10 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/08(水) 09:16:02 ID:???

ゲン・ヘーアン
地球連合軍所属のMSパイロット。
実質的には彼もまたMSの制御ユニットという扱いで、義手義足の四肢をコクピット内でMSと繋ぎ、まさしく手足の様にMSを操る。
手動(?)での操縦もエクステンデット以上。
ネオと似たような仮面を被り、GAT‐X105/U通称ストライクMk‐Uでアーモリーワンでのガンダム強奪を支援する。
正体はマユの実兄で前大戦でのオーブ戦にてMSの流れ弾に被弾して四肢を失ったシン・アスカであり、実はあの後地球軍に拾われていた。
よってコーディネイターであるが、そのことは一部の者しか知らない。
カナードの例にもあるように、コーディネイターでも使える物は何でも何度でも使うという連合のスタイルの表れ。
多少投薬を受けてはいるが、
右腕に脳派コントロールユニットを積んでいるためスティング達より情緒が安定している。最適化も必要無い。
ちなみに左足は小型爆弾で、ゲンの意志でいつでも爆発する。
ブロックワードは勿論「お兄ちゃん」

1 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/08(水) 02:22:49 ID:???


第一話プロローグ
港に向かって走るアスカ一家。
あともう少しで避難船――そこに羽つきのMSが銃口をこっちに向ける。
「マユっ!!」とっさの判断で荷物を投げ捨て、マユを抱えて崖から飛び降りるシン。
落下、爆発、爆風、衝撃。藪を幾度も突き抜け、斜面を転げ落ちるシンとマユ。
「……うぅ」あちこち擦ったみたいだが、兄がかばってくれたおかげで身体は動く。
「――お父さん、お母さん!?」はっと見上げた崖の上の森は木々が薙ぎ倒され、轟々と燃える炎が両親の安否を物語っている。
「お兄ちゃん、お父さんが――お兄ちゃんっ!?」見れば、兄の身体は血だらけで――両足がなかった。
あのMSのビームライフルが掠り、そして転がりながらもマユをかばった結果だった。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんっ!!」「……マユ、行くんだ……船に行く……んだ」「行けないよぉっ!!やだよ、お兄ちゃんを置いて行けないよぉ!!」
号泣するマユに困ったように力なく笑うシン。「マユ……お前……俺の携帯……欲しがってただろ……持って……行け……」懐から携帯を取り出すシン。
「そんなのいいよぉっ!!お兄ちゃん、お兄ちゃんっ!!」「大丈夫だ……俺も後でちゃんと行くから……お前の携帯に……掛けるから……」
涙でぐちゃぐちゃになりながらも携帯を手に、立ち上がるマユ。「お兄ちゃん、絶対だよっ!!約束破っちゃたら嫌いになっちゃうよっ!!」
かすかに、だけど確かに頷くシンを見て、駆け出すマユ。そして、森を抜けた先に見えた港。軍人さんがいる、あの人に頼んでお兄ちゃんを助けて貰おう。
――爆発、振り返れば背後の森が燃えている。あそこにはお兄ちゃんがまだいたのに。マユをかばってくれた大好きなお兄ちゃんがまだいたのに。
呆然と立ち尽すマユの手を引く軍人。しかし、マユの目は燃える森とその上空で銃を撃ち乱しているMSを捉えていた。

172 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 03:48:17 ID:???
二人の男が林道を走る

「おい、急げ!」
「ちっ・・・分かってますよ・・・5班までで14人か。
 切りが悪いぜ・・・あと一人くらい欲しいところだな」
「危ないっ!伏せろ!」

頭上を通り過ぎる二機のMS
自由と災厄を冠する巨大な鉄の塊
数秒後に両機は閃光を放ち大地を穿った

「くそっ!あんた等の僕だろう!こっちまでやられたらどうするんだ!」
「・・・彼等はまだ強化途上だ。薬のせいで凶暴性が増している分冷静な思考は・・・」
「兎に角危険すぎる!とっととずらからないとやばいぜ!」
「・・・分かった。引き上げよう」

再び走り出す二人の男
小高い丘を登ったところで彼等の眼前に先ほど穿たれた大穴が見えた
閃光の犠牲となった遺体らしきものも見える

「早く逃げないとああなっちまう!」
「ああ・・・んっ!?人がいるぞ!」
「そんなモンどうせ死体だろ!」
「いや・・・動いた!生きている!それに・・・どうやら少年のようだ!」

