グレンダイザーはベガ星の侵略兵器?フリード星の守護神?




 現在、グレンダイザーの建造過程は「ベガ星がフリード星侵略後にフリード星の科学者につくらせたもの」なのか「もとからフリード星の守護神だったもの」なのか、二説をめぐって混乱したままになっている。
 グレンダイザーの出自がいったいどちらであるのかによって、物語の示す意味はまるで違ってくるのであるが、このような重大な事項が四半世紀もの間未解決のままというのは、マジンガーシリーズを愛する一人としてまことに残念な事態であると憂慮している。
 この論文は『グレンダイザー建造の謎』の問題に終止符を打たんことを願って稿するものである。


1.テレビが語る『グレンダイザー建造』

 先ずは、文献・設定資料などを離れて、純粋にテレビ本編で『グレンダイザー建造』について判明することを整理してみよう。テレビ『UFOロボ グレンダイザー』(’75〜’77放映)において、グレンダイザーの出自が語られた最も早いものは第1話放映時の第2話予告である。そこではナレーションで

 ( 1)『恐星大王ベガは宇宙征服を達成するため、フリード星のグレンダイザーが必要となり、フリード星を襲撃した
   そしてグレンダイザーとともに危く難を逃れたデュークフリードは、地球に辿り着いた。』

と語る。
ところがすぐ次の第2話では宇門博士と大介が甲児にこう説明している。

 ( 2)宇門『大介はベガ星雲にあるフリード星の王子だった。名をデュークフリードという。フリード星は科学の発達した、戦争を知らない
       平和な星だった。ところが・・・・・』
   大介『ある日突然、ベガ星雲の完全征服をもくろむ恐星大王ベガは連合軍をおしたててフリード星に襲来した。
       罪もない人々が次々に殺され、みどりの大地を非情の炎が焼き尽くした。そして燃え落ちる王宮の中で父と母は・・・・・』
   宇門『悲惨な最後を遂げられたのだ』
   大介『フリード星のすぐれた科学力をわがものにしたベガ大王は恐るべき戦斗マシンを作らせた
   宇門『・・・・・それがグレンダイザーだ。ベガはグレンダイザーを駆使して全宇宙を征服しようと考えた』
   大介『しかしどんなことがあってもグレンダイザーを奴に渡すことは出来なかった。オレは牢を破りグレンダイザーをうばって
       フリード星を脱出した。グレンダイザーは果てしない宇宙空間を飛び続け、やがて青く輝く美しい星に辿りついた。
       それが地球だった』
   宇門『わしはたまたま八ヶ岳山中に不時着しているグレンダイザーと半死半生のデュークフリードを発見した。それがわしと
       デュークフリードとの不思議な運命の糸で結ばれた出会いだった』
   甲児『それで大介さんを息子同様に・・・・・』
   宇門『もうかれこれ二年前のことになる』

ということである。この説明により、以後「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説が出てくることになったわけである。ここで全てが終わっていれば、あるいは後の世に二説並立は起こらなかったかもしれない。だが、その後にテレビ本編ではこれを否定する事柄がいくつも語られてゆくのだ。
第25話を確認しよう。

 ( 3)デュークがフリード星での幼馴染だったナイーダと再会し、ナイーダがダイザーを爆破しようとしたとき、それを知らない大介は
   ナイーダをダイザーの攻撃から守り、
   『このグレンダイザーは僕以外の人間が近づくと自動的に排除するのを忘れたのかい

と語る。 これを聞くかぎりでは、「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説は怪しくなってくる。なぜなら、ダイザーがベガ星が造らせた兵器であるならば、「デューク以外の人間が近づくと攻撃する」というダイザーの防御能力は奇異であるからだ。通常であれば、ベガ星人以外は乗れないように造るのが妥当なのではないだろうか。それが何故、わざわざ被征服星のフリード星人の王子にしか乗れないように調整する必要があるというのだろうか。あるいはベガ大王はデュークを洗脳してダイザーのパイロットにするつもりだったのかもしれない。または、ダイザーは最初に登録した人物以外は搭乗できないように搭乗者登録システムがあった可能性も否定はできない。だが、それであっても、ダイザー完成を知ってデュークが牢を破ってグレンダイザーを奪って逃走したのであれば、同じく捕われていた一捕虜のナイーダが「デューク以外の人間が近づくとグレンダイザーが攻撃してくる」という軍事機密のことなどどうして知ることができたのであろうか。後日洗脳されたナイーダにであれば、軍事機密も教えることはあるだろうが。しかしデュークははっきりとナイーダに『グレンダイザーは僕以外の人間が近づくと自動的に排除するのを忘れたのか』と云っており、ナイーダがグレンダイザーの防御システムを知っていることを前提に話しているのだ。これを考えるとナイーダはベガの捕虜になる以前に「グレンダイザーがデューク以外の人間が近づくと攻撃する」ことを知っていたとしか結論できない。そしてそれをナイーダが知り得るのは「ダイザーがベガ星の侵略兵器」だからではなく「フリード星の守り神」だったからであろう。フリード星の守り神としてグレンダイザーは製造され、デュークもそのパイロットになるべく何年にもわたって訓練していたからこそ、幼なじみでもあり大貴族の男爵家の令嬢でもあるナイーダには「グレンダイザーはデューク以外の人間が近づくと攻撃する」ことを教えていたものであろう。
 また、同じ第25話で、ナイーダはこう語る。

 ( 4)『ベガ星連合軍の総攻撃を受けて、わたしたちが逃げ惑い助けを求めているときに、あなたは
    フリード星唯一の守り神・グレンダイザーに乗って逃げてしまったじゃないの!』

 ダイザーの設計開始から完成までに何年かかったかについては『15年』とするものと(『テレビマガジン』『UFOロボ グレンダイザー大百科』など)、『2年』とするもの(『別冊6テレビランド』など)があるが、仮に短い方の『2年』を採用しても、「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説だと少なくともデュークの脱出は『ベガ星連合軍の総攻撃』を受けたときではなく、その二年後となる。長いほうの『15年』を採用すれば、それは当然ベガ星連合軍の総攻撃より15年後の出来事となる。いずれにせよ、「ベガ星連合軍の総攻撃を受けた時」にデュークが逃げたということは成立しなくなる。
 また、デュークはナイーダの『フリード星の守り神』という言葉は否定せず、

 ( 5)『それは違う! 僕は最後まで戦い、フリード星が全滅したのでやむを得ず地球に逃れたのだ』

と云っていることから、二人の共通認識としては「グレンダイザーはフリード星の守り神」であり、かつデュークは「ベガ星連合軍に長期間捕えられていたことはなく」、少なくとも「ベガ星連合軍の総攻撃を受けた日にフリード星を脱出している」ことになる。
 もし、「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」が正しかったのであれば、それはデュークにとってナイーダに対する格好の釈明材料になったはずである。
「なにをいっているんだ! グレンダイザーはベガ星連合軍が作ったのだから、フリード星が攻撃を受けたときにグレンダイザーで戦えるはずもないじゃないか。それに僕自身もその時以来ベガ星連合軍にずっと捕えられていて、ようやく脱出できたんだ」
そう答えれば、それで相手がごく普通の感覚の持ち主であれば、それ以上デュークのことを「不実」と詰ることなどないであろう。
 次の事例は第49話だ。

 ( 6)地球に逃れていてマリアを育てていた老人は、円盤獣を追って飛び去ってゆくグレンダイザーを一目見るなり、
    『あれはグレンダイザー!』
    と、その存在を知っていて、かつこう語る。
    『フリード星の守り神じゃ』

と。その老人のフリード星の脱出経過は、同第49話によると

 ( 7)老人『ゆたかなみどり平和な星フリード。だが悪魔のようなベガ星の軍隊に襲われてフリード星は滅んだ・・・・・
       フリード王も、妃も、そして王子のデュークフリードもみな亡くなられた−−−
       わしは一人ぼっちになられた姫を抱いてやっとのことで脱出した−−− そしてこの地球に逃げてきたのだ』
         (注:画面上で確認すると、老人は小型円盤でマリアを連れて脱出している)
という。
 これについても「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説では説明がつかなくなる。まず、老人がベガ星の侵略兵器として建造されたグレンダイザーを『フリード星の守り神』などと呼ぶはずがないではないか。また、もしダイザーが本当にベガ星の侵略兵器ならば、老人はフリード星が滅んでから最低二年間はフリード星に残留していたことになり、二年後にグレンダイザーが完成するのを見届けてから円盤で姫を連れて脱出したことになる。そうでないと、老人がグレンダイザーの存在を知ることは出来ないからである。しかし、ベガ星連合軍がフリード星を完全制圧して支配している状況下での脱出は、フリード星滅亡時の混乱時より更に困難なものとなる。自分の身一つでも困難なところに、さらに姫までも連れ出して一緒に逃亡するのは、不可能とは言わないが、かなりの困難を伴うことであろう。
 また、老人が二年間フリード星に残っていてグレンダイザーが完成するのを見届けているのならば、王子のデュークフリードが生存していることくらいは知っているのではないかという疑問も生ずるし、ましてやグレンダイザーを造らされたフリード星人がいることや、ナイーダのような捕虜となって強制労働させられているフリード星人がいることだって知っているはずであるから、同第49話で「フリード星の者は一人残らず死んだ。今、グレンダイザーに乗っている者は、フリード星を滅したベガ星の悪魔に違いない。あなたに、悪魔の手からグレンダイザーをとり戻してもらいたいのじゃ」などと言う筈もない。
 そして、

