165 :通常の名無しさんの3倍:2006/01/09(月) 12:16:09 ID:???
「マユッ危ない!」
「お兄ちゃん!?」

後ろから兄、シンにタックルされる形でマユが崖から転がり落ちた瞬間、立っていた場所で大きな爆発が起こる
蒼い翼を拡げたMSと緑と黒MSの戦闘で蒼いMSの放ったビームの一発がこちらに流れ自分達に襲い掛かってきたという最悪の結果だった。

「あいたたた…うぅ…お、お兄ちゃん…お兄ちゃんはどこにいるの?」

崖の上から突き飛ばされ腰を強く打ったものの他に怪我もないようだった、腰の痛みに耐えつつ何とか立ち上がりシンの姿を捜す

「え……?」

最初に視界に入ったのは
自分達がつい先程まで立っていた崖、そこはビームの熱で大きな穴があいていたそして次に見たものは

「これ…お兄ちゃんの…携帯…それに…血が…」

シルバーの携帯を拾いあげたマユは携帯にびっしりとついた血に驚き、すぐさまシンの名前を叫ぶ

「シンおにいちゃん、どこぉ?」

血がこびりついていたという事はシンは大怪我をしているに違いない、そう考えるとマユはいてもたってもいられず捜し始めた
上空では未だ戦闘が続いており、いつ巻き添いをくらうか分からない状況で何度も呼び続けたが返事がない変わりに表れたのはオーブの制服を着た一人の大人だった。マユの手を掴みここから連れ出そうとする

「おい君、こんな所にいたら死ぬぞ!こっちへ」
「え…離してください、まだお兄ちゃんが近くにいるはずなんです」
「いやここには君以外の人間は見当たらなかった…さあ」
「いやぁ、はなしてぇ、お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
軍人に抱き抱えられる形でマユはこの場から連れ出される、マユは上空のMSを睨む、瞳に宿るのはマユには似付かわしくない怒り、憎悪、軍人にすら聞き取れない小声で呟く。

「あいつらが、あいつらさえいなければあ!」


166 :通常の名無しさんの3倍:2006/01/09(月) 12:19:24 ID:???
連合のオーブ侵攻から一月ほどの月日が流れたある日の朝マユは同じ場所を訪れた
「お兄ちゃん…」

シンが死亡認定され天涯孤独の身になってしまったマユは今日の昼に連合の施設に預けられる事なり最後にとここを訪れたのだ

「私、忘れないから…何年、何十年たっても死んでもお兄ちゃんのこと忘れないから…」

シンの形見となってしまった携帯を握り締め、そう決意し振り返ることなく立ち去る。
ロドニアの施設について事前に聞いた説明によると、マユと同じくらいの年頃で似たような境遇の子供が保護され共同生活を送っているということだ。
オーブにこれ以上居たくなかったしナチュラルの自分ではプラントで受け入れられるはずもなく…悩みに悩んだ末の決断だった。
待ち合わせ場所に行くとすでに迎えの人間が立っていた。

「すみません、お待たせしてしまって」
「いえいえお気になさらないように、では行きましょうか」
「はい」

おそらくはチャーター便なのだろう小型飛行機に乗せられる、機内には数人の子供が座席に座っていた。
マユで最後だったのだろうすぐに扉が閉められしばらくして離陸し始める。

(さようならオーブ、さようならお兄ちゃん)

心の中で呟くと疲れていたのか睡魔が襲ってくる。

(あれ…ねむ…くなっ…てきた)

朦朧とした意識でおぼろげに聞こえるのは大人達の会話

「ラボにつきしだい…」
「記憶…消…」
「面倒…みる…ないじゃないか」

と言う会話が聞こえた気もするがマユの意識はそこで途絶えた。

その後マユ・アスカと言う存在は消され一人の狂戦士が生まれる

ガンダムSEEDDESTINY LostMemory序章「別れ」