マジンガーシリーズにおける時間の流れ



 物語において、その中での時間の流れがどのように推移しているかを正確に把握することは、その作品世界を正しく理解するための必要欠くべからざる重要事である。それを詳らかにすることは、各登場人物の諸事件との遭遇年齢を明らかにすることに他ならず、その遭遇年齢によって各者の心理に及ぼす影響もまた異なってくることを我々は知っている。
 また、人物相関を見るとき、各人の年齢及びその格差により関係に影響を生ずることは、特に人格形成期において大である。かの武田信玄も「人は育ちによって、善くも悪くもなる。」と云い、七つ八つのころから十二、三歳までは周囲の教えを聞くことを奨め、「十二、三歳のときに聞いて根づいたことが、一生のあいだ忘れられず」「なかでも声変わりする時分(十四、五歳)が大切だ」と説いているように、である。

試みに、兜甲児を例証に挙げてみよう。彼の、父母と死別せるのが幾年であるかによって、その人格形成に及ぼす影響は大いに変化を生ずることであろう。繦褓のうちに死別したのか、小幼児期においてだったものか、あるいは20歳、40歳で死別したかによって甲児の受ける精神的な衝撃はずいぶんと異なったものになってくる。
 また、マジンガーZに出遭って、世界を救わんと志したのは何時のことだろうか? 15歳の心と18歳の心はまた違ったものに映じたはずだ。また、後年出遭った鉄也やジュン、デュークなどなど、彼らとの年齢差によって心に占める朋友意識は異なったものとなってくることは疑いを入れない。
 このように、人物を深く識るには特にその人格形成期の事件とその遭遇年齢を知ることに若くはない。そして、その為には作品世界での時間の流れを知り、事件の発生年代を可能な限り特定することに尽きるのである。

ところで、いったい作品とは一般的に、放映期間が多年に亙ろうとも物語上はほぼ年が改まらないものと、放映期間に沿って物語上も同じだけ年月の経つもの、放映期間に関係なく物語の中で独自の歳月が経過するものに大別されよう。
 この中で、【放映期間が多年に亙ろうとも物語上はほぼ年が改まらないもの】の代表的作品の例として挙げたいのが『ドラえもん』であり、S5442日からH1611月現在放映中で、約25年間放映されているわけだが、その登場人物であるところの、のび太やその級友たちは小学4年生のままで、歳を取っていないのである。
 また、【放映期間に関係なく物語の中で独自の歳月が経過するもの】の代表例として挙げるのは『巨人の星』だ。この作品はS43330日からS46918日までの3年半放映されているが、物語上では主人公の飛雄馬が小学生くらいのころからプロ野球に入団して活躍するところまでが描かれており、少なく見積もっても6〜7年は経過しているものと考えられる。

 これらのような作品は、独自の時間軸を導入することによってかなり明確に時間軸が明示されているが故に、受け手に然したる混乱を与えず理解を容易にしている。

 だが、これら二つの形式に当てはまらない作品において、しかもそれが直ちに【放映期間に沿って物語上も同じだけ年月の経つもの】と定義づけられないものが中には出てくるのである。しかも、その作品がシリーズとなっている場合に更にその弊は大きくなる。その代表例がウルトラマンシリーズ、仮面ライダーシリーズ、そして我等がマジンガーシリーズと云えるのだ。
 言わば、この「時間軸の定義づけ不明」作品については、それを解明するのは膨大な資料と甚大な研究努力が必要となってくる。
 さて、ウルトラマンシリーズ、仮面ライダーシリーズについては各々のファンに任せるとして、我等がマジンガーシリーズはいったいどのような時間軸の定義があるのであろうか。

1.マジンガーZ、そしてグレートマジンガーの時間軸

 史学においてその真実を探求する時、その探求作業は必ず原資料(あるいは第一次資料)に当ることを旨とする。後代の歴史家による「第二次資料」は「解釈」の参考にこそすれ、それを事実の「認識」としてはならないことは多くの歴史家が夙に指摘しているところである。
 今ここに、マジンガーの時間軸を調べるに当っても、著作者の著述(原資料)という事実の「認識」を元にして論を進めるべきであって、後の編集者のバイアスの掛かった「解釈」(第二次資料)とは厳として区別する必要があるであろう。
 そこで、可能な限り原資料に当って記述を拾い上げてみよう。

〔1〕マジンガーZとグレートマジンガーの活動期間について
(1)「47年12月 マジンガーZを知る」

    「48年 8月 サルード大爆発」

    「48年 5月 ダイマーU5で決戦」

    「48年12月 研究所占領する」

    「49年 5月 グールを破壊」

    「さいきんのあしゅら男爵は、失敗のれんぞくでドクター=ヘルからもみはなされ、
      ブロッケン伯爵からさえじゃまものあつかいされていたのだ。そして、五月二十五
      日には、鉄十字軍団に、暗殺されかかった。」

