を生かす
 ―――グレード・アップ実践法―――

 現在のオーディオに不満が出てきて、せめてもう少し音を良くしたいと考えた時、どのような行動をとられるでしょうか?大抵は、オーディオ・ショップ(自分の行き付けの店とか)や、雑誌の相談欄に相談されると思いますが、先ず納得のいくサウンドにならないことを保障します。

 考えてみて下さい。行き付けの店で、店主のもっともらしい説明にまやかされて購入したシステムではなかったでしょうか?そんな店に相談しても無駄!と思うのは行き過ぎでしょうか?また、雑誌の相談欄の回答を見ますと心の底から笑っちゃいそうな答えしか返ってきません。その原因は、ショップは「売ること」が目的で、お客の満足度などは念頭にないからです。更に薦めるものは、市販のありきたりの製品(雑誌で推薦するような)に限られるからです。雑誌の回答も同じで、回答者がなんらかの繋がりのあるメーカー(或いは輸入商社)のものに限られるからです。これではユーザーの利益など微塵もありません。彼らのオーディオ常識とはその程度のものと思って頂いた方が正解だと考えて下さい。買い替えはグレード・アップにならない

 では、本論に入ります。

もし、貴方が現在5万円程度(一本)のスピーカーを使用しているとします。メーカーや、ユニット構成などはこの際全く問題ではありません。勿論、100万円もするタンノイや、その他のメーカー品をご使用であっても条件は全く同じです。

 スピーカーに求められる重要な要素として、倍音の的確な再生を口を酸っぱくして述べたとおり、この部分を補強することが第一なのです。つまり、良質なツイーターを追加して倍音を確保することです。

 先ず目の覚めるようなサウンドに変化する事を請合います。しかし、ここで重要なことを念頭に入れておいて頂きたいのです。私のような老人は(十分に老人です)、先が短いので、そこまで考えない!・・・となればそれはそれで致し方がありませんが、私のような欲張りジジイは、やはり、最高を求めたがります。皆さんがそのどちらを選ぶか・・・です。

 特に若いオーディオ・ファンの場合、これから先、どこまで出世するか、経済的な面、また住宅環境などの変化、これは分かりません。そのために、将来自分の生活環境がどのように変化するかも考慮に入れて、現状に合わせた良い加減なもので間に合わせようとしない心構えが必要です。また、老人といえども若い人たちに負けない情熱をもってトライして頂きたいと思います。先が短いと思うなら尚更「今のうちに」と考えて欲しいものです。更にご自分のオーディオ・システムのなるべき姿(将来像)をこの際に明確にしておくことは重要です。良質なツイーターの追加はそのことを明確に提示します。実はこのことのメリットが計り知れない効果となって現れるのです。正に「目からウロコ」を実感されることになります。

 ものには良いもの、そうでないものが当然存在します。オーディオの場合も存在します。しかし、必ず、これが最高!という製品も存在します。それは、単に音がどうだこうだと云うマヤカシ的言葉で無く、理論的にも製品的にも最高と云える物・・・が存在します。

 そうであれば当然、最高のものを入手すべきです。何故なら・・それは一生ものとして使用出来るからです。勿論不満などは一生出ません。無駄なお金は使わない 

 雑誌や、ショップなどで、「絶対にこれが最高です」と薦められたことがあるでしょうか?有名なオーディオ雑誌の古いナンバーをお持ちの方は現在のものと読み比べて下さい。昔、最高!と褒め称えられた製品が今でも載っているでしょうか?推薦したことは、とうの昔に忘れて今の製品が、さも最高と言わんばかりに掲載されておりませんか?結局それらの最高とは作り出された幻なのです。世の中に、あれも一番、これも一番などとある筈はないのです。一番はオリンピックでも一人です。一番は一つなのです。なのに、雑誌にはあれもこれも実に良く褒めていますなア。惑わされないことが第一です。

 少し脱線しましたが、このツイーターの追加の方法です。

 ツイーターの最高品はペア価格で1575000円(税込みメーカー価格)もしますので、これは後々のこととして、一般に良く使われるものはペア672000円(税込みメーカー価格)です。