先に一人が駆け寄り、もう一人も渋々ながら急いで駆け寄る
少年は生きていたが彼の両の足は?がれていた

「こいつ、両足がないぜ!こんなモン拾っても役に立たねぇ!逃げるぞ!」
「いや・・・助けよう!足くらい義足でどうにでもなる!」
「おいおい!今更仏心出してどうなるってんだ!」

一人の男が少年を担ぎ、もう一人も逡巡ののち手を貸した
走り出した二人がいたところを数十秒後に再び閃光が穿った
背負われた少年は苦しげに誰かの名を呟いていた

『マユ・・・』


173 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 03:49:37 ID:???

「で、オーブで拾った補充品は使えるんですか?」
「14体はロドニアのラボに送りました。近日中に適性が判明するでしょう」
「それは結構・・・おや?拉致記録では15体となっていますが、どういうことです?」
「実は・・・負傷しておりまして治療の方を優先させて行っております」
「それじゃあ適性は分からないでしょう?どうするんですか?」
「適性は・・・調べる必要はありません」
「・・・?」
「エクステンドする必要がないのです。
 その・・・申し上げにくいのですが・・・コーディネーターを拾って来たようなのです」

気まずい沈黙が流れる室内
ふうっっとため息を付いた後、片方が口を開いた

「・・・仕方ありませんねぇ。あの国がナチュラルとコーディネーターの共存を掲げるから・・・
 戦争の最中やばい橋を渡ってるってのに・・・まぁあなた方の責任ではありませんよ」
「そういっていただけると助かりますが・・・で、15体目はいかがいたしましょう?」
「そんなもの、決まっているでしょう?早急に処分してください」
「処分・・・ですか」
「当たり前でしょう。あんな化け物どもが宇宙にいるから我々はこんなことをしてるんですよ?」
「・・・実は・・・また大変に申し上げにくいのですが・・・」
「今度は何です?」
「15体目を拾ってきた研究員が助命を願い出ておりまして・・・」
「冗談じゃない!そんなことやってるから戦争がいつまでたっても終わらないんですよ!
 いいですか!私が次に来るときまでに処分しておいてください!分かりましたね!?」
「はっ・・・!心得ました、盟主」
「全く・・・私はこれから宇宙に上がります。プラントにいる化け物どもを駆逐するためにね。
 それが終わったら地球の化け物どもの始末です!そのためにもエクステンディドの力が要るんですよ。
 あなた達は補充品を含めて”生産の強化”に入ってください。頼みましたよ、ホントに・・・」

一しきり捲し立てたあと、男は声を落ち着ける

「まぁ、あなた方のお陰で例の3人の実戦配備は順調です。
 申請のあった追加予算は財団の方から回しておきました。ボーナスと一緒にね」
「あ、ありがとうございます」
「今後とも頼みますよ」

男は席を立ちその場を去る
もう一人は平身低頭で彼を見送る

「アズラエル様、宇宙に上がられるとのことですが・・・どうぞお気をつけて・・・」
「気をつけますよ。私にはまだやらなきゃならないことが山ほどあるんですからね」

174 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 03:51:53 ID:???
「・・・それで彼を・・・処分しろと」
「仕方なかろう。元々コーディネーターを拾ってきたら処分する予定だったんだ」
「しかし博士、彼は治療中です。折角助けたのにすぐに殺すなんて・・・」
「君を責めとりゃせんよ。彼には生まれの不幸を呪ってもらうしかあるまい」
「・・・いつまでに処分を?」
「早急に・・・と言いたい所だが盟主が次に来られるまでだ。
 宇宙に上がられるそうだから当分いらっしゃることはないだろうが。
 命を延ばしても情が移ると厄介だぞ・・・早めに楽にしてやれ」
「・・・」

