スピーカー・ユニットの理想

 私たちがオーディオで音楽を鑑賞する場合、スピーカーから発せられる音を聞くことになります。 カートリッジの理想で言及しましたように、カートリッジで拾い上げた音以上の音は、後のアンプやスピーカーに何千万円注ぎ込んでも再生されることはありませんが、一方スピーカー・ユニットの性能を超える音もまた再生されることはありません。折角理想のカートリッジで万全な音の拾い上げを行っても肝心のスピーカー・ユニットの性能が劣りますと万全な音の再生は出来ません。

 スピーカーの理想その1その2で述べました理想のスピーカー・システムを実現する為には、結局、理想的なスピーカー・ユニットで構成されることが必須となります。

 理想のスピーカー・ユニットとはどのようなものなのか解明して行きたいと思いますが、多分、従来の雑誌やオーディオ・ショップでは、殆ど話題にもならない製品の説明になると思いますが、何も、特殊なものを説明する訳ではありません。現在のオーディオ業界が、程度が低くて本物に対する理解が少ないだけの話です。そのような程度では、100年とは生きられない人生の中で、死ぬまで本物のサウンド(音楽)には巡り会わないままあの世行きとなることを請合います

 オーディオ機器の中でカートリッジとスピーカーは変換機と云われます。つまり、カートリッジはレコードの振幅を電流に変換します。スピーカーは、アンプで増幅された出力を空気を揺すって音として音楽が聞けるように振幅に変換します。丁度発電機とモーターの関係で、お互いに逆の構造になります。

カートリッジの理想でも述べましたように変換機は全て磁気回路が強力なほど有利で、振動系は軽いほど有利なのです。その理由は「動いたら直ぐ止まる」ことを要求されるからです。その意味で現在市販のメーカー製ユニットは、採算面を重視した妥協の産物でしかありません。本当の理想的なスピーカー・ユニットは我が国で作られておりますが、全世界を見渡してもこれに匹敵するユニットは他に存在しません。

スピーカー・ユニットの理想は、このメーカーの製品の、他の追従を許さぬ優れた内容を説明して行くことになります。

 スピーカーの理想その1その2で述べましたように、スピーカー・ユニットの理想形は、ホーン・ドライバー以外には無い訳ですが、何故ホーン型が有利なのかの説明から申し上げます。

 一般の市販のシステムを見ますと、殆どがコーン型やドーム型が主流になっています。最近でこそホーン型も多くなっていますが、これも理想とは程遠い製品になっています。これを理想的に作りますと価格的にも大変なものになりますし、量産が出来ません。従って妥協の産物が出来上がります。

 ホーン・ドライバーの有利性は、その構造にもあります。スピーカーの構造は、マグネットから発せられた磁力線を振動板(コーン型の場合はコーン紙)に着けられたコイル(ボイスコイル)が横切る事で振幅します。この振幅が万全に行われるほど音は正確に出てきます。万全に動かすには、磁力線の数が多いほど良く、振動板が軽いほど有利となります。コーン紙の場合は、コーンの中心部にボイスコイルが装着されていて、その振幅でコーンの全体を動かしますので、内周と外周が必ずしも全く同じ動きをするとは限りません。ましてやコーンを支えるエッジ(フレームとコーンの間にあってコーンを支えている)が硬かったりしますと万全な動きは不可能になります。更に振動板の重量の問題でもコーン紙は不利となります。これに対し、ホーン・ドライバーの場合は、振動系の外周にボイスコイルが装着されていてボイスコイルと全く同じ動きをします。ロスが全く生じません。重量的にも遥かに有利となりますし、空気を揺する為の剛性の問題もホーンが圧倒的に有利です。このようにホーン・ドライバーがスピーカー・ユニットの理想的なものであることは、大抵の人が認める所ですが(ですから最近ホーンタイプのユニットを装着したシステムが多い)残念ながら理想的な製品はありません。JBLやアルテックも昔からホーン型を作っていますが、却ってホーンはキツイ音だとのイメージを与えました。これは、磁気回路が弱く振動板が重くエッジが硬いからです。従って振動板が万全の動きをしていなかったからです。タンノイもホーンを採用しています。また、日本でもホーン・ドライバーを作っている大手メーカーもありますが、振動板が硬くエッジが硬いので大音量で鳴らさないと上手く動きません。それと、ボイスコイルが入り込むギャップの部分が作りやすくする為に広くとられています。ギャップが広いと再生に対してのロスは大きくなります。ギャップはギリギリまで狭い方が有利なのです。このような問題を勘案しますと、理想的なドライバー作りは量産型専門のメーカーでは無理なのです。この状況は国産大手に限らず、海外のメーカーに対しても同様なことが云えます。