高い!と思われるでしょうか?一本30万円のツイーターと云えば一般的には高い!と感じられるのは正しい神経の持ち主と云えます。ただし、ものは考えようです。一本5万円のスピーカーがこれで35万円のスピーカー(一本100万円のものなら130万円)にグレードをあげた事になります。しかし、重要なことは、市販の例え1千万円以上もするスピーカーですら、このクラスのツイーターは絶対に装備されていないのです。その事だけを見てもこのツイーターの追加の意味がどれだけ大きいかがお分かり頂けると思います。このことを十分に認識して頂く事としてその使い方を説明します。その前に、私のグレード・アップ法には、今のシステム(スピーカー)には一切、手を加えません。手を加えると(加工すると)将来価値が下がりますので・・・。

 このツイーターを、今のスピーカーの上に乗せるだけです。信号は、今のスピーカーの端子からとります。この端子には、アンプからフルレンジの信号が入っていますので、この信号をそのままツイーターに入れますとツイーターは破損します。そこでハイ・パスフィルター(高い信号のみを通すフィルター、つまり、ロー・カットのフィルター)を通します。このフィルターは、将来ネットワーク(2ウェイ)としても使えるように出来ていますし、音量調整用のアッテネーターも付属していますので、これでバランスをとります。この場合のカット周波数は8kHzにとります(このフィルターは、私の方に準備されています・・別売)。今までのスピーカーは従来どおりの音を出していますが、高域は8kHzあたりから荒れてきたり、衰微したりして万全な音を出していませんので、この部分をカバーして良質な高域を得ることで音質を向上させることが出来るのです。市販の小型や大型のシステムでも同じ結果が得られます


 非常に良質で、繊細感のある、しかも「切れ」の良さも加わり、数段上のシステムに感じるようになります。

低音も充実した感じになり、全体音が変化します。スピーカーの理想  その1で解説しています。


「これが本来の倍音再生なのか」とハッキリ認識されることになります。これで、一年くらいは「良くなったなア」と満足しますが、段々馴れてきますと(人間は馴れる生き物なのです)「中音部分もこんなに繊細な   ヌケの良い音が欲しいなア」と思うようになります。ご自分の音に対する感覚が発展してきたのです。気付かない内に耳が肥えてきた訳です。もう、ありきたりの既製品システムの音がハッキリと「違う!」と認識できるようになったのです。この段階で次のステップに進みます。

 この辺から本格的になりますので、十分理解を深めて欲しいと思います。説明も多様になります

 まず、現在のシステム(5万円だろうが100万円だろうが)をウーファーとして使用します。そして中音の最高品を導入します。つまり、高度の3ウェイとすることになります。

 その鳴らしかたですが、ここで、2チャンネルのマルチ(バイ・アンプ)に進展することになります。

 必要なものは、中音用ドライバー(ツイーターと同程度で価格も同じ)とそれに必要なホーン、パワー・アンプ一台、周波数を分割するチャンネルデバイダー・アンプ一台となります。

 説明します

現在、プリ・アンプとパワー・アンプ(セパレート・アンプ)を使用しておられる方は問題はありませんが、プリ・メイン・アンプをご使用の方は、プリとメインが分離できるアンプでないと困ります。私は、プリ・メイン・アンプを販売する時は、将来に備えて必ずプリ・メイン分離可能なアンプに限ります。高価なアンプでも分離不可のアンプもありますし、マランツやラックスは安価(馬鹿高いものと比較して)なアンプでも分離型としています。メーカーの良心を計る目安はこんな所にも現れます。安易に評論などの人気に惑わされるとこんな時に無駄が生じることになります。分離不可のアンプは残念ながら使えませんので、すぐに下取りに出し、分離型に買い替える以外方法はありません(12万6千円で十分に使える分離型があります・・マランツ)    もうひとつ、考慮に入れておきたい事があります。ホーンの選択です。800Hzから使えるものと1Khzから使うものとあります。3ウェイでストップと思われる方の場合は、800Hzからのものを使うのが有利ですが、4ウェイ或いは場合によっては5ウェイに進む可能性のある場合は、1kHzからのホーンが有利です。これは有利というだけで将来的に使えない!という事ではありません。価格が少々違う程度と、ホーンの大きさが少し異なります。(800Hzからの方が大きい)

