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 か         ん


兜剣造

生年月日 昭和4年頃
血液型   不明
身長    不明
体重    不明

昭和4年頃、科学者兜十蔵の子として生まれる。
この頃から日本は急速にその軍国主義の度合いを深めて行き、兜剣造の幼少年期は将にその時代に合致している。このことから、当時の世相と併せ考えるに剣造も世間一般のこの頃の年代の少年たちと等しく、それ相応に軍国少年だった可能性は高いのではないかと思われる。
小学校・中学校では戦局の激化に伴い授業でも軍事訓練が課せられるようになり、剣造も小隊長としていつでも戦場に出られるほどの戦闘指揮能力は修練していたことと思われる。
太平洋戦争が終結したのがようやく16歳の年の夏。当人は戦争に憬れ戦場に身を投ずることを夢見ていたことであろうが、幸か不幸かその前に敗戦を迎えてしまい、無念やるかたない思いを呑まされたのかもしれない。しかし、その体験は後日別のところで生きてくることとなった。それが後年のミケーネ戦である。剣造にしても、弓弦之助・宇門源蔵も、科学者として優秀なのみに非ず、戦闘指揮も十二分にこなした素養はそんなところにあったものだろう。
戦争に敗れ、GHQ占領治下の日本で剣造はやがて大学へと進んだものであろう。そして、昭和26年のサンフランシスコ条約により日本は国際社会に復帰。今次の戦争にある種の罪悪感を抱いていたアメリカは、翌年から盛んに日本からの留学生を受け入れるようになる。恐らく、剣造がアメリカに留学したのはこの時だったのであろう。どの分野の学問を学んだものか定かではないが、まずは工学部門であったと考えて間違いなかろう。剣造はこのアメリカ留学時代にいくつかの発明をしたという。そのパテント料は莫大な金額に昇ったようであり、後の国家予算並みの金額が掛かったというグレートマジンガーやビューナスAの建造費も、科学要塞研究所の建設・維持費もすべてこのパテント料によるものだったということである。また、後に甲児とシローの母となる女性と知り合い、あるいは結婚したのもこの時期ではなかったかと想定される。
その間、父兜十蔵は国際科学アカデミーの招きにより、ロードス島の遺跡調査に出ていた。そしてそこで発見したミケーネ巨人ロボットの経年劣化度がまだ真新しいことから、ミケーネ人が約3000年前の地震では滅びず現代も生き延びている可能性があるとの判断を下すに至った。戦闘ロボットを開発していることから、ミケーネ人は武力を講じてくるかも知れない。十蔵はそう判断し、以後ミケーネの調査を独自に進める。が、同調査団の団長で世界的な科学者であるドクター=ヘルは、ミケーネの巨人ロボットを自分の手に納め世界を征服せんと、団員を皆殺しにする。ただ一人、奇跡的に逃走することができた十蔵は日本に戻って、ドクター=ヘルの野望を打ち砕くためロボットの建造を決意する。昭和30年のことと思われる。そして剣造がアメリカから帰国したのはこの少し前と推測される。そして十蔵は剣造に一つの指示を出す。曰く、「自分はマジンガーZを建造してドクター=ヘルの野望を打ち砕く。お前は地下に潜ったミケーネ人の調査をせよ。万が一ミケーネ人が武力による地上制圧を企んでいることが判明したならば、強力なロボットを建造してその野望を阻むのだ」、と。十蔵のその言葉を受け、剣造夫妻はロードス島改めバードス島近辺から調査を始め世界中を飛び回って地下の探査を行った。
昭和32年7月24日、長男の甲児が生まれる。また、この年はマジンガーZの設計が開始された年でもある。長期に渡る地底調査は昭和35年頃終了したようである。否、終了せざるを得なかったというべきか。彼はミケーネ人が今も地底に生き延び続け、近い将来地上の攻略を企んでいる証拠を得た。しかし、その科学力は剣造の予測をはるかに上回るもので、彼の地底調査に感づいたミケーネは逆に剣造の身辺を窺うようになったのだ。十蔵に指示を仰ぐ剣造。それに応じて十蔵はかねての誓いであったマジンガーZを超える超ロボットの建造を正式に命じたのだった。剣造夫妻は、マジンガーZの製作を手伝う傍ら、グレートマジンガーの設計を始める。それが昭和35年前半のことである。十蔵が開発中の超合金Zを更に強化し、光子力反応炉も強化ニューモデルへと移行すべく研鑚を重ねるのだった。
昭和37年4月、次男のシローが生まれる。そしてこの年(12月か?)、マジンガーZの超兵器の実験中、光子力反応炉が暴走・爆発し剣造夫妻は命を落とす。しかし、偶然にも剣造の脳だけは無傷のままであったのだ。十蔵は一縷の望みを掛け、剣造に改造手術を試みた。手術は無事成功、こうして剣造は昭和38年初頭、脳以外は全身機械、体内には電子頭脳を併せ持つサイボーグとしてこの世に蘇えったのだ。しかし、生き返った剣造は家族と別れ独り研究開発を進める決意をする。それは、今では剣造を探り始めたミケーネ人から身を隠す為でもあり、もう一つの理由は、息子の甲児とシローにサイボーグとなった醜い姿をあらわしたくないとの思いからであった。
剣造は伊豆沖の孤島・明神島に研究所を移し、再び戦闘用ロボットの開発に生涯を掛けて研究し続ける。しかしここに一つの問題が起きる。それはグレートマジンガーはあまりにもパワーが強すぎるため、普通の人間には乗りこなせそうにないということであった。グレートを乗りこなすには小さい時から訓練を重ねたプロの戦闘員が必要と考えられた。剣造は当初、甲児をグレートのパイロットにと考えたらしい。しかし、サイボーグの体にコンプレックスを抱く剣造は、息子たちの前に姿をあらわすことに躊躇する。また、息子たちに自分がサイボーグであることにショックを与えたくなく、彼らがそれを受け入れられるようになる年まで逢わずにいようと決意したのだった。グレートのパイロットを別に探さねばならなくなった剣造は、秘密を完全に守る為孤児を引き取って訓練することとする。即ち、運動神経の優れた孤児を探して昭和38年5月5日、剣造は私設の孤児院から剣鉄也を引き取ったのだ。後に鑑みるに、剣造が鉄也の特訓に当って重点を置いたのは、ロボットグレートマジンガーのパイロットとしての力量の育成にあったようだ。つまり、甲児のような戦機を掴むのに長けた能力は望んで得られるものではなく、むしろ万人に一人の特異な才能であるわけだが、その能力は戦闘指揮官として求められる性質のものである。だが、そのような偉才を計画的に育成するのは事実上不可能であり、かつ時によって不安定な才能に頼むよりは着実に敵を倒す技量を求めたものといえよう。そしてまた、剣造自らが戦闘指揮官となるとき、そのロボットパイロットには「部下」として任務を忠実に遂行する能力が求められるものであり、むしろパイロットの戦闘指揮官としての能力は指揮権の統一という点において邪魔ですらあったといえようか。
とまれ、明神島で剣造はグレートの設計に励むとともに鉄也に厳しい特訓を課す日々を過ごす。そして昭和39年3月、4年の歳月をかけたグレートの設計図が完成する。同10月、グレートマジンガーの工事が開始される。昭和42年、グレートの胴体が完成し、頭部の工事に着工する。しかし剣造は、グレートの建造が進むにつれ、もう一体、グレートをサポートするロボットが必要であることを感じ始める。支援ロボット・ビューナスA建造計画、その発動が昭和43年だったという。そしてまた、ビューナスAの建造決定に伴いそのパイロットも必要となり、鉄也の時と同じく孤児院から孤児を引き取って訓育することとした。その孤児が炎ジュンである。昭和44年からは科学要塞研究所の建造が始まる。
昭和45年、光子力エンジンの組み立て作業中に爆発事故が発生。この時作業員3名が死亡し、10人の負傷者を出したという。剣造はいたく心痛し、光子力エンジン部分の設計をやり直したということである。
昭和47年12月3日、かねてより兜十蔵の命を付け狙っていたドクター=ヘルは、配下のあしゅら男爵に命じて遂に十蔵を暗殺する。父十蔵はその死の間際、戦闘ロボット・マジンガーZを孫の甲児に譲り渡す。神にも悪魔にもなれる力を授かった甲児は、その力でドクター=ヘルの機械獣軍団と死闘を繰り広げる。剣造は保護者を失って孤児となった甲児・シローのもとへ駆けつけたい気持ちを押えながら、ミケーネ出現に備えグレートマジンガーの完成を急がねばならず、心を鬼にして耐え対ドクター=ヘル戦をマジンガーZに委ねた。マジンガーZは善くその信託に応え、ドクター=ヘルの機械獣を薙ぎ倒してゆく。昭和48年にはようやく科学要塞研究所が完成して、剣造たちは科学要塞研究所に移り、伊豆の海岸に身を潜める。グレートも九分どおり建造が進んでいた。甲児の奮闘を横に見ながら剣造はじっと耐え、ひたすらグレートの完成に心血を注いでいたのだ。しかし、昭和49年3月、ミケーネ帝国の手先と思われるゴーゴン大公の出現により戦況は激化。マジンガーZもパワーアップを繰り返すが徐々に押されてゆく。いよいよミケーネが地上侵攻を開始するだろう。そんな中、遂に待望のグレートマジンガーは完成する。時に昭和49年6月24日のことであった。そして6月30日、剣鉄也によりグレートの試乗テストが行われる。テストの結果は素晴らしいものだったという。
一方で、ミケーネの侵攻がいよいよ始動することをキャッチした剣造は、7月24日、預言者に扮し光子力研究所に向け予告を告げる。マジンガーZは第一回の攻撃はなんとか防いだものの、自らも相当の被害を受けてしまった。そして翌7月25日、獣魔将軍率いる第二次攻撃隊の前に、満身創痍のマジンガーZは力尽きようとする。これを見殺しにすることは出来ない。剣造は断を下し、グレートマジンガーの出動を命じた。勇躍躍り出た鉄也は、マジンガーZと協力のうえ獣魔将軍以下戦闘獣軍団を一蹴、再び一陣の風の如く飛び去っていった。ミケーネは時期尚早とみて再び静観して、ドクター=ヘルとマジンガーZに最後の死闘を演じさせ漁夫の利を占めることを決定。それにより剣造もまたヘルとの最後の決戦を甲児に望みを掛けて託すこととした。二者沈黙の中、マジンガーZとドクターヘルは最後の決戦を展開して、甲児はついにヘルを討ち果たすことに成功する。しかしその代償も大きく、マジンガーZも兜甲児も満身創痍の辛勝だった。マジンガーZが疲れ果てるのを待ち構えていたミケーネ帝国は、昭和49年9月1日時至れりと戦闘獣グラトニオスとビラニアスを派遣し、マジンガーZを完膚なきまでに敗北せしめた。しかし敵が本格的に地上侵攻に乗り出したことを知った剣造もまた、今こそ自分たちが立ち上がる時だと断じ鉄也にマジンガーZ救出を命ずる。両戦闘獣を撃破するグレート。そして救出された甲児は科学要塞研究所へと連れられ、そこで手術を受け一命を取り留める。剣造は弓教授を呼び寄せ、総ての事情を打ち明けた上で以後の戦いを引き継ぐこととした。休養を兼ねて甲児はアメリカに留学する。その甲児を剣造は科学要塞研究所のバルコニーで独り見送る。戦いが終わったときには一緒に暮らそうと誓って。
