オーディオ「面白ウソ話」

 オーディオの世界には、もっともらしいウソ話が結構あって、恰も本当のように信じられている話が多いように思います。これらを幾つか取り上げてそのウソ話を立証してみたいと思います。

 ツイーターの前に花瓶を置け・・・最近では余り見受けられなくなりましたが、信じている人も多いと思います。以前は、有名な評論家大先生方が大真面目で本に書いていました。つまり、ツイーターの音がマトモに耳に入りますと、音をキツク感じるので、和らげるために花瓶をツイーターの前に置いて音を拡散しようとするものです。JBLの拡散ホーンにも同様な考えがあるように思っていますが・・。

 これなどは全くのお笑い種で、ツイーターの音を拡散させると、音像が崩れます。ツイーターは、振動版から、ホーンの出口までが数センチしかありませんし、開口部も小さいのです(開口部の大きいツイーターは4kHz位から使えるようになっています・・メーカー品に多い・・が、これでは高域の万全な再生が出来なくなります)。それだけ指向性は強いわけで、これを拡散させると音の指向性が無くなり音像が崩れる訳です。中には、ガーゼを何枚か重ねて貼り付け、キツサを防ごうとしていた人もいました。結局、ツイーターの磁気回路、振動版の不完全さがあって、キツク聞こえるのです。万全なツイーターならキツク聞こえる事はありません。また、全体のチューニングが悪くて、ツイーターの音が突出して聞こえてキツイと感じることがあります(調整不良)。それらのことがあって、キツク感じないソフト・ドームなどのドーム・ツイーターが多くなったと思いますが、結局は妥協の為の音作りがなされる結果になったようです。今は、ツイーターがキャビネットにマウントされていて、その前に花瓶を置くことも出来なくなりました。

 3Dシステム・・・本などによりますと、人間の耳は300Hz以下には方向性を感じないので、低音スピーカーは一本あれば事足りるとあります。これが3Dシステムです。従って現在のスーパー・ウーファーは当然一本で良いことになります。確かに超低域に関しては方向性を感じにくいことはありますが、全く感じないという事はありません。私がかって使用していたウーファーは125Hzでクロスさせていました。ウーファーは勿論左右一対です。それを、左右のシステムの中間にセットして使用していました(両方の間隔は約1m)。ある時どうしてもセパレーションに疑問を感じて、ウーファーのみをメインのスピーカー(大型ホーン・タイプ)の両側に移しました(メイン・システムはそのまま)。これで、左右の間隔は約4mになりました。俄然セパレーションが明瞭になりました。そのとき、3Dは駄目なんだと認識しました(125Hz以下でハッキリ分かるわけですから・・)。ウーファーを300Hz以下で使うのは4ウェイ以上でないと駄目ですが、通常の市販のメーカー製システムは、低音がそんなに下まで伸びているとは云えません。従って、低音に不満のある方は、市販のスーパー・ウーファーを使っている方が多いと思いますが、この場合は1本で十分です。スーパー・ウーファーは、トランジェントが悪くて、本物のウーファーの代役は務まりません。幾らか低音感を増す役目と、大太鼓などが少し満足感を与える程度ですので、2本を左右においてもそれ程の効果は期待出来ません。スーパー・ウーファーのトランジェントについて、適当なレコードを紹介しておきます。
サンサーンスの交響曲第三番「オルガン」の第一楽章の第二部で、オーケストラの弦に乗ってオルガンが奏されます。このオルガンの音が恰も中音のようにハッキリとメロディを聞き取れるかどうかです。多分グワーン!と響くのみではないでしょうか?ここは、キチンと美しい旋律があるのです。やはり本物でないと本当の音楽を間違って聴いて仕舞うことになります。300Hz以下に方向性を感じない!というのは「大ウソ」です。

 マルチ・ウェイは位相が合わない・・・そんなことはありません。大体、位相を正確に聞き分けられるものかどうかが問題です。勿論、左右のスピーカーの位相違いは、少し経験のある人なら誰でも分かります。しかし、マルチ・ウェイの位相合わせは殆ど問題になりません。位相は人間にとってもっとも感じにくいものなのです。それを、「位相が合ってないよ」と指摘する人のシステムを聞きに行きますと、凡そ音楽をマトモに聴けないような音を出しています。位相どころではありません。「位相」を云々する位ならもっとマシな音を出せないの?と云いたくなります。オーディオにキャリアがあり(どんなキャリアか分かりませんが、こんな人種は大抵が自負しています)どれほどオーディオを理解しているか分かりません。兎に角「へ理屈」をひけらかして、アマチュアをたぶらかすこんな人種とは余りお近づきにならない方が賢明です。「位相云々は机上の空論に過ぎない」と私は考えています。位相で苦心したことは今までに只の一度もありませんので・・。(次の項目とも関連します)