 ( 8)マリアの記憶の中では炎上する瓦礫の中でマリアがデュークに助けを求めたところ、デュークは
    『すまない・・・ 俺はグレンダイザーを・・・』
    と、見捨てて置き去りにしている。

 これなども、フリード星が滅亡してその二年後に「ダイザーがベガ星の侵略兵器」として造られて、それをデュークが牢を破って奪ったのであれば、これからグレンダイザーに乗ろうというその前に「周囲が瓦礫の山となって炎上している」のは疑問に感じる。デュークが牢を破ったあとにベガの施設を破壊したとして、そこには他にも人質が大勢いたろうし、かつ、施設には無理矢理グレンダイザーを造らされたフリード星の科学者もいたと思われる。それなのに、施設が瓦礫と化して炎上するほどまでに破壊してしまっては、それらの人々を犠牲にして皆殺しにしてしまう可能性があることぐらいは当然推測できるレベルのことであるからだ。もし、「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説が正しいのであるならば、デュークは「グレンダイザーを奪うためには、自らの手で同胞たちを殺しても止むを得ない」と思って実行したことになる。ベガ星兵士たちは、いくらデュークフリードが牢を脱走したにせよグレンダイザーを奪われる前段階で、自分達の施設を「周囲が瓦礫の山となって炎上」するほどまでに光線銃を乱射して破壊したとは思えないだろう。
 また、マリアが瓦礫の中を迷い出てデュークと行き会うのも疑問だ。いったい二年の間、マリアはどうしていたのであろう? マリアや老人も同じ施設に捕らえられていたのであれば、「グレンダイザー」の製造すらデュークは牢内で聞きつけたぐらいであれば(しかも、フリードの科学者が無理矢理ベガに侵略兵器グレンダイザーを造らされたと知っているほどなので)、妹も同じ施設に捕らえられていることぐらいは知っていそうなものである。するとやはりデュークは「グレンダイザーを奪うためには、自らの手で同胞たちや妹すらも殺しても止むを得ない」と思っていたことになる。
 もし、老人やマリアが別の場所に逃げ延びていて、フリード星を脱出する機会を窺っていたとすると、このような重要施設の近辺に潜伏できたとは到底思えず、もっと遠い場所に潜伏していたことであろう。すると、上記(8)の描写のようにデューク脱出時に兄妹が行き会うような状況になることなどおよそ難しいだろう。
 いずれにしろ、先述のようにその場合は、老人は王子デュークやその他のフリード人が生きていることぐらいは知っていることであろう。(7)と矛盾する結果となる。
 やはりこの描写はあくまで「グレンダイザーがフリード星の守り神」であり、ベガ星連合軍の総攻撃を受けたためにグレンダイザーでフリード星を脱出しようとしていると解するほうがごく自然である。
また、

 ( 9)マリアがデュークと全く同じ形の『グレンダイザーに近づけば光を放って教えてくれる』ペンダントを所持している。

ということも、やはり「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説を否定するものにしかならない。フリード星が滅亡して二年間幽閉されていてどうしてマリアや老人が『グレンダイザーに近づけば光を放って教えてくれる』ペンダントを手に入れることができよう。別の場所に潜伏していたのであれば尚更ペンダント入手は困難だ。しかも、そもそもこのペンダントは、「フリード王妃の首飾り」や「デュークのベルトの模様」とデザインがまったく同じではないか。常識的に考えれば、これこそはフリード王家の紋章であり、「グレンダイザーがフリード星の守り神」であればこそ、「王家の者のみがグレンダイザーを操れるようにと、フリード王からデュークとマリアに持たされていた」と考えるのが至当である。「ダイザーがベガ星の侵略兵器」として造られたのであれば、ベガ星連合軍がなぜいちいちダイザーの操縦用のペンダントを「フリード王家の紋章」に擬して造らねばならないのだろうか?
 そして、この第49話でデュークは、

 (10)敵と勘違いして襲い掛かってきたマリアを見たときにその胸に自分と同じペンダントがあるのを見て、それが妹のマリアで
    あることを知った。

のである。グレンダイザーがベガ星連合軍がフリード星を制圧後にフリード星の科学者に造らせたものであり、操縦のペンダントをその時作らせたものであれば、たとえマリアや老人がなんらかの手段でペンダントを入手したにせよ、フリード星滅亡とともに妹のマリア死んだと思っていたデュークであれば、マリアがペンダントを入手していることなど知るはずもないし、ましてやそれを持っていることで「妹かもしれない」などと考えるには至らないだろう。ペンダントは「王家の者」が「ベガ星連合軍襲来」以前から所持していた物であればこそ、デュークはそれを所持している少女が「肉親かもしれない」と思ったのだ。つまり、グレンダイザーがベガ星連合軍がフリード星を制圧後にフリード星の科学者に造らせたものであるとしても、ペンダントは(最低限二つは)グレンダイザー建造計画以前に既に存在していて王族が所持していたことになる。とすると、ベガ星連合軍はグレンダイザーを造らせるときになぜ、わざわざそのペンダントが操縦の鍵になるようにしたのだろうか。あるいはフリードの科学者が密かにベガ星連合軍に反抗して、わざとグレンダイザーそのような機能を持たせたという可能性も絶無とは言わない。が、しかしである。そうであれば、先にこの世に存在していたペンダントが、なぜその当時は建造計画のかけらもなかったグレンダイザーに対して「光を放って反応する」機能を持っていたものかとんとわからない。グレンダイザーが既に先に存在するか、もしくは建造計画が進められていればこそ、「グレンダイザーに対して反応する」機能をペンダントに持たせるのが普通なのではないだろうか。
次は第73話を見てみよう。かつてデュークは甲児に王位継承の印であるペンダント(ダイザーに近づくと光るペンダントとは別物)の由来を語ったことがある。それは

 (11)『フリード星を脱出するとき、父のフリード王が僕に渡したものなんだ』

というものである。これを「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説に当てはめてしまうと「フリード王はベガ星連合軍の総攻撃を受けた時には死なず、二年間捕えられていて、デュークがグレンダイザーを奪ってフリード星を脱出するときに死んだ」ことになってしまう。しかし、第2話で語られていることによれば、「フリード王はベガ星連合軍の総攻撃を受けた時に亡くなっている」のだ。つまり、デューク逃亡の二年前には死んでいることになり、『フリード星を脱出するとき、父のフリード王が』デュークに王家の証のペンダントなど渡せるはずもない。なお、第70話でもデュークはマリアに

 (12)『父上はフリード星の滅亡とともに亡くなられた』

と語っており、やはり(11)の事例は「グレンダイザーがフリード星の守り神」で、ベガ星連合軍の総攻撃によりフリード星が滅んで、フリード王が亡くなるときに息子のデュークに王家の証のペンダントを渡して、デュークがすぐにフリード星を脱出したとしか解きようがない。
 