一方、肉親と離れて独りぼっちとなったシローは、寂しさからよく科学要塞研究所に入り浸るようになった。そんなシローの姿を見かねたジュンは、シローを科学要塞研究所に引き取ることを提案。以後シローは科学要塞研究所で起居をすることになる。そんなシローを前にしながらも秘密を打ち明けられない剣造は、苦悶の日々を過ごすこととなる。昭和49年9月22日、ビューナスAが完成し、実戦投入される。地上制覇にはグレートマジンガーと科学要塞研究所が最大の障壁と知ったミケーネ帝国は、グレートに狙いをつけて執拗に攻撃を仕掛けてくる。しかし、科学要塞研究所側も着々と戦力強化を果たしてゆく。昭和49年10月27日、アメリカより招かれた飛田博士の考案によりドリルプレッシャーパンチが完成する。また、支援ロボット・ビューナスAを飛行可能にすることが11月より検討される。当初、グレートのように本体に翼を収納することが考えられたが、ビューナスのボディに翼が納まりきらないことが懸念され、剣造は弓教授の助言を得て、マジンガーZのジェットスクランダー方式を採用することとして、ビューナススクランダーの開発が進められる。一方、配下の将軍たちの度重なる敗報に業を煮やした暗黒大将軍は自ら出撃し、ミケロスごと科学要塞研究所に体当たりを仕掛けてきた。その大激戦の中、飛田博士はシローを庇って戦死する。12月1日のことである。飛田博士の死に報いるためにと、新たな闘志に燃える鉄也は、ミケーネの挑戦の数々を払い除けてゆく。また、この頃剣造は様々なプランを打ち立てる。その第一がグレートの脚部強化である。剣造は大変なスポーツファンで、かねてよりグレートに使える技がないものかと世界中のスポーツを研究していたのだ。そこで目にとまったのがキックボクシングだったという。即ち跳び蹴りがニーインパルスキック、廻し蹴りがバックスピンキックである。第二にグレートのアトミックパンチ強化。そして第三にグレートの強化翼としてのグレート=ブースター計画。グレートのスクランブルを収納する背中は最大の弱点である。加えてスクランブル自身の強化は、本体とのポテンシャルのバランスからほぼ不可能に近かった。剣造はマジンガーZのジェットスクランダー方式を採用する事にして、弓教授に相談を持ちかける。弓教授は、亡きスミス博士のスクランダー強化案であったブースターを提唱したのだった。極秘裏にブースター建造は進められる。また、グレートブーメラン強化策としての「ブーメラン=ファイアー」、出力強化に「超光子力エネルギー開発プラン」。新武器「コンピューターレーザー新設プラン」。海中戦の強化に「海中スクーター新設プラン」も設けられた。また、別計画としてボスボロットの強化も考えられたが、機体の耐性から計画は見送られた。また、シローにねだられて剣造は専用ロボット・ロボットジュニアを造ることにしてしまった。普段我慢ばかり強いさせて、父であることすら名乗ってあげられない剣造の、それは罪悪感から生まれたものだったのかもしれない。
上記計画は、日の目を見たものもあれば中止になったもの、実戦投入に間に合わなかったものなど様々であるが、剣造のその意欲的な活動には瞠目せざるを得ない。中でも「海中スクーター新設プラン」は、後にグレンダイザーのウルトラサブマリンとして結実することになるのだ。
グレートの鬼神の如き強さに、遂にミケーネ闇の帝王は前線基地の必要性を痛感し、基地建設を暗黒大将軍とアルゴス長官に指令する。暗黒大将軍とアルゴス長官は、前線基地建設の司令官にゴーゴン大公を任命し、事を運ばせる。ゴーゴンは陽動作戦によりまんまと基地建設を果たしてしまった。しかしその代償に、ゴーゴン大公は戦闘獣ダンダロスを庇い壮烈な戦死を遂げたのだった。時に昭和50年、2月2日のことだった。だがミケーネ帝国はそれに意気消沈することなく次の手を打ってきた。すなわち新たな火山島前線基地の司令官としてヤヌス侯爵を任命してきたのだった。指令系統の統一されたミケーネの猛攻は以前に増して壮絶さを加えた。その対抗策として昭和50年2月23日、待望のビューナススクランダーが完成する。これにより戦闘力をアップした科学要塞研究所側は果敢に攻勢を取るようになる。また、同日シローの専用ロボット・ロボットジュニアも完成を見る。だが、なまじロボットを与えてしまったことが裏目に出て、シローは火山島基地へ勝手に出撃してしまった。案の定、苦戦するシローのロボットジュニア。その姿に吾を忘れてうろたえる剣造。剣造はシローが自分の子であることを鉄也に告げた。その場はなんとか負傷を押した鉄也の出撃で事なきを得たが、剣造はシローに真実を告げる刻が来たことを痛感する。しかし、事実を告げられたシローは反発する。「本当のお父さんならどうして僕たちが寂しい時に一緒にいてくれなかったんだ」と・・・・。その言葉に返す言葉のない剣造。サイボーグの体にコンプレックスを持っていた剣造は、その体のことを他の所員にすら秘してきたのだ。折からの戦闘で剣造は傷を負う。急を聞きつけてシローはかけよった。父の負傷を前にしてシローは初めて我を折ったのだ。そのシローを前に剣造は自分の体の秘密を打ち明ける。だが、シローにとっては父が生きていたという事実の前には、そんなことはどうでもいいことだった。早く戦争が終わって親子三人で暮らせる日が来ることを夢見て、剣造とシローはそれぞれの戦いを継続することを誓った。戦いを終結させるためにもグレートが攻勢に出る必要を感じた剣造は、ために防御の充実を図って科学要塞研究所に、新兵器・サンダービームロケット砲を取り付けた。その新兵器は大成果を挙げ、ミケロスに大打撃を与える。数々の敗北に怒り心頭の暗黒大将軍は、不退転の決意を示し科学要塞研究所に総攻撃を仕掛けてきた。真っ先にサンダービームロケット砲を、そしてグレートマジンガーを戦闘不能に陥れる暗黒大将軍。戦力を総て喪い、科学要塞研究所明渡しを要求する暗黒大将軍の前に遂に屈しようとする兜剣造だが、危機一髪のところを鉄也の復活で形勢は逆転する。戦闘獣バニガンを葬るグレート。が、戦闘獣ダンザニアの攻撃にグレートは大打撃を受けるのだった。チャンス到来と暗黒大将軍は自らグレートと決着をつけるべく出撃、一騎打ちとなり数十合となく刃を交える両雄はそれぞれに腕を、足を破壊され激闘の末暗黒大将軍は敗れ去っていった。昭和50年4月6日。大敵の死に安堵する一同ではあったが、大将軍を欠いたミケーネ帝国は必死の攻撃を掛けて来る。そんな敵への対抗策としてグレートに更なる新兵器・ニーインパルスキックにバックスピンキックが完成する。二大必殺技携えて危機突破をしてきたグレートの強大さを前に、闇の帝王は七大軍団を統べる暗黒大将軍の後釜の必要を痛切に感じとった。そして、この日のためにと回収していたドクターヘルの死体を蘇生させ、すなわち地獄大元帥として軍団の総司令官として昭和50年5月11日着任させるのだった。兜一族と怨敵マジンガー打倒に燃える地獄大元帥は、卑劣かつ巧妙な作戦を駆使して科学要塞研究所側を追い詰めてゆく。その卓越した戦法の前に剣造は、急遽兜甲児をアメリカから呼び寄せヘルのデータやその戦法の特徴を聞き出す。鉄也は一進一退の接戦の中万能要塞ミケロスを破壊するのだが、すぐに地獄大元帥は万能要塞ミケロスに代わる要塞・無敵戦車デモニカを完成させて実戦投入してきた。その地獄大元帥の実力に押され焦りを生じたミケーネ諜報軍は、独自にグレート打倒の策を展開してくるが、負傷を押して出撃してきた鉄也の前にヤヌスは追い詰められ、ついに火山島基地をも失った。続けてグレート強化計画のグレートブースターが完成。鳥類将軍バーダラを討ち取る。
グレートの底力を認めた地獄大元帥は各個撃破作戦を展開、グレートを、ビューナスをそして科学要塞研究所を分断して研究所転覆寸前まで追い詰めた。その危機に弓教授は科学要塞研究所と合流し、アメリカの兜甲児を呼び戻す。参戦したマジンガーZの活躍によりデモニカを追い払うことのできた科学要塞研究所は一息つく。そして甲児帰国歓迎の席で剣造は初めて甲児と父子の対面を果たしたのだった。だが、暖かな家庭からはじき出されることを感じた鉄也は戦いで自分の存在価値を示そうと躍起になり、なにかと甲児に反発を示し、それを受けて甲児も鉄也に対し敵愾心を剥き出しにするようになった。二人の不仲に密かに心を痛める剣造。チームワークの崩れたマジンガー軍団の前に地獄大元帥は、歪んだライバルたちの間に割って入るように戦闘を仕掛けてくる。地獄大元帥は二人を分断し、光子力研究所を攻撃しマジンガーZを釘付けにする。その危機を前にして、シローや剣造は鉄也を説く。「自分たちは同志である。親でも兄弟でもない」と。二人に諭され己の狭量を恥じ入る鉄也。そして甲児救出のために鉄也は出撃していった。しかし時既に遅く、戦闘獣バルカニアに奇襲された鉄也は身に重傷を負い、辛くもバルカニアを倒すもののその爆風に巻き込まれ意識を失ってしまう。好機到来と地獄大元帥はグレートに止めを刺すべくデモニカをグレートに差し向けてきた。その鉄也の危機に、剣造は研究所の管制室ごと出撃して体当たりを敢行した。剣造の体当たりを受け、相当の被害を被るデモニカは一時後退。しかし研究所の管制室は爆発四散して剣造は瀕死の重傷だった。父の危難を聞きつけ甲児は戦闘獣を葬って駆けつける。だが甲児の腕の中、剣造は静かに息を引き取る。
「誰にでも暖かな労わりの心を持ってくれ」
それが剣造の最期の言葉だった。鉄也と甲児の和解を願って・・・・・・・・。
戦いが終わり兜剣造は科学要塞研究所近くの小高い丘に葬られた。多くの人々の哀惜を受けて・・・・

