オーディオはイジラナイ

ーーマルチウェイのチューニングーー


オーディオを常にイジッテいないと気持ちが収まらない人がいます。特にオーディのキャリアが長く、自分をマニアだと思っている人や、技術系の雑誌の読者に多いようです。 
困った人たち

 シングル・スピーカーのシステムは別として、2ウェイ以上になると、調整一つで音が変化することは事実です。特に3ウェイ、4ウェイとユニット数が増えるにつれ、その変化は大きくなります。しかし、このような人たちは、本当の音を理解していないので「アアデモナイ」「コーデモナイ」としながらイジリ続けます。中には、アンプを交換してみたり、また、室内に吸音材を持ち込み、凡そ生活の場とは云い難い雰囲気を作り出したりします。オーディオは生活の中にあってこそのオーディオであり、オーディオの為に生活があるとは決して思っていない私にとっては、むしろ「そこまでどうしてする訳?」と云いたくなります。

 オーディオを本来の音で鳴らすにはイジッテはいけないのです。ひたすら音楽を聴き込むことが良い音を引き出す最大のコツといえます。但し、条件としては全体のバランスが一応とれていることが必須です。私のユーザーの場合は、私がチューニングしますので、「以後はイジラナイで下さい」と云って帰りますので、半年後、一年後と伺う内に見違えるほどの音に変化しています。しかし、余り音楽を聴かなかったシステムや、勝手にイジッタりしたシステムは直ぐに判ります。大体5ウェイクラスになりますと、イジッたら先ず元に戻りません。それを何とかしようとしてまたイジリますので、更に音は悪い方向へ変化します。実際、5ウェイは非常にデリケートで、私自身、一台のアンプが故障すると、技術者を呼び、その場で修理させていました。持ち帰って修理すると、出来上がったときチューニングをやり直さなければならないほど音が変化するのです。私が日本一と太鼓判を押す5ウェイシステムのお宅には、実際の使用アンプの他に、完全にメンティナンスされたパワー・アンプが3台程度準備されていて、故障するとその場で入れ替えが出来るようになっています。このクラスのシステムになると今度は、アンプが変わった程度では音の変化はありません。    アンプはそれほど重要ではない

 つまり、馴らし込みが十分であれば、少々のことでは音の変化は無いのです。

 このお宅の音を聞かれた埼玉の同じ5ウェイの方は「30年経てば内のシステムもこの音と同じようになるだろうか」と云われましたが、この方は、オーディオを良く理解しておられると思います。オーディオには年輪も必要なのです。

 初めて5ウェイに発展されたユーザーの場合(いきなり初めから5ウェイにいく事は私がお勧めしていませんので、大抵は早くて4年長い人は10年以上掛ける人もいます。・・・但し、これからの10年は私が生存しているかどうか、それが問題ですが・・・笑・・イヤ、ホントに)は、新しいユニットが入り、アンプも新品ですので、初めからエージングされた音は出ません。しかし、5ウェイの魅力は十分発揮しますが。それでも完璧なサウンドは出ません。少なくとも1年、理想を云えば3年が欲しい所です。それを早める方法は、音楽を多く聴く以外にありません。

 これをなんとかしようとして勝手にイジリますと、オーディオの方もマゴツイテなかなか馴染んでくれません。この状態は5年経っても直りません。決してイジラナイことです。イジラナイことがオーディオの音を良くする最大のテクニックと云えます。

 エージングは、アンプや、スピーカーに対して一定時間をおかないと本来の音が出ない!・・という事でこれは事実ですが、エージングはそれだけでは無いのです。オーディオが馴染むのはアンプやスピーカーだけではありません。実は部屋にも馴染んできます。そのことは、一つにはユーザーがその部屋に最も適した音量を自然と会得して、鳴らし方のコツを掴んだ!ということがあると思いますが、やはり、部屋に馴染んだと思わざるを得ないことは起こります(私がセットしたジャズ喫茶のシステムは、マスターが鳴らした場合と店長が鳴らした場合とでは音が違いました。これなどは、マスターが自然と適当なヴォリューム・ポジションを掴んでいたからです。雇い人の店長はラフにポジションを選んでいたのですね)。それと、エンクロージャのエージングは重要です。先の日本一と私が太鼓判を押すお宅のエンクロージャは、ユーザーが若い時分に自作した(約40年も前・当時は殆どのファンはエンクロージャは自作で、ユニットも自分で選んでオーディオをセットしていました・・・今は昔!)約300リッターの容積のものです。これを、約15年前に超弩級ウーファーに入れ替える際に、私の提案で内部補強を行いましたが、エージングされた音には変化はありませんでした。ここの音を「不思議!」と皆が云いますが、私は、このエンクロージャのエージングがもっとも重要な音決めのポイントだと思っています。ウーファーの音は全体音に影響する度合いは最も大きいと思います。但し、これも万全なツイーターがあればこそです。もっとも此処のシステムは5ウェイの全てのユニットが理想的なもので構成されていますが・・。自作のエンクロージャは、現在では少なくなりましたので、私の場合は、ユーザーに代わり、私が設計し、本職の木工屋さんに依頼して見た目も充実したものを提供しています。

 定在波に対して殊のほか熱心な方がおられます。そのため、オーディオ・ショップや雑誌で勧める変な形のものを部屋に持ち込みます。また、某技術系の雑誌では、リスニング状況を測定して大仰な記事にして、アドバイスを行っています。見ても何を云いたいのか判らないようなグラフや、図面を多く載せて権威付けを行っています。そのために、これも大仰な測定器を持ち込みます。ユーザーとしては、まんまとはまり、期待を持ちます。測定機器は、耳を持ちません。アンプ等の性能を測定する必要は認めますが、リスニング・ルームの音を器械が判ってたまるか!と云うのが私の考えです。器械屋さん達は音(音楽)が判っていないと踏んでいます。5ウェイを測定して、3ウェイにした方が良い!などと書いて、私の顧客全員から大笑いされたこともあります。音が判れば機器を使う必要はありません。機器は音楽の(音質の)測定は出来ません。そのような事を真剣に考えて、部屋の四隅やアチコチに吸音材を張り込んだり、また変な形の吸音材を持ち込んだりします。部屋の構造上、どうしても反射音が気になって音楽鑑賞を妨げるなら、その時だけ座布団を聞く位置の後ろに置けば良い話です。また、恒久的に吸音をしたい場合は、市販の決して安くないものを買ってミットモナイ姿を部屋に晒すより、グラス・ウールを買って来てそれを気になる所に下げてその上にカーテンを下げるのです。グラス・ウールはオーディオ屋で買うのではありません。建材屋で買うのです。36m巻きで幾らもしません。と云いましたら、裏にビニールを張ったもの(多分断熱材に使うのでしょう)を準備した人がいましたが、ムクのグラス・ウールに限ります。カーテンは、部屋のインテリアに合わせてお選び下さい。この方法は、私自身が実際に経験して効果も確認済みです。余計な金を使う事はありません。それより、定在波は本当は、気にせず、前面のオーディオのスピーカーの音で押し切れば良いのです。部屋中にオーディオのサウンドが充満すれば、定在波など、先ず気になりませんテ。余分なことに気を使い、余分な金を使わない事です。

 もう一言付け加えますと、音質の評価を決定する数値は基本的にも何もそのものが存在しません。従って、「貴方のオーディオは・・・」などと数値を示してイチャモンを云う人があったら決して付き合わないことです。数値は音の何物をも物語りません。 

2005・5・25