「昭和四十九年、五月二十六日、あしゅら男爵は、海底要塞ブードとともにマジン
      ガーZに激突し、太平洋にちっていった。」

 (『テレビマガジンS49.6』より)

(2)「六月二日、弓教授のかたうでとして、マジンガーZの数々の改造をおこない、大き
     なやくわりをはたしてきたもりもり博士がなくなった。」

                              (『テレビマガジンS49.7』より)

(3)「海底要塞サルード (略)1973年8月26日爆破されてしまった。」

   「海底要塞ブード (略)1974年5月26日マジンガーZと激突、あしゅらと
    ともに爆破されてしまった。」

  「兜 十蔵 (略)昭和四十七年十二月三日、あしゅら男爵に殺された。」

     (『増刊テレビマガジンマジンガーZ大百科号S49.7.15』より)

(4)「昭和四十九年八月二十五日、光子力研究所はばんぜんの準備をととのえ、ヘルにさ
     いごの総決戦をいどんだ。(中略)ヘルとブロッケンは、グールともども爆死してい
     った。」

(『テレビマガジンS49.9』より)

(5)「昭和47年 兜十蔵博士の死」

   「昭和48年 光子力科学研究所では、マジンガーZとドクター=ヘルのはげしい戦
    いがつづいている。」

「昭和49年 地上では、ミケーネ帝国の手先とおもわれるゴーゴン大公の出現によ
    って、いよいよ戦闘がはげしくなっていた。」

(『テレビマガジンS49.10』より)

(6)「昭和49年7月25日 グレート、Zをたすけるため登場!」

   「昭和50年2月2日 ゴーゴン大公のさいご!」

   「昭和50年4月6日 くたばれ暗黒大将軍!」

      (『増刊テレビマガジン三大ヒーロー大百科号S50.4.15』より)

(7)「昭和49年9月8日 マジンガーZは、ミケーネの戦闘獣グラトニオスとビラニア
     スにおそわれ、絶体絶命のピンチにおちいっていた。」

「昭和49年9月22日 ビューナスA完成。」

「昭和49年10月27日 新兵器ドリルプレッシャーパンチ完成。」

「昭和49年12月29日 いままで24体の戦闘獣をやっつけてきた。」

 (『テレビランドS50.2』より)

(8)「昭和49年9月22日 「ビューナスA」完成!」

   「昭和49年9月29日 科学要塞研究所が敵に発見されてしまった。」

   「昭和49年10月27日 ドリルプレッシャーパンチ完成!」

   「昭和49年11月3日 女戦闘獣、クレオがあらわれた。」

   「昭和49年12月1日 ついに暗黒大将軍が万能要塞ミケロスにのって登場。」

   「昭和50年2月2日 ゴーゴン大公死す!」

   「昭和50年2月9日 ゴーゴン大公にかわって登場したヤヌス侯爵。」

   「昭和50年2月23日 シローのロボットができた。」

   「昭和50年4月6日 暗黒大将軍死す!」

 (『テレビランドS50.4』より)

 まずこの(1)について検証すると、「47年12月 マジンガーZを知る」は、『マジンガーZ第2話』であり、この放映日は昭和47年12月10日である。
 以下、「48年 8月 サルード大爆発」は『Z第39話』(放映日昭和48年8月26日)。
 「48年 5月 ダイマーU5で決戦」は『Z第26話』(放映日昭和48年5月27日)。
 「48年12月 研究所占領する」は『Z第58話』(放映日昭和48年12月30日)。
 「昭和四十九年、五月二十六日、あしゅら男爵は、海底要塞ブードとともにマジンガーZに激突し、太平洋にちっていった。」は『Z第78話』(放映日昭和49年5月26日)。
 この第78話では、あしゅら男爵が死ぬ前夜に鉄十字軍団に暗殺されかかっているので「五月二十五日には、鉄十字軍団に、暗殺されかかった。」も、そのとおりになる。

次に(2)を検証してみよう。「六月二日、弓教授のかたうでとして、マジンガーZの数々の改造をおこない、大きなやくわりをはたしてきたもりもり博士がなくなった。」については、これは『Z第79話』であり、この放映日は昭和49年6月2日である。これも完全に対応している。

(3)。「海底要塞サルード (略)1973年8月26日爆破されてしまった。」。前述のとおり『Z第39話』(放映日昭和48年8月26日)。
 「海底要塞ブード (略)1974年5月26日マジンガーZと激突、あしゅらとともに爆破されてしまった。」も前述にあるように『Z第78話』(放映日昭和49年5月26日)である。
 「兜 十蔵 (略)昭和四十七年十二月三日、あしゅら男爵に殺された。」についても、『Z第1話』(放映日昭和47年12月3日)にあるとおりである。