 世界に於けるホーンの発祥はアメリカのウェスタンだと思います。その為、現在でも我が国の一部には熱狂的なウェスタン・ファンもいます。しかし、すでに70年にもなろうとし、しかも映画館のサウンド用として開発されたものですから、家庭用の音楽鑑賞用として実用に供するのは如何かな?と思います。オーディオは骨董品集めでは無い訳ですから・・。しかし、ウェスタン・エレクトリックの555タイプが後のホーンに刺激を与えたことは認めます。日本では、日本電気(NEC)がこのフィールド型555タイプを製作していました。その頃日本電気に籍をおいていた吉村貞男と云う人物がホーンの有利性に着目して日本の家屋で使用可能なコンシューマー用(家庭用)のホーンの開発に専念し始めました。ウェスタンは劇場用のものであり、観賞用としての繊細な音は全く出ないもので、更に当時の日本の家屋状況は今と比較にならないマッチ箱が多かったのでウェスタンのような大きなホーンはスペース的にも無理だったのです。そこで、吉村氏は、(株)YL音響研究所を興しホーンの研究とドライバーの開発に乗り出します。日本に於けるホーンの草分けはこのYL音響研究所の吉村貞男氏といって間違いありません。吉村氏の苦闘はそのまま日本のホーンの歴史と重なります。その頃、YLの工場長として、全ての製作を任されていた人物がこれから紹介することになるエール音響研究所の遠藤正夫氏です。

 色々なエピソード満載の開発話は折に触れて出て来ると思いますが、簡単にその歴史を探ります。

世界中のホーンの歴史の中で、低音用ホーンドライバーと低音ホーンを開発したのはYLが最初で、現在はエールに引き継がれています(他に類例はありません)。また125Hzから使える中低音用ドライバーもYLのみの製品で、これも現在のエールに引き継がれております(エールの中低音は80Hzから使える)。しかし、低音用または中低音用のホーンとなりますと、ホーンの長さだけで部屋から飛び出すほどになります。低音用で7m〜9mが必要で、中低音用で2m以上になります。因みに5ウェイを可能にするホーンやドライバーをラインナップしたのも世界中でYLが最初です(ウェスタン・エレクトリックは3ウェイ止まり)。そこで吉村氏が考えたのはホーンを真っ直ぐ後ろへ伸ばすのではなく曲げたらどうか?という発案です。そうすれば、ホーンの後方は1mもあれば足りると。

これが大正解になり、音の奥行き感がハッキリ増す事が確認されました。以後、中低音と低音は折り曲げホーンとなりました。この頃、YLに在籍していた後藤精弥という人はYLを退職してゴトー・ホーンを世に出すことになります。後藤氏の主張は、ホーンは曲げてはイケナイ。ストレート・ホーンこそ最高だ!というものでした。私は一切ゴトーを認めませんでした。ゴトーは4ウェイどまりでした。つまり中低音が存在しませんでした。更に、低い周波数をストレート・ホーン(200Hzから使える・・ホーンの長さは1m50cm)にした為、楽器の奥行き感が得られず、申し合わせたように横一列の楽器編成となって聞こえます。しかし、音質は神経質的なほど綺麗な音を出していた・・と後藤氏の名誉のためにフォローしておきます。(但し音楽性は綺麗なだけでは表現出来ません)

 私が何故後藤氏のストレート・ホーンを認めないか少し余談になりますが加えておきます。

 楽器を見て頂きたいのです。ホーンを曲げてダメならトランペットやチューバ、フレンチ・ホルン、トロンボーンなど金管楽器は全てダメなの?木管楽器のサキソフォンを見て下さい。ソプラノはストレートで、アルトがほんの少し曲げてあります。テナーになるとグッと曲がります。更にバリトンはもっと曲がります。周波数が低くなるほど曲げの大きさは大きくなります。偶然から出た折り曲げホーンは実は理屈にピッタシ合致していたのです。

 ホーンの形状、振動板(ダイヤフラム)の材質など色々な試行錯誤を繰り返し、段々と充実したユニットになって行きますが、吉村氏が他界してからYLは身売りされ、買った会社が余りホーンに熱心でなく現在は全くと言って良いほど作られておりません。吉村氏の没後、工場長の遠藤正夫氏は、直ちにエール音響研究所を興し、元YLの工場跡地をそのまま工場として、自分の理想を追求して行く事になります。そして世界唯一の究極のドライバーの開発に成功します。全く、ホーン・ファンの私の度肝を抜くような素晴らしい商品群がラインナップしています。

