プレーヤー周辺機器
――アナログ・ディスクの再生――

 アナログ・ディスク(LP)を再生する機器について述べます。

 アナログ再生に必要なプレーヤーは、回転機器のフォノモーター(ターンテーブル)とトーン・アーム、カートリッジからなりますが、更にMCカートリッジを規定の音圧にまで昇圧するトランス又は ヘッド・アンプまでをこの項で取り上げます。

フォノ・モーター・・・残念なことに現在市販されているフォノ・モーターに推薦できるものが一機種も見当たりません。アナログ派としては、非常に残念なことですが、ありません。そこで、私共の方で、使用に耐えるフォノ・モーターをなんとか作ろうと計画したこともありますし、その意向を受けて試作中のものもありますが、実現に至りません。現在のCD全盛時代に、販売台数の予測がつかない事も一因です。従来はマイクロ精機の1500FVG(Fはフロート、Vはヴァキューム)が最も手頃な価格 で(42万円:税別)理想的でした。

 この製品を説明しながら、フォノ・モーターに求められるものを検証致します。

まず、ターンテーブルです。マイクロの1500番のターンテーブル自体は砲金製(大砲の砲身を作る鋳物合金)で、その重量は9kgあります。これは、自然な回転と十分なフライホイール効果を期待できます。

 この9kgのターンテーブルにレコードは真空圧により密着します。そのため、レコードの重量は、レコードの重量プラス9kgとなりますので、特に低音の確保には有効です。従って180gの重量レコードなどは目じゃなくなりますし、トレースにも有利となります。アームの上下運動が全くありませんので安定します。従って針圧の変動を起こしません(かって、あるメーカーから吸着板だけのものを発売したことがあります。これは、吸着板がターンテーブルに密着しませんので、反ったレコードを平らにする以外効果の無いもので、しかも吸着させるのには手動でエア抜きをしなければならず、これの取り付け口がはみ出している為ホイルバランスも崩れます。さらにエア抜きをシコシコと行う動作はどうみても音楽的動作ではありませんでした。こんなものでも売れたのですよ)。 更にこの9kgのターンテーブルは空気圧により、回転中は0.3mm浮き上がって回転します。このことは、ターンテーブルのセンター・シャフトにターンテーブルの重量が一切掛かりませんのでストレスも無く回転が可能で、シャフトの下部の磨耗もありません(通常は、シャフトの下部を尖った円錐形にして、シャフトと本体の接触部には、球形の玉をおいて接触面積を少なくしてストレスから逃れる方法をとります。しかし、やはり永年の間には磨耗します)。非常に優れたアイディアで、これに匹敵する類似品もありません。また、フライホイール効果が大きなことは、静かで安定した回転を保証しますので、音楽的にも優れた再生が期待できます。回転本体のモーターは、サ−ボ・モーターを採用していますので、ユックリとした回転で、振動などは無く、モーター部は、ターンテーブル部とは別函体になっていて、モーターの回転がターンテーブルに影響を及ぼすこともありません。これを、ベルトで駆動しますが、本当は普通の木綿糸をゆるく掛けて回転させた方が有利です。付属のベルトや、糸をキツク回したのでは、.折角のフライホイール効果を阻害することになります(音質への影響は確認済みです)。

 スピーカーやその他の振動から逃れるのには、比較的硬めのサスペンションが装着されていて(本体も十分な重量を持っています)完全に影響を防止しています。

 プレーヤーの置き方についてひとこと付け加えておきますが、そのまま振動を受けにくい場所にセットしても構いませんが、さらに音を良くしたい場合は、本体を、高さ5cm位の四角錐(円錘でも可)の上に置くのも効果があります。この場合は、必ず3箇所に四角錘を置きます(前の両端に2箇所、後の真ん中に1箇所)。マイクロの場合は、モーター部の下にも同様3箇所に置きます。この四角錘はオーディオ用の高いもの(スピーカー用に売られている)は必要は無く、東急ハンズや、ホームストアの木工部等に適当なものがあればそれでも十分です。(硬い材質のものが望ましい)