 マルチ・ウェイの振動版は位置を揃える・・これをマトモに実践しようとして、キャビネットのフロント・パネルを下から階段状に作り、振動版の位置を一線に揃えたシステムを作ったメーカーもあります(外国製)。これなら位相の問題も解決!などともっともらしく云いますが、ウーファー、スコーカー、ツイーターは、再生周波数が違い、振動数が違いますので、理屈どおりでしょうかね(笑)。私が推奨するホーン・システムは、振動版の位置を揃えることは不可能です。ホーンの長さが其々違い過ぎます。ウーファー(コーン・タイプ)とツイーターは揃えられますが、中高音で30センチ以上、中音で1m、中低音に至っては2m以上あります。これは揃えられません。トンデモナイセッティングになってしまいます。ましてや、ウーファーのホーンだったら9mもあります。こんな現実離れしたへ理屈を堂々と唱えます。質問したことがありました。「オーケストラの場合はどうなるの?第一ヴァイオリンとティンパニーは10mも離れているけど?」彼氏は大真面目で「だからティンパニーは早く叩くんだよ」と答えましたね。唖然・呆然とはこのことです。光は音の何倍の速さでしたっけ。コンサート・ホールで何回聴いても見てもそのような事実にはタダの一度も遭遇しませんでしたね。へ理屈で考えてもっともらしい事を云ってみても、音楽を分かっていないとこのような大恥をかく結果になります。

 良く、中音が遅れるとか低音が遅れて出てくる!などと云う人は結構多いのです。私は50年以上コンサートに通い、オーディオも本格的になって40年を超えますが、ただの一度もそんな経験がありません。私が未熟なのでしょうかね。実際は、ホーン・スピーカーもオーディオも音楽も分かっていない人達だと思って仲良くしないことにしています。こんな輩に振り回されるとオーディオもトンデモナイ方向に進みます。要注意です。

 高周波再生は不要・・・最近見たインターネットにこのような文が掲載されていました。結局、聞こえない周波数の帯域を再生しようとするのは無駄だ!とおっしゃりたいようです。そして、一度15kHz以上を通す、ハイパス・フィルターを通して、高域だけを鳴らして見たそうです(こんな現実離れしたことを良くもやりますね)。そしたら、ジャリジャリとか時々シンバルの端っこの音が少し聞き取れただけで、これなら不要だと思った・・と書かれています。高域が必要と云う人達も一度試して見たら如何??とあります。こんな馬鹿な実験は頼まれてもやりません。オーディオはそんな事をやる為に在るのではありません。大体、使用したツィーターが「イモ」だったのでしょう。更に、音楽とオーディオの基本が全くお分かりでないらしい。これでもオーディオのキャリアは長いらしく結構理論的なつもりで書かれています。最後の言葉がまた素晴らしい。「何しろ聞こえない帯域ですからね」・・・ですと。せめてオーディオに必要な程度の音響学でもかじってみたら如何でしょうかね(私も大きなことは云えませんが、それでもまだマシだと思っています)。オーディオのグループのオピニオン・リーダーの中には結構多い人種だと思います。これも要注意です。

 ピン・ポイント・・・オーディオの定位の問題で、良く使われる言葉が「ピン・ポイント」と云う言葉です。雑誌などでもスピーカーを評価するのに「ピン・ポイント」で楽器が浮かび上がる・・などと書かれています。これは、「ピン・ポイント」で聞こえる方がおかしいのです。コンサート・ホールで、二階席は別として(二階席は視覚で分かる)、一階席の場合、ヴァイオリンなどの前列の楽員は見えますが、管楽器は見えにくい場合が多いのです。その時クラリネットのソロでも入りますと、先ず位置を特定出来ません。ホールは音響的に気遣いされて設計されていますし、背面、両壁面、天井に反射板を取り付けて、音を客席に向けて効率よく出るようになっています。この反射板に跳ね返された音と本来の音が混ざり合いますし、それらが客席に届きます。先ずクラリネットの位置の特定は出来ません。大まかな位置が掴めるだけで、ピン・ポイントと云える状況にはなりません。トランペットのような指向性の強い楽器ならまだ聞き取れますが、木管の音は、ただでさえアチコチに散らばりますので特定は出来ないのです。特に弦楽器は、360度全方向に音を出しますのでピン・ポイントなどトンデモナイ!と云えます。ご自分のオーディオでピン・ポイントが出て来ないと云って何も心配することはありません。元々「ピン・ポイント」などは、実際の音楽には存在しないのです。むしろ、楽器の余韻やホールの空気感が上手く再生できているという事かも分かりません。でも、左にある第一ヴァイオリンが右から聞こえたらこれは単に結線間違いです。結線をチェックしましょう。

 ホーンの大型システムは、ユニットの位置が離れているので定位が悪い・・・ホーン・システムで4ウェイや5ウェイになりますと使用ホーンの開口部が大きくなりますので、各ユニット間は、コーン・タイプやドーム・タイプに比し距離があるように見えます。そこで、扱ったことも使った事も無い人達が勝手なことを云います。

 オーディオにとって定位を最も重要と考えて、音質を無視するならば、フルレンジの一発か、タンノイやアルテックの604(620)等の同軸型が有利なことは百も承知で、私も全く異論なく認めます。しかし、オーディオにとって定位が何にも増して重要とは全く考えていない私にとって大した問題ではありません。勿論大型ホーン・タイプの定位が悪いとは些かも考えておりませんので、その点も含み説明します。先のピン・ポイントで述べましたように、ナマの演奏会でも、いわゆるマニアの方々がおっしゃるような定位は存在しないのです。有るものは、漫然とした楽器の位置と完全なハーモニーです。

