336 :影の戦記:2005/10/22(土) 23:55:54 ID:???
有言実行と言う事で可也遅くなりましたが投下します。


影の戦記――過去、闇に潜む影の胎動――

警告―今回の影の戦記には一部性的に多少キツい表現やグロイ表現があります。ご注意下さい―




――これは、影として生きる少年の過去の物語――

〜〜戦争中期・動乱の二年半前〜〜

――運命のあの日、俺は連合によるオーブ強襲により父と母を眼の前で喪い妹と生き別れ、一人生き残ってしまった。
あの羽根付きMSの放った凶弾により吹き飛ばされた俺が目覚めた時、先ず目にしたのは両親の死体だった――

「マユ、あと少しで港に着く、後少しの辛抱だ!」
 そう言いながら俺は両親や妹の前を走っていた。

「はぁ、はぁ、お、おにいちゃ・・・キャア!」
「「「マユ!」」ちゃん!?」
俺達家族はシェルターへの避難を諦め、脱出艇の待機するオノゴロ港へと抜ける山道を走っていたが、
未だ幼い妹には辛かったらしく倒れてしまった。

「あ、お兄ちゃんから貰ったハロが・・・!?」
それは果たして運が悪かったのか、それは今では分からないが妹―マユ―は道を外れてハロを取りに急な傾斜を降りてしまった。
それが俺達の運命を別ける事になると気付かずに・・・・・・

「大丈夫なのか?マユ!!・・・・っな!?」
父さんがマユを心配し、傾斜に向かって声を掛けた途端、俺達の上を鳥のような大きな影が横切り、上を見上げた途端、ソレが・・・
六対の翼をはためかせて飛ぶ蒼い天使――ZGMF-X10A・フリーダム――がその銃を此方に向けて引き金を引いた。


337 :影の戦記:2005/10/23(日) 00:04:14 ID:???
「・・・・・う、、、俺は・・・そうだ、MSが来て其れから・・・・! 父さん、母さん!?」

この時、ガラスが罅割れる様な音を聞いた気がした・・・
――両親はまるで俺を庇うかのようにして折り重なって倒れ、血と埃塗れで・・・まるで眠るかの様にして死んでいた――


取り敢えず嘗て自作してマユに渡したハロが近くに存在しない事を携帯のナビで確認してから遣るべき事をする事にした。

どれ位時間が経ったのかは解らないが気を失う前、夕焼けだったが今、空は薄暗い。
そう対して時間は経っていないだろうがザフトに向かう脱出艇は絶望的だった。
俺はマユがその脱出艇に乗れている事を祈りながら両親の遺体を道の端えと運び始めた・・・・。

両親の死体を道の端に寄せ顔を軽く拭いてから両親の荷物から使えそうな物、技術者の父が連合に渡してはいけないと言っていた
データディスクを形見として取り、両親身体に両親の羽織っていた服を身体に掛けてから歩き出した。

「誓うよ、俺は貴方達の分まで生き残って見せる。
 例え、どんな事をしようとも・・・・・・」



行く当ても無く歩いた俺が見たのは焼け爛れた大地、破壊された家屋、未だ火を噴く森・・・今や焦土と化したオーブだ。
最早夜となってしまったが月の光や未だ燃え続ける建物の光でも周囲を確認することが出来た。

そこ等じゅうに転がるMSらしき物の残骸、俺と同じく逃げ遅れたのだろう人々の死体、そして損壊の少ない―いや、
未だ人としての姿を遺した女性達の遺体を集団で犯す連邦の兵達・・・


平和だった国に自分達の都合で攻め込み好きで死んだ訳でも無い彼女達の全てを冒涜する連邦兵達、原因となった戦艦、両親を殺した羽根付きMS、
そして高い理想を掲げながら国民を護ないこの国の全てが憎かった・・・。

その全てを今すぐ消してやりたいと言う昏い衝動に突き動かされそうになる。だが、哀しいかな俺にはそれらを消すだけの力も術も無かった。
・・・だから逃げた。 奴等に気付かれぬ様息を殺し、距離を取ってから力の限り走って走って奔り続けた。
未だに汚され続ける彼女達の遺体から目を逸らして・・・・

