118 :95:2005/10/16(日) 20:21:21 ID:???
影の戦記


夢を見た・・・逃げ回る者達にお構い無しに銃撃戦を繰り広げ、逃げ惑う者達を蹂躙する白と青の天使の夢を・・・
そしてそれに蹂躙される中決まって俺はその銃弾によって吹き飛ばされる、 そんな夢だ。
それは途轍もない怒りと悲しみを俺に呼び起こす。 何故なら、奴によって父と母を喪いあまつさえ妹は生死不明。
生き別れる寸前、妹には国を脱出する船に乗った事までは分かっては居るがその行方は分からない。
そして俺は在る人に拾われてココ――アメノミハシラに居る。

言い忘れていた。俺の名前はシン・アスカ。 
オーブ影の軍神、ロンド・ミナ・サハク様率いる第弐のオーブ、アメノミハシラの特殊戦闘要員だ。

「此処に居たか、シン」
そう俺に声をかけてきたのは三人のソキウスを連れた女性、件のロンド・ミナ・サハク、通称ミナ様だ。

「何か御用でしょうか?、ミナ様」

「全く、お前にそんな言葉遣いをされるのは何時まで経っても慣れんな。これでも一応血縁だと言うのに・・・
 まあ良い。仕事を一つ頼みたい。
 この世界に関わる仕事だ」
 この一言によってまた俺の仕事が始まった。


119 :95:2005/10/16(日) 20:26:10 ID:???
『ここで無残に散った命の嘆き忘れ、撃った者たちと何故偽りの世界で笑うか!
 貴様等は!軟弱なクラインの後継者どもに騙され、ザフトは変わってしまった!何故気づかぬか!
 我等コーディネーターにとって、パトリック・ザラの取った道こそが唯一正しきものと!!』
 その一括はザフト共通のチャンネルであったが故、新旧両部隊の全員がその声に聞き入る。
 だが、それに対して反論する者もいる。
『私も家族を、前の戦争で目の前で喪いました・・・・!
 でも! 私はこんな事をしようとは思わない!!』
 
『だが…消せぬのだ…!この恨み!この憎しみ!
 この2年、何度も忘れようと足掻いた!だができぬのだ!この想い…!だからナチュラルどもに!!』
 この言葉こそが、テロリスト達の総意。が、そう叫んだ彼の身に異変が起きる―

「ならばその想い、この俺が断ち切ろう。
 全てはこの世界の安寧たる仮初めの平和の為に!」
 戦場にいる誰もが目を疑った― 叫んだ男の機体から一本の剣が現れる―
 彼のコクピットを背後から貫いたのはエクスカリバーと呼ばれるソードユニットの武装―
 だが彼の後ろにはMSの存在など確認できない。
 そして不可視化を解いて現れたMSの正体にただ一人気づいたものがいた。
 割って入った声の主が駆るMSの正体を―

『馬鹿な!プロトインパルスが、軍神の影が何故此処に居る?!』


プラントの議長、ギルバート・デュランダルはそのMSの正体を、操縦者を悟り、叫んだ。
何故なら、セカンドステージと呼ばれるMS群の中で、何者かに奪取された三機のMS――カオス、アビス、ガイア――
の開発に協力する見返りとして、アメノミハシラに供与された分離機能を持たないPインパルスが目の前に突如現れたのだから・・・

211 :影の戦記:2005/10/18(火) 22:59:35 ID:???
前回の議長の叫びの後とお思い下さい



黒塗りの機体が切り裂かれる――
そして現れたのは切り裂かれたジンと同じく黒い、闇を孕んだ機体――
それを見た者の中で、爆散した機体の同系機に乗る者の中でその正体を知る者が居た――

『そ、その声は影の刃<シャドウエッジ>・・・!
 貴様も邪魔をすると言うのなら!!』

そう呟いた男が機体を影に・・・男が影の刃と呼んだ機体に向かい刀を構え宙を駆ける。
だが、その男はそれに対し、特に動こうともしなかった――

『動かないだと? 舐めるなぁぁぁあっ!!』
まるでバッターが如き姿で刀を構えギリギリまで上半身を引き絞り、加速する――

『チィェストォォォオ!!』
男が叫びと共に袈裟に切りかかる。だが・・!

「それで薩摩示現流の積りか? 片腹痛い・・・」
男が切りかかる瞬間、前に倒れ込む様に地のスレスレで足での踏み込みから全身のスラスターを利用し、
運動エネルギーすらも利用して己が限界近い速度で翔る。
振り抜かれる刀を、ジンの脇をかわし、通り抜け様にして一閃!――

『ナ!?』
男が驚愕の声を漏らした途端、機体が斜めに断ち切られ、胴と腰がずれ、
爆発の衝撃が閃光と共に周囲に音も無く響き渡った――


一瞬だけ、戦場の全機に動揺が走った――
それは未だ実戦経験の薄いミネルバ所属のパイロットだけではなくジュール隊、テロリスト達にも程度の差こそ有れ、現れている――
それは今まで幾多の戦闘を経験したイザーク・ジュール、シホ・ハーネンフース、アレックス・・・いや、アスラン・ザラとて同様だった。
(動きが異質過ぎる・・・それがこの動きを見たマユ・アスカの率直な感想であり戦場にある者全ての想いだった――

「・・・この隙、有効に活用させて頂こう」
先の敵を屠った場所から二機の中央、同仕打ちを誘発させる銃を撃てぬ場所で即座に両の手を翻し、専用攻盾に仕込まれたパンツアー・アイゼンを射出。
敵を捕らえるや即座に引き寄せながら回転するようにして二刀を振るい、敵を両断する――
その動きはまるで予知でもしているが如く淀み無く、二体を狩るや即座にミラージュ・コロイドを展開、姿を消しては新たな獲物を追い求める――

212 :影の戦記:2005/10/18(火) 23:00:52 ID:???

