98ピポ回路を作る
2002年1月30日改訂
2000年2月27日公開

98の起動音「ピポ」を作ろう!
 98シリーズといえば、やはりあの起動音「ピポ」ではないでしょうか。でも、98をAT互換機化すると、悲しいかなこの起動音は聞けなくなってしまいます。98のAT化を扱ったサイトは多いですが、起動音までこだわった方はいないようです。せっかく外見にこだわっているのですから、起動音も再現したいところ。それならデジタルICを組み合わせて作ってしまいましょう。
 とはいっても、ロジック回路を設計するのはもう10年ぶりぐらいになります。当然、細かいことはすべて忘れているわけで、設計にあたっては昔の電子工作集や製作集を引っぱり出して、読み返さなければなりませんでした。まあ、そんな作業も結構懐かしく、楽しかったですが。

試作回路・その1
 AT互換機の「ピ」と違い、98の起動音は「ピポ」という2つの周波数で成り立っています。したがって「ピポ」の再現には、2つの周波数を発生させそれを順番に鳴らさなくてはいけません。
 そこでまず頭に浮かんだのが、シュミットトリガーNANDを使った周波数可変発振回路です(右の回路)。この回路は、Vinの正負で発振周波数を変えることができるため、Vinを論理回路で制御すれば「ピポ」と発振させることができそうです。そこで、その制御回路をシフトレジスターで組んだ回路を設計しました。この制御回路で、電源投入後1回だけ「ピポ」となるように、発振器を制御します。音は圧電ブザーで鳴らすようにしました。スピーカーでないのは駆動回路を組むのが面倒だったからです。


 さっそく製作です。回路は万能基板上に組み立てました。
 右の写真が完成した試作回路です。回路図にない発光ダイオードがついていますが、これは動作チェックのためつけたものです。ICの間にある青い半固定抵抗器がピポの間隔調整、その右の縦に2つ並んだ半固定抵抗器が「ピ」と「ポ」の音程調整用です。  でもこの回路は失敗でした。音程調整用の2つの半固定抵抗器がお互いに影響し合っているため、発振器の音を「ピ」「ポ」に合わせるのが非常に困難だったからです。何とか合わせ込もうとはしましたが、どうしても変な音程になってしまいます。
 結論として、この手の回路でうまくやるには、設計段階から周波数で抵抗値をきちんと計算し、調整は微調整にとどめる必要があるようです。

試作回路・その2
 「ピ」と「ポ」の2つの音を1つの発振器で出すのではなく、2つの発振器で別々に出した方が調整も楽なのでは、というコンセプトで試作回路その2を設計しました。

 この回路では2つの発振器を制御するため、Decade Counterを使いました。このカウンターも電源投入時に1回だけ「ピポ」が鳴るように発振器を制御します。発振器が2つもあると回路が複雑になるかな、と思っていたのですが、設計してみると試作回路その1よりもシンプルになりました。やってみないと分からないものですね。3端子レギュレータが追加になっていますが、これは発振器の音程が電源電圧で大きく変動するため、電源電圧を安定化する目的で設けられたものです。
 右の写真が試作品です。試作回路その1で問題になった音程調整は、2つの音を別々に調整できるようになったことで、非常に楽になりました。調整の結果、見事にあの「ピポ」を再現することができました。
 この回路は大成功です。

組み込み
 実はこの98ピポ回路。まだ自分の改造286には組み込んでいません。その代わりに、同僚であるY氏が改造した、AT互換機化98VXに組み込まれています。電源を入れると「ピポ」と鳴るところは、まさにかつてのVXです。「コレだよコレ」と思わず二人で感動してしまいました。
 さて、実際に組み込んでみると、いろいろ欲がでてきます。、この回路では電源投入時にしか鳴りませんが、98はリセット時にも鳴ります。リセット時に起動音を鳴らすためには、リセットスイッチからケーブルを引っ張ってくるか、AT(またはATX)マザーボードの起動音をトリガーにしてピポ回路を鳴らす必要があります。起動音を交換するという意味からすると、後者が適当でしょう。そのうち設計するつもりです。
 でもY氏によれば、この回路の方が使えると言います。というのも、この回路、12V電源さえ投入すればとにかくピポと鳴るからです。だから別にAT互換機化改造98でなくても、ふつうのAT互換機や、それ以外のパソコンにも組み込むこともできます。たとえば、98のピポで起動する富士通FMVとか、Macintoshとか・・・ってこれは怒られそうですね。


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