「力が欲しい・・・運命すらも切り伏せる、そんな力が・・・!」

338 :影の戦記:2005/10/23(日) 00:07:39 ID:???
戦乱渦巻く世界で親も無く、未だ未青年の人間が生きて行ける程世界は優しくは出来て居ない。
それはコーディネイターであろうと同じ事だ。 いや、逆にコーディネイターで在るからこそ余計に生き辛い。
何せコーディネイターと其れを疎ましく思った者達の起こした戦争。 故にコーディネーターと知られれば迫害され、悪ければ殺される。
コーディネイターだからザフトの基地に逃げ込めば良いと思う人も居るだろうがそれは間違いだ。
今は戦時下―いや、戦時下じゃなくてもコネも無い身分不詳の"自称コーディネイター"を軍であるザフトが受け入れる訳無いのだ。

だから俺は生きて行く為に色んな事をした。
俺がオーブから脱出した直後にその大半を巻き添えにして消失したオーブの事は世界中に知れ渡っており、同情からその日限りの仕事を斡旋してくれる人も多い。
だが、そんな日払いのバイト程度で稼げる額は高が知れており実際に平均的なホテルの宿泊料と食事で無くなってしまう程だ。

だから――俺は身体を売った。


別に臓器を売る訳ではない。 金かそれに順ずる物で女性に抱かれるのだ。
身元引受人も居ない俺が盗みや強盗等の犯罪をする訳には〈逮捕後即射殺される為〉行かない故に、この道しかなかった。


実際、深夜の歓楽街やそれに順ずる所を歩いているだけで客から声を掛かる・・・これほど今の自分に在った仕事は無かった。
元々素質も在ったらしく、俺は直ぐに女性の扱いと言うモノを覚え、その日の生活とその身を休める為の家に困る事は無くなった。
いや、実際は独身女性等に金で買われ、一夜を共にすると言うだけだ。

故に俺は昼に様々な場所を廻り色々な技術を磨き、夜は見知らぬ女に抱かれると言う退廃的な日々を続けていた。

――ただ、生き残るために――





339 :影の戦記:2005/10/23(日) 00:13:23 ID:???
〜〜戦争終盤・動乱の二年前〜〜

運が良かったのだろう。 俺はジャンク屋と傭兵の"キャラバン"にコネを持つ女性に気にいられ、キャラバンに同乗して各地を廻っていた。

キャラバン生活で俺は様々な事を覚えた。 炊事、家事、洗濯からMSの操縦、整備。果ては格闘術に銃の取扱まで・・・。
其処は様々な感情が磨耗していた俺にとって、嘗ての生活を思い起させるモノであり、キャラバンの皆は俺にとって家族だった。
彼らの様に行商を生業とする者や傭兵はコーディネイターを差別する者は少ない。
何故なら彼らにとってコーディネイターとて商売相手の一つであり、傭兵達はその素質が高いだけでは戦場で最強に成れる訳ではなく、
逆に素質だけでは戦場では生きて行けない事を知っている。

何より彼らの半分近くが同胞だった。
だからこそ同じ苦しみを知っている彼等は率先してその技術を俺に教えてくれた。

まあ、そのキャラバン生活でも一部の女性から声がかかり"仕事"を続けていた。
一度変なオッサンに追われたのは今では良い思い出だ・・・と思いたい、思わせてくれ頼むから!



キャラバンと共に辿り着いた町に滞在している時、近くの連合軍がザフトの猛攻により基地を爆破、破棄して逃げだした。
ザフトはそれなりの規模だったその基地より逃げた軍を優先し、そのまま軍を追撃して何処かへ消えた。
俺は其処にMSが無事な姿で残されているかも知れないと言う淡い期待に突き動かされ、その爆破された基地に細心の注意を払って侵入した。
何とか入り込める場所に辿り着き、崩れた壁を通り抜けて地下深くのラボ兼用の隠し格納庫に辿り着いた時、其処で俺は出会ったのだ・・・

メンテナンスデッキに固定された闇に聳え立つ二刀を背負いし災厄
俺の―最初にして今尚力を貸してくれている相棒。――GAT−X133−XX  "ソード・カラミティ"に――




340 :影の戦記:2005/10/23(日) 00:15:22 ID:???