「・・・で、俺を殺すんですか?」
「・・・!」
「言わなくたって顔見りゃわかりますよ。
 ここの連中が俺を快く思ってないってこと、オーブが助けたならもっと大事にしますしね。
 オーブ以外であそこに居たのは、攻めてきた大西洋連邦しかいませんからね」
「・・・」
「それにしてもホントだったんですね・・・ブルーコスモスが人体実験やってるって話」
「・・・!どうしてそれを!?」
「ちょっと前にアンタともう一人、俺を助けたヤツに聞きましたよ。
 ナチュラルをコーディネーター並みに強化したり、コーディネーターを洗脳しちゃうんでしょ?
 アングラ系のライターがその話書いたら不審死を遂げた・・・ネットで見たこともあります。
 まさかとは思いましたけどね。あの人こうも言ってましたよ。
 恨むなら助けようと言ったアンタを恨め、ってね・・・」
「・・・」
「・・・でも俺はアンタを恨みませんよ」
「?」
「俺が恨むのは戦争を引き起こしたアスハだ!
 あいつらが勝手な理想論ぶち上げて勝手に戦争始めやがって・・・!
 それで父さんと母さんは死んだんだ!俺は・・・アスハが憎い!!」
「・・・」
「殺されるのは構いませんよ。一度死んだ身ですしね・・・ただ・・・」
「・・・ただ?」
「・・・俺は・・・妹の・・・マユの無事を確かめたいっ!
 あの戦火を生き延びても・・・父さんと母さんが死んでマユは一人ぼっちなんだ。
 マユがちゃんと生きているのか・・・それだけ・・・会ってそれだけ確かめたいっ・・・!!」

「・・・生きたいか?」
「・・・えっ?」
「生きたいのかと聞いているんだ。・・・死の運命を変えたいのかと聞いてるんだ!」
「で、できるのか・・・そんなことが?」
「これは賭けだ。賭けに勝っても盟主のお心が変わらなければ死は避けられん。
 だが君が人としての命を捨てれば、完全な兵器になれば・・・あるいは変えられるかもしれん」
「生きれるなら・・・生きてマユに会えるなら・・・俺は何でもやるよ!
 死を・・・運命を・・・ねじ伏せてやるよっ!!」

175 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 03:53:07 ID:???
「馬鹿な!彼をソキウスにするだと!?」
「はい・・・」
「ソキウス計画は無期限で凍結されたはずだ!
 現に、ソキウスたちも冷凍保存されている者をのぞけば全員処分されたんだぞ!」
「それも分かっています」
「君がソキウス計画から移ってきたのは知っている。
 長年の研究成果が目の前で殺されていった気持ちは察するに余りある。
 ・・・しかし、これはナンセンスだ」
「ですが博士、彼は自分の意思で兵器になることを選びました」
「馬鹿な!助かりたいための方便だ!
 服従遺伝子すら組み込まれていない彼が裏切ったらどうするつもりだ!?」
「博士もお気づきの通り、現行のエクステンデッド達は問題点が多すぎます。
 彼等は薬なしでは生きられない、彼等は薬の副作用で凶暴化している・・・
 連戦に耐えられるかも怪しい。辛うじて実用化したに過ぎません」
「・・・だが、ソキウス計画を復活させる理由にはならん」
「・・・確かこの研究所の研究は全ては盟主に諮ることになっておりましたね。
 私が盟主を説得します。再び諮り、盟主が殺せと仰るなら・・・私が処分します」
「盟主がお許しになるものか。それに、彼がそれを知れば・・・君を殺すかも知れんぞ?」
「構いません・・・これは私が撒いた種です」
「彼には常に監視をつけることになるが?」
「面倒は私が見ます、警備のものを数名回してください」
「・・・わかった」

「許可が取れたんですか?」
「暫定的にな・・・すぐにベッドから出ろ、リハビリを始めるぞ」
「・・・乱暴ですね。まだ傷口が疼くんですけど・・・」
「盟主を納得させるには、少なくともこれまでのソキウスを上回る成果を出さねばならない。
 ソキウスは戦闘用コーディネーターだ。普通のコーディネーターである君が追い越すのは至難の業だ」
「それに・・・その盟主様がいつお戻りになるかわかりませんしね」
「そういうことだ。いくぞ」

176 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 03:54:38 ID:???
シンがソキウスとなって一ヵ月後