 先ず、内磁型(マグネットがヨークに囲まれた内部にある)を外磁型としました。これは、自由にマグネットの大きさを設定出来ます。さらに、従来最高器とされたドライバーを最低ランクに置きその上に2機種の大型ドライバーをラインナップしました。振動板は最軽量金属のチタンに固定しました。さらに、ギャップの部分には磁力線の増加を図る為に超高級合金のパーメンジュールを全製品に用いました。そのギャップ部は究極までに狭められて効率の良い使い方をしています。これなどは、長年蓄積した技術があって初めて可能になることです。

YL時代の製品とエールのそれとツイーターを例にとって比較してみます

 ドライバーの直径は、YLは125mm(これがYLの最高級器)ですが、エールの中心機種で160mmです。従って、重量は、YLが5.7kgなのに対して実に22kgと4倍にもなります。

 ドライバーを重量で比較する場合、間違えていけないのは、カバーが結構大きく見えたり、重量があったりして実質の重量と異なることです。しかし、エールのドライバーにはカバーはありません。実質の重量となります。マグネットは、厚さ30mm、高さ70mmの円筒形の巨大なアルニコ(現在アルニコ・マグネットは世界的に品薄で高価な為、殆どはフェライトその他を使用しています)で、この内部と上下に純度の高い純鉄のヨーク(磁力線の通り道)をセットしてあります。

 振動板は、直径18mmで、厚さは10μ(100分の1mm)、吹けば飛ぶような軽さです。しかし、振動板は軽ければ良いというだけのものではありません。軽い事は絶対に必要ですが、ヘラヘラであっては空気を揺するだけの力になりません。リボンタイプのツイーターが弱々しいのはリボン自体がヘラヘラだからです。そこで、エールでは、振動部にダイヤモンドをコーティングして剛性を確保しています。超軽量金属のチタンを10μまで薄くして、その直径は18mm。しかもマグネットは30mm厚の高さ70mmの巨大型。振動板にはダイヤモンドをコーティングして万全を図る。これなら20kHzが1秒間に2万回振幅する事は容易だと思われませんか?(実はその上があるのですが・・・)

勿論エッジにも細心の注意を払い動きを阻害する要因はありません。これでこそ「動いたら即止まる」最高のトランジェントが得られるのです。エールの製品には全てこのようなノウハウが詰め込まれています。絶対に他の追随を許さぬサウンドを保障しています。スピーカー・ユニットの理想はホーンの専門メーカーであるエール製品をおいて他には存在しません似たような近い製品すら存在しません。世界最高のユニットが日本で作られていることもラッキーなことです。

 但し、ホーンの使いこなしは、現在専門家は殆ど見当たりません。これのセッティング、組み合わせのノウハウは全て私の方で熟知しておりますし、実際にキャリアや実績が多数ありますのでお任せ下さい。次元の異なる最高の本物のサウンドが響き渡りますし、一生ものとして一切の不満も出ません。得られるものは満足感のみと云って良いでしょう。一生もののユニットですのでランニング・コストを考えますと、本当は一番安い買い物と云えますし、そこから得られる満足感は何物にも代えがたく、更に音楽にタップリと浸れる幸福感は、これをこそオーディオの醍醐味と云わずして何が醍醐味でしょうか?

「エール音響研究所の監修済み」

※エール製品の一覧表を掲載


ホーン型ツイター1750DE



ホーン型・中高音用ドライバーユニット4550DE



ホーン型・中音用ドライバーユニット7550DE



ホーン型・中低音用ドライバーユニット1260D  [126]



コーン型ウーファーWA−4000


2008年5月1日価格改定

エール音響製品価格表 (税込み)
品名 規格 数量 定価
中高音ホーン EX−1000 ペア \44,600
中高音ホーン EX−800 ペア \65,600
中高音ホーン EX−500 ペア \94,500
中音ホーン EX―250 ペア \189,000
中音ホーン EX−250L ペア \193,200
中音ホーン EX−150M ペア \441,000
中低音ホーン EX−70 ペア \1,176,000
低音ホーン Bass−Horn ペア \3,990,000
高音ドライバー 1710 ペア \441,000
高音ドライバー 1750DE ペア \861,000
高音ドライバー  1750DEP ペア \1,974,000
高音ドライバー 17002 ペア \5,880,000
中高音ドライバー 4550D ペア \441,000
中高音ドライバー 4550DE ペア \861,000
中高音ドライバー 4550DEP ペア \1,974,000
中高音ドライバー 45002 ペア \5,880,000
中音ドライバー 7550DE ペア \882,000
中音ドライバー 7550DEP ペア \1,974,000
中音ドライバー 75502 ペア \5,880,000
中低音ドライバー 126 ペア \2,058,000
中低音ドライバー 1260D ペア \3,549,000
低音ドライバー 160 ペア \2,058,000
低音ドライバー 160D ペア \3,549,000
コーン型ウーファー WA−4000 ペア


参考までにエンクロージャー価格についてはこちらへ