(4)について。「昭和四十九年八月二十五日、光子力研究所はばんぜんの準備をととのえ、ヘルにさいごの総決戦をいどんだ。(中略)ヘルとブロッケンは、グールともども爆死していった。」については、『Z第91話』(放映日昭和49年8月25日)であり、対応。

(5)。「昭和47年 兜十蔵博士の死」は前述のとおりのため省略。
 「昭和49年 地上では、ミケーネ帝国の手先とおもわれるゴーゴン大公の出現によって、いよいよ戦闘がはげしくなっていた。」については、ゴーゴン大公が登場したのは68話から69話にかけてであるが、その放映日は昭和49年3月17日と24日となる。異同はない。

(6)。「昭和49年7月25日 グレート、Zをたすけるため登場!」。これは映画『マジンガーZ対暗黒大将軍』になる。上映開始日は昭和49年7月25日である。日にちに狂いは認められない。
 「昭和50年2月2日 ゴーゴン大公のさいご!」は、『グレート第22話』(放映日昭和50年2月2日)。
 「昭和50年4月6日 くたばれ暗黒大将軍!」は『グレート第31話』(放映日昭和50年4月6日)となる。

(7)。「昭和49年9月8日 マジンガーZは、ミケーネの戦闘獣グラトニオスとビラニアスにおそわれ、絶体絶命のピンチにおちいっていた。」については、『Z第92話』(放映日昭和49年9月1日)であり、1週間のズレが生じているが、おおまかに言えば誤差の範囲内としていいだろう。
 「昭和49年9月22日 ビューナスA完成。」は『グレート第3話』(放映日昭和49年9月22日)のままである。
 「昭和49年10月27日 新兵器ドリルプレッシャーパンチ完成。」。『グレート第8話』(放映日昭和49年10月27日)である。
 「昭和49年12月29日 いままで24体の戦闘獣をやっつけてきた。」。放映日昭和49年12月29日の『グレート第17話』の時点で、グラトニオスとビラニアスから数えるとちょうど24体となる。ただし、映画『マジンガーZ対暗黒大将軍』は含まないことになる。

(8)についてはどうか。まず「昭和49年9月22日 「ビューナスA」完成!」は前述のとおりなので省略とする。
 「昭和49年9月29日 科学要塞研究所が敵に発見されてしまった。」は、ゴーゴン大公が科学要塞研究所を発見したのが『グレート第4話』であり、放映日は昭和49年9月29日である。
 「昭和49年10月27日 ドリルプレッシャーパンチ完成!」は、前述のとおり。
 「昭和49年11月3日 女戦闘獣、クレオがあらわれた。」。『グレート第9話』(放映日昭和49年11月3日)。
 「昭和49年12月1日 ついに暗黒大将軍が万能要塞ミケロスにのって登場。」。暗黒大将軍が初めて直接指揮を取ってミケロスに乗ったのが『グレート第13話』(放映日昭和49年12月1日)である。
 「昭和50年2月2日 ゴーゴン大公死す!」は、前述のとおり。
 「昭和50年2月9日 ゴーゴン大公にかわって登場したヤヌス侯爵。」は『グレート第23話』(放映日昭和50年2月9日)である。
 「昭和50年2月23日 シローのロボットができた。」は『グレート第25話』(放映日昭和50年2月23日)となる。
 「昭和50年4月6日 暗黒大将軍死す!」は、前述のとおり。

以上のように、原資料によると『マジンガーZ』はその放映日とほぼ同じく、物語においても昭和47年12月2日から昭和49年9月8日までの期間を扱ったものであることが判明する。そして、『グレートマジンガー』にては、昭和49年9月8日から昭和50年4月6日までは概ね放映期間(第1話から31話)と高い確率で対応することが確定するので、後半の第32〜56話についても、その放映期間と対応する蓋然性が高いと云えるだろう。それを裏付けるかのように、『テレビマガジンS50.9』には「去年の九月、弓さやかとともにアメリカに留学した甲児くんが、(中略)あれから、早くも一年がすぎた。」とある。グレートの52話附近が、放映日と同じく昭和50年8月であることの証しであろう。なお、この「一年」の表現が一番組に与えられる便宜的年数でない証しに、『テレビマガジンS49.9』には「兜十蔵博士がころされてから、もう一年半もたってしまった。」という弓博士の言葉がある。昭和47年12月から昭和49年8月というと、1年10ヶ月である。「一年半」という言葉が弓博士の話し言葉であることを考えれば、「一年半」という発言も間違いとするほどのものではない。そして、Zでの戦いを「一年半」と弓が言っていることから、先のグレートでの「一年」の表現も、現実的な意味を帯びていることを改めて実感する。

