スピーカーの理想 その1

  ―――基音と倍音及び高周波―――

 通常のスピーカー・ユニットは、なかなかカタログ・データのような音は出て来ません

 例えば、外国製のウーファーで、カタログ上はfo27Hzとなっています。ユーザーとしては、信じたい気持ちは分かりますが、「出ていません!」としか云えないのです。大体、ウーファーは、エンクロージャにもよりますが、80Hzまで出ておれば「良」とすべきです。勿論、私はそれで良いとは絶対に申しません。30Hzがキチンと鳴るウーファーもあるからです。

 くだんの27Hzを信じている人に、「では、ベートーヴェンの第九交響曲の第4楽章、テノールのソロがマーチ風に歌い、やがて合唱が加わり、オーケストラも大きくなり、合唱も大きくなる。その部分は、大太鼓が最初は弱く、あとからは段々と大きくなって行くのですが、その大太鼓が聞こえますか?但し、ショルティでは聴こえますので、カール・ベームのウイーン・フィルのもので聴いて下さい」。ご本人はショックだったようで「聴こえませんでした」・・と。結局、ウーファーを取り替えました。今度はキチンと聴こえます。何がどう違うのでしょうか?(このことは、あながちメーカーがウソを云っている訳でもないのです。カタログの、周波数特性は正弦波・・倍音を全く持たない信号音・・で測定されているのです。正弦波には追従しても、音楽の非正弦波には追従していないということです。・・・実際は聞こえません)。ですから、ユーザーとしては、カタログ・データとは「ソーユーモンダ!」ということを良く理解しておく必要があります。技術系の雑誌愛読者のなかに、こんな数字一辺倒の人が多いように思いますが・・・。
 
例えば16cm(通称・ロクハン)のフルレンジ・スピーカーでも、ジャズのベースや、クラシックのティンパニの音は聞き取れます

 ロクハンでは、ベースやティンパニの基音は出ていないことは明らかです。なのに、何故聴こえるか?

 これが倍音のなせる技なのです。基音は再生出来なくても、基音についている倍音をきくことによってベースやティンパニが聞こえるのです。では、先の大太鼓はどうか?と云いますと、オーディオのあるべき姿の項の「倍音」のところをご覧下さい。板や、膜による上音は、倍音を形成しない!と書かれています。大太鼓には殆ど倍音成分が含まれていないからだと思います。(例外もあるようです。大太鼓の大きさで周波数が変るので)

 この点から云って、基音をキチンと再生できる本物のウーファーが必要となることをご理解ください。

 低音と思っていたのは、実は「モドキ」であって低音そのものでは無かった訳です。倍音のみの低音と、基音成分をキチンと出す低音とは、全く本質的な部分で異なります。建物と一緒で土台は非常に大事なのです。そこで、よく見かける状況でウーファーをダブルにして使っているシステムを見かけます。ウーファーをダブルにしても最低周波数が下がることはありません。ただ、量感が増しますので低音が強く感じられますが、基音が再生されていないことは同じです。基音をキチンと再生出来るウーファーが一個(左右二個)あれば低音は十分です。(3Dは論外です。セパレーションが崩れます。低音の300Hz以下に対し、人間の聴覚は方向性が感じられない・・と雑誌等に書いてありますが「大うそ」です。信じないことです。私の経験では、100Hz以下でもセパレーションの変化を確認しています)

 楽器の基音で、一番高い音は、ピッコロ(オルガンを除き)です。大体基音で4200Hz(一番高い音程)です。これは、ステレオでは、中音の領域です。ここで、もう一度「倍音」を見て下さい。倍音は豊な音色を形成し、基音の高さを明確に感じさせる機能を持ち、2個以上の音の協和にも関係します。・・・つまり、音色(音の質)、協和(ハーモニー)、音の高さの確定・・・等々。音楽の鑑賞に欠かせない重要な、オーディオに求められる肝心なことが此処に凝縮されていると云って良いでしょう。要するに、倍音を如何に正しく再生するか・・・。

 これが先ず、第一点です。

 ツィーターを良くしたら、低音が良くなった(低音の倍音がキチンと再生されたので)。逆にウーファーを良くしたら高域が良く鳴った、と聞いたことはありませんか?これも(高域の下方倍音がハッキリと再生されるようになったので)。このように倍音の説明で納得されたことと思います。

-―高周波―-

倍音を十分にシッカリ再生することが、音楽を聞くためのオーディオには欠かせない重要なこととご理解いただいたところで、倍音を如何に再生するか・・・という問題です。

 「人間の耳は、大体若くて敏感な人でも15000Hz位しか聞こえない。だから、それ以上の周波数の再生は必要ない!」と思っていませんか?

 私が、市販の既製品システムの中に、万能なシステムは一つも無い!という理由のひとつは、先ず、この高周波をないがしろにしていることです。{高周波とは、音響学用語で周波数の大きな波動としています。可聴周波に対し高い周波をいう・・・となっています。AM放送の搬送波に使用}。

(音楽の友社「新音楽辞典」)

 通常のオーディオ的な感覚では20kHz以上を高周波と理解しているようです。CDには20kHz以上は1Hzも入っていませんが、アナログにはチャンと入っているのです(キチンと再生できる装置であれば・・)。

 文部省の大橋 力教授の実験では、アナログを聞かすと、脳内のα波が増えて、リラックスした気分になり、次にCDを聞かすと、α波が減少していくということを発表しています。 CDは音楽を再生しない

 また、都会騒音(渋谷や新宿辺の車や雑踏の音)と山の中の音とでは、山の中の方が、音圧的には高い!そうです。(山の中には、小鳥のさえずり、川の流れる音、木の葉の擦れ合う音、風の音などがあります)しかし、山の中の方が、ウンと静かに感じられるのは何故でしょうか?

 都会騒音は、概ね6000Hz位までで、それ以上の周波数が入っていないらしい(大橋教授)。

 一方、山の中の音には、周波数が万遍なく分布しているので静かに感じる・・・という事のようです。

 これは、私のオーディオ人生の中でも実際に確認しています。

つまり、高周波をキチンとしたユニット(当然ツィーター)で再生することが、オーディオ・システムの第一歩ということになります。高周波が万全でないとウルサイ音になります。逆に万全なものは、雰囲気がフッと静かになります。音楽に没頭できます。まず、高周波つまり、倍音の再生が大事だとご理解頂きましたでしょうか?結局、ウーファーからツィーターに至る全てのユニットをキチンとしたものにすれば、雑誌や、オーディオ・ショップなどに振り回されず、オーディオの王道を行く事ができる道理・・・となります。

 実際問題として、20kHzの音を、キチンと再生させるには、1秒間に2万回の振動をしないと再生されません。これが、ドーム型や、貧弱なマグネットで作ったツィーターで、再生が可能かどうか、考えてみれば誰でも分かることです。                     スピーカーユニットの理想 

 結局、本当の音を再生しないので雰囲気的な表現で誤魔化しているのです。その割には、どうしてあのような高価な価格がつくのでしょう。ユーザーをバカにしているのかしら・・。
可聴域以外の音を再生しても人間には聞こえないのだから無駄ではないか?と思っておられたら、それは大きな間違いです。人間の能力は想像以上で、たとえ耳で聞こえない高周波も、脳内では感知する回路が出来上がっていて、感じていることが医学的にも証明されています。でなければ、高周波による脳内のα波の変化は起こらない筈です。

2005・2・28