宇宙円盤大戦争

作品紹介
 一機の円盤が地球を目指して落ち延びていった。そして5年ーーーーー。牧場で厳しいながらも平和に暮らしていた宇門大介の前に、円盤群が現われた。それはヤーバン星の円盤部隊であった。ヤーバン星は、5年前に攻め滅ぼしたフリード星の超兵器・ガッタイガーが王子デュークフリードによって地球に持ち去られたことを知って、その奪取にやって来たのだ。ガッタイガーがあれば宇宙の覇者となるのも可能なのだ。しかし、部隊の指揮官としてやってきたのはデュークの幼馴染でヤーバン星王女テロンナであった。テロンナは穏便な解決を求め、デュークフリードに話し合いを求めていることを公に告示した。それを聞いて苦悩する大介。そう、彼こそは地球に逃れていたデュークフリードの後身だったのだ。地球に塁が及ぶことを恐れて名乗り出ようとする大介だが、それを地球の養父・宇門源蔵が押し止める。業を煮やしたテロンナは、地球の核兵器を全て爆発させる用意があると脅迫、その脅しの前についに大介は出頭する。物別れに終わる両者だったが、そんな大介=デュークをテロンナは殺すことが出来なかった。幼馴染だったテロンナは、幼いときからずっとデュークのことを想っていたのだ。参謀のブラッキー隊長にその行為を詰られながらも、テロンナはガッタイガーだけを手に入れデュークは見逃すつもりでいたのだ。しかし、デュークと親しそうにしている牧場の娘・牧野ひかるの姿を見てテロンナの態度は豹変する。嫉妬に狂ったテロンナは、ひかるを人質にガッタイガーの引き渡しを迫る。脅迫に屈しガッタイガーを引き渡すデューク。が、ブラッキーは得たり応とばかりにデューク抹殺を図ってきた。もはや話し合う余地は完全に無くなったと判断したデュークはスターカーを抜いて戦闘服に身を包む。そしてガッタイガーに乗り込み、円盤部隊を相手取り全滅させるのだった。その凄まじい戦力に慄然としたブラッキーは、最終兵器熱線ミサイルで片をつけようと図るが、それを押し止めて単機テロンバーンでテロンナはガッタイガーに挑む。「デュークフリード、もう一度聞くわ。私と一緒にフリード星へ行く気はないの?」「・・・俺の故郷は地球だ!」その答えに悲しげに顔を歪めるテロンナ。半狂乱に攻撃を仕掛けるテロンナはしかし、どこかしらデュークに倒されたがっているようにも見えた。そんな悲しい戦いにブラッキーは割って入る。熱線ミサイルをガッタイガー目掛けて放つブラッキーのクィーンバーン。それを庇ってミサイルにあたったのはテロンナのテロンバーンだった。火を吹き墜落するテロンバーン。怒りに燃えたデュークはブラッキーを返り討ちにする。戦い終わり、テロンナはデュークの腕の中で静かに息を引き取る。「武器のない世界に生まれていたら、ぼくたちはきっと愛し合えたろうに・・・」 そうして、デュークは更なる地球への災厄となることを避けるため、地球を去っていった。たたかいの悲しさを胸に抱きしめて・・・・・・・

解説
 テレビ版「グレンダイザー」のプロトタイプとしても有名な本作は、もちろん厳密には劇場版マジンガーシリーズとは云い難い。しかし、この一作において、後番組の定まっていなかったマジンガーシリーズの正嫡の座に収まったことを考えるとき、本作の持つ意義は大きい。
 まず本作を見て驚かされるのは、わずか25分の中に盛り込まれた内容が、尺を踏み越えるほどに濃いことだ。そのため見ていて、中長編並みの充足感と感動を味あわせてくれる。牧歌的で平穏な様相を見せる地球ーーーー。しかしその地球の平和も表層的なもので、核に代表される武器を保有している。ヤーバン星が突いてきたのは、地球人自身が保有する武器を利用しただけのものなのだ。不安定な平和、不安定な世界を見事に具現しており、デュークの「武器のない世界に生まれていたら・・・」という問いかけはヤーバン・フリード星はもちろん、地球をも含めての述懐であろう。そんな世界で出会わざるを得なかった男と女は、一方は制圧者の娘で、一方は滅ぼされた星の王子・・・そして逃亡先の地をを守らなければならないのだ。お互いに民族を、守るべきものを背負って引くわけにはいかない。この二人にいったい如何なる解決法があったのかを思うとき、悲しみだけが広がってゆく。よくぞこれだけのテーマを込められたものだと、感心せざるを得ない。一概に含蓄のある作品が良作だとは決して云うつもりはない。素直に娯楽として楽しめるのもまた一興だからである。が、どちらも視聴者に訴えかけるものがあるという意味においては平等なのかもしれない。余分な要素は削ぎ落とし、テーマに向かって執拗なまでに驀進するストーリーは確かに圧巻で、「円盤」や「ロボット」すらを素材の一部にとどめ、戦争で引き裂かれた「人間」を描く事に心血を注いでいるところにこの作品の真骨頂がある。のちに続く「大河ロボットアニメ」の最原点の姿がここにあるのだ。

製作リスト
英文タイトル GREAT BATTLES OF FLYING SAUCERS 音楽 菊池俊輔 
上映時間 25分 美術 内川文広
初号試写 昭和50年6月30日 作画監督 飯野皓
封切 昭和50年7月21日 演出助手 小湊洋市
映倫 23864号 撮影 清水政夫 武井利晴
製作 今田智憲 編集 井関保雄
企画 有賀健 勝田稔男 録音 神原広巳
原案 サークル・バーン 効果 E&Mプランニングセンター
原作 永井豪とダイナミックプロ 記録 黒石陽子
脚本 上原正三 製作進行 三沢徹夫
演出 芹川有吾