『マジンガーZ』『グレートマジンガー』は、その放映期間と同じく昭和47年12月2日から概ね昭和50年9月までの物語であったとして良いであろう。


〔2〕年齢の問題について

 『マジンガーZ』『グレートマジンガー』が放映期間に準じた昭和47年12月2日から概ね昭和50年9月までの物語であろうことは上に証したとおりである。次に確認しなければならない問題は、この月日のとおりに登場人物が年齢を重ねるかどうかということになる。そこで、年齢が詳細に語られる人物を中心に検証してみたい。

(1)  兜甲児

甲児については、当初は高校三年生の設定であったことは『新番組案内』や『Z第4話』で「東城学園3−A」に編入していることでわかる。だが、この設定は早々に変更されており、『テレビマガジンS48.4』では「東城学園高等部の一年生」とされている。『テレビマガジンS48.11』にも「高校一年」とあり、昭和48年度においては16歳であると考えられる。次に出てくるのは『増刊テレビランドS49.7.15』の「16才」というものである。これは、映画『マジンガーZ対暗黒大将軍』(S49.7.25上映開始)において甲児が誕生日を迎えていることを考えれば、その誕生日の10日前にはまだ16才で錯誤はない。
 問題なのは『増刊テレビマガジンマジンガーZ大百科号S49.7.15』に記載のある「年齢16さい。東城学園高等部一年。」である。昭和48年度と49年度にわたって甲児の年齢が変わっていないのである。
 しかし、次の『テレビマガジンS49.10』には「昭和37年 (中略)甲児5歳」とあるので、もし月日と加齢が正しく対応しているとするならば、甲児は昭和49年7月には17歳になることがわかる。実際、『テレビマガジンS48.4』と『テレビマガジンS48.11』の記載は、月日と加齢が正しく対応していて、16才であると導けるのである。すると、『増刊テレビマガジンマジンガーZ大百科号S49.7.15』での記載は、甲児が落第して再度一年生をやりなおしになったか、もしくは映画『マジンガーZ対暗黒大将軍』時の設定のため、昭和49年3月以前の旧設定の使用による誤記であるといえそうである。ただし、甲児が落第したとするには、甲児以外の人物(シロー、ボス、ムチャ、ヌケ)なども落第したとしなければならなくなり、採用するには苦しい仮説と云わざるを得ない。
 しかし、甲児の年齢に関する設定が幾度か修正されている事実を考えれば、最も後に発表されている『テレビマガジンS49.10』設定こそが最終設定と見なして、優先されるべき性質のものであろう。とすると、昭和37年から昭和48年までを月日と対応して年齢を重ねていると見られることから、昭和48年から昭和49年においても同じように甲児は年齢を重ねていると推測することは出来る。

以上を見ると、正直なところ混乱も多く、決定的な物言いは出来ない。甲児は劇中においてその月日に相応して年齢が加わっているともいないとも決めかねるというのが結論である。

(2)ドクター・ヘルと兜十蔵

 ドクター・ヘルの生年月日は、『テレビマガジンS49.2』によると「一九〇二年九月六日」である。「大学にはいり、(中略)兜十蔵がいた」とされている。そして、ドクターヘルは、ドイツ学生時代、マジンガーZの生みの親である兜十蔵博士と同級生だった」と『超大型スーパーロボット大図鑑』(S49.9.10 株式会社朝日ソノラマ刊)には記載されている。そして、年齢については「ドクター=ヘル 年齢七十二さい。」(『増刊テレビマガジンマジンガーZ大百科号S49.7.15』より)とされている。

 ここで厳密にヘルの年齢を検証すると、『増刊テレビマガジンマジンガーZ大百科号』の出版されたS49.7.15の時点では、ヘルの年齢は71歳であり、約2ヶ月後の誕生日を迎えた時に72歳となることになる。また、Z第91話についても前述したようにこの出来事はS49.8.25とされているので、やはり厳密にはヘルは12日後の誕生日を目前に71歳で死亡したこととなる。が、健康診断などにおいては、その年あるいはその年度の最終日にあわせた年齢を記載させることが多いことを考えると、ヘルを72歳とするのもあながち無理ではない。

