安物ファンのための温度センサー回路
2002年1月27日公開
温度センサー付きファン
温度センサー付きファンという物があります。文字通り、温度によってファンの風量を制御するという製品です。ファン自体の設計によって風量と静音化の二つを両立するのは大変ですが、冷却の必要性に応じてアクティブに風量を調整すれば、二つを兼ね備えることができます。ただこのようなファンは、得てしてブランド物の高級品がほとんどで、いささか高価なのが難点です。
そこで、温度によって印可電圧を制御する回路の自作を考えてみました。うまくいけば、安物ジャンクファンが、温度センサー付き高級ファンになるという目論見です。
温度センサーの選択
温度センサー回路自体は昔から色々ありますが、重要なのは可能な限り安価に作ることです。製作に何千円もかかるのでは、最初からブランド物の温度センサー付きファンを買った方がよいと言うことになってしまいます。目安として千円以下で作れる物を目指しました。
回路の設計でまず決めなければならないのが、温度センサーとして何を使うかです。回路に凝れないので、センサーそれ自体で温度変化が大きい物が望まれます。となると、サーミスターを使うのがよさそうです。さっそくパーツ屋に行って石塚電子の103AT-2というサーミスターを150円で購入。
ついでに行きつけのジャンク屋に行くと、マザーボード用とおぼしき温度センサー(右写真)が80円でたたき売っていました。もしや実はこれもサーミスターなのではと思い、衝動買い。はたして・・・。
サーミスターの温度特性
さっそくジャンクセンサーのチェックです。センサーにテスターを接続し、温度を測定しながら抵抗値を計ってみました。右のグラフがその結果です。
温度の上昇とともに見事に抵抗値が下がっています。まさにサーミスターです。そして、実は、この特性は石塚電子のサーミスターと全く同じでした。ジャンクセンサーは25℃における抵抗値10kΩ、B定数3435Kのサーミスターと言うことになります。
温度センサー回路その1
まず設計したのが、左下の回路です。サーミスターと47kΩの抵抗で分圧した電圧値でエミッタフォロワーを駆動するという、至ってシンプルな回路です。
見ての通り、部品点数もサーミスタの他にトランジスタ2個、抵抗1個と非常に少なくなっています。
さっそく試作回路を組み立て、温度特性を測定してみました。右上のグラフがその結果ですが、意図したとおりの特性が出ています。
ただよく見ると20℃で約8V、50℃で約9.5Vと、常温時であまり電圧が落ちないだけでなく、高温時においてもあまり電圧が印可されておらず、単なる電圧降下回路よりマシといった程度です。
温度センサー回路その2
もう少し電圧の変化を大きく取りたいと言うことで、トランジスタをもう1個加えて再設計したのが左下の回路です。
サーミスターと抵抗による分圧電圧を、エミッタ接地増幅回路で増幅して、エミッタフォロワーを駆動するという回路です。部品点数は、試作回路その1から若干増えていますが、トランジスタ3個、抵抗器3個と非常に少なく収められています。
再び試作回路を組み立てて、温度特性を測定。右上に結果を示しましたが、試作回路その1より、温度による電圧変化が大きくなっているのがよく分かります。この回路なら使えそうです。
製作と試運転
回路は穴あき万能基板を使って組み立てました(右下写真)。パワートランジスタ2SD880には、条件によっては数ワットの電力を消費する場合があるので、念のため放熱板を取り付けてあります。
部品代は近所のパーツ屋で、総額約500円。こんなに安くできるとは思いませんでした。
最終的な温度−印可電圧特性を詳細に測定したのが、右上のグラフです。
常温(20℃)で約7V、高温時(50℃)で10V印可されています。実際センサーをお湯に浸けたり離したりすると、ファンの回転音が変化するのがよく分かり、効果が上がっているのを実感できました。大成功です。
製作される方へ
この温度センサー回路、サーミスターの特性に合わせて回路定数を決定しているので、違うサーミスターを使うと、意図した動作が行われません(壊れてしまうことはないですが・・・)。
ここではマザーボード用のジャンクサーミスタを使いましたが、先に述べたように、石塚電子の103AT-2(右写真)も同じ特性なので、そのまま使えます。基本的には、25℃における抵抗値が10kΩでB定数が3435KのサーミスターならOKです。ちなみに石塚電子のサーミスタは、名古屋大須のタケイムセンで入手しました。
また保護回路を入れなかったので、出力をショートするとパワートランジスタが焼けてしまいます。発振対策も行っていません。ケースバイケースで対策を講じて下さい。
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