 ここまでで敏感な方は感じられたと思いますが、スピーカー・ユニットの最高は、すべてホーン型なのです。                                  

スピーカー・ユニットの理想 

 プリ・アンプから出た信号を、一旦チャンネル・デバイダーに入れます。ここで、必要な周波数(ここでは800Hz又は1kHz)に分割します。ラックスのデバイダー(FL−202・L)は、設定周波数をツマミで切り替えられますのでこれを使用します(¥166950―税込みメーカー価格)。新規のパワーアンプは、高価なハイパワー・アンプは必要としません。ホーン型は能率が高い(110db)ので、大きなパワーを必要としないからです。マランツの一番安いSM−17SAU(¥105000−税込みメーカー価格)にします。しかしこのアンプは優れもので、出力は片ch100Wもあり、ダンピングも100を保持していてホーンを鳴らすのに最適です。 アンプはそれほど重要ではない 無駄なお金は使わない 

 デバイダーで分割された信号の低音用を今まで使っていたアンプのパワー入力部へ接続し、もうひとつの信号(高域用)を新規のアンプへ入力します。他に使用していないメイン・アンプがあれば、そのアンプを使っても全く問題はありません。(そのアンプは・・などと云って別な高価なアンプを勧める様ではイケマセン)

 低域用のアンプのスピーカー出力を、今までのスピーカーに接続します(800Hz以下の信号になります)。

 このとき、出来ればスピーカー内部のネットワークを外し、ウーファーに直結した方が有利になります。

これは、半田をはずすか、結線を外すだけですので、システムには傷も一切つきません。

 高域用のアンプのスピーカー出力は、ツイーター用に使用したフィルターに接続しますが、ここでフィルターをネットワーク仕様にやり変えます(簡単に出来るようになっています)。ネットワークの出力の内、高域部をツイーターに繋ぎ、中域の分を新規のホーンにつなぎます。今までは、ツイーターの再生音は、下部の音と重なっていましたが、ネットワークとしたことで、完全に分離して再生されますので、澄み切った中・高音部の音になります。また、中音ホーンの影響で、スケールが増し、分解能も申し分なく、これで十分だ!と思えるような音に進化します。(結線図)(写真)注意:(ツイーターを追加する際に、フィルターをネットワークとして、今まで使用していたシステムの上限をカットしてはいけません。あくまで、従来のシステムの高域を出したままツイーターを追加することがコツなのです)。

 これで2チャンネル・マルチ・3ウェイシステムが一応出来上がりました。

ここまでで、約一年か一年半かけて3ウェイに発展しましたが、すでにこの段階で、今までに何処のショップや、オーディオ・フェア、試聴会等では聞いたことの無い、サウンドになったことを実感される筈です。全く新次元の出現に、ご本人が一番圧倒されて、満足感に浸れることと思います。ウーファーが、5万円のシステムであれ、全く驚くような威力で迫ります。上部のホーンの充実で、信じられない低音を出してくれるのです。

 ここまでで約150万円(片ch当り75万円・・アンプまで含み)と少しの予算を投入したことになります(実質)。5万円のシステムはアンプ代を除くと約70万円のシステムに、100万円は165万円強のシステムに発展しました。ここでもう一度、自信をもって申し上げますが、一本300万円や500万円が当たり前の現在のオーディオ界で、この音に匹敵するシステムは、絶対にただの一本もありません。それは、ユニットの優秀性から、他の追随を決して許さない音を保障しているからです。