次に、十蔵について調べると「兜 十蔵 (略)昭和四十七年十二月三日、あしゅら男爵に殺された。六十九さいであった。」(『増刊テレビマガジンマジンガーZ大百科号S49.7.15』より)とされている。十蔵がヘルと同級生だった事実を考えると、単純に計算するとS47.12からS49.8までの間にヘルは2つ年をとっていることになる。そして、年表のとおりに数えると、ヘルは十蔵より一歳年上であり、大学で同級生だったという記述に誤りがでてしまうことになる。だが、この問題は十蔵が誕生日を迎える前に死亡したと捉えても解決するし、また、当時の日本の年齢の数え方にも関係してくる。当時の日本は、数え年による年齢計算をしており、生まれた日をもって一歳として、翌年度の1月1日をもって年齢が加算されるという制度であった。
とすると、十蔵は今の年齢計算では17歳だったのだが、当時の数え年制においては18歳だったこととなり、ヘルと同学年であったことがすんなり整合が出てくる。

この概念を適用すると、十蔵は日本式の年度で考えるとヘルより1歳年下であったわけであり、十蔵が死んだ昭和47年12月3日は、ヘルは70歳だったことになる。すると、ヘルの誕生日「一九〇二年九月六日」である事実とも合致しており、かつ、昭和47年12月3日から昭和49年8月25日までの期間にヘルがほぼ72歳にならんとしていたことにも完璧に符合するのである。そしてこのことは、『マジンガーZ』の物語の中で、その月日に対応して正常に登場人物が年を取るということの証拠となっているのである。

(3)剣鉄也と炎ジュン

 鉄也とジュンの年齢については、『増刊テレビランドS49.7.15』に鉄也を「18才」としており、『冒険王S49.9』には「剣鉄也 18才 炎ジュン 17才」としている。また、『テレビランドS49.10』でジュンを「17才」としているのと、『テレビマガジンS49.11』には「剣鉄也の誕生日は、昭和三十一年七月十六日で、今年十八歳」と記載がある。いずれも、S49年度の鉄也は18歳、ジュンは17歳としている。
 余談ではあるが、設定画において当初鉄也は22才であったことは知られているところであるが、実は変更後の年齢は16才とされている。これは、設定画というものの性質上、文芸設定が必ずしも決定に至っていないことが多い故と云っていいだろう。
 ちなみに、「22才」説も「16才」説も、当時の視聴者や読者には一切公表されていない設定であり、ダイナミック企画が当時公式に発表した設定ではすべて「18才」としていることから、「22才」説と「16才」説は棄却されるべき性質のものであることは論を待たない。

また、『テレビマガジンS49.10』には「昭和38年 (中略)鉄也はまだ七歳の少年であった。」「昭和43年 (中略)炎ジュンをひきとった」とあり、かつ、『テレビマガジンS49.11』にて「ジュンは(中略)十一歳のとき、兜剣造博士にひきとられ」との記載とあわせて、上記の年齢と矛盾がない。

そして、『テレビマガジンS50.9』において「剣鉄也 十九さい 炎ジュン 十八さい」とある。S50年度の鉄也が19歳、ジュンが18歳ということで、きちんと『グレートマジンガー』の物語の中で、その月日に対応して正常に登場人物が年を取っているのである。

以上(1)(2)(3)の結論によって、『マジンガーZ』『グレートマジンガー』においてはその月日に対応して、登場人物たちは年齢を取るということが判明した。


〔3〕『マジンガーZ』『グレートマジンガー』総論

〔1〕において、放映期間と物語としての経過期間が一致することを、〔2〕において、その物語で流れた月日に対して正確に登場人物が年を取ることを証した。
『マジンガーZ』『グレートマジンガー』においては【放映期間に沿って物語上も同じだけ年月が経過し、かつ登場人物はその年月に対応して年を取る】ということがここに定義づけられたのである。


2.グレンダイザーの時間軸 

『マジンガーZ』『グレートマジンガー』の二作と『UFOロボ グレンダイザー』を別けて採り上げたのには理由がある。それは、『マジンガーZ』『グレートマジンガー』は純粋に地球のみで起こった出来事であるのに対して、『UFOロボ グレンダイザー』は地球とフリード星、そしてベガ星と、少なくとも3つの星の出来事が語られており、それぞれの星の暦や惑星軌道により一日や一年の時間が地球とは同一でない可能性があるからである。そして、各種の事件について、それぞれの惑星での暦によって語られているとすると、それを確認して時間の統一を果たさないことには判明しないことが多いのである。

〔1〕  フリード歴、ベガ星歴について

 まず、劇中や各種資料に現われた、月日に関する記述を洗い出してみよう。

   (1)宇門「八ヶ岳山中に不時着しているグレンダイザーとデュークフリードをみつけたのだ。
     (略)かれこれ2年前のことになる。」

                    『グレンダイザー第2話』(S50.10.12放映)

(2)宇門「まだ14歳だよ、マリアちゃんは」

  『グレンダイザー第50話』(S51.9.12放映)