 「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説と「デューク捕虜」説を否定する描写はまだまだある。第11話や第23話で、ベガ星連合軍は光量子の存在を知っていたにも関わらず、第37話から第42話までの間エネルギー不足になっているのである。《(13)》 
 「グレンダイザーをベガ星連合軍がフリード星の科学者に造らせた」のであれば、光量子エンジンのテクノロジーを持っているはずのベガ星連合軍がこのエネルギー不足の時になぜ利用しなかったのだろうか。また、円盤獣も宇宙一硬いという超合金グレンで建造して、エネルギーは無公害の光量子を使用してもおかしくないではないか。そもそも、円盤獣であれだけグレンダイザーに苦戦しているのであれば、第二号のグレンダイザーを造ってもよさそうなものだ。設計図はベガ星連合軍側が持っているのだから、設計にかかる時間は一切ないのだから、純粋に建造の時間のみしか係らないことを考慮すればかなり短期間で完成するであろうに、である。
 そして、デュークフリードが二年近くベガ星連合軍の捕虜になっていたのであれば、なぜベガ星連合軍はデュークの素顔を知らないのであろうかという疑問も生ずる。第24話では親衛隊諜報部のホワイター少尉はデュークの素顔を知らなかったし、第33話・第58話・第71話でのベガ星連合軍でのデュークに関する資料はゴーグルをつけたものばかりで素顔の写真は一つもなかったのだ。《(14)》
 もし本当にデュークフリードが二年近くベガ星連合軍の捕虜になっていたのであれば、「一国の王子という最重要人物」に対して、その二年の間にベガ星連合軍が顔写真のデータぐらい揃えていなかったとは到底信じ難い。その二年の間に当然本星のベガ星にデュークの資料が送付されているだろう。仮に本星のベガ星にデュークの資料が送付されていなかったとしても、デュークがダイザー強奪時にそのデータを破壊できたとしてもおかしなものである。通常、他国へ侵攻するときは大部隊を動員するであろうが、制圧後は全部隊がそっくりそのまま駐留しているとは思えない。制圧後二年の間に本星へ帰った部隊もあるだろうし、他の戦線に転属になった部隊とてあるだろう。その間に捕虜となったデュークの顔を見知った将兵は多数いるだろう。であるから、デュークは自分のデータを破壊してベガ星連合軍に知られないようにするにはその「本星へ帰った部隊」と「他の戦線に転属になった部隊」と「フリード駐留部隊」を全滅させなければ、後日モニタージュなどですぐに素顔などバレてしまうことと存ずる。だが、「本星へ帰った部隊」と「他の戦線に転属になった部隊」と「フリード駐留部隊」を全滅出来るぐらいならば、その時点でベガ星連合軍は壊滅することになりはしないだろうか。
 他にも、全編通してベガ大王やガンダル司令・ブラッキーにズリルなど、「グレンダイザーを奪え」と言っているのだが、これとて、「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」ならば「グレンダイザーを奪い返せ」とならなければおかしい。「グレンダイザーを奪え」というのは、「正当な所有者から強奪する」と解するのが社会通念ではないだろうか。《(15)》

 以上のように、全ての事例を勘案すると(2)の「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」と「デューク捕虜」のみが他の事例と合致しないことが浮き彫りになる。
 そこで、もう一度これらの事実や証言を注意深く観察してみよう。(1)、(3)〜(15)が第三者を交えた証言や事実が多いのに対して、(2)では「八ヶ岳に不時着していたグレンダイザーと半死半生のデュークを宇門博士が見つけた」ということ以外はすべてデュークのみの証言に基づくものである。つまりは、デュークがどのように事実を歪曲して語ろうと、フリード星人が地球にデューク一人だった時であれば、事実は確かめようがないのだ。その後、デューク以外のフリード星人が幾人も現れ、グレンダイザーはフリードの守り神だったと証言しており、証拠の王家のダイザー操縦のペンダントすら提出している。また、彼らはダイザーがフリードの守り神でなければ知り得ないことを様々に知っている。もしこれを訴訟問題として捉えれば、「(2)はデュークのみの証言であり証拠能力は皆無」なのに対し、「(1)、(3)〜(15)は第三者を交えた証言・物的証拠・客観的事実・状況証拠」と全て揃っており、証拠能力は十二分だ。これでは確実にデュークフリードは敗訴する。。
 テレビ本編の物語上において、ここにはっきり「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説と「デューク捕虜」説は否定されたと宣告する。グレンダイザーは、「フリード星の守り神として建造され、その力に目をつけたベガ大王によってフリード星は総攻撃を受けたためデュークはグレンダイザーで逃亡したものである」と結言できる。

 それでは何故デュークは(2)のような身の上話しを虚言したのであろうか。『グレンダイザー全74話』を通暁するに、デュークフリードという人物が自己に都合が悪いことについて虚言をするような卑怯な人物には到底思えない。ましてやこのような重要な事柄を「うっかり間違える」はずもなかろう。
 この答えは、やはり第25話に求められると思う。すなわち、第25話においてデュークはナイーダに『自分だけ助かろうとした裏切者』と罵倒されており、それによって精神の平衡を失って錯乱するに至ったのだ。これは、「フリード星の守り神と誇っていたグレンダイザーの存在がかえってベガ大王の野心を誘発してフリード星を滅亡に導いてしまった」ことと、そして「グレンダイザーがベガ星連合軍に悪用されることを防ぐ為とはいえ、故郷や多くの同朋を見捨てて逃走してしまった」ことへのトラウマだったのではないだろうか。
 人間は大きな心的外傷から心の平衡を守るため、しばしばその記憶を消去したり作り変えることがあるという。精神学的に言うと、「フロイトの忘却理論」や「記憶の失錯行為」・「非認躁的防衛」・「強迫儀式における取り入れ・取り消し」がそれに当たろうか。
 デュークの心理の中では、「不用意に乱を招いてしまったグレンダイザー」をフリード星の守り神としては認め難く、「ベガ大王がフリード星を滅ぼし占領後に製造させた」悪魔の兵器であるという記憶のすり替えが起き、それによって「自分がフリード星防衛を果たせなかったのはベガ星連合軍の総攻撃時にはグレンダイザーがなかったからであり、その後捕虜になっていたので仕方がなかったのだ。決して見捨てていったのではない」という風に無意識の深層心理の中で記憶を造り替えて、信じ込むことによって、ようやく精神の平衡を得ることが出来たのであろう。そしてそれはあれだけの悲惨な経験をしたデュークであれば不思議ではなく、むしろ無理からぬことだったように思う。

 以上がテレビが語る「グレンダイザー建造」の顛末である。


2.資料から見た『グレンダイザー建造』

 次は、文献・設定資料から『グレンダイザー建造』について考察していこう。
 なお、資料の等級の分類については、史学の碩学であった坪井九馬三博士(安政5年〜昭和11年)が創唱し広く人口に膾炙(かいしゃ)されている分類法を参考にした。その分類方法は、内藤智秀『史学概論』(昭和7年福村書店)によると、価値判断の上からして、資料を6等級に分類する。
 その内藤智秀『史学概論』の紹介するところによれば、一等資料(史料)とは、ある史実が生じた時に、その生じた場所で、責任者の作成した記録類、たとえば日記、書簡、覚え書き、記録映画等を指す。
 これをアニメのマジンガーシリーズに当てはめると、当時、アニメ製作スタッフの作成したものや、ダイナミック企画が直接発表した記事その他がこの一等資料(史料)に当たる。なお、テレビ本編の映像も資料的にはこのグループに属するものである。便宜上これを(A)と付記する。
 なお、ここで、「一等資料が三等資料よりも優位性を保っている」とは必ずしも言えないのだが、該当の問題を論ずる時は必ず一等資料を必要とするのが史学界での常識となっていることを付言しておく。

 これに対し、当時の責任者が、当時とは異なる時期に書かれた記録や、異なる場所で記録された記録などは二等資料(史料)と呼ばれるものになる。
 アニメマジンガーシリーズで言えば、アニメ製作スタッフやダイナミック企画が、後日に出版したり証言したものなどはこの二等資料(史料)に相当する。これを(B)と付記する。

 そしてこれらの一等資料ないしは二等資料を素材として作成されたものが三等資料(史料)となる。
 当時、不知火プロが発表した記事や、テレビランドでの特集記事などがこれに該当する。また、同一の書でも、記事によって三等資料となるものや五等資料となるものもある。これを(C)と付記する。

 以上の一等二等三等資料を総称して史学では「根本資料」と言う。「根本資料」同士で、あい違える記述があった場合には、資料同士の突き合わせや、当事者の当時の状況などが考慮されて資料批判される場合があるものである。

 その他の「作者も製作年代も、また製作場所も判明しない場合」(『史学概論』112ページ)は四等資料(史料)と位置づけられる。
 アニメマジンガーシリーズに関して言えば、この四等資料は存在が少ないかもしれない。基本的に、マルC表記のないものといえそうだ。これを(D)と付記する。

 「撰者または著者がいかなる資料を手にしたか、いかなる方針で調査、又は審査したか不明なるもの」(同前)は五等資料(史料)となる。
 放映後に出版された多くの書籍はこれに類する。その多くはダイナミック企画や東映から協賛を受けただけのもの、即ち「使用許可をもらっただけ」で内容に関して監修を受けて公認された設定ではない。また、本によってはダイナミック企画より協力されているものもあるが、記事によっては三等資料となり得るものもあるが、文芸設定に関しては編集段階で記事内容が資料と異なっている可能性のあるものも多く、または根拠資料の存在しないものと思われるものも多数存在する。
 その為、資料として活用するには真偽に関する資料批判が不可欠である。具体的に「資料批判」とは、「根本資料」と照らし合わせて合致するかどうか(あるいは矛盾がないか)が問われる。これを(E)と付記する。

