ダイナミックヒーローズ

作品紹介
 ベガ星連合軍が壊滅して、デュークたちがフリード星再興のために星へ帰ってから一年・・・。一度復興状況を知らせようと地球へ来訪したデュークとマリアを、ダムドム星人が襲い掛かる。ダムドム星人はベガ星連合軍と勢力を二分して争っていて過去二回地球に来襲してきていたが、二度ともグレートマジンガーとゲッターロボにその野望を阻まれ、ベガ星連合軍の来襲とともに静観を決め込んでいたのだが、ベガ星連合軍が滅んだ今、再び宇宙の覇者となるべく地球に来襲してきたのだった。
 その際、邪魔になるマジンガーを最も良く知る男・Dr.ヘルを蘇らせ、ダムドム星人はヘルと共闘することにしたのだ。
 ダムドム星人の突然の来襲に、デュークはマリアのみを地球に逃がすのだが、自身は捕まってしまった。

 一方、蘇ったヘルは、パンサーゾラと手を組み、デーモン一族を次々と蘇らせ、ハニーの持つ空中元素固定装置を狙って再び世界征服に乗り出したのだ。
 ダムドム星人からマリアを救出した甲児は、ダムドム星人との戦闘をグレートやゲッターに任せて、マリアの身柄の安全を優先する。そして、マリアから、事態を聞き出して事件の全貌を知る。
 狙われたハニーは、一旦はデビルマンに救われたものの、デビルマンと妖獣の死闘の間に、エバインによて捕えられてしまった。
 ハニー救出が、Dr.ヘルの野望を挫く手立てとなる。そう考え甲児は、ララと一緒にシスタージルの居城の幻城に乗り込んで、これを救出したのだった。
 デーモンとパンサーを失ったDr.ヘルだが、まだ切り札はある! それが操られているデュークのグレンダイザーだ。
 グレンダイザーは今や悪の使者となって立ちはだかってきたのだ。
 その最大の危機に、甲児は遂にマジンガーZを出動する。勝つのはグレンダイザーかマジンガーZか?
 Dr.ヘルとは別行動を起こしたダムドム星人は、ギルギルガンを放つが、あえなくグレートとゲッターの猛攻の前に敗れ去る。そして、グレンダイザーが電波により操られていることを知った甲児は要塞ナバローンに特攻を掛け、Dr.ヘルこと地獄大元帥を倒し去る。
 しかし、翼をやられたマジンガーZに脱出の方法はない。
 この危機に、正気に戻ったデュークが、ハリケーンハニーのダブルスペイザーの手助けを得て、マジンガーZを救出する。
 大空に両雄が並び立ったのだ!!

 事件が終わって、フリード星へと帰還するデュークとマリア。それを地球のスーパーロボットたちが見送るのだった。


解説
 この作品は、前作となるクリックまんが「ダイナミックロボット大戦」の復活をめざして製作されたものである。
 その復活に際して、いろいろな人たちの尽力があったことを聞いているが、何と言っても作者・越智氏と担当の幸森氏の力が大きいことは言を待たない。

 さて、クリックまんが「ダイナミックロボット大戦」の打ち切りについては、既に言及したとおりだが、その直後から様々な動きがあって、この作品へと結びついている。それだけ、前身となったクリックまんが「ダイナミックロボット大戦」の評判が良かったことの証左であるのだが、その復活に当たっては、前作と全く同じものを出すというわけにはいかず、多少のプロットの変更が為されている。
 その最も顕著な違いは、「ドロロンえん魔くん」の除外と、それに伴う死亡キャラの復活の経緯が異なることとなったところにある。
 本作では、蘇りの理由をパンサーゾラの魔力によるものとして、基本的に蘇ってきたキャラクターは女性デーモンやパンサーたちに限られている点が目新しい。
 また、前作では最初から光子力研究所にいて、マジンガーZに乗っていた甲児が、本作においては後半まで搭乗せずに、グレンダイザー時代になぜマジンガーZに乗らなかったかの意味づけも為されていて、興味深いところである。
 一部の、「グレンダイザーを認めたがらない人たち」には不満なのだろうが、シリーズの一環として見ていく場合、甲児が宇宙科学研究所にそのまま残留しているほうが、流れとしてスムーズになっていると言えよう。
 また、ダイザー出演の面々が、甲児のマジンガーZのことを知っていたかどうかという回答も為され、かつ、映画版での「謎の宇宙人」に一つの回答を与えた点でも、実に興味深い作品に仕上がっている。
 まさしく、クリックまんが「ダイナミックロボット大戦」を再び再現したかの如く、重厚かつ、緻密な文芸設定を踏まえた上でのストーリー展開が為されていて、また、効果音の凝りかたや、画面の動きといい、見事にクリックまんが「ダイナミックロボット大戦」での雪辱を晴らした格好となろう。

 ストーリー上でも、後半にやや駆け足的な流れの速さが見られたものの、全篇を通して観ていくと、それもさほど気になるものではなく、各ヒーロー、ヒロインたちに活躍の場が与えられており、それぞれのファンに配慮した作りとなっている。
 毎月少しずつ見ていたときは「甲児は何時になったらマジンガーZに乗るんだ?」という焦らされも相まって、毎回次号が気になる展開を見せていき、ヒキが効いていたと言えよう。
 そして、本作がクリックまんが「ダイナミックロボット大戦」の後継であることの証のように、遂にマジンガーZとグレンダイザーが同時に画面に登場するのだ!
 この興奮は、映画「UFOロボ グレンダイザー対グレートマジンガー」でのもやもやを晴らすのに充分であり、それを上回る興奮として、マジンガーZとグレンダイザーが相対するのだ!!
 強大無比のグレンダイザーの武器に対抗するは、「スピードのマジンガーZ」である。この二体の魔神が激突し、秘技の数々を繰り出して戦いあうのだ!!!
 当時、児童たちはこれを見たかったのだ!!!!
 31年目の「奇跡」がここに起こったのだ。
 「決戦! 大海獣」を最後とした東映まんが祭りでの不満がようやくここで解消されたと言えよう。

 唯一残念なのは、最後の敵をマジンガーZ・グレートマジンガー・グレンダイザー・ゲッターロボG・デビルマン・キューティーハニーで倒してくれたら・・・というのがあるが、これは今後の楽しみの一つとして残されたものと解釈して良いだろう。

 また、当初より注目されていた、それぞれの贔屓のキャラであるさやかとマリアの恋の行方についても、どちらもドローといった具合に、良い按配に決着をつけることなくファンにその後を委ねたのもVERY GOOD!
 どちらかに決着をつけてしまうと、確実にもう一方のファンから暴動が起きたであろうだけに、今後二人の間で恋の戦争が勃発するであろうという、ほのぼのした結末で終わったのは大慶の限りである。
 
 一方で、デュークとひかるの間にはそれなりの決着がついたことも注目に値するであろう。
 本編では、何かと不遇だったひかるに光が当てられ、幸せな結末を迎えられそうな気配で、ひかるファンも長年の不安も解消されたのではないだろうか?
 そして、すでに揺ぎ無い関係で結ばれた鉄也とジュン、ハヤトとミチルなど、ファンの見たかった「その後」がしっかりと描かれている。

 この作品を見終わったとき、「ようやくマジンガーシリーズは本当の完結を迎えたのだ」・・・そう思えてならなかった。


製作リスト
原作 永井豪 背景 スタジオMAO
米田隆裕
斧田裕輔
漫画 越智一裕とダイナミックプロ 効果 森賢一
プロデュース ダイナミックプロダクション 製作 講談社.dig