マジンガーZ

作品紹介
 第二次世界大戦が終わって二十有余年・・・・・・・・・平和を貪っていた世界を震撼させる大事件が発生した。ドクターヘルの世界征服戦争である。ヘルは古代ミケーネ人の遺産である巨大ロボットを独自に改造して機械獣として甦らせ、全世界を我が手に握らんと起ったのだった。しかし、ヘルの野望を知り敢然と立ち向かう一人の男がいた。その名は甲児。兜甲児! 彼は予てよりこの事あることを予期していた祖父十蔵より、スーパーロボットマジンガーZを譲り受けてドクターヘルの機械獣軍団と死闘を繰り広げる。全世界の唯一の希望を担う「鉄の城」として・・・・・

解説
 巨大ロボット物の中興の祖として天下に普く知れ渡り、今や神格化された感のあるシリーズ第一弾。数々の画期的なアイデアが成功の一端として位置付けられているが、しかし決して新機軸のみにて存在した作品ではない。存外ウルトラマンシリーズとの連綿性については、その語られるところが少しく思われる。
 例えば、マジンガーZと機械獣の攻防はその源泉に鉄人28号があるとはいえ、確実にそのイメージはウルトラマンと怪獣の戦いに近似する。平和な街を突如襲い破壊し尽くす怪獣を、平和の使者たるウルトラマンが退治するというフォーマットは、そのまま怪獣を機械獣に、変身巨大ヒーローを巨大ロボットに置き換えたものといって良いだろう。機械獣とはすなわち、機械怪獣。また、マジンガーZ以前の正義のロボットに武装装備があるものが少ないことは夙に指摘されていることだが、マジンガーZにおいて一挙にその武装化が促進したものではけっしてなく、その前段階としてウルトラマンの数々の光線技の存在がそれを許したのは疑いを入れない。そして、特に帰マンからザ☆ウルまでに顕著だった「テーマ曲とともに敵を打ち倒す」カタルシスを、マジンガーZが忠実に受け継いでいることは注目すべき事項かと思われる。
 また、光子力研究所に代表される基地の存在は、ウルトラマンにおける防衛軍基地からの派生であろうことは、云わずもがなであろうか。
 マジンガーZの素晴らしさは、そういった過去の成功に堅実に目を向け、謙虚に学んだその姿勢に負うところのものが多い。そして過去に学んだうえで、別の新機軸を生み出したことによる所謂「温故知新」が功を奏したものと云えようか。努力を重ねても所詮はウルトラマンになれないという「絶対的英雄への憧れ」が基本であったウルトラ児童のある種の諦めを、マジンガーは「努力をすれば君にもなれる」という「英雄願望」そのものを引き出したと言う点で、特記されるべき事項である。
 以上のように、マジンガーZはスーパーロボット物の先陣を切っただけに、特撮ヒーロー、特にウルトラマンの影響を色濃く受け継いだ作品だったといえよう。そういえば、ホバーパイルダーによってマジンガーZにドッキングするプロセスは、ウルトラにおけるベータカプセルやライダーの変身ポーズと同じく、「ただの人間」が「人間以上の存在」に変わる「変身」の行為に該当するものだったといえそうである。この「変身」を受け継げたのはZ以降はわずかに「グレートマジンガー」と「鋼鉄ジーグ」だけのような気がする。「マジンガーZ」とは「変身巨大ヒーロー」と後に続く「スーパーロボット」のミッシングリンク的な意味合いを持つ作品だったのかもしれない。故にこそ、両者のエッセンスを併せ持つ「マジンガーZ」は今もなお燦然と輝きを失わないのだろう。巨大ロボット物の歴史を振り返るとき、「マジンガーZ」を中心に前後二期に区別することができる。なかには「機動戦士ガンダム」以降を第三期とする考え方もあるが、いずれにせよ「マジンガーZ」を分水嶺としてとらえる点では同一である。

製作スタッフ
放映局 フジテレビ系
放映期間 昭和47年12月3日〜昭和49年9月1日 
毎週日曜日午後7時〜7時30分
原作 永井豪とダイナミック企画
企画 春日東 別所孝治 横山賢二 有賀健
製作担当 工藤昌治 大野清 菅原吉郎
音楽 渡辺宙明
選曲 賀川晴雄
製作進行 山口博史 大橋千加子
記録 黒石陽子
現像 東映化学