 なお、以上の四等五等資料を「参考資料」と言う。

 それ以外の資料を六等資料と言う。
 アニメマジンガーシリーズには、この六等資料は存在しないとは思うが、念のためこれを(F)と付記する。




 では以下にわかりやすく発表年代順に並べていこう。

 (1)S50.8.29 『企画書UFOロボグレンダイザー』(A)
   【フリード星は宇宙の平和を願い、科学力を宇宙開発の為に、万能マシーンとしてのグレンダイザーを製作してい
   たが、ベガ星は宇宙征服という狂信的な野望を抱いていたので、グレンダイザーこそ我われベガ星の無敵の兵
   器にしょうと眼をつけたのだ。そして、ベガ星の軍団はフリード軍に攻撃を仕掛け、フリード星を蹂躙してしまった
   。全滅寸前のフリード星は、フリード王の息子デュークフリードにグレンダイザーを託し、『このマシンがベガ大王
   の手に渡ったら、宇宙の破滅となる。このグレンダイザーを争いのない遠い星に埋め、そこで平和な生活を送っ
   てくれ』と息絶えた。グレンダイザーに乗ったデュークフリード(大介)はベガ軍団の追撃を振りきって、アンドロメ   ダ星雲をとび出したのだ。】

 (2)S50. 8月頃 『グレンダイザーシナリオ製作bQ』(A)
   【16|宇宙科学研究所 所長室
       (前略)
       宇門所長「ベガ星雲にあるフリード星は科学の発達した、平和な星だった。ところが、恐星大王ベガは宇宙征服を
              達成するためにはフリード星の科学陣が完成したグレンダイザーが必要と考えたのだ。
              そこでベガ星連合軍をおしたて、フリード星を奇襲したのだ」
    17|フリード星(回想)
       ベガ星連合軍のミニフォーや円盤獣が襲撃する。破壊される町! 恐星大王ベガの笑い。
       ガンダル司令、ブラッキー隊長が陣頭指揮する。
    18|フリード王宮
       破壊される。フリード王、倒れた柱の下敷きとなる。デュークフリード王子がかけつける。
       デュークフリード「父上!(抱きあげる)しっかりして下さい父上!」
       フリード王「(苦しい息で)グレンダイザーに乗ってこの星を脱出しろ、グレンダイザーがベガの手に渡ると、
              全宇宙は戦火にまきこまれるぞ、早く、早く行け・・・(息絶える)」
       デュークフリード「父上!」
       そこへガンダル司令とブラッキー隊長が兵を引きつれて入りこんでくる。
       ガンダル司令「デュークフリードを捕虜にしろ、グレンダイザーのかくし場所を吐かせるのだ」
       デュークフリード「よくも!」
       デュークフリード、怒りの鉄拳を兵士たちにかませる。必殺キック! ブラッキー隊長が光線銃を射つ!
       デュークフリード、肩を射たれる。デュークフリード、秘密通路にとびこむ。
       ガンダル司令「追え!逃がすな!」
    19|同、格納庫
       デュークフリード、円盤グレンダイザーにのりこむ。
       追ってくる兵士たちを蹴ちらすように発進する。
    20|宇宙空間
       フリード星を脱出してくる円盤グレンダイザーとデュークフリード。追跡してくるベガ星連合軍のミニフォー、円盤獣。
       円盤グレンダイザー、スペースサンダーやスピンソーサーなどの必殺兵器で敵機をことごとく粉砕!
       宇宙の彼方へと飛び去る円盤グレンダイザー。】

 (3)S50. 9. 1 『テレビマガジン10月号・グレンダイザークラブ』(A)
   【フリード星人が全力をつくして完成させたロボット、グレンダイザー(後略)】

 (4)S50.10. 1 『テレビマガジン11月号・グレンダイザー特集記事』(A)
   【フリード星人によってつくられたグレンダイザー(後略)】

 (5)S50.10. 1 『テレビマガジン11月号・グレンダイザーークラブ』(A)
   【地球から、やく二百万年もはなれたベガ星雲の中に、フリード星とよばれるわく星があった。フリード星は、
    地球によくにた美しい星だった。このフリード星をおさめていたフリード王は、なによりも平和を愛する心のもち主であった。
    そこでフリード王は、宇宙の平和をまもるため、万能ロボットをつくりあげようと決心した。ちょうどそのころ、王子がうまれた。
    この王子こそ、デューク=フリードであった。それから十数年、フリード王は、国内のすぐれた科学者をあつめて、
    ロボットの研究をさせた。そして、長く、くるしいロボットの研究がつづけられた。やがて、このフリード王と数人の科学者の
    努力がみのって、すばらしいロボットが完成した。このロボットこそグレンダイザーであったのだ。しかも、このグレンダイザーは、
    円盤スペイザーと合体できる万能ロボットであった。地上戦・空中戦・宇宙戦、どこでもさいこうの力がだせる完全むてきの
    ロボットなのだ。デューク=フリードもまた、りっぱな青年に成長していた。そこで、フリード王は、じぶんがいちばん愛する
    この王子を、万能ロボット、グレンダイザーのそうじゅう者にえらんだのだ。万能ロボット、グレンダイザーの完成によって、
    フリード星の平和は、つづくかにみえた。だが、この平和も、長くはつづかなかった。ベガ星雲の中で、もっとも強力な星、
    ベガ星のどくさい者である恐星大王ベガが、宇宙をせいふくしようと、たちあがったのだ。恐星大王ベガは、フリード星で
    グレンダイザーが完成したことをききつけた。そして、なんとしてもグレンダイザーを手にいれて、宇宙せいふくに役だてようと
    かんがえた。ベガの、フリード星大こうげきが開始された。フリード星におしよせる、強力なベガ星連合軍の円盤部隊。
    フリード星の人たちも、ひっしになってたちむかったが、ベガ星連合軍のてきではなかった。強力な円盤獣のこうげきをうけて、
    町はつぎつぎにはかいされ、国民もころされていった。フリード王も、ふかいきずをうけて、息がたえそうなじょうたいだった。
    そこで、むすこのデューク=フリードをよびだし、つぎのようなことばをのこして、しんでいった。「グレンダイザーは、おまえに
    あたえる。このロボットは、ぜったいにベガ星にわたすな。おまえは、かならずいきのびて、グレンダイザーを平和のために
    役だててくれ!」と・・・・。美しい、平和な星、フリード星は、こうしてほろぼされていった。のこされたデューク=フリードと
    グレンダイザーは、これからどうなるのだろうか? かなしい気もちをおさえて、デューク=フリードは、グレンダイザーにのり、
    フリード星から、だっしゅつする決心をした。どこともしれない世界にとびたっていくデューク=フリード。だが、ベガ星連合軍の
    円盤部隊が、グレンダイザーを発見した。なんとかグレンダイザーをうばおうと、はげしくこうげきしてきた。フリードは、
    スペース=サンダーやスピン=ソーサーなどのぶきで、円盤部隊にたちむかった。だが、とてもかてそうもないたたかいで
    あった。そこで、いっしゅんのすきをついて、ベガ星の手のとどかない宇宙のかなたへと、とびさっていった。あやうく大ピンチを
    きりぬけたデューク=フリードだったが、このベガ星連合軍とのたたかいで、大けがをしてしまった。宇宙のあいだを、
    どこともしれずとびまわっていたデューク=フリードは、ぐうぜんに、みしらない地球にたどりついた。そして、きぜつしてしまった。
    大けがをし、いしきをうしなっていたデューク=フリードをたすけたのは、宇門源蔵博士であった。宇門博士は、宇宙科学者で、
    宇宙開発研究所の所長でもあったので、なんとか力になってやろうと決心した。宇門博士は、デューク=フリードに、
    宇門大介という名まえをつけ、じぶんのむすことして、そだてることにした。そして、グレンダイザーのことは、ひみつにしておいた。
    それから、数年の月日がすぎた。デューク=フリードは、宇門大介として、完全な地球人になりきっていた。シラカバ牧場の
    手つだいをしながら、毎日、たのしい生活をおくっていたのだ。だが、そのあいだに、恐星大王ベガは、しだいに勢力をひろげ、
    地球に近づいていた。ベガは、月のうらがわに前進基地をつくり、ちゃくちゃくと、地球せいふくのじゅんびをすすめていたのだ。
    (後略)】