「経過は?」
「順調です。既にグレード5までの投薬は終えましたが、今のところ体に異常は見つかりません」
「傷の具合は?」
「問題ありません。義足との相性も良いようです。特注品を注文したかいがありました。
 もう常人並みに動けますよ。ただ彼は成長期なので・・・これから金はかかりますが」
「・・・君の給料から引いておくよ」
「ありがとうございます」
「急げよ。盟主が自ら戦争を終わらせるつもりで前線に赴いたらしい」
「まさか核を!?」
「あるいはな・・・NJCも手に入れられたのかもしれん」
「・・・では、明日グレード7を投与します」
「馬鹿な!6を飛ばして7だと!?
 7といえばいきなりかつてのソキウスたちと同レベルまで能力を引き上げることになる。
 性急な投薬で体に過度の負担を与えればどんな影響が出るか・・・」
「急がなければならないのでしょう?」
「しかし・・・」
「運命をねじ伏せるには・・・このくらいのことはなさねばなりません」
「・・・?」

「体に異常は感じるか?」
「・・・頭痛がしますよ」
「程度は?」
「頭が割れるほどじゃありませんが・・・辛いですね」
「我慢しろ」
「しますよ。俺の先輩達はあっさり乗り越えたんでしょ?」
「乗り越えられなかったものも居るがな・・・どうなったかは自分で考えろ」
「考えたくありませんよ」
「ソキウスとしては君は最高に幸福だ。
 彼等は生まれながらに服従遺伝子を組み込まれ、洗脳される。
 そして投薬を受け、あらゆる戦闘技術を叩き込まれる。
 親の愛など受けられやしない。彼等には親すら居ないんだからな」
「・・・そんなことをやってるアンタが、何故俺を助けるんです?」
「私にとってソキウスは実験対象に過ぎなかった・・・
 だが、計画が中止され彼等が処分されたとき、言いようのない空しさに襲われたよ。
 ・・・彼等が死んだとき私は・・・涙を流していたよ。そんなこと一度もなかったのに。
 そのときになって気づいたんだ。私にとって彼等は真の”ソキウス(戦友)”だったとね」
「随分勝手な言い草ですね」
「私の目的は人類を今だ嘗てない高みへと昇華させることだ。
 ソキウス計画に参加したのは手段に過ぎない。君も例外ではないよ」
「人殺しの技術に優れていれば優秀な人類なんですか?」
「人ならば当然闘争本能を持つ。戦闘能力を高めるのも目的達成の手段だ」
「・・・戦闘訓練はいつからです?」
「明後日だ。今のうちに体を休めておけ」

177 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 03:56:35 ID:???
第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦後しばらくして

「まさか盟主が戦死なさろうとはな」
「・・・これからどうなるのでしょう?」
「わからん。次の盟主を巡ってゴタゴタしておるようだが・・・
 誰になろうとアズラエルと大して変わらん人間だろうがな」
「彼はついているな・・・」
「彼の調子はどうかね?」
「流石に連日の戦闘訓練で疲れては居ますが・・・両足のハンディを感じさせない動きだそうです」
「ほう・・・」
「それに・・・」
「それに?」
「MSに乗ると尋常ならざる能力を発揮するとのことです。
 基本技術を叩き込まれただけで、すぐにシュミレーションで教官を打ち負かしたとか」
「・・・コーディネーター、恐るべしといったところか。
 新しい盟主が彼の存在を認めなければどうする?」
「そのときは処分するまでです。
 生き残るために彼は最大限の成果を出さねばならない。
 もっともそれは新しい盟主殿に畏怖の念を与えるかもしれない、諸刃の剣でしょうが」
「彼には辛いな」
「本人にはそれも伝えてあります。それでも彼はやると言っています。
 運命をねじ伏せる・・・とね」
「ふむ・・・?」

「なぜ教官を半殺しにした?」
「・・・しょうがないでしょう、実戦訓練だから本気でかかって来いって言われたんだから」
「手加減という言葉を知らんのか?」
「アイツ言ってましたよ。
 『俺はソキウス候補を訓練で何人も殺してる。弱ければお前を殺すぞ』って。
 そこまで言われて手加減できますか?」
「・・・もういい。部屋にもどれ」