  : スピーカーからの振動や、その他の振動から逃れる為に(針飛びを避ける為)、また、余分な振動をカートリッジが拾い上げない為にサスペンションを柔らかくして、フワフワにしているものが多く、主流のように見受けますが、これは、全く駄目なのです。サスペンションが弱いと、再生中も常時ブレていると考えられます。事実音が不安定に感じます。硬くてガッシリしていることが理想です。

その意味で、市販のものの中にはお奨めできるものがないのです。

 しかし、無いからといって諦めるのも癪ですから、根気良く中古屋を探して、マイクロが無ければ、デンオンでも、テクニクスでも有ったものを探す以外方法は無さそうです。しかし、出来ればベルト・ドライブのものが望ましいのですが・・。決して、雑誌等で今宣伝している外国製等の高価なものなどに惑わされないことです。ましてや、トーン・アーム付きフォノモーターは絶対に避けるべきです(ロクなトーンアームは搭載してありませんから・・・)。但し、中古のプレーヤーのどんなものであってもトーンアームを取り付ける方法はあります。ステンレスの重量ベースを使用して外付けします。  トーン・アーム・・・トーン・アームはカートリッジを支える重要なパーツと云えます。これ一つでカートリッジの音も左右されます。

  トーン・アームには、アーム自体を支える支点の方法に開放型(SMEのようなナイフエッジによる開放型)と、FRのような密閉型があります。歴史の中で、MM全盛の時代がありまして、この時代はアーム、及びシェルなどの質量をどこまで減らすかに腐心していました。その点でSMEは一時代を作ったと云えます(しかもデザインが美しい)。しかし、MCの時代になりますと考えは変わりました。オルトフォンのように自重が32gもあるシェル一体型は、このような軽量用アームでは駄目なことが少しづつ分かってきました。現在でも軽量用とみなされる製品は多く出回っています。しかし、音は、重量用の方が有利な事は、私自身が実感しています。更にナイフエッジ型のような開放型は、アームの動きに対してブレが大きいのです。(日本製にこれを更に進めてダブル・ナイフエッジの製品もありますが、ブレを2倍にするだけと思っています)・・・アームには一切のブレがあってはなりません。

       アームには、S字型のものとストレート型があります。絶対にS字型です。ストレート型は、コストの問題でそうなっていると私は思っています。S字に曲げるのは、面倒で、歩留まりが悪くコストが掛かりますが、ストレートは直線ですから作り易いのです。ストレートがS字より音が良いと云うのは、単に売り込みのためのガセネタで、決して理論上有利ということはありません。

更に、カートリッジのシェル一体型が取り付けられません(オフセット角がつけられない)。本来は、カートリッジとトーンアームは一体になったものが理想ですが、新型のカートリッジが出たりしますので、それは望めません。しかし、ストレートの場合は、カートリッジをシェルに取り付けないと使えません、シェルと、カートリッジが別というのはその取り付け部分でブレが発生します。音質的に有利な部分は何もありません。        カートリッジの理想

       また、アームには、スタティック・バランス型とダイナミック・バランス型という二通りの加圧方式があります。スタティック・バランス型はおもりを前後に動かし、その重量だけでバランスをとる方式で針圧の加圧には、そのおもりを前後させて針圧を加圧する方式です。一方、ダイナミック・バランス型は、ゼロ・バランスをとった後、スプリングによって針圧を掛ける方式です。しかし、オルトフォンに見られるダイナミック・バランスは、バネ式のスプリングで、引っ張って加圧する方式で、経年変化に対しては少し疑問が残ります。また、カートリッジ重量に対する汎用性にも疑問が残りますし、針圧の固定化、精密さにも不安がありますが、オルトフォンのカートリッジ(シェル一体型)に対しては問題は無いようです。つまり、自社専用と思えます。但し、オルトフォンのカートリッジは指定針圧が3g以上4gでも大丈夫な製品ですから、このようなアームでもOKと云うことだったのでしょう。これに対してかってのフィデリティ・リサーチ社(FR社)から発売になった(1976年)FR−64S(その後ロングタイプのFR−66Sも発売)は、ぜんまい式のスプリングを搭載したもので、35センチのスプリング材をぜんまい式に巻き、これで加圧する方式で、正確さ、安定性において世界初の製品となり、一世を風靡して、現在でも中古市場ではなかなか見かけられない(皆、今でも使っている?)製品が世に出ました。このぜんまい式は、以前からアメリカのエンパイヤが製品化していましたが、針圧の指定が出来なくていちいち針圧計で測るタイプでしたが、FRのものは正確無比で、しかも35cmもの長さに分散させる為に経年変化も大変少なく、今でも使用者が多い製品となっています。