兜甲児

生年月日 昭和32年7月24日
血液型   AB型
身長    165p(Z時)
       170p(グレン時)
体重    62s(グレン時) 

昭和32年7月24日、兜剣造の子として生まれる。当時、祖父兜十蔵はすでにドクター=ヘルの野望に備えこの年よりマジンガーZの設計を開始、剣造夫妻はその父十蔵の指示により世界各地でミケーネ人の探索に当っていた頃のことであった。
父剣造は、調査の結果ミケーネ人が地下に逃れ今も尚世界征服を狙っていることを突き止め、昭和35年よりグレートマジンガーの設計を開始し始める。その操縦者には甲児を予定していたと謂う。後に剣造が、息子シローにその正体を明かした後もシローをロボット操縦者として本格的には特訓しなかったことを見ると、甲児には剣造が注目するだけの戦闘の素質を見出していたということであろう。
昭和37年4月には弟・シローが生まれる。ところがこの年(12月頃か?)光子力反応炉の実験中、爆発事故により剣造夫妻は死亡してしまった。孤児となった甲児・シローは、祖父十蔵に引き取られ養育されることになる。
昭和38年10月7日、光子力研究所が完成してその初代所長に兜十蔵が就任すると、甲児・シローも共に光子力研究所に居住するようになったと思われるが、この頃のエピソードと思われるものに、もりもり博士と相撲をとったり、釣が好きであったことなどが知れている。また、当人たちは忘れているようであるが、弓さやかともこのころ既に出逢っていたようである。しかし兜十蔵は比較的早期のうちに引退をしたようで、昭和39年頃までには光子力研究所を去っているものと思われる。
以後しばらくの間、甲児の消息には不明な点が多いが、既に両翼にブロッケン伯爵・あしゅら男爵を擁していたドクター=ヘルの地下帝国より「兜十蔵暗殺指令」は発せられていたと見倣すのが至当であり、兜十蔵は富士の青木原の別荘を本拠に近県を諸所に移り住んでいたと考えるべきであろう。そして当然甲児も祖父に附き従い各地を転々とし、学校も転校が多かったものと推定される。甲児の陽性の性向は生来の気質に加え、このような素地があったものではないだろうか。
兜十蔵最晩年には甲児は東京に居宅しており、オートバイに熱中しておりその腕前は暴走族も寄せ付けなかった程であった。また、剣道や空手の腕前も並々ならぬものがあったという。

昭和47年12月2日、ドクター=ヘルの「兜十蔵暗殺」の命を受けたあしゅら男爵により、兜家お手伝い・るみが殺害された。続いて翌12月3日、あしゅら男爵率いる鉄仮面軍団により別荘を爆破され兜十蔵は程無く絶命する。その祖父の死の間際、甲児は驚異のスーパーロボット・マジンガーZを譲り受けた。
ドクター=ヘルの野望を知り、祖父の遺托を受けて甲児はドクター=ヘルの地下帝国と戦うことを決意する。祖父十蔵の一番弟子で、現光子力研究所の所長を務める弓弦之助の後見を得て、マジンガーZは光子力研究所に保管。それに伴い甲児兄弟も東京から移り住んで研究所近くの町(富士吉田市の郊外か?)に居を構えるようになった。そして東城学園に転校する。
当初は甲児はマジンガーZの操縦に四苦八苦をしていたが、弓さやかの指導を得て、もともと素養が高かったのかすぐに乗りこなすようになり、その技量は後にはドクター=ヘル、ミケーネ帝国、ベガ星連合軍の瞠目する程の腕前に達するようになる。彼の戦闘の特色は敵の弱点を見極めその弱点を一気呵成に攻め立てるという、所謂「兵力の一点集中投下」型といえようか。戦機を見る直感に優れ、かつ奇襲的戦法に長けており、華々しい成果を挙げる一方でしかし負ける時も派手に負ける傾向が認められる。しかし、甲児のその性向がマジンガーZの能力を十二分に引き出していたのも事実で、空を飛べない頃のマジンガーZが空の機械獣を度々撃退し得たのは紛れもなく甲児の戦闘能力の高さ故であった。
そして昭和48年7月、ジェットスクランダーが完成するに及んでマジンガーZは益々その戦闘力を高め、昭和48年8月26日には海底要塞サルードを撃沈、ドクター=ヘルをして自軍の別格的な参謀であったブロッケン伯爵を日本攻略に当らせるに至った。しかし新司令官ブロッケン伯爵の攻撃をも退け続け、手詰まりになったヘルは本拠地のバードス島の地下帝国を捨て、伊豆近海に地獄城を建設してマジンガーZ撃破に全戦力を注ぎ込むようになる。それに対応してマジンガーZも新兵器を続々と装備してパワーアップを果たしてゆく。
甲児の自宅が爆破されたのを機に、以降は甲児兄弟は大改修を果たした新・光子力研究所に移り住む。新・光子力研究所での甲児の部屋は5階であったことが確認されている。マジンガーZと甲児の活躍に、この頃には全世界的にその名が轟くようになっていて、甲児はかなりの有名人になっていたようだ。反面、激しい戦闘の連続で甲児は学業の方は疎かになり、当初こそ学科についていけてテストの成績も良かったようであるが、この頃では体育以外の学科はオール1にまで下がっていたという。さやかに邪魔されて実行には移さなかったものの、カンニングまで目論んでいたそうである。また、学校ではよく喧嘩をしていたという。存外ものぐさなところもあり、彼の部屋はゴミ箱のようなありさまだったとか。
当初、甲児はさやかに対しては戦闘にしゃしゃり出るところはあったにせよ、ほのかに好意は持っていたようである。だが、根本的には甲児は「気の強い女は嫌いだ」と言っているように、家庭的な女性が好みだったようである。そのあたり、早くに母親を亡くし若干女性に対しては幻想を抱いているところもあったのであろう。ところが、さやかは男性に従順に従うタイプの女性ではなく男性と肩を並べて同等に伍していこうとする女性であり、甲児に対してもその態度を崩さなかったため、よく衝突を繰り返していた。そして批判ばかりしてきて、あまつさえボスと組んで自分を出し抜こうという行動をとり始めたさやかに対しては、甲児はかなり気持ちは醒めていったようだ。このころ甲児の前に現れた青空ひとみやみさと、そしてエリカなど、甲児の想いは完全に別の女性に向いていった。そしてそれがまた諍いの種となり、さやかとの喧嘩は絶えることがなくなっていた。
一方、独力での世界征服を遂に諦めたドクター=ヘルは、盟友・ゴーゴン大公に協力を依頼する。そのゴーゴン大公の操る妖機械獣はヘルの機械獣を遥かに凌ぎ、初戦でマジンガーZのホバーパイルダーを使用不能に陥れる戦果を挙げるほどであった。間もなく、ジェットパイルダー・出力増強・新ジェットスクランダーに大車輪ロケットパンチという新兵器を引っさげ、巻き返すマジンガーZであったが、戦局は一気に激化し昭和49年4月28日には永らく戦場の友であったアフロダイAが全壊。5月26日、あしゅら男爵と新海底要塞ブードを討ち取るものの、6月2日には甲児の精神的支柱であったもりもり博士が殺される。
もりもり博士の死は相当に甲児にショックを与えたようで、以後甲児は毎日学校帰りに墓参を欠かさなかったそうである。
6月30日ピグマン子爵が参戦し苦境に立たされると、陣容強化を計って弓教授はアメリカから電子工学の権威・ワトソン博士を呼び寄せてマジンガーZの強化を計った。
しかし混戦の最中、突如としてゴーゴン大公の所属するミケーネ帝国の暗黒大将軍が全世界の都市にむけて攻撃を開始する。一回目の攻撃はなんとか凌ぐマジンガーZであったが、暗黒大将軍率いる戦闘獣は強い!実に強かった!! 超合金のマジンガーZすら砕け、或いは裂け、大打撃を被る。
修理を急ぐマジンガーZ。そして甲児自身も重傷を負ったシローの為に輸血をする。そんなボロボロな両者の前に獣魔将軍率いるミケーネ戦闘獣の第二次攻撃の報が入る。出撃しようとする甲児。それを止める弓教授。
「今マジンガーZが出動しなければ世界は暗黒大将軍のものになってしまいます。戦って・・・戦って、それでも敵わぬ時はマジンガーZとともに死ぬだけです!」
甲児は死を覚悟して出撃していった。だが大軍の前に整備不十分なマジンガーZでは無謀だった。戦闘獣に押され押されてあわや敗北とまで追い詰められたその瞬間、危機を救ったのはマジンガーZによく似たロボット・グレートマジンガーであった。時に昭和49年7月25日、次代のヒーローを祝福するかのような、天藍色に染めた暑い夏の日のことであった。
ミケーネはしばし手を引き、マジンガーZとドクター=ヘルを相争わせることにした。その間に甲児は7月28日、ピグマン子爵を倒し、遂には8月25日、地獄城に総攻撃を掛け飛行要塞グール共々ドクター=ヘルとブロッケン伯爵を討ち果たしたのだった。しかし、地獄城攻撃にその力をほとんど使い果たし満身創痍となったマジンガーZと兜甲児に、ミケーネ帝国は好機到来とばかりに牙を剥いて襲い掛かった。すなわち、昭和49年9月1日、戦闘獣ピラニアスとグラトニオスを差し向けマジンガーZを完膚なきまでに敗北せしめたのだ。
戦いはグレートマジンガーの参戦によりミケーネの敗退に終わったが、甲児は重傷を負う。今のマジンガーZではミケーネ帝国の戦闘獣に太刀打ち出来ないと判断した弓教授の勧めにより、以後の戦闘はグレートマジンガーに委ね、休養を兼ね甲児はさやかとともにアメリカはワトソン博士の元へ留学することとなった。9月8日のことである。