「強すぎるな、彼は」
「教官はベテランのレンジャーです。
 訓練開始からわずか3ヶ月でこの成長ぶり。
 ソキウスとして強化されただけでなく天性の資質を備えています」
「悔しいが、私が今まで見てきたどのエクステンデッドよりも優秀だよ、彼は」
「恐縮です、博士」
「それと・・・伝えることがあった。
 次の盟主が決まった。ロード・ジブリールだ。
 アズラエルと同じく強硬路線をとるつもりらしい。
 休戦協定が締結されても束の間の平和になるかもしれん」

178 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 03:57:46 ID:???
「盟主が私に会いたいと・・・本当ですか?」
「ああ、どういう気まぐれか知らんがね。
 就任直後に彼を含めた報告書を提出した途端にな。応接室でお待ちだ」

「はじめまして、ジブリール卿」
「君か、ソキウス計画を再開したいと言っている研究員は」
「はい」
「彼の記録は読ませてもらったよ。
 いやはやとんでもない化け物だな。
 こんな連中がいる限り我々ナチュラルに安息の日々は来ない・・・そう思わんかね?」
「はぁ・・・」
「それと、君に聴いておきたいことがあるのだが・・・
 彼は服従遺伝子を組み込まれていないそうだが、洗脳さえ施されていない。
 反乱の危険をはらみながら、なぜそんな人間を育てる?」
「服従が最高の結果をもたらすとは考えにくいからです」
「ほう・・・?」
「ナチュラルのために戦え、ナチュラルを殺すな、これらがソキウスに組み込まれます。
 しかし彼等は人間として持つべき最大のモチベーションが欠けています」
「それは何かね?」
「”愛”と”憎悪”です。
 たとえば愛する人間が殺され復讐のために戦う・・・
 愛するものと生き別れ、たとえ自分が地獄に居ても再会ために死力を尽くす。
 そのとき人は尋常ならざる力を発揮します。これら洗脳された人間には為しえない行為です」
「・・・彼はそうであると?」
「はい。
 彼はオーブのアスハ家への憎悪と生き別れた妹への愛で今日まで生き延びました。
 世界がブルーコスモスの支配下であっても、妹と二人生き残れるなら構わないと」
「兵器としては使えるのかね?」
「それはデータが証明しているでしょう」
「・・・ふむ」

「彼をここに呼んできてくれ」

179 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 03:59:03 ID:???
「これから会う男は相当に危険だ」
「アンタよりも?」
「・・・君の生死は彼の一存に掛かっている。
 質問されたことには澱みなく答えろ、間違っても今みたいな口答えはするな。
 全ての命令にはYESと答えるんだ、いいな」
「・・・YES」

「君か、新しいソキウスというのは」
「はい」
「君は・・・ザフトの軍人、及びプラントのコーディネーター達を殺せるかね?」
「はい」
「君は・・・命令があれば故郷の人間を、オーブの人を殺せるかね?」
「はい」
「君は・・・命令なら友人でも殺せるかね?」
「・・・はい」
「君は・・・命令なら妹さんを殺せるかね?」
「・・・」
「どうした、答えられんのか?」
「・・・いいえ」

「ははははっ!!君は素直だ!気に入ったぞ!」
「(おいっ!)」
「(質問されたことには澱みなく答えたぜ)」
「(馬鹿っ!)」

「聞けば、君は”死の運命をねじ伏せる”といったそうだな。
 大した胆力と執念だ。恐れ入ったよ。だが君を易々と信用することはできないな」
「では・・・洗脳を」
「君には聴いていない!黙りたまえ!」
「はっ」

「君が妹さんのために命を賭けると言うのはわかった。
 かく言う私もコーディネーター殲滅に命を賭けていてね。
 君と私は似たもの同士・・・ということになるのかな?」
「・・・」
「だが私の抱える問題は解決が非常に難しい。
 連中を片付けるためには連中を超える能力を持つ者が必要だ。
 そしてなによりも私の命令に忠実な人間が必要なんだよ」
「・・・」
「君が運命をねじ伏せるように、私も運命と戦ってみるか」
「・・・?」

