イケダ・カートリッジは、他社のカートリッジと構造が根本的に異なり、「特許」並びに「実用新案特許」を有する世界唯一、独自のMC型カートリッジです。従って、他メーカーでは作ることは禁じられますし、実際面では技術的に作れる人がいないのが現状でしょう。また一方の現状では、国内より海外からの注文が圧倒的に多いのも少し残念な事実です。
その構造については、項目「カートリッジの理想」(イケダ・サウンド監修済み)に詳述してありますので、ここでは重複を避けますが、それが為の使い方、留意点がありますので、そのことを説明いたします。
写真はカバーを外して、針先の方から眺めた構造部分です(イケダ#9MUSA/W)。凹状に見える二つのもの(上下)は台座の部分です。間(中心部)に縦に見える金属状のものがスタイラス部分で、針とコイルの部分です。これを左右から挟む形の横長のものがヨークです。ヨークにはパーメンジュールを使用しています。ヨークの右側の白く見える部分に、目に見えないほどの細いコイルが装着されています。L・Rに+・−の4箇所を半田付けしてあります。白い部分に黄色く見えるのは、ワイヤーの接着部分です。これでスタイラスが、トレース中にディスクの進行方向へ引っ張られないようにしています。ワイヤーは、MC型には全て装着してありますが、大抵は極細のピアノ線を使います。しかし、金属製のワイヤーは、独特の音を出しますので、イケダでは、もっとも音質に影響を与えない、ナイロン・テグスを使っています。このテグスも、一本ではなく、髪の毛よりも細いテグスを縄状に編み上げて作られています。写真では太く見えるかも分かりませんが、太く見えるのは接着剤の部分です。
この部分はカバーがかぶさりますので通常は見えません。
写真で見られるとおり、スタイラスを挟み込むヨークは、殆どスタイラスに接触するほどギャップを詰めてあります。スピーカーも同じですが、ギャップが広いとロスが大きくて本当の究極サウンドを得られません。エールのドライバーもその点では究極までギャップを詰めてあります(高度の技術を要します)。
以上の構造を踏まえてその使い方及び留意点を説明します。
イケダ・カートリッジもホーン・スピーカー同様、音に非常に敏感でデリケートです。その使い方で、本領の音質も左右されます。万全の使用方法に精通しておく必要があります。
イケダ・カートリッジで、もっとも多いトラブルは、埃による汚れの問題です。修理依頼の90%以上は、この問題だと池田さんは云われます。但し、私の関係したお客様は一人もそのトラブルを発生させておりません。それは、納入時に私が詳しく説明すことと、お客様自体がイケダ・カートリッジの使用に馴れてきておられるということがあります(初めてイケダ・カートリッジを使用されるお客様宅へは必ず私がお伺いして実際に説明します・・・・日本全国・・・カートリッジ1本と雖も持参します。勿論、旅費・日当は原則戴きません)。
先ず、埃を絶対にギャップに入り込ませないことです。この為には、レコードのクリーニングを万全に行います。しかし、空気中には、埃は蔓延しています。太平洋のド真ん中にでも埃が存在するそうですから家庭内のものは想像以上に多いのです。レコードは、演奏中に針先により摩擦を起こします。レコードの原材料は塩化ビニールです。もっとも静電気を起こしやすい物質です。盤面をいくら綺麗にしても演奏中に針との摩擦で起きた静電気で空気中の埃を盤面に吸着させます。私が推奨しているナガオカのクリヤトーン・スプレーはその静電気防止効果が非常に強いのです。しかし、埃は演奏中に「くっつくもの」だという意識は常時持つべきです。この埃は、針先を伝わって上に押し上げられることは別項で述べてあります。これがギャップに入り込むとお手上げになります。音が出なくなったり歪んだりします。カンチレバー付きの普通のカートリッジでは音が出なくなることはありません。
これの防止法は、レコード1枚か出来れば片面終るごとに針先の埃を取り除くことを習慣付けることです。
埃は、綿埃のようなものに限りません。チップに付着した当初は、まだ柔らかいので柔らかい内に取り除くのが効果的です。時間をかけると硬くなります。こうなると中々取り除けませんので、レコードをかけたその後に必ず取り除くように習慣付けて下さい。取り除く方法は、一般的には、柔らかい筆先、また少し硬めの化粧用の筆などが有効です。また、目の細かいメガネ拭きでソッと針先を拭くのでも構いません。拭き方はカートリッジの奥から手前に拭き取ります。たまにはシェルごと外して、針先を見ながら同じように奥から手前に拭き取ると良い訳です。カンチレバー付きのカートリッジでは、針先の掃除中にカンチレバーを折り曲げてしまう事故が良くありましたが、イケダ・カートリッジにはカンチレバーはありませんので、その事故は起こりません。(カンチレバつきの場合も、奥から手前に拭きます。これを横に払おうとするとカンチレバーを曲げてしまいます)
次のトラブル事故は、水分によるものです。最近のオーディオ・ショップなどで売られているクリーニング液がどのようなものか私は使いませんので知りませんが、どうも水分がレコード面に残存しているのでは無いかと考えられる事故が多いのです。
修理に送られたものの中には、完全に錆び付いたものがあるそうです。レコードの面をを拭きとって直ぐに演奏するとこのようになり易いのです。クリヤトーン・スプレーは、揮発性に富んでいますので、それ程の時間は要しませんが、完全に何回も拭き取ることが大事です。埃の場合は、イケダ・サウンドで簡単に取れて修理代も多く掛かりませんが、水分による錆びはお手上げです。かなりの予算を覚悟しなければなりません(部品交換が必要になります)。
セッティングについては他の項目で書いていますのでここでは詳しく述べませんが、トーン・アームによる高さ調整はこまめにキチンと行うべきです。特に、カートリッジを他の物と取り替えた際などは高さを調整し直して下さい。これは、同じイケダであっても型番が違う場合は調整が必要です。
次のトラブルは、針(チップ)を飛ばしてしまった。という例です。
イケダ・カートリッジは、マグネットが大変強力です。世界中のカートリッジの中で、最強力な磁気回路を持っています。エールのドライバーも最強力で、2個のドライバーがくっつくと一人では離せないほど強力ですが、カートリッジは小さいですからそれ程ではありませんが、イケダ・カートリッジは、付近の金属を引き寄せます。プレーヤーの周囲には、小ドライバー、6角レンチなど、常時アームやその他を動かす為の工具があります。これらを近くに置かないことです。何気なく置いたものを吸着してしまい針を飛ばした例は多いのです。近くにこれらの金属を置かないように心がけて下さい。
次は、取り扱い上の問題ですが、使用しないときは必ず針カバーをして下さい。汚れの防止と万一の事故防止策です。また、カートリッジをトーン・アームから取り外した場合は、カバーを被せるまで絶対に手から離さないことです。特にスプレーモやMUSAは頭が球形になっていますので、そのまま置くと針の部分が下になります。事故の元です。兎に角カバーをしていない時は絶対に手から離さないことです。
以上を留意して、最高のサウンドで音楽ライフをお楽しみ下さい。面倒なようですが、習慣となれば殆ど苦になりません。 以上
関連項目
2006・6・27