アメリカでの甲児の生活は、ニューヨークのワトソン研究所に暮らしさやか共々ハイスクールに通っていて、スポーツ好きの甲児は、サッカーなどにかけてはアメリカのクラスメートを優に上回っていたという。また、放課後はワトソン研究所でロボット工学の勉強に勤しんでおり、着実に科学者への道を歩んでいたらしい。
激闘の日々を癒すかのように、アメリカでの甲児の生活は平穏だったようである。が、一方でドクター=ヘルが甦って地獄大元帥となったことを聞きつけると、密かに来日し剣鉄也にドクター=ヘルのデータやその戦法の特徴を伝え、戦闘指南をしたことが伝えられている。その直後のことかと推測されるが、甲児はアメリカで四機のUFOを目撃することになる。宇宙人実在を確信した甲児は一転、大宇宙に魅せられ、ロボット工学を棄てUFO学・天文学に転向する。各地の天文台や大学の講義をまわり、NASAにも見学をしたという。恐らく、この年5月にはハイスクールを卒業したと考えられ、それを待って正式にNASAのUFO研究センターに出入りをするようになったものだろう。宇宙人と対等の立場で交流するには同等の技術を地球側が持っているということを見せるべきと考えた甲児は、UFO製作を開始する。NASAやさやかの協力もあったようであるが、基本的には甲児の主導のもとTFO製作が進められたようであり、その設計も甲児だったという。
しかし日本ではグレートとミケーネの最終決戦が迫っており、科学要塞研究所絶体絶命のピンチに弓教授は甲児の帰国を要請する。ボディを超合金NZに造り替え出力を6倍に高めたマジンガーZを駆り、甲児はミケーネを薙ぎ倒してゆく。そして死んだと思われていた父・剣造と再会を果たし親子三人の暮らしを夢見るが、鉄也との感情の齟齬からグレートマジンガーとの共同戦線に亀裂が走り、そこに付け入った地獄大元帥により鉄也ともども大苦戦を強いられることとなる。
鉄也絶体絶命の危機に、兜剣造は己が命を棄てて彼を救った。剣造は甲児の手の中で息を引き取ってゆく。父の最期の願いを受け、鉄也と和解を果たす甲児。そしてデモニカ追撃にまわった甲児は鬼神さながらの活躍でミケーネ三将軍を討ち倒し、事実上ほぼ独力でデモニカごと地獄大元帥やヤヌス侯爵たちを葬り去り、ミケーネ帝国の野望を封じ込めた。昭和50年9月28日のことである。
Wマジンガーはロボット博物館に納められることとなった。そしてこれを最後に以後マジンガーZが戦場に現れることは二度となかった。

NASAへ円盤の論文を提出するために、甲児は一人アメリカへと旅立つ。しかし比較的短期間のうちにまた彼は帰国を果たす。日本にUFOが頻繁に出没することを聞きつけた甲児は研究のため帰国を考え、宇宙人実在説を唱える宇門源蔵博士の宇宙科学研究所に研究員として迎えられることになったのだ。
折から、ベガ星連合軍の地球侵攻が始まるや、甲児はフリード星の王子デュークフリードと協力して再び戦いに身を投じることとなる。地球の戦力温存および戦渦の拡大を避けるため、また、補給基地たる光子力研究所の機密保持のためWマジンガーの出動は見合わせられることとなったようであるが、地球側随一の戦士としてデュークフリードとグレンダイザーをサポートする任務を国防軍より負ったものと見られる。そのため、TFOという限定された戦力しか保持できなかった甲児ではあるがよくその信託に応え、グレンダイザーの危機をしばしば救った。
パレンドスのグレート強奪事件に際しては、初めてグレートマジンガーに搭乗し兜甲児健在を大いに示す。やがてTFOが破壊されると、それに代わるダイザーの援護兵器としてダブルスペイザーを宇門博士と共同開発する。しかし、甲児自身の科学者としての資質は、その間JFOを開発した際に平気で設計図とかけ離れたものを造ってしまったことからも考え、大いに疑問とするところである。恐らく、発想には非凡なものを持っているのだろうが、緻密な理論構築は苦手なのではないだろうか。
とまれ、ダブルスペイザー完成後は、それまでのダイザーへの従属的な立場から一変して、ほぼデュークフリードとは対等の戦闘のパートナーとしての側面が強くなる。ダイザーとのコンビネーションクロスは、文字通りデュークと死線を共にすることとなるのである。こと戦闘にかけてはデュークも甲児には全幅の信頼を寄せており、宇門博士も重要な作戦には専ら甲児をもって充てたり、作戦立案にはデューク・甲児両名を参画させるなど、その実力には相当の敬意を払っていた様が伺える。そしてその甲児の実力は、敵将のズリル長官をして「奴を倒せばグレンダイザーの力は半減する」とまで言わしめているほどだった。宇宙の王・ベガ大王すらも、当初は一辺境惑星の甲児を軽視していたものの、後にはその名を憶えさせられるまでになっている。
個人的技量も相当高いようであり、常人の五倍強いといわれている鉄仮面軍団と素手で渡り合ったり、集団となれば戦闘獣並みの戦力を持つキャットルー軍団を薙ぎ倒すなど、地球人としては超人的である。また、空手三段の荒野番太と喧嘩して優勢に引き分けるなど、武道家としても高校のインターハイなら充分出場出来得る実力である。実際、甲児は空手においては黒帯の有段者であった。剣道に関しても、柳生新陰流奥義「無刀取り」、俗称真剣白刀取りを実戦でいきなり成し遂げるところなど将しく天才と称して差し支えないように思われる。射撃の腕前も衆に優れ、遠方から綱を撃ち切ったりバレンドス配下のベガ星兵士たちを一瞬に撃ち殺したり、マリアの銃のみを撃ち落すなどの他、宿敵ズリル長官もその最期は甲児に射殺されている程である。地球より重力の重いフリード星の人間で、かつ特殊な訓練を永年積んで来たデュークフリードには肉体的には及ばないまでも、抜群な戦闘センスを持つ甲児はまぎれもなく超一流の勇士だった。
この戦いを通して、甲児は徐々に牧葉ひかるに想いを寄せていったようだ。当初は甲児は、ひかるがデュークが好きであることを知っていて二人の仲を後押しするような態度をとっていた。だが、ひかるは好きな男性の為に命がけで戦闘にも参加するようになってゆく。好きな男性の為に全てを捧げ尽くす愛・・・・・そんなひかるの真摯な態度にいつしか甲児は惹かれていったのかもしれない。あるいは甲児は、さやかのような「張り合ってくる女性」に疲れ果てていて、好きな男性に素直な愛情を示すひかるのその愛情表現に羨ましさを憶えていたのかもしれない。言わば、ひかるのデュークに対するひたむきさを見て、「自分もあんなふうに愛されてみたい」という思いだったのではないだろうか。そしてそれは、はっきりとひかるへの感情を知った後ではひかるへ対して一切恋愛的感情で接していないところからも伺える。
ワン・モア・ピリオドーーーーーーー。甲児が自分の想いにひとつのケリを付けたそのころ、ダイザーチームには新しいメンバーが参入することとなる。それがデュークの妹であるグレース・マリア・フリードである。マリアはフリード星人らしく並みの地球人などには及ばない能力を持ち合わせており、甲児にも匹敵するぐらいの戦闘能力を有していた。そのため当初はなにかと甲児に張り合う様子を見せたマリアだったが、もともとマリアは「マジンガーZの兜甲児」には憬れをもっていたらしく、次第に甲児に恋心を抱くようになっていったようである。なにかとまとわりついてくるマリアに対して甲児もマリアと行動をともにすることが多くなっていく。ただし、それは甲児にとっては恋愛感情などではなく、「自分に親しみを持ってまとわりついてくる親友の妹」の面倒を見るといったところだったのかも知れない。というか、5歳年下の14歳のマリアではアウト・オブ・眼中だったようで、かなり積極的に好意を示してくるマリアの態度を見てすら、マリアが自分に寄せる想いにはまったく気付かなかったようである。
闘いが終盤を迎えるにつれ、甲児は徐々に大人びていった。「俺が俺が」といった猪突心が無くなりチームワークの大切さ、補佐することの意義を悟っていったように感じられる。周囲の人を気遣う包容力の大きな男に成長していったと云えよう。マリアがフリード星の記憶のことで思い悩んでいる時、そしてマリアの父・フリード王が生きているかもしれないと知ったとき甲児は様々に力になっている。そして、デュークの婚約者だったルビーナ王女が地球に来たときには態度の不鮮明なデュークを責めることなく力添えをし、またデュークが命令に反してこっそりルビーナに会いに行こうとした時もそれを見逃してそっと護衛を務めるなど、男意気を見せている。そしてルビーナの死に際して、泣き駆けてゆくマリアをそっと制して、その最期の時間をデュークとルビーナ二人きりに過ごさせようとする計らいを示すなど、この頃の甲児はまさに公私ともにデュークの「心友」というに相応しく、デュークはそんな甲児に、自分の死後の妹マリアの行く末とフリード星再興を密かに託したほどであった。
昭和52年2月、ベガ大王の最後の決戦に臨んで、デュークは先制攻撃をかけてスカルムーンと刺し違える覚悟で出撃する。その様子に只ならぬものを感じた甲児は、身を呈してその暴挙を止める。「死ぬときは一緒だ。共にこの地球の平和を守ろう」という誓いは甲児の信条でもあったのだ。甲児の真情に押されてデュークは単独でのスカルムーン奇襲は断念する。しかしその時、決戦の露払いにレディガンダルが最強のベガ獣・グラグラで逆に奇襲を掛けて来る。ダイザーは出鼻を挫かれて大苦戦を強いられるものの、甲児がコンビネーションクロスを掛けたことにより形勢は一気に逆転、ダイザーと甲児へ怨念の言葉を吐いてレディガンダルは無念の敗退をせざるを得なかった。武力によるダイザーチームの撃破を諦めたレディガンダルは、ベガ大王を暗殺して地球の一区画を貰おうと画すが、ガンダルの邪魔立てによりベガ大王暗殺に失敗し、処刑される。同人格のレディガンダルを処刑してもはや命旦夕に迫ったガンダルは、ベガ大王への最後のご奉公にと母艦で特攻を掛けるが、これもダイザーにより葬り去られる。そして遂にベガ大王との最終決戦、甲児はひかる・マリアを率いて宇宙戦用スペイザー・コズモスペシャルを駆ってダイザーに尽力、戦いを勝利へと導く。
戦い終わって故星へと還るデュークとマリアを見送る面々・・・・しかしその見送りの列に甲児の姿はなかった。「さよならを言うのがイヤなのだろう」とマリアは言う。だがあるいは甲児は涙顔を見られるのが嫌だったのではないかと思う。緑の大地を飛び立つグレンダイザーを、甲児は独りダブルスペイザーで見送る。
「大介さん、マリア、頑張れよ」
その言葉は万感の想いを振り絞って口をついたものだろうか・・・・・・・・・。ダブルスペイザーの翼を振り、甲児はデュークとマリアの旅立ちを送った。


