2005年11月29日公開
ご無沙汰しています。データシートの収集はずっと続けていたのですが、なかなかまとめる気になれず、ずるずると過ごしてしまいました。というのは、最近のCPUは同一コアであってもやたらに種類(リビジョン)が多く、それそれ消費電力も異なるため、簡単にグラフ化するというわけにはいかなくなっているからです。逆に言えば、それだけきめの細かい消費電力の最適化が行われていると言うことなのですが、グラフ化に当たってどの消費電力値を採用するのか妥当か、頭を悩ませなくてはなりません。結局、ある程度の割り切りは必要なわけで、その分正確さが犠牲になっている部分もあります。あくまで傾向を読みとるという程度で、参考にしていただければと思います。
縦軸がデータシート記載のMaximam PowerもしくはThermal Design Power、横軸が実クロック周波数です。前回掲載のグラフと色分けが異なっていることに注意してください。
最近のハイエンドCPUの話題といえば、デュアルコアCPUに尽きるのではないでしょうか。消費電力の方も当然のことながらインテル、AMD共にシングルコアよりも消費電力は増えています。ただデュアルだから2倍になると言うものでもないようです。傾向としてAMDよりもインテルの方が、デュアル化による消費電力の増加率が大きいようです。絶対値としてもインテルCPUの消費電力は高く、3.2GHzのデュアルコアCPU、PentiumD 840では130Wもの最大消費電力になっています。グラフには載せませんでしたが、Xeonプロセッサはもっと多く、2.8GHzのデュアルコアで150Wもの最大消費電力があります。NetBurstアーキテクチャが如何に多くの電力を必要とするかがよく分かります。
対するAMDですが、残念ながら一番関心があると思われるAthlon64x2のデータシートが入手できませんでした。デュアルコアOpteronのデータシートは入手できたので、代わりにそちらの方のデータを載せておきました。クロック周波数の割に消費電力が多いように見えますが、性能的にハイエンドのAthlonとPentiumがほぼ拮抗していることから、性能対消費電力はAthlonの方に分があるように思われます。
電力馬鹿食いのPentium4/Dとは対照的に、元々モバイル用CPUだったPentiumMの消費電力が非常に低くなっています。データシート上での数値ではありますが、Dothanコアに至ってはわずか5.5W(1.2GHz)という驚異的な値です。性能的にも、これまで省電力CPUの代表格であったVIA−C3プロセッサと比べて、桁違いに高いものになっています。インテルの次世代CPUに採用されたというのもうなずけます。ただ自作PC向けマザーボードが高価なのが難点です。もっと安くならないものでしょうか。
ライバルAMDはTurion64で対抗していますが、残念ながら今回データシートは入手できませんでした。代わりにGeode-NXのデータが載せてあります。Geode-NXも十分省電力ですが、PentiumMには一歩及ばないようです。コアがAthlonXP-Mといささか古いので、この差は致し方ないでしょう。
省電力CPUの古株、VIAのC3プロセッサですが、今回ようやくデータシートが手に入り、消費電力を具体的に載せることができました。正確にはソケット370用のPPGAパッケージと、マザーボートに直付けのEBGAパッケージで消費電力が異なっており、グラフはEBGAパッケージの値を採用しています。残念ながらPentiumMやGeodeNXが登場したことによって、かなり影が薄くなってしまっています。特にC3の性能が、Pentium-MやGeodeNXと比べかなり低いことを考えると、省電力CPUとしての役目は終わったと言うべきでしょう。
旬の過ぎたC3に代わる、VIAの次世代CPUとしてC7プロセッサが発表されました。データシートはまだ公表されていないので、Web上のプレゼン資料に示されたTDPを拾ってグラフに掲載してあります。消費電力的にはPentium-Mとほぼ拮抗しており、特に2GHz付近では最も省電力なCPUとなっています。ただこれが実際いつ入手できるようになるかは全く不明で、特にVIAのCPUは発表から一般に入手できるまでかなり待たされることが多いことを考えれば、現段階での省電力CPUの選択としては、PentiumMしかないということになります。
アップル社がPowerPCをやめて、インテルCPUを採用するという発表には非常に驚きました。Wintel連合のアンチテーゼとしてのアップルの存在感が非常に大きかったもので。このままいくとG5プロセッサが、パソコン用PowerPC系CPUの最後を飾ることになりそうです。
そういう状況ながらようやくG5プロセッサ、PowerPC970のデータシートが入手でき、正確なTDPを掲載することができました。1.6GHzまではかなり省電力ですが、それ以上の周波数になると急に消費電力が上がるのが見て取れます。2.2GHzにおいてはAthlonXPやPentium4に迫る値です。SOIプロセスを持ってしても、高クロックでのリーク電流を押さえるのは難しいようです。そしてこのグラフで示されたように、高クロックで消費電力が極端に上がってしまったことが、アップルにインテルCPUへの移行を決断させたのかもしれません。