 (6)S50.11. 1 『テレビマガジン12月号・グレンダイザー特集記事』(A)
   【ぼく(注:デュークフリードのことである)も何年もきたえて、ようやくグレンダイザーのパイロットになれたんだ】

 (7)S50.11. 1 『テレビランド12月号・グレンダイザー特集記事』(A)
   【(グレンダイザーは)もう滅亡してしまったフリード星でつくられた】

 (8)S50.11.15 『別冊6テレビランド・グレンダイザー特集記事』(C)
   【平和な星フリード星でつくられたグレンダイザー。しかし、ベガ星連合軍におそわれてフリード星は全滅。そこで、王子
    デュークフリードはグレンダイザーとともに地球へのがれた】
   【フリード王が、宇宙の平和をまもるため、数人の科学者とともにつくりあげた円盤ロボットだ】
   【アンドロメダ星雲にあるフリード星人が、宇宙の平和のために、つくったもの】
   【ダイザーは完成まで約2年。フリード星にある、超近代的な設備のあるひみつ工場でつくられた】
   【野望をいだくベガ星人の侵略にそなえて、宇宙最強のロボット・グレンダイザーの組立作業はつづく・・・・・・】

 (9)S50.12. 1 『テレビマガジン1月号・グレンダイザー特集記事』(A)
   【グレンダイザーは、宇宙のかなた、フリード星でつくられた。いま、完成前のグレンダイザーが、フリード星の緑の大地を、
    がっしりとふみしめながらあるいている。これは、グレンダイザーの歩行テストをやっているすがただ】
   【グレンダイザーは、十五年という長い年月をかけて、フリード星人の手でつくられた】

 (10)S50.12. 1 『テレビマガジン1月号・グレンダイザークラブ』(A)
   【ベガ星は(中略)すばらしい文化を発達させたわくせいであった。フリード星とも手をむすび、おたがいに宇宙の平和を
    まもっていくことをちかいあったなかであった。この平和がやぶられたのは、ベガ星に、きょうふのどくさい王、ベガ大王が
    登場してからだ。ベガ大王は、宇宙せいふくをたくらみ、ふきんのわくせいをつぎつぎにほろぼしていった。ただ、フリード星
    だけが、ベガ星と同じくらいの科学力をもち、グレンダイザーというすばらしいロボツトをもっていたため、せめこまれないでいた。
    このじゃまな星、フリード星をほろぼし、グレンダイザーをうばおうと、宇宙せいふくにもえるベガ大王は、大こうげきを開始した。
    円盤軍団が、つぎつぎにフリード星をおそい、緑の平和な星、フリード星をやきつくした。フリード星人は、みなごろしにされ、
    町ははかいされていった。ただ一人、デューク=フリードだけがグレンダイザーにのって、はるかかなたの地球におちのびて
    いったのである。】

 (11)S51. 1月頃 『グレンダイザーシナリオ製作bQ5』(A)
   【10|原生林
       (前略)
       ナイーダ「忘れたなんて云わせないわ・・・・・ベガ星連合軍の総攻撃を受けて、わたしたちが逃げまどい、助けを
             求めている時に、あなたは、フリード星唯一の守り神、グレンダイザーに乗って逃げてしまったじゃないの!!」
       大 介 「それは違う! ぼくは最後まで戦い、フリード星が全滅したのでやむを得ず地球へ逃れたのだ!」】

 (12)S51. 2. 1 『テレビマガジン3月号・グレンダイザー特集記事』(A)
   【グレンダイザーは(中略)フリード星で、15年もかけてつくられた】
   【建造者−フリード大王】

 (13)S51. 2月頃 『グレンダイザーシナリオ製作bR0』(A)
   【42|グレンダイザー・操縦席原生林
       (前略)
       フリード星最後の光景が鮮烈によみがえる− ベガ星連合軍のすさまじい攻撃。爆発、炎上する街。瓦礫の中を懸命に
       駆けるデュークフリード。右の二の腕の所の服が裂けている。グレンダイザーに乗ろうとした時、轟然たる陽子爆弾の爆発。
       あっ! 腕をおさえて操縦席に転げ込むデュークフリード。かろうじて飛びたっていくグレンダイザー、 爆発、炎上する
       フリード星。】

 (14)S51.2〜3月頃 『UFOロボ グレンダイザー大百科(エルム社刊)』(C)
   【グレンダイザーは、フリード星のかがくりょくのすべてをつかって、15年ものながいあいだかかって、ようやくかんせいした。
    フリード星のひとびとは、宇宙の平和のためにつくったのだが・・・・・・・】

 (15)S51. 3.15 『テレビマガジン増刊4月号・グレンダイザー特集記事』(A)
   【15年の年月をかけて、フリード星にたんじょうした、UFOロボ、グレンダイザー】

 (16)S51. 6.15 『テレビランド・ワンパック(3) UFOロボ グレンダイザー図鑑(徳間書店社刊)』(C)
   【フリード星がベガ星連合軍によって、ほろぼされた時に、グレンダイザーと一緒に地球にきた】

 (17)S51. 7月頃 『グレンダイザーシナリオ製作bS9』(A)
   【20|林
       (前略)
       倒れていた老人、力をふりしぼって顔を上げる。その目に、グレンダイザー。
       老 人「あっ、グレンダイザー・・・・!」
       愕然と目を見開く。そこに疾走して来るオートバイ。マリアがとび降りて駆け寄る。
       マリア「おじいさん!」
       と抱き起す。
       老 人「グレンダイザーじゃ!」
       マリア、えっと老人が指さす方を見る。飛び去っていくグレンダイザー。
       老 人「あれがフリード星の守り神じゃ!」】
   【23|イメージ
       みどりゆたかなフリード星。平和で美しい街。突然、閃光が走る。襲来するベガ星連合軍。つづけさまに起る爆発。
       たちまち崩壊する街。
       老人の声「悪魔のようなベガ星の軍隊に襲われて、フリード星は滅びた・・・フリード王も后も、そして王子の
       デュークフリードもみな亡くなられた・・・」
       炎上する黒煙にまぎれて一台の小型円盤が宇宙空間に脱出していく。その中にまだ幼いマリアを抱いた老人。
       老人の声「わしは一人ぼっちになられた姫を抱いて、やっとのことで脱出した・・・」】
   【39|林
       (前略)
       老 人「あれはただの円盤ではない。UFOロボ・グレンダイザー、フリード星の守り神じゃ」
       マリア「フリード星の守り神・・・・!」
       その目に、一度見たグレンダイザーの姿がはっきり浮び上がる−
       老 人「フリード星の者は一人残らず死んだ。今、グレンダイザーに乗っている者は、フリード星を滅したベガ星の悪魔に
            違いない。あなたに、悪魔の手からグレンダイザーをとり戻してもらいたいのじゃ」
       マリア「とり戻すといっても、どこかへ飛んでいってしまったし・・・・」
       老 人「そのペンダントじゃ、そのペンダントがグレンダイザーに近づけば光を放って教えてくれる」
       マリア「これが・・・・?」
       じっとペンダントを見つめる。
       老 人「あなたならできる! 必ず悪魔の手からわれわれの守り神グレンダイザーを! 頼みましたぞ、
            グレース・マリア・フリード!」】
   【72|同・前庭
       (前略)
       大介、あっと見る。マリアの胸のペンダント。
       大 介「待て!」
       甲児とひかるを止めて前に出る。
       大 介「そのペンダントは・・・!」
       マリア、大介に斬りかかる。烈しい切先をかわす大介。
       大 介「お前は誰だ! 名を名乗れ!」
       マリア「フリード王の娘、グレース・マリア・フリード! グレンダイザーをとり戻しに来た!」
       大 介「マリア・・・!」
       愕然と立つ大介。
       (中略)
           X            X            X
       幼い時の記憶が鮮烈によみがえる−−− 炎上するフリード星。その炎の中に立つデュークフリード。
       見つめる幼いマリア。
       マリア「兄さん!」
       デュークフリード、ふりきるように背を向けて炎の彼方に駆け去る。
       マリア「兄さん・・・!」
       絶叫するマリア。】
           X            X            X

 (18)S51. 9. 1 『テレビマガジン10月号・グレンダイザークラブ』(A)
   【マリアは(中略)兄フリードと地球であうことができた。もうしんでるとおもっていた兄とあい、グレンダイザーもぶじときき、
    マリアは大よろこび】