〜〜終戦後・動乱の一年前〜〜

俺がソードカラミティを手に入れてから其れまでの生活が波乱の日々に変わった。
――何せこの機体自体、本来は存在しない筈のイリーガルナンバーと呼ばれる機体群の一つだったからだ――
ソードカラミティの操縦に慣れるまで二日間の間に、キャラバンのジャンク屋達はある意味で敵となった。
何せ少しでも目を離すとバラして調べようとする。 故にソードカラミティと共に俺は旅立ち、俺は傭兵として幾多の戦場を駆けた。
元よりイリーガルナンバーである俺のソードカラミティは連合にとって非常に邪魔な存在であり、
ザフトにとっては幾多の同胞を切り伏せた仇敵の同系機故に目の仇にされた。


前からはビームサーベル等を構えて飛び掛ってくるMS、後方からは俺達諸共に消し飛ばすべく降り注がれる砲撃の雨。
――それは連合とザフト、どちらに雇われても同じ事だった。――


何時もギリギリのラインで生き残る俺を連合もザフトも諦め、雇う事は無くなりその代りに企業やジャンク屋に雇われる様になり、
その機体色―黒と灰に近い白―と闇に紛れて敵を屠る様から"影の刃"と呼ばれるようになり、
気が付けば傭兵部隊"ナインテールフォックス―九尾の狐―"の看板的存在に納まっていた。
まあ、その保持する機体の半分近くが俺の所有物であり構成員すら俺が戦災に有った町で拾って来たコーディネイターの少女だったり
嘗ての客だったりする可也笑えない様な状況だった。

そんなある日、俺達のスポンサーになったある令嬢に呼ばれて言った先に俺はある人物と数年ぶりの再開を果たす事になった。



『チィ!ここで貴様は終われ・・・・ゲバフっ!!』
「残念だが、何をしてでも生き残ると誓った身でね・・・」
そうスポンサーを狙ってきたストライクダガーの攻撃を紙一重で避け、カウンターの様にしてマイダスメッサーでコックピットを貫いた。

「全く、ミラージュコロイドってもんは面倒だな・・・」
さっきから14体程斃したがその内二機がミラージュコロイド搭載型で味方の攻撃を盾に背後に回ろうとしたり作戦失敗を見て取るや
直ぐさま逃げ出そうとする。
幾らこの機体がNJCを搭載しエネルギーの心配をしなくて済むと言えども余り遣り合いたいとは思えなかった。



341 :影の戦記:2005/10/23(日) 00:16:57 ID:???

突如、斜め前で小爆発が有ったと思うや否や眼の前で可也の改造を加えられたジンを盾のような物から伸びるビームサーベルで貫いた姿で
現れた黒と金の装甲を持つ異様なMS現れた。

『大層難儀しておった様だな・・・次が有れば音に注意してみるが良い。
 まあ、こんな事はお前の様な者いや、影の刃に言うべき事では無いかも知れんがな・・・・・・』
「俺を知ってる様だがあんたは何者だ・・・?」
俺がそう聞き返すと俺に話しかけてきた女はフフ・・・と、楽しげに笑い
『これは失礼した。私は元オーブ連合首長国五大氏族が一柱、サハク家現党首、ロンド・ミナ・サハク。
 そしてこれはアストレイ・ゴールドフレーム天・・・・・・其方は?』
「本来名は名乗らぬ主義なんだがな・・・俺の名はシン・アスカ『!?』、そしてコイツはGAT−X133−XX  "ソード・カラミティ"
 頼れる相棒だ」
俺が名乗ってる間に彼女は今までの凍りついたとうな表情が驚きに染まり、一点して優しげな貌に変わった――

『そうか、生残っておったか・・・我が従姉弟よ・・・・』

――それが彼女との数年振りの再会であり俺の新たなる戦いへ"始まり"だった――