 (3)「グレンダイザーは、十五年という長い年月をかけて、フリード星人の手でつく
       られた。」

(『テレビマガジンS51.1』他より)

  (4)「5年前、祖国フリード星が滅ぼされた」

     (『ヒーローマシーン必殺技大百科』〔S55.5.25 ケイブンシャ刊〕他より)

(5)マリアの年齢「13才」

                      (『シナリオNo.49』S51.9.8放映用)

(6)マリアの年齢「14才」

    (『シナリオNo.50』S51.9.12放映用)
                                                (初期設定ラフ)
                              (『第57話設定画』S51.10.31放映用)
   (7)フリード星滅亡時のマリアの年齢「8歳」
                                 (『第49話絵コンテ』S51.9.8放映用)

  (8)「マリア デュークフリードの妹。フリード星で7歳の時生き別れになっていた」

   (『スーパーロボット大図鑑A』〔H4.7.2 バンダイ刊〕より)

  (9)「宇門大介 20才」

                 (『シナリオNo.1・2・4・6・7・10・12・13・16』
                           S50.10.5〜S51.1.11放映用)

                           (『テレビランドワンパック UFOロボグレンダイザー図鑑』
                             〔S51.6.15 徳間書店刊〕より)

  (10)フリード星滅亡時のデュークの年齢「15才」

                          (『第71話設定画』S52.1.30放映用)

 このうち、(1)「八ヶ岳山中に不時着しているグレンダイザーとデュークフリードをみつけたのだ。(略)かれこれ2年前のことになる。」というものについては、これは宇門博士の言葉であるので、この要件のみは地球の太陽暦(グレゴオル歴)によるものであろう。
 が、その他の(2)〜(10)についてはフリード星人関連について叙述されたものであり、ごく常識的には、自星のフリード星の暦で語られているものとするのが自然であろう。だが、これらの出来事をフリード星歴で語ると、そこには矛盾が輩出してくるのである。

 まずは、フリード星歴と地球の太陽暦とを比較してみると、フリード星歴においては「1年は484日、1日は36.4時間」(『テレビランドS51.5』より)とされており、その一年間を時間に直すと17617.6時間、地球の一年約8760時間に比べてほぼ2倍である。すなわち、フリード星における1年は地球時間にして約2年4日に相当する。
 この要件を先の(2)〜(10)にそれぞれ当てはめていくと、まず、フリード星が滅亡したのは地球人年齢にしてデュークは30歳、テレビ本編での地球での活躍時には40歳であったことになる。これは種々の資料が記す「青年」という概念からは大きく外れるものとなる。
 また、マリアについてはフリード星が滅亡したのは地球人年齢にして14歳となり、第68話や第70話で本人や周囲が語る「幼かったため、父の顔も憶えていない」とか「フリード星のことはあまり憶えていない」というものにはそぐわなくなる。そして、本編時にはマリアは実は28歳だったことになり、随分と劇中事実からは外れた結論となってしまう。

では、デューク、マリアの年齢のみはすでに地球年齢に換算されているものと仮定して、その他の事象をフリード星歴に当てはめて考えてみよう。
 フリード星が滅亡したのはデュークの年齢から逆算すると地球時間の「5年前」であり、マリアの年齢からすると地球時間の「7年前」。しかし、(4)によればフリード星の滅亡したのはフリード時間の「5年前」となりそれは地球時間の「10年前」に相当する。デュークとマリアの時間差の問題は、デュークが地球でベガ星連合軍と戦いはじめてからマリアに会うまでに時間が経っているということで説明がつくのだが、デュークやマリアがフリード星の滅亡に遭った年齢と、実際にフリード星が滅亡した年とが全く合わなくなってしまうのである。

もし、更に仮定を差し挟んで「デュークとマリアがフリード星の滅亡に遭った年齢に誤りがあった」とするならば、フリード星が滅亡したフリード時間にして「5年前」(地球時間の「10年前」)にはデュークは10歳、マリアは3〜4歳ということになってくるのだが、これは第49話や第68話、第71話に見られるフリード星滅亡時の二人の年齢と照会するとやはりそぐわなくなってくる。

以上のことを鑑みるに、『UFOロボ グレンダイザー』においては、フリード星歴は適用されておらず、地球の太陽暦に拠って物語が語られているものと見なして良いであろう。

なお、ベガ星歴に至っては主人公のバックグランドであるフリード星歴すら適用されていない事を考えれば、範疇の外としていいだろう。


〔2〕グレンダイザーの期間と加齢

 まず、『UFOロボ グレンダイザー』の期間について語られた資料や本編は、

   1)第14話(S51.1.4放映)にて、お正月(1月1日)を迎えている。

(2)第24話(S51.3.14放映)の日付は「3月14日」

      (『第24話絵コンテ』S51.3.14放映用)