 (19)S51.11月頃 『グレンダイザーシナリオ製作bV0』(A)
   【29|宇宙科学研究所、医務室
       (前略)
       フリード星での思い出が甦る−
       フリード王「デュークフリード、直ちにグレンダイザーに乗って、フリード星を去れ」
       デュークフリード「父上!」
       フリード王「わしはこのフリード星と運命を共にする」
       ビーム攻撃で壁や天井が崩れる。
       デュークフリード「父上!(エコー)」
       −いまわしい思い出に顔を歪める大介。
       大 介「マリア、父上は、フリードの滅亡と共に亡くなられたのだ」】

 (20)S51.12月頃 『グレンダイザーシナリオ製作bV3』(A)
   【32|ダブルスペイザー、操縦席
       (前略)
       甲児「それは・・・・・?」
       大介「フリード星を脱出するとき、父のフリード王がわたしに渡したものだ・・・・・」
       甲児「なんか古いものみたいだね・・・・・」
       大介「代々伝わった王の印だよ・・・・」
       じっとみつめる大介。古びたペンダント。】
 (21)S53頃か? 『東映アニメシリーズ UFOロボグレンダイザー対グレートマジンガー(アポロン刊)』(E)
   【フリード星がベガ星連合軍に滅ぼされた時、グレンダイザーに乗って地球に逃げてきた】

 (22)S53.12.30 『ロマンアルバム UFOロボグレンダイザー(徳間書店社刊)』(B)
   【(グレンダイザーは)フリード星人によってつくられた】
   【(グレンダイザーは)フリード星の科学を結集してつくられ】
   【(デュークは)ベガ星連合軍の侵略で、全滅寸前になった故郷から脱出してきた】
   【(フリード王は)ベガ星連合軍の猛攻撃の中で、息子のデュークを脱出させ、自分は全滅するフリード星と運命をともにした】
   【(第2話ストーリーダイジェスト)かつて恐星大王ベガは、宇宙征服のためにはグレンダイザーの力を必要とし、これをうばうべく
    フリード星を奇襲、全滅はさせたがグレンダイザーの略奪には失敗していたのだった。そのとき間一髪グレンダイザーとともに
    フリード星を脱出したのがデュークフリードだった】
   【(第49話ストーリーダイジェスト)マリアが、フリード星の守り神だったUFOロボ・グレンダイザーをとりもどそうと】

 (23)S54. 3.25 『TVアニメ大全科(秋田書店刊)』(E)
   【(デュークの項)ベガ星連合軍の攻撃によって滅ぼされたフリード星の王子。ベガの捕虜だったが、超兵器グレンダイザーを
    うばい返して、地球にたどりつく】

 (24)S54. 7.30 『なんでもプレイ百科(10)スーパーロボット3大全科(双葉社刊)』(E)
   【フリード星の守り神としてつくられたグレンダイザー】
   【(デュークの項)フリード星の王子だったが、ベガ星連合軍に滅ぼされてグレンダイザーと共に脱出し、追手から逃れて地球へ着く】

 (25)S54. 9.15 『勝て!!アニメロボット大百科(立風書房)』(E)
   【フリード星の守り神=グレンダイザー】 

 (26)S54.11.30 『アニメロボット大全科(秋田書店刊)』(E)
   【フリード星でつくられた万能宇宙ロボット、グレンダイザー】
   【(デュークの項)ベガ星連合軍によって滅ぼされたフリード星の王子。ベガの捕虜となっていたが、グレンダイザーと
    ともに脱出して地球へ】
   【(マリアの項)王の側近であった老人に連れられて、崩壊寸前のフリード星を脱出。地球にたどり着く】

 (27)S55.12. 1 『テレビマガジン1月号附録・ロボットひみつ大全集』(E)
   【(グレンダイザーの項)フリード星の守り神としてつくられたロボット】

 (28)S56. 6.30 『テレビランドワンパック(38) SF☆ロボットアニメ図鑑(徳間書店社刊)』(E)
   【全宇宙の支配をたくらむベガ大王は、美しい星をつぎつぎと侵略していった。デュークフリードのいるフリード星もベガ大王に
    侵略されてしまつた。フリード星の科学に目をつけた大王は、侵略用ロボとしてグレンダイザーを作らせた。デュークフリードは
    グレンダイザーをうばって脱出地球に不時着する。】

 (29)S56.10.30 『マジンガーシリーズ大事典(講談社刊)』(E)
   【フリード星の科学がつくりあげたスーパーロボット】
   【フリード星は平和で美しい星だった。だが、ある日、宇宙征服をたくらむベガ星連合軍が来襲し、侵略を開始した。
    町は破壊され、フリード王と王妃は殺されてしまった。ベガ大王は守り神グレンダイザーをねらう。フリード星の王子
    デューク=フリードはようやく脱出に成功。地球にたどりついたデュークは、グレンダイザーで平和のために戦うのだ】
   【(マリアの項)フリード星の滅亡とともにゆくえ不明になっていたが,大臣にすくわれ,地球でくらしていた】

 (30)S60.12.20 『テレビマガジン特別編集 マジンガーZ大全集(講談社刊)』(E)
   【ベガ星雲の完全征服をねらう、恐星大王ベガは、フリード星を襲撃してきた。フリード星の王子、デュークフリードは、
    幼なじみのモルスを逃がすと、父母の待つ王宮へとむかった。デュークが王宮へ着いたときは、父母はすでに
    ベガ星連合軍のホワイター少尉によって殺されたあとだった。一方、デュークの妹マリアはケインと遊んでいるところを
    爆撃されていた。巻き上がる炎の中、マリアは侍従に助けられて、フリード星を脱出した。マリアが地球で兄デュークと
    再会するのは、これよりももっとあとのことである。恐星大王ベガは、ベガ星雲の征服にあきたらず、宇宙の征服を決意し、
    フリード星人に、強力なロボット、グレンダイザーを建造させた。それを知ったデュークは、牢を破りグレンダイザーを奪うと
    フリード星を脱出した。激しい追跡をふり切ったデュークは、暗黒の宇宙空間を飛び続けた。そして、彼は青く輝く星、
    地球を発見、日本の富士山付近へと不時着した。半死半生のデュークは、宇門博士に助けられるのだった。】
   【平和なフリード星に突如,悲劇が起こった。デュークはベガ星連合軍の攻撃で,右腕を負傷した。一方、デュークの妹
    マリアは友だちのケインと遊んでいた。そこにミニフォーが出現、攻撃されてしまう。王宮へと侵入したベガ星の兵士たちは
    殺戮を開始した。王妃は、落下してきた瓦礫の下敷きとなって絶命した。王はホワイター少尉配下の兵士射殺されてしまう。
    デュークは王宮で、変わりはてた父母の姿を目撃する。破壊の限りをつくしたベガ星連合軍は,王宮都市にベガトロン爆弾を
    投下して壊滅させてしまう。なんとか生きのびたデュークだったが,ベガ星連合軍に捕まり,牢屋にと幽閉されてしまった。
    1人残されたマリアは,廃墟と化した王宮をさまよいつづけていた。マリアは侍従に出会った。2人は小型宇宙船に乗り,
    フリード星を脱出した。ベガ星連合軍の長である恐星大王ベガは,宇宙征服のためにロボツトを作らせていた。それを知った
    デュークは,牢をぬけてそのロボットを使い,フリード星からの脱出を試みた。完成したロボット,グレンダイザーにデュークは
    乗りこみ,フリード星を脱出してしまった。これを知った恐星大王ベガは,追跡隊を組織させてグレンダイザーの後を追わせた。
    グレンダイザー追跡隊は,すぐに追いつきグレンダイザーに攻撃をしかけてきた。グレンダイザーは,ありったけの兵器を使い
    追跡隊と戦い,これを全滅させた。激しい戦闘で,破損状態のはげしいグレンダイザーは,彼は青く輝く星,地球へと
    たどりついた。グレンダイザーは富士山付近へと不時着した。デュークは重傷を負い,気絶してしまう。】
   【(グレンダイザーの項)母国であるフリード星で利用できなかったその能力が,今,地球を守るために爆発する。】
   【(ストーリーダイジェストグレンダイザー49)老人は、死を前にしてマリアが実はフリード星の王女であることを知らせた。
    グレンダイザーが、ベガ星の手に渡って侵略の道具にされていると思い込んだマリアは、デギデギを倒したダイザーチームの
    後を追って研究所へとやってくる。】

 (31)H 4. 7.20 『スーパーロボット大図鑑(1)(バンダイ刊)』(E)
   【フリード星の科学力が生んだUFOロボ】
   【ベガ星連合軍の攻撃を受けフリード星を追われ、グレンダイザーに乗って地球に逃げ延びて来た。】