男は懐中から護身用の拳銃を投げてよこした

「それで・・・その男を殺せ」


180 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 04:00:30 ID:???
『・・・!?』
「君は命令なら友の命を絶てるといったな。
 察するに君達二人は友人だろう。
 ならその男を殺してみろ!」
『・・・』
「・・・それとも友のために私の命を奪うかね?」
『!?』
「君の腕なら私を殺すことなど造作もないだろう。
 これは賭けだ!私が運命に打ち勝てるかどうかの賭けだ!
 コーディネーターを滅ぼすことができるかの賭けだ!
 さあ。どうする?」
『・・・』
「私は欲しい・・・
 誰よりも強く!誰よりも残酷で!そして・・・誰よりも私に忠実な人間がっ!
 アズラエルは軍を掌握しても事をなすことができなかった!何故か!
 それはそのような人間が彼の傍に居なかったからだよ!
 私を殺すならそれで構わん!
 そのときは私が運命に負けたということだ!
 私にコーディネーターの殲滅など最初から無理だったということだ!」
「・・・この人を殺しても俺が生き延びられる保証は?」
「そんなものはない!
 私が君に命を預けているように、君も私に命を預けろ・・・そういうことだ」
「・・・」

「ここに来る前に言ったはずだぞ」
「・・・」




「妹さんに、よろしく・・・な」


181 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 04:02:07 ID:???
「・・・おめでとう・・・と言えるかな?」
「博士・・・あの人の名前は?」
「知らんのか?半年近くも一緒に居て・・・」
「俺が知りたいのは本当の名前だ」
「・・・ここに居るものはみな名を捨てておるよ。
 こんな人体実験まがいな仕事、まともな人間にはできんよ。
 研究のため、コーディネーターへの憎しみのため・・・彼はどちらかな?」
「・・・変な名前だったよ」
「そりゃ、偽名だからな。
 オマケに一度聞いたら忘れられん変な名前だった」
「俺は・・・今日からあのジブリールって人の僕になった」
「・・・で?」
「今までの名は捨てなきゃならない。
 だからあの人の名前を貰いたいんだ・・・赦してくれるかな、あの人」
「赦すも何も、アイツは自分の研究のために君を助け、育てたんだ。
 君に殺されることも覚悟しておったようだよ」
「・・・」
「第一、アイツの目標は最高の人類を作ること・・・だったかな?
 そのために君を強化したんだ。殺されて本望だったろう」
「・・・貰うよ、あの人の名前」
「・・・死ぬなよ」
「博士はコーディネーターが憎いんじゃないのか?」
「・・・私は研究のためにここにいる。
 ナチュラルがコーディネーターと対等の力を得るためにな。 
 ソキウス計画は完全に凍結された。二度と復活することはあるまい。
 君が最後の・・・彼の研究成果だ」

「これからどうするね?」
「月に行く。MS戦専門の教官の所にしばらく師事することになる。
 なんでも大戦の英雄で、名うての戦術家でもあるらしいんだ」
「それは?」
「ああ・・・仮面さ、整形もいいけど・・・妹に会ったときわからないだろ?」
「最後に・・・お前さんの名前を聞いてもいいかな?」
「知らないのかよ?半年近くもいたんだぜ?」
「ここの研究対象は皆番号で呼ばれているからな、良かったら聞かせてくれんか?」


「ゲン・へーアン、一度聞いたら忘れられない・・・変な名前・・・だろ?」

182 :通常の名無しさんの3倍:2005/06/20(月) 04:04:21 ID:???
エピローグ


ゲンが月へ向かった数日後


『私だ、博士』
「これはジブリール卿、何事ですか」
『彼は月に発ったかね?』
「ええ、つい先日」
『君にひとつ頼みがあるのだが、あの研究員の研究データは残っているな?』
「はい」
『あの研究員は、彼の洗脳準備を進めていたようだ。
 彼が月から戻り次第、データに従ってそれを実行して欲しい』
「ええっ!?彼はジブリール卿の僕になったと・・・」
『それは方便だよ。私は常に保険を賭けておく主義でね。
 もっとも、彼とのやり取りはまさしく真剣勝負そのものだったがな』
「では・・・そのように」
『そうそう、もうひとつ。
 洗脳の際、彼の妹をタブー(禁句)に指定してくれ。
 名前が分からなくても、存在そのものをタブーにすれば問題ないのだろう?』
「はっ・・・わかりました」
『くれぐれも頼むよ。彼は私の忠実な僕だからな』
「・・・はい」



「運命をねじ伏せるには・・・まだまだ困難が多そうだな、ゲン」