兜十蔵

生年月日 明治36年頃
血液型   不明
身長    不明
体重    不明

明治36年頃出生。その出自は不詳。
彼の経歴もその半生は曖昧模糊としているが、明治37年の日露戦争の勝利、明治42年日韓併合、明治44年関税自主権の回復、そして大正7年第一次世界大戦のシベリア出兵など、欧米列強と伍すまでにのし上がっていった帝政下の意気軒昂な世情の中で、多感な年代を過ごしていることは彼の人生を考える上で注目を要する。つまりは、世間が欧米列強と角逐するだけのありとあらゆる力を欲していた時代を生き、当然その最右翼にあったのが「科学」だったのだ。兜十蔵の科学を学び始めた素志は詳らかではないが、こうした時代の要請とそれはうまく合致していたと云えよう。やがて大正7年、第一次世界大戦が終戦を迎え翌年ヴェルサイュ条約が締結されると、日本は押しも押されぬ戦勝国の一員となった。ドイツ経済の混乱により日本貨幣もドイツ国内において幅を利かし、戦勝国日本からは大勢の留学生が殺到したというが、兜十蔵もその恩恵に浴した者の一人で、敗戦間もないドイツへ大正9年、大学に留学を果たしている。
この大学において十蔵はヘルと同級生であったという。専攻は恐らくヘルと同じく原子物理学だったのであろう。あの傲慢なヘルをして「自分には及ばないにしてもおそるべき天才ではあった」と言わしめるほどに十蔵の学業成績は優秀だったようである。大正13年、恐らくヘルと同じこの年に同大学を卒業したものか? この年、ヘルと十蔵は対立を迎えたという。対立の内容は不明である。その結婚した年代は不明であるが、昭和4年頃、息子の剣造が生まれている。以後また暫く兜十蔵の足取りは掴めないが、同年世界大恐慌を皮切りに満州事変、国連脱退、二・二六事件に支那事変、そして第二次世界大戦と、日本は激動の時代を迎える。十蔵がこれらにどれだけ関係したものか分明の限りではないが、少なくとも昭和13年、国家総動員法が発動されてからはその科学知識を軍に提供することになったであろうことは想像に難くない。あるいは想像を逞しくするならば、後年の超合金開発や超エネルギーの発明、そして各種武器開発の大多数はこの時期に緒を発したものであろうかとすら考えられる。
のっそり・もりもり・せわし博士が十蔵の教えを受けた時期というものも明らかではないが、三博士の容姿から年齢を考えるにこの戦前・戦中の頃に弟子としたのであろう。また、アメリカの科学者で後にロケット工学の権威といわれるゴードン博士との親交もこの頃のことかと考えられる。
やがて日本の敗戦により戦争が終結するが、十蔵はいわゆる「公職追放」の憂き目には遭わなかったものと思われる。その科学者としての戦争協力がおおむね平和利用に関わるエネルギー開発が主だったことによるのではないだろうか。日本独立後間もなく、国際科学アカデミーからロードス島遺跡調査団に招かれたのも、十蔵が戦争犯罪に問われない部類の研究に従事していたことの証と云えるだろう。
弓弦之助が十蔵に私淑したのはこの戦後間もなくのことであろう。やがて、占領下の日本が独立してその翌年昭和27年、十蔵はロードス島遺跡調査団のメンバーに選任され、その探索に出る。息子の剣造がアメリカに留学したのもこの頃のことかと批准できる。このロードス島遺跡調査に当って、かつての学友であったドクター=ヘルも団長として参加する。調査団は、ミケーネの巨人ロボットの遺構を発見する。その技術の素晴らしさに調査団は驚嘆の目をもって世紀の発見を祝した。そして古代ミケーネ人の技術を称えるために調査団はロボットの復元を決定する。しかし、十蔵はその巨人ロボットを見て不審を抱く。ロボットの機体は光っていて、とても数千年を経た金属には思えなかったのだ。むしろ、これを造られてまだ間もない物であると十蔵は断定する。そしてそのことは、ミケーネ人が現代も生きていることを示し、また、戦闘ロボットを製造していることから、ミケーネ人が何か善からぬ事を企んでいると考えざるを得なかった。とまれ、ロボットの復元事業は正式決定した以上それを阻むわけにはいかない。十蔵はロボット復元に従事する傍ら、可能な限りロードス島のミケーネ人の調査を進めたようである。ロボットの復元が為ったのは諸書から考察するに昭和30年頃だったと思われる。だが、十蔵はミケーネ人の脅威にばかり捕われていて、目前の危難には気付かなかった。即ち、世界征服を策すドクター=ヘルは他の団員には極秘で、ミケーネの復元ロボットにリモートコントローラー装置を備え付けておいたのだ。そして、自分の野望の妨げになる他の科学者達をロボットたちに襲わせ、そのほとんどを抹殺せしむる。しかし、この惨劇から兜十蔵はただ一人生き延びる。船で命からがら脱出した兜十蔵をドクター=ヘルは巨人ロボットに襲わせるが、間一髪、兜十蔵は地獄のロードス島を逃れ去っていったのだった。
日本に逃げ帰った十蔵は、ほぼ日本政府にありのままの事実を告げ、その保護下に入ったと断定してまず差し支えないと思う。推定される事柄としては、十蔵個人はドクター=ヘルの暗殺から逃れる為に政府を頼ったことと思われるが、世間に事件が公開されなかったことから考えると、日本政府はこの事実を他国には秘匿したものと見える。日本は独立したばかりで国際的には発言は憚られることと、事件の告発が、恐らく調査団結成に当って指導的立場にあったであろう事実上の宗主国・アメリカの面目を損なうことを恐れてのことかと思われる。その為、ただ一人生き残った兜十蔵博士への遺跡調査団行方不明に関わる各国からの諮問についても、日本政府がすべてシャットアウトしたものであろう。そして、十蔵はドクター=ヘルの野望を阻む為の手段として、無敵のロボットを建造することを決意する。それは十蔵個人のみの意志に非ず、マジンガーZの建造も光子力研究所の開設も、国家決定であったと考えるべきであろう。後に落成する光子力研究所が国の補助を受けているということと、超合金Zの精製法が国家機密であるという事実がそれらを証して余りある。先ずは昭和30〜32年の間は、ロボット建造に先立ってそのエネルギー開発や機体を構成する材質の研究に専ら充てられたことと思われる。一方で十蔵は、息子の剣造にもう一つの懸念であるミケーネの調査を命ずる。
昭和32年、この年に十蔵はマジンガーZの設計を開始する。奇しくも同年7月24日、運命の申し子であるかの如く息子の剣造に後のマジンガーZの操縦者となる甲児が生まれる。昭和35年頃、剣造は調査の結果、ミケーネ人が今も生きていて世界征服を目論んでいる可能性があると結論づけ、その報告を受け十蔵は剣造に、更に強力なロボットの研究と建造を命ずる。剣造はそれに応え、この年グレートマジンガーの設計を始めたのだった。しかし、昭和37年マジンガーZの超兵器の実験中、息子の剣造とその妻は光子力反応炉の爆発事故に巻き込まれる。急を聞き十蔵は急いで駆けつけるが、二人は既に死亡していた。ところが、奇跡的に剣造の脳のみは無傷で、一縷の望みを掛け十蔵は剣造にサイボーグ手術を施しこれを蘇えらせるのだった。死の淵から蘇えった剣造だが、しかしサイボーグとなった身を息子たちに見せたくないと剣造は二人の息子たちの前から姿を消してしまう。世間からは死亡したと見せてグレートマジンガー建造に没頭する剣造に、十蔵は二人の孫、甲児・シローを手許に引き取ることにした。しかし、当然十蔵と剣造の間には以後も密なる連絡は続いたものであろうと考えられる。
昭和38年10月、計画の重要な柱である光子力研究所が落成する。十蔵はその初代所長に納まり、引き続きマジンガーZの建造と光子力や超合金の研究に心血を注ぐ。その所長時代、十蔵は弟子の弓弦之助にマジンガーZの建造のことやミネルバXの開発、そしてミケーネ帝国の存在を匂わす言葉を伝えている。そして、おおむね昭和39〜42年までのことと推測されるが、全世界に正式に光子力エネルギーと超合金Zの開発に成功したことを発表し、そして研究所を弓弦之助に譲って引退した。以後は十蔵は研究所近くの富士山麓青ヶ原の別荘でマジンガーZの建造に専念する。その間の費用やジャパニューム鉱石の提供は日本政府を通じて為されたものと推定できる。また、引退により日本政府の保護からは一応外れた形となり、ドクター=ヘルからの追求をかわすために十蔵は青ヶ原を中心に孫を連れ近隣諸県を転々と居を替えたものと考えられる。
十蔵が、マジンガーZの操縦者として孫の甲児を選んだ時期は、甲児4〜5歳の折かと思われる。幼いながらもこの孫に戦いに関する天賦の才能を見出したものであろう。そして、昭和47年10月10日、遂に無敵の超ロボット・マジンガーZは完成する。マジンガーZの細かな調整に余念がない十蔵・・・・・・・・・・・・だが、最早十蔵に残された人生は尽きようとしていた。かねてより十蔵の行方を探っていたドクター=ヘル旗下の鉄仮面兵士軍団にその居所を暴かれ、暗殺指令を受けたあしゅら男爵により別荘ごと爆破される。その瓦礫の下敷きになった十蔵は、急を聞き駆けつけた孫の甲児とシローにマジンガーZを譲り渡し、そして息を引き取った。享年69歳、時に昭和47年12月3日のことだった。