 (32)H 8. 6.15 『スーパーロボット大戦大事典(メディアワークス刊)』(E)
   【フリード星の科学を結集して造られたスーパーロボット】

 (33)H 9. 2.15 『スーパーロボット大鑑(メディアワークス刊)』(E)
   【フリード星の守護神だった】

 (34)H 9.12.12 LD『UFOロボ グレンダイザーBOX.1 ライナーノーツ』(E)
   【ベガ星連合軍に侵略されたフリード星が、その科学力を持って作り出したスーパーロボット。ベガ星連合軍の侵略用として
    生まれるも、完成直後にデューク・フリードに強奪され、平和の守り神としてベガ星連合軍に敢然と立ち向かう。】

 (35)H11. 9.21 PSソフト『クリックまんがダイナミックロボット大戦(1) ライナーノーツ』(E)
   【恐星大王ベガが、フリード星人に作らせた戦闘マシーン。だが、これを奪ったデュークが地球に逃れたことで、
    ベガ星連合軍最大の敵となる。】 

 (36)H14. 1.25 『マジンガー・バイブル 魔神大全(双葉社刊)』(B)
   【フリード星の科学力によって建造された(中略)スーパーロボット。フリード王家の者の証しとなる指輪を持つ者以外は
    電撃を放つ自己防衛システムにより搭乗不可能。】
   【(マリアの項)ベガ星連合軍の襲撃の際、兄とはぐれ、侍従と思われる老人に救出されて地球へ逃がれてきた】
   【(フリード王、王妃の項)ベガ星連合軍の襲撃に抗う間もなく命を落とす。】
   【フリード星滅亡の際、大介が亡きフリード王より譲り受けた形見で、フリード王家に代々伝えられてきた王の証である。】

 −−−−−如何であろうか。中には「グレンダイザーをベガ星連合軍がフリード星の科学者に造らせた」のか「フリード星の守り神」なのか、いまひとつハッキリしないものもあるが、それらを除外すると、一等資料(A)の全てが「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説と「デューク捕虜」説を否定していて、「フリード星の守り神」であると記述されているのだ。しかもこの第一級資料は、ダイナミック企画が公表した公式設定も含まれており、最も資料価値の高いものばかりである。
 そして、二等資料(B)だが、(36)の『マジンガー・バイブル 魔神大全(双葉社刊)』ではいまひとつはっきり明言はしていないが、『フリード王家の者の証しとなる指輪を持つ者以外は電撃を放つ自己防衛システムにより搭乗不可能』と書いてあり、どちらかというと「フリード星の守り神」と受け取れるような表現となっている。また、父母は『ベガ星連合軍の襲撃に抗う間もなく命を落とす』としているところなどは、王の証のペンダントを『フリード星滅亡の際、大介が亡きフリード王より譲り受けた』という言葉とあわせて考えると、「デューク捕虜」説を否定しているといって良いだろう。(牢の捕虜は持ち物は没収が通常。しかも、それが王の正当な証ともなると占領軍としてはなおさらである。)
 (22)の 『ロマンアルバム UFOロボグレンダイザー(徳間書店社刊)』は、当時、設定製作を受け持っていた団龍彦氏も編集協力しており、資料としての価値が高いが、こちらでは明確にフリード星の守り神として、デーューク捕虜説も結果的には否定されている。 すると、二等資料(B)でも、「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説と「デューク捕虜」説は否定されていて、「フリード星の守り神」であると記述されているとして良いだろう。
 次に三等資料(C)。(8) 『別冊6テレビランド・グレンダイザー特集記事』には「フリード星の守り神」としており、「デューク捕虜」説は否定的な状況である。(16)も、「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説を証明する積極的根拠は皆無である。三等資料(C)でも「フリード星の守り神」である旨の記録しか見つからないという状況である。
 四等資料(D)と六等資料(F)はなし。
 五等資料(E)については、「フリード星の守り神」説「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説入り混じって、まちまちである。しかし、ここでもっとも著名な『テレビマガジン特別編集 マジンガーZ大全集(講談社刊)』で検証してみると、一方では「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説を記載しておきながら、別のところでは「母国であるフリード星で利用できなかったその能力が,今,地球を守るために爆発する。」と記載している。もしダイザーがベガ星の侵略兵器であるならば、「母国であるフリード星で利用できなかった」などという形容はあまり似つかわしくないだろう。これは「フリード星の守り神」で、ベガ星連合軍の襲撃時には役立てられなかったことを指すほうが文意には合う。あまつさえストーリー紹介の第49話では「グレンダイザーが、ベガ星の手に渡って侵略の道具にされていると思い込んだマリア」と表記しており、これなどははっきり、「フリード星の守り神」説に立って表記しているといって差し支えないだろう。ベガ星連合軍襲来時にフリード星を脱出したマリアであれば、その後に出来たグレンダイザーの存在など知るはずがないからだ。つまり、『テレビマガジン特別編集 マジンガーZ大全集(講談社刊)』は、同じ書の中で、記載している箇所によって言うことがまちまちで、矛盾しているということが出来る。この一事をもってしても、『テレビマガジン特別編集 マジンガーZ大全集(講談社刊)』が記載している記事の信憑性が著しく低いということがわかる。ダイナミック企画より協力されているとはいえ、あくまでも資料の提供を受けただけのものであり、文芸設定に関しての記事内容については資料提供を受けたとは言いがたく、根拠資料の存在しないと思われるものが多数である。
 以上のように、一等資料に反する事項で、「根本資料」にて証明できないものについては、史学的には棄却すべきものとなってくる。逆の言い方をすると、「根本資料」を否定してまで採用すべきものではない

 これらをまとめて、結論を下すと、やはり資料学的には「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」説と「デューク捕虜」説は否定されるべき類のものであり、グレンダイザーは、「フリード星の守り神として建造され、その力に目をつけたベガ大王によってフリード星は総攻撃を受けたためデュークはグレンダイザーで逃亡したものである」とすることができよう。
 
 この問題を時系列で見てみると、放映当時は「ダイザー=ベガ星の侵略兵器」とする文献は一切存在せず、全てが「フリード星の守り神」としていたことが判る。ところが、放映終了後の書籍以降は、放映当時の文献を確認せず(出来ず)テレビ本編のみを参照にして、それぞれが編集者の取捨に任せてしまい、いろんな説が乱立していったものと見える。そして、それを受けて『テレビマガジン特別編集 マジンガーZ大全集(講談社刊)』でも、編集者の個人の取捨によって「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説を「グレンダイザー誕生秘話」に採用したものであろう。だが、『テレビマガジン特別編集 マジンガーZ大全集(講談社刊)』はなまじムック本としては出来が良すぎた為、後の世の範となり、設定面について以後に続く多くの者を惑わせてしまったものと云えよう。そう考えると『テレビマガジン特別編集 マジンガーZ大全集(講談社刊)』という本には「偉大な好著」という称号を送りたいが、ある種罪な本ではある。


3.演出家小湊洋市氏

 しかし、本来この問題をややこしくしたのは、元々はテレビ本編第2話にあることは間違いない。
 ここで、1−( 2)と2−(1)を見比べていただきたい。 そう、シナリオの段階では「フリード星の守り神」として描写されていたものが、テレビ放映版では「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」に変更されているのだ。
 第2話のシナリオライターは、「グレンダイザー」のメインライターにして、実質上「グレンダイザー」の原作者の一人といってさえ過言でない上原正三氏である。その上原氏ははっきり「フリード星の守り神」として製作していたという事実は見逃せない。
 また、放映1ヶ月前のおそらく最終稿に近いであろう企画書でも、「フリード星は宇宙の平和を願い、科学力を宇宙開発の為に、万能マシーンとしてのグレンダイザーを製作していた」としているのである。
 ところで、東映動画での当時の演出は、コンテからダビング、アフレコと全てタッチしていたそうだが、事実上その手掛けた話は完全に仕切れたということであろう。果たせるかなこの第2話は、台本の段階で「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」に改変されていた。この第2話の演出を手掛けたのが小湊洋市氏なのだ。つまりは、ほとんど公式設定といって良い性質の「フリード星の守り神」という設定を、小湊氏が、言葉は悪いが勝手に改変したものと見えるのだ。
 念のため、グレンダイザーにおいて小湊氏が演出を手掛けた、実際の映像と台本、そしてシナリオをざっと比較してみよう。