ホールで音楽を鑑賞する場合、楽器の定位などを頭に浮かべますか?もし浮かべるとしたら、余程重病のオーディオ・ネクラ病でしょうよ。但しオーディオで、あらぬ方向からトランペットなどが聞こえればこれは論外ですが、大型ホーン・システムは、ユニットが離れますが、ホーンの開口部は接近しています。大体オーディオ的には各ユニットの開口部の中心が1m以内にあれば、定位に問題は無い・・とされています。大型の5ウェイでもこの条件はクリアしていますし、私自身定位が悪いと感じたことは一度もありません(むしろ市販の大型高価システムより圧倒的に定位はシッカリしています)。定位を決定付ける重要なポイントは、如何に優秀なツイーターを使うか・・と言うことになります。大型システムでも良質、優秀なツイーター一発で定位は確保できると断言しておきましょうか・・・。知らないことは怖いですね。色んなことを云いますからね。自分で体験すれば云わなくても済むのに使ってみて使いこなせなかった腹いせなのか、使った事も無いのか分かりませんが、知らない事には文句を云わない方が良いのです。           

トーンアームはショートが良い?

 このことも良く云われます。

 トーンアームの問題点として、先ず第一はトラッキング・エラーの問題です。次に慣性モーメントの問題があります。

 この二つの問題は、ご存知の方も多いと思いますが、一応説明しておきます。

 トラッキング・エラー・・・ご存知のようにレコードの原盤をカッティングする際のカッティング・マシーンのカッターは、レコード外周から内周に向けて直線でカットしていきます。それに対してレコード再生の場合は、トーンアームの支点を中心に弧を描いて外周から内周へ進みます。直線と弧ですから、同じ軌跡になりません。この“ずれ”をトラッキング・エラーと云います。このずれを極力少なくするには、トーンアームの長さが長いほど有利なのですが、実用上は限度があります。実際のトーンアームは、このエラーを極小にするために、アームの先端にオフセット角をつけて極力エラーの影響から逃れるように設計されています。

 一方、ショート・アームが良いと云う主張は慣性モーメントを考えてのことです。

 例えば、野球のバットを振る場合にバットが非常に重かったり、また異常に長いとした場合に、そのバットを直ぐに止めることは難しい。つまり慣性の法則が働いて思うように動かせないわけです。そこで、トーンアームの場合は、ロングより短い方が追従性に勝れているので短いアーム、つまりショート・アームの方が有利という考えです。

 一見、理屈としては正当のように思えますが、実際の音質的な面で聞き比べますと、圧倒的にロングの方が有利なのです。

 これは問題点として捉えられている“慣性”の問題がそれほど影響していないと考えられるからです。

 実際問題として、市販のプレーヤーは、大方がショート・アームを念頭に入れて設計されており、ロング・アームを搭載できるものが少なかったことにも一因があるように思われますが、ロングの音は、ショートに比し、非常に落ち着きのある音になります。マイクロの吸着式のターンテーブルでは問題はありませんが、通常のターンテーブルでは、レコードのソリなどに対して、チップ(針先)の上下により、チップとレコードとの接触面の角度が目まぐるしく変わります。この角度の変化は、ショートよりロングの方が少ない事は論を待ちません。更にトラッキングエラーの有利性は慣性の問題を全く意識させないほど有利に働き、それらは音質的に議論の余地のないほどハッキリと表れます。

 つまり、トレースに際して、縦方向及び横方向の諸問題に対して、ロングはその影響を受けにくいことになります(動きの差がショートより小さい)。これが音質的にもハッキリ判別できる状況の理由だと思います。

 トーンアームについて、現在もっとも理論的に解明されている第一人者のイケダ・サウンド(有)の池田勇氏はかって私にこう漏らされました。「アームはね、ショートの最高に良く出来たものと、ロングの“イモ”アームと釣り合うほどなんですよ」・・・と。理論的にもそうらしい。しかし、イケダのショートは流石に良く出来ています・・・・と少しフォローしておきましょうか。

 ロングよりショートが有利!と云うのは、多分、ロングを本式に使用したことのない人の負け惜しみと考えても良いのではないでしょうか?但し、プレーヤーの環境から止むを得ずショート・アームをお使いの方は、いずれロングに替えるか、または、精々最高のカートリッジで、良い音を引き出すようにして頂ければ・・と思います。条件が許せば、トーンアームはロングが有利なのです。

 トーンアームに関しては、ロングかショートか以前にトーンアームとして求められる要件は多くあります。それらを踏まえ、理想的なトーンアームは、現在最高のものとして、さらに求められる殆どをクリアしたイケダのトーンアーム以外に存在しないことも淋しい気持ちがしますが、現在は、不自由のない音質が得られる状態にあることはラッキーと思うべきでしょう。プレーヤー周辺機器            <つづく>

2005・9・14