兜シロー

生年月日 昭和37年4月頃?
血液型   AB型
身長    不明
体重    不明

兜剣造の次男として生まれる。その出生年月日は文献によってまちまちで特定するのは困難であるが、文献を整理してゆくと概ね昭和37年4月頃とするのが最も妥当と考察する。氏名は「兜志郎」とも伝えられている。
シローが生まれて幾ばくもしないうちに、父と母は実験事故により死亡する。その為、シローは祖父十蔵と兄甲児の三人で暮らしていた。
あまりにも幼かったシローは父母の顔を覚えてはおらず、ただ写真でのみ知るものであった。その為、父母への想いは相当深いものがあったようであるが、それでも祖父・十蔵と兄・甲児に育まれシローは元気で明るい少年に育っていった。
兄の甲児は父親似であるが、シローはその茶褐色がかった髪の色といい、どちらかと言えば母親似といえそうである。
その祖父・十蔵はドクター=ヘルの魔手を避ける為、あちこちに移り住んでいたと考えられ、それに付き従っていたシローも学校は転校が多かったものと推測される。「引越しって新しい友達が出来て楽しいね」と当人が言うように、転校は相当慣れていたものであろう。
昭和47年の終わりごろには東京に住んでいて、お手伝いのルミと仲がよかったようである。
だが、昭和47年12月2日、いきなりお手伝いのルミが何者かに殺害される。その後すぐに祖父・十蔵から、青ヶ原の別荘に来るように指定され、兄・甲児とともに別荘へ急行した。だが、別荘は破壊されており、その廃墟の中に祖父・十蔵が倒れていた。そしてシローは兄とともに十蔵からマジンガーZを託されて、十蔵を看取るのだった。
二兄弟は二人っきりの孤児となってしまった。甲児は十蔵の遺命によりマジンガーZに乗り込むが、操縦法が分からずにマジンガーZを暴走させてしまい、あわやシローを踏み潰しそうになってしまう。それを救ったのは弓さやかの搭乗するアフロダイAであった。
折から、ドクター=ヘルが世界征服を目指して、邪魔者兜十蔵を抹殺したことを契機として機械獣たちを光子力研究所に派遣する。その機械獣軍団を甲児はマジンガーZの力で撃退する。それが縁で、以後二兄弟は光子力研究所に出入りすることとなり、研究所近くの町に引っ越してくる。
東城学園初等部に転校してきたシローは、そこで鬼丸という少年に転校生にありがちな嫌がらせを受けたようである。しかし、甲児ほどではないにせよなかなか負けん気の強かったシローは、鬼丸グループに反撃をして、それ以後鬼丸はシローを苛めることはしなくなったはがりか、シローには一目置くようになったようである。
また、光子力研究所ではさやかや、せわし・のっそり・もりもり博士達とも仲良くなってゆく。また、「アニキのハジはオレのハジだ」とばかりにボス達三人組とも度々衝突してゆくが、三人と行動をともにしてゆくうちにすっかり仲良くなっていったようである。
しかし、自宅にホバーパイルダーを保管し、ドクター=ヘルとの戦いの最前線を兄・甲児が担っていることから、自宅は度々襲われて、シローも人質になったり危険な目に遇うことが何度かあった。そして遂には自宅をヘルに爆破され、甲児・シローはそれ以後は光子力研究所に暮すこととなる。
シローは、ドクター=ヘルとの激戦の中にも闊達さを失うことはなく、実にこの年頃の男の子らしく甲児とさやかの間柄を冷やかしたり、また、自身もふとしたことから知り合いとなった美少女・ローレライと仲良くなったりと、戦争にへこたれる風はなかった。だが、ローレライとの関係はシローにとって祖父と死に別れた時以来の悲劇と終わった。
シローは或る日、鉄仮面に襲われていた美少女・ローレライを助けて知り合いとなったのだが、その父であるシュトロハイム=ハインリヒは一度死んでドクター=ヘルに甦らせてもらった男だった。ヘルは、生き返らせたハインリヒに、マジンガーZをも打ち倒す機械獣の製作を依頼したのだ。科学者として兜十蔵に対抗意識を持っていたハインリヒは、最高の機械獣を仕上げるべく、機械獣の魂とも云えるサイボーグ・ローレライをつくりあげたのだった。しかしハインリヒは機械獣の魂として造ったローレライを次第に本当の娘のように愛していった。そのためハインリヒはローレライを伴ってヘルの元を脱走して身を隠していたのだ。ヘルの追っ手がかかり、惨殺されるハインリヒ。しかしハインリヒは死の間際にローレライにその真実を告げる。ハインリヒの真意がどこにあったのか今となっては定かではない。しかしそれを、「マジンガーZ打倒によるハインリヒ博士の名の高揚」にあると信じたローレライは、シローの制止を振り切って「人としての人生」を棄ててマジンガーZに挑んできた。兄と好きな女の子の殺し合い・・・・・。シローは初めてそんな「大義を持った者同士の戦い」に直面することとなった。どちらが勝ったとしてもシローはどちらか一方を失ってしまう。両者の闘いに割って入って戦闘を止めようとするシローではあったが、二人の闘いを止めるべくもなく、決闘はローレライの死で終わった。
初恋の少女の死でショックを受けたシローではあったが、その心を癒すかのように光子力研究所にお手伝いとしてみさとが入った。みさとに母の面影を抱いて、シローはみさとに懐く。
だが、戦いの悲劇はそれに止まらなかった。ホバーパイルダーは破壊され、アフロダイAも壊れ去っていった。そして研究所で仲の良かったもりもり博士も、ブロッケン伯爵の姦計により命を落としていった。打ち続く闘いに、兄の甲児も今やシローに構っている余裕を無くしつつあるようだった。
そんな中、昭和49年7月24日、ミケーネの戦闘獣が世界各都市を襲った。東京には一際大群の戦闘獣軍団が押し寄せてくる。迎え撃つマジンガーZだったが、研究所を留守にしている間に戦闘獣の別働隊が押し寄せ、シローは瀕死の重傷を負う。なんとか戦闘獣軍団の第一波を押し返した甲児は研究所に戻ると、今ではたった一人となってしまった肉親の弟のために献血を行う。そして戦闘獣軍団の第二波を前に死を覚悟して出動していった。兄の献血によりシローは命を取り留め、また甲児も謎の味方に助けられて事なきを得たが、ドクター=ヘルとの闘いはいよいよ終盤を迎えつつあった。
ドクター=ヘルは最後の闘いの時間稼ぎにと、シローを利用することを考えた。幼い頃に父母と死に別れて心の中に寂しさを持つシローに目をつけたヘルは、シローの母そっくりのサイボーグを送り出して、シローを誘惑させる。最初は「母は死んだはずだ」と半信半疑だったシローだが、母恋しに負け、シローはニセの母の言うがままにジェットパイルダーを破壊してしまう。事態を聞きつけた甲児はシローとともに母と名乗る女に会いに行き、その母がニセ者であることを見破る。それでも信じようとするシローではあったが、配下に鉄仮面が出てくるに及んでは、この母がニセ者であることを認めざるを得なくなってしまう。泣きながら偽者の母を撃つシロー。闘いはマジンガーZが制したものの、シローは心に深い傷を負う。
そして・・・・・・
遂にドクター=ヘル一派はマジンガーZに倒されたが、それまでじっと戦況を見つめていたミケーネ帝国は、昭和49年9月1日、闘い疲れたマジンガーZと兜甲児に襲い掛かってこれを打ち倒した。新たな敵、戦闘獣はグレートマジンガーが倒したものの、甲児はこの闘いで行方不明となってしまう。甲児の生死は研究所では絶望視されていた。あいつぐ戦いのなかでついに最後の肉親を失ったと思ったシローは、慟哭するとともに、自分が第二の兜甲児としてミケーネと闘うことを誓ったようである。
だが、兄の甲児は生きていた。グレートマジンガーの所属する科学要塞研究所で手術を受けて一命を取り留めていたのだった。科学要塞研究所に招かれた弓教授をはじめとするシローたちはそこで静かに眠る甲児と再会する。甲児に駆け寄ろうとするシローをしかし剣鉄也と名乗る青年は腕を掴んで制止する。漸く生死の境を脱した甲児を静かにさせてやろうという、彼なりの心遣いだった。それを知ったシローは鉄也を見直す。
やがて快気した甲児はさやかとともに休養を兼ねてアメリカのワトソン博士の元へ留学していった。シローの身元は引き続き弓教授が引き受けることとなったが、たった一人の肉親の甲児は渡米しておらず、また、仲良しだったさやかも今は光子力研究所にいないとあって、シローはある感の冴えからか、科学要塞研究所に入り浸るようになる。そんな寂しげなシローの様子を気遣って科学要塞研究所のジュンはシローを科学要塞研究所に引き取ることを提案、そのまま引き取る。シローは城南学園に転校となった。徐々に元気を取り戻すシロー。だが、シローはもう以前とは違って、自分がいつか悪者と戦うのだとばかりに鉄也に弟子入りを願い出て将来グレートマジンガーに乗ることを目指したり、自分専用のロボットを製作しようとするようになる。
そんなシローは、一時期「強さ」というものを履き違えて弱いものいじめに走ったこともあったが、周囲に科学要塞研究所所長、鉄也、ジュン、ボスたち三人組や近所の牧師の薫陶を受けて、精神的に成長してゆくようになる。また、城南学園では愛らしい白鳥ハルナというガールフレンドも出来ていった。
一方、日々を科学要塞研究所で過ごしているうちに、シローは所長に父親の幻想を抱いていったようである。写真でみるシローの父親と所長が似ているというところからそのように思ったのであったろうが、写真でしか憶えていない父と所長が同一人物であるとは今ひとつ確証がなかったことと、すでに自分の父は死んでいること、そして以前母恋しの感情をドクター=ヘルに利用された心の傷から、彼が自分の本当の父であるとは思い至らなかったようだ。だが、そんなシローの淡い幻想は科学要塞研究所の所長には伝わらず、授業参観の出席をシローは断られてしまう。
やはり自分は所長の本当の子ではないからだとばかりに幻想を砕かれたシローは、折からの暗黒大将軍の猛攻の前に人質とされるが、「死んでもいい」と口走る。そんなシローの姿を見て、科学要塞研究所の所長は研究所の明渡しすら厭わずシローを救おうとした。そして、「死にたがっていた」シローを庇って死んだのは客員だった飛田博士だった。二人だけではない。死んでもシローを救おうとするボスたち三人組、鉄也、ジュンの尽力にシローは自分が間違っていたことを悟る。親がいなくとも強く生きなければとシローは誓う。
そんなシローに、科学要塞研究所の所長はロボット操縦の練習用にと、ロボットジュニアを造ってプレゼントしてくれる。昭和50年2月23日のことである。だが、ロボットを手に入れたシローは調子にのって周囲の制止も聞かずに火山島基地まで出向いて危機に陥ってしまう。その場は怪我を押してまで出動してくれた鉄也のお陰で事なきを得たが、科学要塞研究所所長・兜剣造はせがまれてロボットを与えたことを後悔する。そう、紛れもなく彼こそは甲児、シローの父親・兜剣造だったのだ。ずっと寂しい思いをさせ、名乗りすら挙げてやれない息子にせがまれた時、彼はつい甘くなってしまいロボツトを与えてしまったのだと言う。しかしそんな甘さが今回の危機を招いたことを悟った剣造は、もはや自分が父であることを隠している時期は過ぎたと思い定めて、ついにシローに真実を告げる。しかし、事実を告げられたシローは反発を示した。「本当のお父さんならどうして僕たちが寂しい時に一緒にいてくれなかったんだ」と・・・・。その言葉に返す言葉のない剣造。十数年もの間、父に放っておかれたシローは、今さら剣造を父と認めることは出来なかった。
折から、科学要塞研究所を戦闘獣が襲う。グレートもビューナスも戦闘獣にやられて身動きがとれない間に、研究所は戦闘獣に蹂躙され、その戦闘で剣造は傷を負うのだった。剣造が傷を負ったことを聞いたボスたちやハルナは、シローに父親に会いにいくことを強く勧める。しぶしぶ管制室に向かうシローではあったが、傷を負った剣造の姿を見たとき、今まで張っていた意地は緊張の糸が切れたかのようにすっかり吹き飛んで父に駆け寄っていた。
「お父さん!!」
初めてそう叫ぶシローに、剣造は自分のもう一つの秘密を打ち明ける。自分は実験事故により一度は真実死んだことを。父十蔵の手でサイボーグとして生き返ったことを・・・。そしてサイボーグの化け物となった自分がいてはシローや甲児ににショックを与えるかもしれないと思って身を隠したことを告げる。
「もういいんだよ、お父さん・・・お父さん、ごめんなさい!」
そう泣きじゃくって父に抱きすがるシロー。十数年の別離を経て、今ようやく父と子は名乗りを上げ合うことが出来たのだ。
いつか平和が訪れることを夢見て、剣造とシローはそれぞれの戦いを戦い抜くことを誓いあった。
親子の名乗りをした二人は以後は同じ部屋で起居を共にするようになり、その睦み合う姿はまるで11年の溝を埋めるかのようだった。だが、ミケーネとの戦いはまだまだこれからが本番であった。武人の意地をかけて最後の闘いを仕掛け、そして敗れ去っていった暗黒大将軍ーーーーーーー。そしてその後釜として地獄から甦ってきたドクター=ヘルこと地獄大元帥。ミケロスが大破すると地獄大元帥は今度は無敵要塞デモニカを繰り出してくる始末であった。
その、息次ぐ暇もないミケーネの猛攻に、剣造は陣頭指揮と新兵器開発に追われる。その為、シローとの休日も満足に過ごせないほどであった。シローは、そんな状況に反発を示すこともあったが、それでも実の父との生活を送れることには満足であった。
そんなシローも、母親に関する思慕はまだ燃え残っていたようであり、学校の担任の女性教師の森山優子に母の面影を抱いて憬れていた。だが、そのシローの想いを利用してミケーネは森山先生を戦闘獣にしてしまう。グレートはなんとか森山先生を救うが、シローはつい父に「お父さんはサイボーグだからそんな冷たいことが云えるんだ!」と詰ってしまう。シローは気が動転したときについ口走ってしまっただけで、そのことをすっかり忘れてしまったようだが、剣造にはその言葉は深くこたえたようである。
火山島基地を失い、鳥類将軍バーダラも討ち取られたミケーネ帝国は、遂にグレート撃滅の為に大攻勢をかけてきた。グレートを、ビューナスをそして科学要塞研究所を分断して各個撃破を目論む地獄大元帥の前に研究所は転覆寸前まで追い詰められた。
その危機に際して弓教授は科学要塞研究所と合流し、アメリカの兜甲児を呼び戻すという英断を下す。再び始動したマジンガーZの活躍によりデモニカはほうほうの体で逃げ帰ってゆく。
甲児帰国歓迎の席で剣造は初めて甲児と父子の対面を果たす。親子三人で暮す日のことを夢見るシローだが、暖かな家庭からはじき出されるように感じた鉄也は甲児に反発を示し、二人の仲はこじれていった。実の兄と兄のように慕っていた人との不仲は、シローにとってつらいことであった。なんとか二人の仲を取り持とうとするシローではあったが、チームワークの崩れたマジンガー軍団の隙に付け入るように地獄大元帥は戦闘を仕掛けてきた。光子力研究所をで危機に陥るマジンガーZ。その危機を前にして、シローは鉄也を説く。
「甲児兄ちゃんのアニキは鉄也さんじやないか。僕達みんな兄弟みたいなものだろ」
その言葉に鉄也はようやく目が醒める。何よりも、弟のように接してきたシローにまでこのように心配をかけていたことに気付いて、鉄也は己の狭量さに気づいた。そして甲児救出のために鉄也は出撃していったのだが、しかし時は既に逸していた。戦闘獣バルカニアに奇襲されて鉄也は身に重傷を負い、辛くもバルカニアを倒すもののその爆風に巻き込まれ意識を失ってしまう。その状況に好機到来とばかりに地獄大元帥はグレートに止めを刺すべくデモニカをグレートに差し向ける。その鉄也の危機に、剣造は研究所の管制室ごと出撃して体当たりを敢行、剣造の体当たりを受け相当の被害を被ったデモニカは一時後退していったものの、瀕死の重傷を負った剣造は駆けつけた甲児の腕の中で息を引き取って逝った。
シローは光子力研究所で剣造の遺体と対面した。しかし闘いはまだ終わっていない。怒りに燃える甲児は次々と将軍たちを薙ぎ倒し、デモニカと雌雄を決していた。その助勢にさやかが、ジユンが、そして重傷の鉄也が加わる。四大ロボの合体攻撃の前に遂にデモニカは爆発四散し、永かった戦いは終わりを告げた。
兜剣造の葬送は教会で行われた。親子として暮らした期間はほんの数ヶ月だったが、父との思い出はシローの心の中で永遠に息づくであろう。
終戦後、甲児は再びアメリカに戻ったが、シローはおそらく光子力研究所に残ったものであろう。
程なく甲児は再び日本に戻ってきたが、すぐにベガ星連合軍の侵攻が始まり、甲児はそのまま宇宙科学研究所に留まって戦闘に従事する。地球の戦力保持および戦渦の拡大を避けるためという理由と、補給基地たる光子力研究所の機密保持のため、国防軍の指揮の元にマジンガーやさやか・ジュンたちはは戦闘参加を見合わせたものと考えられる。そして、その間甲児は機密保持のため光子力研究所への接触を断っていたと考えられ、シローも甲児とは面会はおろか手紙や電話もままならなかったのではないかと推測される。時折光子力研究所に寄せられる兄・甲児の消息を聞くのみの状況だったことであろう。