 第 2話:半分以上は改変あり。
      【ガンダルはブラッキーの報告を受けて初めてグレンダイザーが地球に来ていることを知る】
      【ガンダルは目からビームのような怪光は発射しない】
      【ベガ星連合軍は出陣の儀式に、悪魔神に祈りを捧げる】 
      【甲児と大介の争いは二回あった】
      【シナリオではダイザーは「フリード星の守り神」。】
      【出撃前、甲児と大介は再び争って、甲児がいとも簡単にのされているが、シナリオでは互角。大介が戦闘服に
       チェンジしてから甲児はのされた】
      【ブラッキーの万力作戦は、ダイザーがスペイザーからブレイクアップしていともあっさり失敗】
      【ミニフォーとの共同作戦で、燈光器作戦によりデュークは目潰しをくらう。それを救ったのが甲児のTFO。】

 第 7話:1/3近くは改変されている。
      【シナリオでは、大介に「予知能力」はない。】
      【シナリオでは、フリード星を襲った円盤獣は特定されていないが、テレビではギルギルとされている。】
      【シナリオでは、第二戦ではゴーマン大尉は、ミニフォーに応援要請をするが、ブラッキーの拒否にあい、見殺しにされた。】
      【シナリオで記載されていた第一戦・第二戦後の大介とシラカバ牧場のみんなとの掛け合いが大幅に削除されている。】

 第20話:2/3以上改変。
      【シナリオ冒頭の、団兵衛と番太が雪男探しのためにTFOをかっぱらおうとして、甲児と争うシーンがまるまるカット。
       テレビでは団兵衛と大介が雪下ろしの仕事を賭けてのポーカー勝負に変更。当然デュークにテレパシーもどきの
       超能力があるという描写はシナリオにない。】
      【本編と違って、ブラッキーに捕まったのはデュークのほうである。甲児は一人まんまと逃げおおせて、ベガ兵士の
       スノーボートを奪ってデュークを救出する。その後、グレンダイザーを奪回するため甲児はわざとブラッキーに捕まり、
       ブラッキーの新兵器を破壊してその隙をついてデュークはダイザー奪還を果たした。なお、この時の大爆発で甲児が
       死んだものと思ってデュークは肩を落とすが、甲児はちゃっかり雪の中に潜って爆風を避け、生きていた】

 第36話:半分以上が改変。
      【冒頭、コマンダージグラがスカルムーンを隕石から守る描写はなく、シナリオではジグラはズリルに火を噴いている新星を
       探すように命じている。】
      【シナリオでは「人」の字のエピソードはまるまる無い】
      【ダイザー分離に7秒半掛かるということはシナリオにはない】
      【円盤獣の装甲が「超合金ベガニウム」であることはシナリオには記載がない】
      【コマンダージグラは、ダイザーの弱点は知らない。火を噴く新星を相手にスピードを養う特訓をして、ダイザーに挑んだ】
      【戦闘経過がまったく違う。】

 第52話:1/3以上は改変されている。
      【ベガ星と地球との距離が3000光年であることはシナリオには記載されていない。(資料では200万光年)】
      【オートバイの整備をしているマリアが、甲児の心を読み取って掛け合うシーンがまるまる省略されている】
      【ドモドモとダイザーの戦闘経過がかなり違う。どもどもは結構強く、ダイザーチームは苦戦している】

 第64話:3/4以上改変。
      【マリアのトランプ占いの話はない】
      【東京に爆弾が仕掛けられたところ以外はほとんど戦闘経過は異なる。ガンダルは爆弾を仕掛けると、即刻ダイザーの
       明渡しを要求しており、宇門博士はデュークを説得する時間を要求してようやく5分の猶予をもらう。その間、甲児とマリアは
       ドリルスペイザーで、地中から爆弾の信管を取り外す。信管を外した後、ダイザーの反撃が始まる】

 第71話:4/5以上、ほとんど全編にわたって改変。
      【シナリオでは、モルスがフリード星に留学中に父王が死に、モール星では好戦的な新しい王が即位する。モルスは
       フリード星で保護されるが新王はやがて戦争に負け、死ぬ。モルスはその敗戦後の故郷に帰るが、間もなくフリード星は
       ベガ星連合軍により滅ぼされた。】
      【デュークの腕の傷は、フリード星最後の時に攻撃の爆風の中をつき走っていたときに円盤に撃たれたものである。】
      【モルスはもとからベガ星連合軍の親衛隊長である。】
      【モルスは洗脳されているわけではなく、小国の処世として自らの意志で、ベガ星連合軍に身を寄せている】
      【モルスは、一度目の戦闘ではデュークを見逃してはいるが、デュークの傷を治そうという意志はなく、たまたま
       ジガジガが発する強力なベガトロン放射能がかえってデュークの傷を治したものである】
      【モルスは、デュークとの戦いに敗れて死ぬ】

・・・という具合である。調べてみて判るのは、小湊氏が演出を担当した回は、他の演出家の回がおおむねシナリオに忠実なのに対して、驚くほどに改変が多いことに気付かされる。しかも、ダイザーにおいて不思議な(あるいは既発表の設定と矛盾する)設定が出てくるところのほとんどが小湊氏が演出を担当した回である。「円盤獣ギルギルがフリード星攻略時は親衛隊機だった。(後にナイーダの弟のシリウスの脳が使われていることになったが、そうするとフリード星攻略時の円盤獣ギルギルとの関係は?)」「ベガ星と地球との距離が3000光年。(ベガ星雲はアンドロメダ星雲の中にあり、同じベガ星雲のフリード星は200万光年とされている)」。そして極めつけがこの、「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説である。
 ここまで見ていると、2−(1)の第2話シナリオでの「グレンダイザーはフリード星の守り神」としているものを「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」に改変したのは、もはや小湊氏だったとしか思えなくなってしまう。どうも、他人の作ったものに対して、なにかしらいじくって手を加えなければ気がすまない性情の人なのではないだろうかと思わせる。 
 とすると、「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説というものは、一演出家に過ぎない小湊氏の、設定を重視しない改竄だったと言えそうだ。例えこれがテレビ本編として放送された映像であっても、ダイナミック企画の公式設定やメインライターの上原氏のシナリオ、そして最終稿に近いであろう企画書の設定を超えてまで尊重されるべき性質のものではどうやらなさそうであるというのが、私の考えである。
 ここで、あわせて、1-(1)の第1話予告と1−(2)の第2話本編の関係を考えてみよう。第1話予告時点では「グレンダイザーはフリード星の守り神」とされている。しかし、第2話では件の如く「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説になっている。時系列で考えてみれば、『映像としても、当初は「グレンダイザーはフリード星の守り神」』として考えられていたと見て差し支えないだろう。そして、映像としては後の1−(3)〜(15)でも、他の製作者たちは小湊氏の「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説を認めず、「公式にはグレンダイザーはフリード星の守り神」であり、第2話での経緯は間違いであるから信じないようにと言っているかのようにさえ感じる。小湊氏の「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説を打ち消すかのように、頑として「グレンダイザーはフリード星の守り神」として語っているのはそうした経緯があったからではないだろうか。
 第2話で語られた「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説は、製作サイドから考察したところでも尊重するに値しない、というのがこの章の結論である。
 
 なお、設定面においては私はマジンガーを研究する者としてこのように批評せざるを得なかったが、その立場を離れ一視聴者として評させていただくならば、小湊氏は上記演出の回を御覧いただければお分かりと思うが、物語を実に奔情的に盛り上げてグレンダイザーをグレンダイザーたらしめた偉大な演出家である。第2話では、万力作戦をそのまま続行させ、デュークを絶体絶命にまで追い込んで、それを甲児が救い、必死で円盤獣に止めをさすところなど、実に巧みに友情物語と孤高の青年の戦いを表現している。また、第 7話・第20話も情感たっぷりに仕上げ、第36話の「人」のエピソードなどはグレンダイザー屈指の名場面に仕立てている。第64話も、デュークの犠牲的行為は特筆ものだし、第71話は好き嫌いはあるにせよ、やはり「視聴者の情を掻き立てる」作りとなっている。小湊氏はそういう「情的描写に優れた」タイプの演出家といえるだろう。上の私の結論を以って、世間が小湊氏に非難の目を向けないでいただきたいと切に願う。


4.結

 以上、「映像におけるグレンダイザー世界」「資料検討」「スタッフの内幕」三章にわたって考証を重ねてきたが、その答えはいずれも「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説を否決するに足るものばかりで、逆に「グレンダイザー=フリード星の守り神」説は公式設定として十二分に証明され、否定できるだけの根拠は甚だしく薄弱であった。ここに「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜などという公式設定は存在しない」ということが確認できた以上は、もう「ダイザー=ベガ星の侵略兵器・デューク捕虜」説は形骸化したといって良い。
 グレンダイザーはフリード星の守り神として建造されたものである。


−了−