 しかし、随分難しそうで複雑だ!と感じられましたか?少し難しいことは本当です。更に、3ウェイのバランス調整(チューニング)、それもマルチの・・には全く未経験のことと思います。しかし、全く心配は要りません。ツイーターの追加の際も、3ウェイへの移行の際も、私が必ずお宅へお伺いしてキチンと調整致します。日本全国(外国は別)どこへでもお伺いし、更に旅費・日当は原則頂きません。

                                     マルチ・チャンネル
 3ウェイの完成は、ウーファーの入れ替えで完了します。このときにやっと今までのシステムを手放すことになります。なるべく高く処分して、ウーファーの代金に当てて下さい。ウーファーは、私の設計した完全密閉型に重量30kgの超弩級40センチウーファーをマウントします。これで、低音の基音も見事に再生しますので、十分なスケールのサウンドとなります。アンプ類はそのまま使用します。将来的には、チャンネル・デバイダーとパワー・アンプをもう一台ずつ揃えると上部のネットワークが外されて、「3ウェイの完全マルチ・チャンネル・システム」の完成となります。

ここで、ウーファー・エンクロージャの寸法を含むデザインの問題があります。

3ウェイで完了する方の場合は、中音のホーンもこのエンクロージャ内にセットします。

4ウェイに発展される意向のある方は、4ウェイの場合のミッドバス(200Hz〜1kHzを再生)のホーンに合わせたエンクロージャを製作することになります。

5ウェイまで進みたい意向をお持ちの方は、4ウェイに進む際のホーンの選択の問題が一つありす。

また、エンクロージャも5ウェイ完成時のデザインに合わせる必要があります。

5ウェイの場合は、リスニング・ルームの条件も考慮に入れて全体のデザインを勘案しなければなりません。

そのための設計や製作は、今までの実績もありますので、ユーザーの方は、私に任せておけば全てうまくいきます。

随分、面倒のようですが、これが、将来無駄金を使わないために必要なことなのです。しかし、ここに至る間、時間もタップリありますので、シツコイほどの打ち合わせを私と行うことになります。

 ウーファーは、エンクロージャとユニットを含み、約100万円(ペア)で出来上がります(総重量は一本約100kg)。

 もし、「予算はタップリあるので一挙に5ウェイを作ろう!」と考える方が居られるかもわかりませんが、それは賛成しかねます。理由は、5ウェイの音を理解しないまま、いきなり5ウェイに行きますと、ご自分の感覚が5ウェイについていけなくて(失礼)、持て余してしまう結果になるからです。オーディオとはそのような一面も持ちます。つまり、従来の既製品の高価なシステム等には耳慣れていても、ホーン型の5ウェイという本格的なサウンドとは余りにも次元が違いすぎて理解できないのです。それほど音が違います。

 結局、回り道のようでも、ツイーターを追加して、倍音と高周波の重要性を認識し、更に中音を加えて、本格的な分解能をもったサウンドを理解し、更に本格ウーファーの設置で、基音のシッカリした低音とそれに伴う倍音の再生で、今までと違う全く異次元で分解能の高い音を理解して初めて5ウェイに進むべきです。その間、自分でも気付かない内に音に対する感覚も磨かれ、感性も磨かれて初めて5ウェイの本当の素晴らしさを理解できるのです。それほどの違いを現出させるのが5ウェイだとご理解下さい。

 ここで初めて本格的な音楽鑑賞が出来るのです。オーディオが悪いと「音楽を間違って聴いてしまう!」とは私の持論ですが、今度は間違わない音楽をタップリ楽しめます。

 以上の4ウェイおよび5ウェイは、ホーンそのものも大型になり、予算的にも大きくなりますが、現在のオーディオ界で持て囃されている、高価なハイ・パワー・アンプや、高価なスピーカー(大した音も再生しない)ものと比較しますと、予算的にもそれほど変わらないどころかむしろ少なくて済むのです。

 また、デザイン・納入・設置・調整は責任をもって私の方で行います。実は、このようなシステムが、それも世界最高のものが、我が国で製造され、またこのようなサウンドを実現していることをショップや、その他の人々も知らないのです。誰の責任かは申しません。現実にこの音に巡り合った人々だけの特権的喜びとしておきましょう。

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