グレース・マリア・フリード

生年月日 昭和37年9月5日〜12日頃
血液型   不明
身長    152p(伝聞ニヨル)
体重    40s (伝聞ニヨル)

地球の日本の暦でいう昭和37年9月5日〜12日頃、フリード王の娘として生まれる。デュークフリードとは同母兄妹と思われる。
生母はマリア出生後いくばくもなくして亡くなり、父・フリード王は後妻を娶ったようである。デュークもマリアも、この継母を実の母のように慕っていたらしい。
幼少の折からマリアは活発な娘であったようで、幼馴染のケインとはよく王宮近くの野原を駆け回っていたことが伝わっている。また、昭和43年頃ベガ星から留学に来ていたルビーナ姫とも仲睦まじく、可愛がってもらっていた様子が伺える。
そのまま何事も無ければフリード星の王女としてマリアは幸せな一生を送ったであろう。が、昭和45年6・7月頃突如ベガ星は平和なフリード星に攻撃を仕掛けてきた。
運命のその日、マリアはケインと雪原を駆けずりまわっていた。しかし、ベガ星の円盤が襲い掛かり、二人の間を爆撃が縦断する。爆煙の彼方にケインの名を必死に叫ぶマリアであったが、ケインの姿は既に何処にも見当たらなかった。炎上する王宮まで必死に彷徨い戻ってきたマリアであったが、父母の姿は発見できず、途中ようやく行き会えた兄デュークフリードはグレンダイザーを守る為、マリアを炎渦巻く王宮に見捨て去ってゆく。
兄に見捨てられ一人取り残されたマリアは、フリード王の侍従に助けられ、爆煙に紛れて小型円盤で脱出することに成功。一路地球へと連れられ落ち延びていった。地球は日本の木曽地方に潜伏することになった侍従とマリアだったが、恐怖のためかあるいは故意に記憶を操作されたものか、マリアはフリード星での記憶一切を無くし侍従を祖父と思い込まされ、以後地球人として育ってゆくのである。
侍従との二人での暮らし振りは、山奥とはいえ随分と豪勢な邸宅に居住していたことを考えると、かなり裕福だったようである。しかし、すでに高齢だった侍従がさほど労働力があったとは思えず、恐らくは侍従は円盤の部品の技術を地球に伝え何がしかのパテント料を貰っていたのではないかと推測される。
2年後の昭和47年、ドクター・ヘルの世界征服戦争が始まるが、マリアの住む木曽地域には直接の戦火は及ばなかったようで比較的平穏に過ごしたようである。そしてその世界征服戦争の救世の英雄・兜甲児に、マリアは少なからず憧れを抱いていたものと思われる。後に、甲児にむかって「なにが兜甲児よ、見損なったわ!」と突っかかってきた裏側には、マジンガーZの兜甲児への憬れの裏返しがあったと考えられるからである。当時小学4年生の女の子だったマリアにとって、無敵のロボットで機械獣と渡り歩いていた兜甲児はまさしく英雄だったのであろう。他の人間に対しては随分上品に敬語を使うマリアが、甲児にだけは呼び捨てで話し掛けるのも、当時甲児の人気がアイドル歌手並みだったため、巷間では「甲児」と愛称をこめて呼ばれていたためではないかと推測できる。
しかし、だとするとマジンガーZがミケーネ帝国に敗れて甲児がアメリカに留学していった事件は、マリアにとっては少なからずショックな出来事であったことであろう。新しいマジンガーと操縦者剣鉄也のことは世間一般には暫らくは伏せられていたことであろうから、甲児への思慕は益々募ったことと思われる。
運命の妙とでも言うべきか、当時のマリアにはその憧れの兜甲児と後年ともに闘うことになろうとは、想像だにできなかったことであろう。
何時頃からかマリアは、生来の性格によるものかあるいはその憧れの甲児に触発されてのことか、バイクを乗り回すようになっていた。地球の1.4倍の重力をもつフリード星で生まれたため、一般の地球人に比べ体力に優れるマリアはその感の鋭さと相まって、年長の少年たちをも手玉にとっていたようである。
暫らく甲児の消息が世間一般からは絶え、少しくそのことを忘れかけていた頃、昭和50年10月頃、仇敵であるベガ星連合軍の地球侵攻戦争が始まった。兄デュークフリードのダイザーとマジンガーの英雄兜甲児がこのベガ星連合軍と密かに死闘を繰り広げていたが、地球の国防軍側は徹底して世間にはベガ星連合軍の存在を守秘して報道管制をしていたらしく、マリアや侍従もベガ星が地球に侵攻してきていることも、ましてや兄が生きていてグレンダイザーで戦っていることも一切知らずに過ごしていた。いつもと同じように年長の少年たちとバイクレースに興じて日々を過ごしていたのであった。