 このFR−64S・66Sはオール・ステンレス製で、内部にはニュームのパイプをもう一本入れて二重パイプとして、アームに発生する共振を最低に抑えましたので、音質は一聴して分かるほどで聴いて貰うだけで労せずして売れたものでした。現在のイケダ製アーム(IT−345・IT―407)はこのノウハウを更に進め、発展したトーン・アームの決定版になっています。接点には全てロジウム・メッキを施し、経年による接点不良を回避するように出来ています。勿論ダイナミック・バランス型です。

 スタティック・バランス型とダイナミック・バランス型とは、レコードのトレースにおいて正確さや針圧の変動などに対して(反りのあるレコードなどは特に)ダイナミック型が圧倒的に有利といえます。現在は、このイケダ・アームを超える製品はありません。

 取り替えただけで音の変化(圧倒的に良くなる)を感じる事ができるのはイケダのアームのみと云って過言ではありません。カートリッジとの汎用性も十分です。

もう一つ、トーン・アームにはロング・タイプとショート・タイプがあります。これは、絶対にロング・アームが有利です。説明は長くなりますので割愛しますが、オーディオ「面白ウソ話」に掲載しておきます。

カートリッジ・・・カートリッジの理想をご参照下さい。

昇圧機器・・・トランスとヘッド・アンプ・・・MCカートリッジは、出力が小さいので、そのままでは使えません。そこで、昇圧用のトランスかヘッド・アンプが必要となります。最近のプリ・アンプには、イコライザー・アンプを搭載していないものが多く、アナログを再生するには、フォノ・イコライザーを別途揃える必要があります。このフォノ・イコライザーには(プリメイン・アンプでフォノ端子の付いたものでも)MC用の端子を装備したものが多いのですが、これはメーカーのお仕着せで、余り頼らない方が良いのです。多くは、ヘッドアンプを内臓しています(たまにトランス内臓もありますが、これも頼れません)。

 トランスは電流を昇圧して必要な音圧を確保しますが、単に昇圧するだけなら誰でも出来るほどのものですが、オーディオ用となるとそうはいきません。多くのノウハウがあります。従って同じくトランスと云っても音質は千差万別なのです。これは、音を良く弁えた技術を持った人でないと作れません。普通は、単に昇圧のみを考慮に入れた製品が多いのです。かってのFRにXF−1という銘器があって音質の高さを誇りましたが、そのXF−1の開発者、池田勇氏がイケダブランドのトランスST−100を1992年に発売、XF−1の後継機として評判になりましたが、2005年の今年、ST−100の後継機としてST−200が作られました。これは、左右の昇圧用コイルを別函体としてツイン・タイプのトランスとして、セパレーションの優位性を確保すると共に、音質的にも、ST−100を完璧に凌駕するものになっています。これも試聴された方は100%の確率で予約されるほどです。(内部のノウハウについては明かされておりません・・・見事なサウンドを実現します・・・ローインピーダンス専用)

 一方、ヘッド・アンプは電圧を昇圧するタイプで、入力側のカートリッジのインピーダンスに関係なく昇圧が可能ですが、実際には、高いインピーダンス(デンオン等)のカートリッジに対して得意で、ローインピーダンスのカートリッジにはお勧めできません。折角、音楽性の高さを求めてローインピーダンスのMCカートリッジを求めた以上、やはり昇圧には圧倒的に有利なトランスの方を求めたいものです。これもイケダのST−200をおいて他に匹敵するものは皆無!といっても云い過ぎではありません。

2005・4・28