- 122 :隙間 :2006/03/26(日) 04:28:00 ID:???
- オーブ、オノゴロ島。
沖合で繰り広げられている戦闘を眺める2人。
彼方を閃光が輝き、聞きなれた戦場の轟音が、遠く離れた場所。
普段は静かで穏やかなこの浜辺にも聞こえてくる。
1人はピンクの長い髪の毛が特徴的で、その姿から浮世離れした雰囲気を感じさせる女。
その傍らに立つのは片目がつぶれ、顔の傷が歴戦の勇士を思わせる隻眼の男。
2人は何かをしゃべる訳でもなく、ただ漠然と沖の戦闘を見つめている。
その時、一段と眩い光が海上を照らした。
「おー、あれは陽電子砲だ、ザフトも連合も張り切ってるなァ」
「始まったのですね……」
男――
かつて『砂漠の虎』と呼ばれ連合軍に恐れられた元ザフト所属
アンドリュー・バルトフェルドはどこまでも飄然としている。
隣の女、『歌姫』ラクス・クラインは、同じく飄然とした表情を前に向けたまま
どこか疲れを滲ませつつ呟いた。
「予想していたことだろう?」
「ええ、そのために私達も準備を進めて来ました。 ただ……」
「ただ、早すぎるか?」
「はい、あと2年は持つと考えていました。 でも現実は……平和とは儚いモノですわ」
「平和は次の戦争の準備期間――か、その通りだな。
ちょっと落ち着いたと思ったら、すぐ次の戦争だ」
「戦争への流れは1人2人、1国や2国がどうにかしようとして、どうにかなるモノではありませんもの」
「何にせよだ、これで俺たちも動かないといけなくなった訳だ。
まずは寝ている子供を起こさないとな」
「そうですわね。 彼は私達の守り神、最高最悪の切り札、唯一無二の存在、私の愛おしい人……
私の戦いに彼の目覚めは絶対、そのための準備は――――」
ラクスは後ろへと振り向く。
- 123 :隙間 :2006/03/26(日) 04:29:07 ID:???
そこにはいつからいたのか男が1人。
「ラクス様、例の計画は全て順調に進んでいます」
「そうですか、主演はどちらに?」
「ザフト内のザラ派が食いついてきました」
「妥当なところですわね。 その他勢力の動向は?」
「プラント、ディランダル議長は一部の動きを掴んでいるようですが、積極的に抑える気は無いようです。
これは正確な情報を入手していない、またザラ派との関係上深く探りを入れられないためと考えられます。
まあ体の良い駒を手に入れて、ホンモノが邪魔になったのが本音でしょうが……
彼はクライン派、その立場上表立って行動するわけには行きませんから
上手くいけば万々歳、罪はザラ派の諸君、と言ったところでしょうか。
オーブ政府、セイラン家へはターミナルを使い、こちらから情報をリークして反応を試しました。
彼らはプラントへ1つでもカードが欲しいのでしょう。
それに我々のスポンサーから圧力がかかったようです。
オーブ政府は動く気は無く、すべて黙殺する気です」
「計画を阻むものは何もありません、計画の詳しい内容はこちらに」
男はラクスに近づき、1冊のファイルを差し出した。
ラクスはそのファイルを受け取るとパラパラと軽く一読する。
「素晴らしいですわ。 これだけの計画をよくこの短時間で」
「これで舞台は整った訳だ。 後は役者が上がるだけだな、ラクス?」
「バルトフェルド隊長、あなたも人事ではありませんわ、しっかりと踊ってもらいます。 私の世界のために……」
ラクス、バルトフェルド。
2人とも和やかに会話しているようだが、その目は深い穴のように暗く冷たい。
「ああもちろんだ、もちろんだとも。 世界は今ここから生まれ変わる……」
To be continued......