だが、これは紛れも無く好機!
「今だ!メテオブレイカーを設置しろ!手の空いている者は遼機の援護を!」
アレックスの一言によりメテオブレイカーの設置作業が再開され、次々と設置され、タイマーによって順次起動していく――

二十体近く居たテロリストは影の参入により碌な連携も執れずにミネルバ、ジュール隊と黒いインパルスによって瞬く間に駆逐された。




大地が割れる――
メテオブレイカーの力により次々と砕かれているのだ。
大気圏に囚われるのに寸前でメテオブレイカーによって破砕作業に取り掛かれたのは僥倖と言えるだろう。だが、
「艦長!メテオブレイカーの七番に異常発生!七番が始動していません!」
「何ですって!? メイリン、七番の近くに居るMSに七番に向かう様に「破砕された破片が飛び交ってるんですよ!?無理ですよ艦長!」・・・くっ!」
ミネルバ艦長、タリア・グラディスは舌を噛む様な思いで次々に崩れていくユニウスセブンを睨んだ。
未だ、大気圏に到達するまでに時間が有る。
此処から砲撃でどれだけ粉砕出切るかが勝負だと言うのにミネルバ八隻分以上の質量を持つあのデブリに対し、どれだけ有効なのかは判らない。
何か手は無いか・・・? 心労の元の一つであるプラント議長―ギルバート・デュランダル―を僚艦に移乗させた今、
その事ばかりを彼女は考えていた。


所変わって七番のセットされていたポイント。
皮肉な事に作動した他のメテオブレイカーの衝撃で倒れたそれは、堕ち続ける大地で使用される時を待っていた。

『有った!アレね!!』
倒れたメテオブレイカーを立て直す者が居た。
それはザフト期待の新鋭機にして強奪を免れた機体―インパルス―。
デブリ飛び交う中を無理を押して辿り着いたのだろう。片手は火花を散らし、その特徴であるシルエットも失っている――

『これで良し!ってうわッ!!』
何とか立て直し、イザ撃ち込もうとした途端、大地が揺れ始めた。
大気圏には未だ時間が有るが重力に囚われたのだろう。
機体は下に引っ張られ、メテオブレイカーもその振動により上手く狙いが付けられない。
最低でも後一機の協力が必要だった・・・。

「難儀している様だな・・・全く、こんな場所に一人で来る様なバカが俺以外に居るとは思わなかったぜ?」
そう言って現れたのは漆黒のMS―プロトインパルスと呼ばれた機体―。
通信ウィンドウに現れたのは黒のバイザーを付けた黒尽くめの男。
運命の悪戯か、生き別れた兄妹の運命の開合は互いに与り知らぬ侭に訪れたのだった・・・・・・




213 :影の戦記:2005/10/18(火) 23:02:34 ID:???

『「良し!コレで・・・・」いけぇ!!』
二人の声と共にメテオブレイカーが打ち込まれ、巨大な岩塊はそう時を掛けずに崩壊を始めるだろう。
だが未だこのままでは地上に甚大な被害が出るだろう・・・だがたかがMSの火力では如何にも出来ず、どちらにしろこれで任務は終了。
後は他の者に任せ、離脱しようと影―シン・アスカは考えた。

「離脱するぞ、掴まれ! サービスだ、お前の艦まで送ってやる!」
そう言うや否や即座にインパルスの腕を掴み、飛翔する――

『あ、有難う御座います』
「気にするな、さて!」
シンは即座に通信機器を操作、ある場所に通信を?げた。

「こちらシャドウ! 聞こえるかアメノミハシラ!聞こえるかアメノミハシラ!!
 障害の除去は終了、繰り返す!障害の除去は終了!
 最終フェーズに移行されたし!」

『了解です・・・・・様、砲撃は30秒後になります。
 御武運を!』
「了解」



「有難いわね・・・」
突如として送られて来た通信にタリア久しぶりに笑顔を浮かべた。
笑う事なんて本当に久しぶりだ、何せ今まで苦渋を味わってばかりで笑える様な状況なんて無かったのだから・・・

「メイリン、全艦に通達! ミネルバはこれから地上に降下しながらデブリを砕きます!
 総員奮起せよ! 戦端を開かせぬ為に我らは苦難の道を征く!」
「了解です、艦長!!」

214 :影の戦記:2005/10/18(火) 23:09:21 ID:???

暗き深遠の世界たる宇宙に二条の閃光が奔る。
一つは影のオーブ―アメノミハシラ―方面から・・・
一つはジャンク屋連合本拠地―ジェネしスα―から・・・
二つの閃光はユニウスで歪な形で交差し、砕かれた岩塊を消し飛ばして言った――

それを傍目にゆっくりと降下する船に向かうMS
『教えてください。 貴方は誰ですか・・・?』
「俺は軍神の影、名も無き亡霊だ。 それ以上でも以下でもない。 それじゃあな、小さなお嬢さん?」
そう言うやインパルスをミネルバに辿り着くコースに押し出し、ミラージュコロイドを展開して帰途に着いた。
影に潜んで見詰る者達の目を撒く様にして――


           影の戦記―消えぬ傷跡、星屑の記憶―編 end.