新設計!98ピポ回路II
2001年9月8日公開

98ピポ回路の問題点
 以前に発表した98ピポ回路。実はいろいろ問題がありました。発振器に単純なCR発振器を使ったため、調整する箇所が多いだけでなく、電源電圧や温度の変化で周波数がかなり変化し、だんだん調子はずれのピポ音になることです。
 旧型ピポ回路の音(wav形式)
また、ゲートICから直接出力を取り出しているため、スピーカーではなく厚電ブザーを使わざるを得ず、音量や音色という点でもいまいちでした。

回路の設計と解説
 そこでこれらの欠点を改善した回路を新たに設計することにしました。無調整かつ安定度の高い水晶発振器を使い、これを分周して必要な周波数のパルスを作り、これらのパルスを組み合わせて「ピポ」を得るようにします。また、ゲートICからの出力に電流ブースターを付加してスピーカーも使えるようにして、音質面での向上も計ります。そういうコンセプトで設計したのが下の回路です。
ピポ回路II回路図
 必要になるのは「ピポ」の「ピ」の2000Hzと「ポ」の1000Hz。それと「ピ」と「ポ」のタイミングを決める4Hzのパルスです。水晶発振器で15.9744MHzのパルスを作り、分周カウンタIC、74HC4040と4040Bで分周します。15.9744MHzの13分周して1949Hz(4040BのQ1)、14分周して975Hz(4040BのQ12)、22分周して3.808Hz(4040BのQ10)のパルスが得られます。周波数が若干低めですが、まあこれで良しとします。ちなみに74HC4040というICはC-MOS標準ロジック4040Bの高速版ICです。4040Bの上限周波数が7MHz(@5V,typ.)なので、水晶発振器のパルスを分周するためには74HC4040を使わなければならないのです。
 分周したパルスを4011Bによるゲート回路に入力して「ピポ」音にします。要するに4040BのQ10出力がLレベルで1949Hz、Hレベルで974.7Hzを出力するようにゲート回路を組みます。ここではロジック節約のため。Q11出力も使うようにしています。
 さらにそれだけでは「ピポ」ではなくて「ピポポピポポピポポピポポ・・・」となってしまうので、1回のピポで回路を止めてしまう必要があります。それが74HC4040と4040Bの間にあるダイオード1S1588と抵抗による回路で、Q10とQ11が同時にHレベルになると4040Bのクロック入力が常にLレベルとなりカウントが止まります。まとめると以下の通りになります。
時間Q10Q11動作
0.26sec無音
0.53secピ(1949Hz)
0.79secポ(975Hz)
1.05secカウント停止

 スピーカー駆動のための電流ブースターはトランジスタ1石のエミッタフォロワ回路です。

パーツ集めと製作
水晶発振器  水晶発振器は新品を買うと高い(近くのパーツ屋では1000円)ので、98AT化改造でいらなくなった98のマザーボードから取ることにします。ここではUV11のマザーボードから15.9744MHzの水晶発振器を引っこ抜きました(写真の赤丸部分)。これで発振器部分は"98純正"ですね。
 ICとダイオードは新品を購入しましたが、トランジスタは286Vのマザーボードから取った2SC2719を使いました。なお、マザーボードから部品を外すときは、部品を傷めないように、ハンダ吸い取り器で丁寧にハンダを除去してから外すのがコツです。
完成した98ピポ回路II 回路は前と同様に万能基板上に組み立てました。写真が完成した98ピポ回路IIです。
 肝心の音ですが、前回路と比べてより98らしくなり大成功です。
 98ピポ回路IIの音(wav形式)

終わりに
 新回路は調整する箇所もなく、音量や音色も十分満足のいく物でしたが、一つだけ難点があります。それは音程が若干低いことで、51Hzの差とは言っても98の「ピポ」と聞き比べると明らかに違いが分かります。
 解決法は2つあって、分周比を変えるためのICを1つ追加する方法が一つ。もう一つは水晶発振器を16.3MHzの物に交換することです。前者の方法は回路の再設計が必要ですが、後者の方法は現回路のままでOKです。どうせ部品を追加するなら後者の方法が簡単でいいのですが、発振器部が"98純正"でなくなるのが難点です。こだわるなら前者の方法と言ったところでしょうか・・・時間があればまた設計してみます。


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