  (3)第27話(S51.4.4放映)にて「四月四日、ベガ星連合軍とグレンダイ
      ザーの決戦がおこなわれた。このたたかいで、グレンダイザーはマザーバーン
      と体あたり、きょだい要塞を大ばくはつさせた。」

    (『テレビマガジンS51.4』より)

  (4)第31話(S51.5.2放映)にて、「4/14」付けの甲児の手紙で「TF

      Oを失って手持ち無沙汰」の言辞あり。かつ、「今度の5月のゴールデンウィー
      クには遊びにこいよ」の手紙のとおり、ボスが鯉のぼりを持参で訪れている。

   (5)第64話(S51.12.19放映)にて、劇中の時計は「12月16日」と

      なっていた。

   (6)第66話(S52.1.2放映)にて、お正月(1月1日)を迎えている。

というように、年は語られていないものの、月、日はほとんど放映日と合わせられていることがわかる。また、本編中での春夏秋冬は実際の放映年月日の春夏秋冬とほぼ合っており、かなりの確度で『UFOロボ グレンダイザー』の物語が、放映期間とほぼ同一である可能性があると言える。

実は、もう一つ年月日を記載した資料として、

(7)「マザーバーン (中略)グレンダイザーのビーム複合攻撃により、爆発四散し
       てしまった。(中略)昭和51年4月4日の事であった。」

     「ベガ獣 (中略)第一号は昭和51年9月26日に実戦投入されたキングゴリ」

                 (『スーパーロボット大図鑑A』〔H4.7.2 バンダイ刊〕より)

という記載があるのだが、正直この『スーパーロボット大図鑑A』という本はその記載のおよそ99%は放映当時の『テレビマガジン』と『テレビランド』の記載から採録されているのだが、この二項目とあと2つばかりの記載のみは、当時の『テレビマガジン』と『テレビランド』には載っていない記事であり、それについてどこまで正しい記載であるか不安が残る部分なのである。ただし、ブラッキーの死については、年までは記載がなかったものの、月、日については『テレビマガジン』に記載があったことを考えれば、一概に設定に基づかない編集者の改竄記事≠ニ退けるわけにもいかない性質を帯びている。

 そして、もし『スーパーロボット大図鑑A』のこの記載が正しいとするならば、『UFOロボ グレンダイザー』の物語が放映期間とほぼ同一である可能性があることは、更に可能性が高まると言って良い。

 次に、年齢の問題について考察してみよう。

 マリアは、『スーパーロボット大図鑑A』〔H4.7.2 バンダイ刊〕によれば、フリード星の滅亡時は7歳であったという。しかし、この資料に疑義を生じさせる設定が他にないでもない。というのは設定画にて、9才とされるマリアの絵があるのだ。ここでのマリアは、ほぼフリード星の衣装と思われる服を着ているので、常識的に考えれば、フリード星が滅亡したのはマリアが9歳の時とするのが妥当だろう。
 だが、正式には設定画においてはフリード星が滅亡したのはマリアが9歳の時であると明言しているわけではない。そして、このマリアの9歳時の衣装はフリード星滅亡時に着ていたものとは違うのである。
 通常主要キャラクター設定の決定稿というものは放映の4ヶ月前には決定されているものである。OVA『マジンカイザー』に至っては、主役キャラが10ヶ月前に既に決定していた事例もあるほどである。マリアの場合は、ドリルスペイザーの操縦員として急遽設計されたということから、ドリルスペイザーが画面に登場した第45話(S51.8.8放映)から数えて最低でも4ヶ月前には決定していたものと見られる。(早い場合は、ダブルスペイザー登場決定時にはすでにドリルスペイザーの登場が決められていたであろうことから、7ヶ月前にはデザインが進められていたとしても良いかも知れない)
 このタイミングを見ると、フリード星が滅亡したのはマリアが9歳の時であるとしていたのは、S50年度末(〜S51.3.31)までの時点での設定として考えられていたとしてもいいのかもしれない。
 通常の、追加キャラの設定画については、特にその身長については設定画とダイナミック企画が決定した公式設定とは違うことが多い。また、なによりも剣鉄也の年齢について、設定画上では22才から16才に変更されているにも関わらず、ダイナミック企画の公式設定では18才とされている前例を考えれば、設定画上に表れる文芸設定においては100%信を置くことは危険と云えるかもしれない。反証のない場合はそれに従うのも止むを得ないところではあるが、可能な限りはその裏付けをとることが望ましいと感じる。
 そして、その証拠として、設定画より後の『第49話絵コンテ』ではフリード星滅亡時のマリアを「8歳」としている。これにより、少なくとも設定画の「9歳」との記述は変更されたものとして確定できるのだ。
 
