179 :通常の名無しさんの3倍:2006/01/11(水) 16:51:32 ID:???
ガンダムSEEDDESTINY LostMemory第一話「すれ違う兄妹」

 コズミック・イラ73 地球、プラント間で休戦条約が結ばれてから早二年。
 軍事プラント『アーモリーワン』では数時間後に控えた新造戦艦と新型MSのお披露目を一目見ようと多くの人でごった返していた。
 特に宇宙港は出入りがもっとも激しくナチュラルである三人の少年少女の存在を気に留める人間も会話を聞く人間も誰もいなかった。
先頭をきびきびと歩くのはリーダー格のスティング、アウル、ステラも後ろにつづく。

「凄い人の数だなあ」
「ステラ…ひとごみきらい…」
二人のマイペースぶりにあきれつつスティングは先を急ぐようにせかせる。
「ユカが首を長くして待ってるぞ、アイツの事だから迷子になったり変なことに巻き込まれてたりはしないとは思うがな」
「へいへい、アイツ起こらせると後が面倒だからなぁ」
「ユカ…おこるとこわい…」
三人はエクステンデッド最後の一人であるユカ・アスマの怒り狂う姿を想像すると背筋を凍らせつつ先を急ぐ。



180 :通常の名無しさんの3倍:2006/01/11(水) 16:53:59 ID:???
そのユカはというと。

「準備は完了、あとはスティング達待ちかぁ」

 一足先にアーモリーワンに潜入し強奪から逃走ルート確保までの段取りを終えたユカは特に何をするわけでもなく人混みに紛れ歩いていた。
皆、新型MSや新造艦がお目当てらしく聞き取れる会話は主にそれらの話題ばかりだった。

(フフッもうすぐその新型が大暴れするっていうのに呑気なものよね)

ザフトの次期主力MSが連合の手で使われ使用されコーディネーターが大勢死ぬ。
そう考えただけで笑いが止まりそうもなかった、不満があるとしたら自分の担当がサポートな事だ。

「私にはストライクMKUがあるからいいけど、なんか納得できない〜」

不満を漏らしながら合流予定の人気のない公園に辿り着く。

「みんなまだ来てないのか、まあいいけど」

隅にあるベンチに座り途中店で買ったポテトチップスをつまみ始める。
作戦開始前の幸せな一時にユカも顔がにやけ、怪しげな男の接近に全く気が付かずにいた。



181 :通常の名無しさんの3倍:2006/01/11(水) 16:58:53 ID:???
「おそいなぁルナの奴…ん」

ミネルバ乗艦の為に同僚のルナマリアを待つシン・アスカは公園のベンチに座る少女に目を止める。

「あの娘…どこかで…会ったことが」

思い出そうとするがやはり記憶にない、もしかしたらプラントに来る前の俺の知り合いかもしれない。
過去の事をどうしても知りたいシンは少女に話し掛けようと決心したその時。

「ちょ…離してよ!」
「ヘヘヘ…可愛いじゃないかオジサンといい事しないかい、お嬢ちゃん」

不振者に絡まれている様子を見てシンに怒りが走るのを疑問にも思わず助けに走りだす。

「おいお前、その子の手を離せ!」
「なんだアンタ、この娘の知り合いかよ」
「そうだよ、なんか文句あるか?」
「チィくそ、覚えてろよ」



182 :通常の名無しさんの3倍:2006/01/11(水) 17:01:43 ID:???
お決まりの捨てゼリフを残し男は立ち去り残ったのはユカとシンの二人だけ

「あ…あの、ありがとうございました」
「いや…怪我はないか?」
「はい、おかげさまで…」
(な、何で…コーディネーターは憎いはずなのに、この人は…)
(やっぱりこの娘…俺は知っている…)

何かを聞こうとするが喋りだせない二人、残酷にも時間は流れ

「お、いたいたユカー」
「何やってんだよ?こんなとこで」
「ユカ…あいたかった」
「ステラ、スティング、アウル、ごめんなさい友達がきたみたいなので、これで」
「あ、ああ」

仲間らしき三人組のもとに走るユカを見送るシン。
三人が立ち去るのを見届けるとルナマリアとの約束を思い出しユカ達とは逆方向へと歩きだす。

(向こうも知らない見たいだし気のせいなのかな)

「なぁユカ、今の誰だよ?」
「変なオジサンに絡まれたところを助けてくれたの」「へぇユカが絡まれるとはねぇ」
「ユカ…かなしいこと…あったの?」

スティングの質問にあったがままを答えるユカをアウルがからかい、ユカを横から見ていたステラはユカの異変に気がつく。

「えっ?あれ、なんでかな?悲しい事なんてなかったのに…気にしないで任務、任務」

さっき助けてくれた黒髪の青年の事を考えると何故か涙がこぼれ始めたが袖で涙を拭うと気を取り直し作戦の説明を始める。
二年振りに再会した兄妹だったが再び別れる次に会う時は敵同士である事も知らずに。