寄稿「点字と私」
筑波大学付属盲学校高等部普通科 2年 Y.T.
私は現在、筑波大学付属盲学校高等部普通科に通っています。
学んでいることは高等学校の普通科と全く同じですが、違っているのは、
点字を使っていることです。
教科書も内容は全く同じですが、すべて点字です。
触って読める点字の地図などもあります。
ですが、参考書や問題集の適当なものがたくさんあるわけではないので、苦労しています。
皆さん方の中で、どなたか1人でも2人でも点訳ボランティア
の活動に参加してくださる方がいらっしゃれば、本当に助かります。
さて、私は生まれつき全盲でした。
それで、点字を学び始めたときも、遊び感覚でした。
多分皆さんが仮名を覚えるのと同じだとおもいます。
ただし、点字は指先で読むので、まずはそれに慣れるためか、
少し大きい単なる凸点のカードを与えられたように思います。
そして、だんだん字が一つ一つ読めるようになり、
単語から文へと進んでいきました。
小学部に入ったころには文章も読めるようになりました。
小学部には、養護訓練といって点字の読み書きをする時間がありましたが、
それは全然面白くなかったことを覚えています。
図書館にはたくさん点字の本があり、ときどき借りたりしました。
だいたいは、ツン読?でした。
小学部4年のときには世界地図を借りましたが、
地図に触れ、いろいろな国の説明を読んで、
いろいろ想像をめぐらせるのが大好きでした。
小学部では点字板で点字を書く練習もはじめました。
書くのは、点字用紙の裏から点筆で打って点をへこませて書くわけですから、
読むときと左右が逆になりますが、
それはそれで、覚えてしまうので、全然問題ありませんでした。
これからも一生点字のお世話になりますが、
わずか6個の点でできている点字のおかげで
本も読め、勉強もできることは、今更ながら、すごいことだと思います。
点字には、おもしろい利点もあります。
たとえば、本を顔の前に持ってくる必要がないので、
あおむけに寝ころがって、おなかの上に本をのせ、
手で読んでいくことができます。これはとても楽です。
また、当然ながら、暗いところでも読めるので、
たとえば、舞台のそでなどで、
セリフを覚えていない人のために、台本を読んであげることもできます。
でも、欠点もあります。
第一の欠点は、かさばることです。
高校の教科書1冊を点字にしたものは、5,6冊にもなり、
しかも1冊の厚さが5cmぐらいあります。
英語の教科書とその点訳本
辞書などは、数十冊にもなるため、
あまり実用的でなく、私も持っていません。
(現在はパソコンを使えるので、その点は便利になりました。)
よく、点字は紙に打たれているので、
そのうちつぶれてしまうのではないかと
心配してくれる人がいますが、案外つぶれません。
図書館などには、ずーっと読み継がれた古い本がたくさんあります。
第二の欠点は、点字は音を表しているだけなので、
とくに日本語の場合、同音異義語が区別できないことです。
ときどき意味をとりちがえてしまうことがあります。
それで、漢字の勉強もしなければと思っています。
ところで、私は数学に興味を持っています。
ですが、数学の専門書の点訳というのは難しいのか、
なかなか手に入りません。
点図は、藤野先生のエーデルなどで何とかなりそうですが、
将来的には、数学の専門書をスムーズに翻訳してくれる
ワープロが開発されたら助かるなあと思っています。