だが、ベガ星連合軍との果てしない戦いは、いつまでもマリアを普通の少女のままでいさせてはくれなかった。
昭和51年9月4日、ベガトロンエネルギーの注入作業中に爆発が起きて制御不能になってしまった円盤獣デギデギが地球に来襲し、新潟・日本アルプス付近を暴れまわって大被害が出た。応戦にでるダイザーチーム。が、逃げ回るデギデギの巻き起こす暴風に巻き込まれ木片に後頭部を撲打され、老侍従は重傷を負う。駆けつけるマリアに、自らの死期をさとった老侍従は真実を告げ始める。マリアが実は自分の孫娘ではないこと、今は滅亡したフリード星の王女であったこと。そして先ほどチラと目撃したグレンダイザーがベガに利用されて悪魔の兵器として使われているものと思い込んだ侍従は、マリアに王女としてフリード星の守り神・グレンダイザーの奪還を果たすよう遺託して亡くなった。
実の孫娘のように自分を愛育してくれた老侍従を偲び慟哭するマリアーーーーー。その仇討ちとフリード王家最後の生き残りの人間の責務として、マリアは侍従の墓前にグレンダイザーの奪還を誓う。王家のペンダントでダイザーを追いかけ、遂に宇宙科学基地まで辿り着いたマリアは基地侵入を試みるが、そこで甲児に銃を撃ち落されてしまい、必死に剣を抜いて応戦しようとする。ところが、一人の男が自分と同じペンダントを持っているのを見たマリアは記憶が甦り、その男が自分の兄・デュークフリードであることを知る。
炎のなかで生き別れとなった兄妹は、今また再びあの日と同じ真っ赤に燃える夕陽の中で6年目にしてようやく再会を果たしたのだ。
こうしてマリアは宇宙科学基地で暮すことになった。
デュークの強い薦めでドリルスペイザーの操縦者として迎えられたマリアは、予知能力を発揮し始め様々にダイザーチームの危機を救ってゆくことになる。また、若干のテレパシー能力もあるようで、他人の考えを読み取ることが出来るようだ。ただし、その超能力は不安定で、時につけ鋭くなる程度だったようだ。テレパシー能力に至っては、その対象が全て甲児がらみだったりと、特に想いを込めた相手にしか発動しなかったようである。
その卓越した戦闘センスや力量は間違いなく超一流で、総合戦力は兜甲児に次ぐものがあった。甲児やひかるがさんざん苦労したダイザーとのコンビネーションクロスの訓練ももマリアは簡単にこなし、また、初戦闘においても十二分にその戦果を見せつけた。そしてチーム参加後幾許もないころ、ダントス防衛長官を見事討ち果たしていることからもその実力の程が伺える。
しかし、恐らく今まで自分に敵う男などいなかったことと、ダントスを倒したことに少々天狗になったものか、甲児に対して最初はかなりライバル心旺盛でなにかと甲児に張り合う姿が見られ、また、人工呼吸をしようとした甲児を引っ叩いたりなど気の強いところを見せている。が、彼の芯の強さや気さくさに触れるうちにやがて恋心を抱くようになったようである。男勝りの女性は、女性的な男性を好きになるかもしくは自分を超えるまでに男性的な人に惹かれるというが、マリアにも多分にその傾向が認められるといったところであろうか。兜甲児はマリアにとって元々憧れの英雄であったことでもあり、また、自分をも押さえつけるだけの実力と逞しさの前に、逢って二ヵ月後にはもうメロメロになっていた感がある。休暇には甲児と二人きりで東京にツーリングをしてちょっとしたデート気分を楽しんだり、チーム内でもよく甲児と組んでパトロールするなどの姿が見られるようになる。少々お転婆ではあるものの好きな男性に対してはかなり従順で可愛らしい一面を見せて、積極的にアプローチを試みたり甲児が怪我をすると気遣ったりするなどのいじましさも見せている。しかしどうやら甲児はそういったマリアの恋心には全く気付いていなかったようで、「あたしのこと『マリア』って呼んで」と云われてすら、それと悟ってくれなかった程の鈍感ぶりを示す体たらくだった。
普段はフリルのレース付きのドレスを愛用しており、ピンクや白のような清楚な系統の色が好きらしい。また、先述したように甲児以外への言葉遣いはとても上品で、お姫様育ちを充分に思わせるところでもある。その他トランプ占いが好きだったりアクセサリーや綺麗な服が好きだったりと、その戦闘能力とは裏腹に案外に年齢相応に女の子らしい少女だったりする。また、ネズミが大っ嫌いなのだそうである。そんなマリアに、ひかるの弟の吾郎は惹かれていたようである。マリアも、吾郎とは仲が良かったようだ。
体力的には一般地球人を凌駕して闊達な印象を受けるマリアであるが、基本的な奥底は周囲の女の子と何等異なりはしないと云えるだろう。否、むしろ、強いようでいて実はかなり繊細で脆い「ガラスの少女」だったといえよう。
例えば、敵のペガ星の科学者のキリカがデュークの命を狙って現れたとき、生け捕ってうわ言を漏らすキリカの言葉から悪人ではないと判断したマリアは、キリカをなにくれとなく庇い続けたことがあった。そして、ベガ大王の厳命の前にデュークの命を再度狙うキリカだったが、その前に立ちはだかってマリアは叫ぶのだ。
「ちりぢりばらばらになって、やっとこの緑の地球で逢えたのに・・・・・撃たせるものですか、兄さんを撃たせるものですか!」
そのマリアの言葉に、キリカはようやくデュークの正体が親切にしてくれた地球人兄妹の兄の方だったことに気付き、マリアの兄を想う気持ちに気圧され戦えなくなるのだが、マリアはそんなキリカを、「自分と兄がなんとかしてみせるから」と地球で生きることを薦める。だが、戦闘の巻き添えで重傷を負ったキリカは、自分の兄への約束を果たそうとして誤ってベガ獣に突っ込んでいって叩き落される。キリカはマリアに兄と仲良くいつまでも幸せにと伝え、「自分にも素敵な兄がいたのよ」と言い残して死んでいった。マリアはその死を涙して悼み、その墓にキリカのペンダントを捧げてせつなそうに微笑むのみであった。
そして昭和52年1月には、かつての幼馴染のケインがベガ星兵士としてグレンダイザーに刃を向けてきた。
フリード星での記憶をほとんど持っていないマリアではあったが、執拗に戦いを仕掛けてくる少年兵の姿を見た時に昔の記憶が甦り、それが自分の幼馴染であったケインであることを思い出す。そして我を忘れて敵であるケインに駆け寄ろうとするが、ケインはベガ星連合軍の走狗となっている姿をマリアに見られたことを恥じて自決してしまった。吹雪の吹き荒れる中、マリアはケインの遺体にすがり付いて泣きながらケインに問う。
「どうして? どうしてこんな戦争が続くの?もういや、はやくこんな戦争は終わってしまえばいいのに」
そんなマリアの姿はおよそ「戦士」としてはあまりにも脆すぎる。しかし、なまじ肉体的には地球人より優れているため普段は「強い女の子」と見られがちではあるが、マリアの本質は戦いの世界に押しつぶされそうな心を必死で支えている迷子の子猫のような弱々しい女の子だったのではと感じさせる。その根底に弱さを抱えているからこそ、同系の弱さが見て取れるデュークではなく、何度でも這い上がって来るような雑草のようにしぶとい精神的な強さを持つ甲児に惹かれていったのではないだろうかと思える。
また、幼い頃に死に別れた父母への想いは相当に強いものがあったようであり、団兵衛・ひかる父娘の仲睦まじい姿を見てずっと羨ましさを感じていたようだ。それは、敵でありながらもズリルジュニアが父ズリル長官のために命を散らした姿を見て大いに感じたところに見て取れる。
そして。レディガンダルはそのマリアの脆さに目をつけ、ターゲットを絞ってきた。
予知夢の能力を持つマリアに向けて「フリード王が生きていて、ベガ獣に無理矢理搭乗させられた」という夢を送り、出向いたマリアを捕えて人質にしようという企みだった。その夢を見せられたマリアは、兄のデュークが制止するのも聴かずに出動してしまった。そして、それを護衛したのが甲児だった。「死んだ人間が生き返る」。そんな、常識では考えられないことも、甲児は自分の死んだ筈の父に逢って経験したばかりだったのだから・・・。そして自分はほんの数週間しか生きていた父と過ごせなかったという悲しい思い出が、甲児をして「自分が命がけでマリアを守るから確かめさせてやってくれ」という行動に出たものであろう。
しかし、マリアの父はやはり死んでいた。かつて、自分の母の姿をした相手にさえ銃を向けたことがあるほどの甲児は、それが偽者であることを見破ったのだ。それでもその父を信じたいマリアを甲児が、デュークが差し止めそして偽者を討ち果たす。マリアはそんな兄や甲児に反発し、泣きながら雪原を駆け抜けていった。
マリアはこの頃にはフリード星での記憶はかなり甦っていたようであり、ベガ星王女ルビーナのことや、ルビーナとデュークの関係も正確に覚えていたようだ。
そのルビーナが地球にやって来てデュークが苦悩しているとき、マリアにはこの複雑な恋愛模様に若干ひかるへの気遣いがあったようだ。ズリルの罠にかかる兄を救おうとして戦場に駆けつけるマリアは、ズリル専用母艦をスパークボンバーで撃破する。だがルビーナはデュークを庇ったため、瀕死の重傷を負う。昔自分を可愛がってくれたルビーナの今わの際に、マリアは駆け寄ろうとする。だが、最期の刻をルビーナとデューク二人きりにさせようとする甲児にそっと制され、甲児の腕の中で彼女の死を見送るのだった。
そんなマリアの脆さは、デュークも充分気付いていたようだ。ルビーナも死に、最後の決戦が近いことを悟ったデュークは、ベガ大王が攻撃を仕掛けてくる前に先制攻撃をかけて刺し違えてもベガの悪魔を滅ぼす決意を密かに固める。そしてデュークはマリアに王の証であるペンダントを渡す。それは自分の死後のフリード星の再興をマリアに託すものだった。
しかし、「ガラスの少女」マリアだけにその重責を負わせるのは到底無理だと思ったのであろう。デュークはマリアを生涯にわたって支えつづけてくれるようにと、甲児にマリアの行末をそれとなく頼むのだった。
結局、甲児がデュークの決死の決意に気付いたためその挙を力技で阻止したのだが、この密かな決意は遂にマリアに知らされなかった。それはデュークと甲児の思いやりでもあったのであろう。
そして決戦、マリアは甲児・ひかるとともに宇宙戦用スペイザー・コズモスペシャルを駆ってダイザーに尽力し、遂に戦いに勝利する。
戦い終わってマリアは兄デュークとともに故星再建の為にフリード星へと旅立つこととなる。涙でこれを見送る一堂。しかしその見送りの列に甲児の姿はない。「さよならを言うのがイヤなのよ」とマリアは言う。自分もサヨナラは言わないわ、そう強がるマリアの胸に去来するものは、あるいは二度と逢えない言葉を口にするようで、どうしても言えなかったというのが正解だったのかもしれない。甲児に別れの言葉を告げないままにグレンダイザーはデュークとマリアを乗せて離陸する・・・・ そのグレンダイザーを、甲児は独りダブルスペイザーで見送る。
「大介さん、マリア、頑張れよ」
その言葉にマリアは泣き崩れる。まるで張り詰めていたものが一気に崩れるかのように。
そうして二人は還って行った。希望の星、フリード星へ・・・・・・・