その特性もあわせて考えれば、フリード星が滅亡した時のマリアの年齢は、設定画の「9才」に準拠するよりは『スーパーロボット大図鑑A』の「7歳」と『第49話絵コンテ』の「8歳」というのを採用して考えたほうがよいと思われる。

 これにより、フリード星滅亡時のマリアの年齢は年度で「8歳」として論を進める。そして、先の「5年前、祖国フリード星が滅ぼされた」という設定は、「宇門大介 20才」という設定と、フリード星滅亡時のデュークの年齢が「15才」だったという設定と符合しており、齟齬は認められない。
 ところで、マリアの年齢がドラマ中では「14才」だったこと、そのマリアは「フリード星で8歳の時生き別れになっていた」ことを合わせれば、マリア登場の時点の約6年前にフリード星は滅亡したことになるのだが、この「5年前、祖国フリード星が滅ぼされた」という事実と対照すると、そこには約1年の差が生じてくる。
 しかしこれは、「5年前、祖国フリード星が滅ぼされた」とする説明は番組開始時の昭和50年10月時点でのことであるのに対して、マリアの件はマリアが登場した第49話(S51.9.5放映)時点の条件であることから派生したことと考えれば良い。そこにはちょうど1年が経過しているのである。
 マリアの年齢が『シナリオ
No.49』(S51.9.8放映用)では「13才」で、翌『シナリオNo.50』(S51.9.12放映用)には「14才」であるのだから、この間にマリアは誕生日を迎えたのであろう。そうすると、昭和45年1〜8月の間にフリード星が滅亡したのであれば、「『UFOロボ グレンダイザー』の物語が、【放映期間に沿って物語上も同じだけ年月が経過し、かつ登場人物はその年月に対応して年を取る】」という仮定を差し挟んで考えてみれば、「5年前、祖国フリード星が滅ぼされた」こととマリアが「フリード星で7歳の時生き別れになっていた」条項と『第49話絵コンテ』の「8歳」というのが年度による年齢表記だったことをあわせると、完全に整合していることとなる。

 もう一点、「『UFOロボ グレンダイザー』の物語が、【放映期間に沿って物語上も同じだけ年月が経過し、かつ登場人物はその年月に対応して年を取る】」という傍証は、

(8)「兜 甲児 18才」

                    (『シナリオNo.1・2・4・6・7・10・12・13・16』
                                S50.10.5〜S51.1.11放映用)

                      (『テレビランドワンパック UFOロボグレンダイザー図鑑』
                                  〔S51.6.15 徳間書店刊〕より)

とする設定は、『テレビマガジンS49.10』にある「昭和37年 (中略)甲児5歳」とするものとも合致し、この仮説が正しいと思われる根拠の一つとなってくる。

 三つ目としては、『マジンガーZ』『グレートマジンガー』が【放映期間に沿って物語上も同じだけ年月が経過し、かつ登場人物はその年月に対応して年を取る】ことが判明したので、『マジンガーZ』『グレートマジンガー』と続くマジンガーシリーズの一環である『UFOロボ グレンダイザー』においても、その法則が適用されるであろうことはあながち牽強付会ではないということ。

 また、これより後の第52話にて、ベガ星連合軍はベガ星を打ち捨てて月へ大移動をしているが、その際、事故によって太陽系のはずれに飛ばされたモルスは、第71話で「行方不明になって以来3ヶ月」後、月のスカルムーン基地へたどり着いた。第52話から71話、すなわち放映日にしてS51.9.26〜S52.2.6であり、実際には4ヶ月ぐらいだが、まぁ、3ヶ月とする本編と比べて、ほぼ放映期間と物語上の期間が対応していると言って良かろう。

 以上によって、まずは『UFOロボ グレンダイザー』の物語においても、【放映期間に沿って物語上も同じだけ年月が経過し、かつ登場人物はその年月に対応して年を取る】という事実が確認されるのである。


3.結論として

『マジンガーZ』『グレートマジンガー』は【放映期間に沿って物語上も同じだけ年月が経過し、かつ登場人物はその年月に対応して年を取る】ことが証され、かつ、『UFOロボ グレンダイザー』においても、【放映期間に沿って物語上も同じだけ年月が経過し、かつ登場人物はその年月に対応して年を取る】蓋然性が高いであろうことが確認できた。

これによって、『マジンガーZ』『グレートマジンガー』『UFOロボ グレンダイザー』の物語は、【放映期間に沿って物語上も同じだけ年月が経過し、かつ登場人物はその年月に対応して年を取る】というのが結論となる。