- 476 :通常の名無しさんの3倍:2005/09/24(土) 12:26:31
ID:???
- 月、連合軍アルザッヘル基地。その一角に命令待ちをしている戦艦が一隻。
新造艦といった面もちの、その艦のメインブリッジで----いかにもベテラン、という風な連合の白服を着た男が艦長席に深々と腰を掛けている。
背後のドアが開く。
「失礼。艦の新しい乗組員が来たみたいですよ。」
「そうか。ありがとう。」
言われて男は立ち上がり、軽く返事をして前を歩いている仮面をつけた男に促されながら通路を歩いてゆく。
艦の外への入り口に着いたところで老兵は気付いたように呟く。
「そうだ、[彼ら]も一応ブリッジに呼んでおいてくれ。初顔合わせのはずだ。意味はなくともな」
「はいはい、っと」
仮面の男を見送ると外に出る。外に立っていたどこか幼さの残る黒髪の少年は、男に気付くと慌てて敬礼をする。
「お、おはようございます!本日付で貴艦ガーティー・ルーに配属となりました、パイロット兼生体CPU調整技士、セネカ・レビュナス特務大尉であります!
宜しくお願いします!」
緋色の眼の少年はそう名乗った。
PHASE-01〜序曲〜
- 477 :通常の名無しさんの3倍:2005/09/24(土) 12:29:57
ID:???
- 艦内に入り歩きながらセネカと老兵は話し始める。
「…こちらは挨拶、まだだったな。私はガーティー・ルー艦長、イアン・リー少佐だ。突然の召集、すまなかったな。こちらこそ宜しく頼むよ」
「いえ!自分こそこのような場に呼ばれて光栄です。独立機動群に所属できるのは一部の人間だけで、それに選ばれるのは軍人にとって名誉なことですから」
互いに謙遜する2人。第一印象はまずまずといったところか。
「さて。艦を案内せねばな。乗組員も紹介しよう。まずはファントムペインへようこそ、だな」
一通りの案内を終えブリッジに来た艦長とセネカ。ブリッジでは先程の仮面の男と少年2人に少女1人。
「来たぞ。ほらみんな、ご挨拶だ。」
そう言って挨拶を促す仮面の男。端の緑の髪色の少年から順に応える。
「スティング・オークレーだ」
「アウル・ニーダ」
「ステラ…ルーシェ」
最後に仮面の男が名乗る。
「で、俺がこいつらのまとめ役ネオ・ロアノーク大佐だ。よろしくな、坊主!」
「セネカ・レビュナス特務大尉です。こちらこそよろしくお願いします」
挨拶もほどほどに明日の任務のブリーフィングを5時間後に行うことを告げ各々自室に戻ってゆく艦長と大佐。
- 478 :通常の名無しさんの3倍:2005/09/24(土) 12:33:27
ID:???
- 扉が閉まる。
残された彼ら。何故か向かいあったまま動こうとしないセネカ。おもむろに話しかける。
「…元気か?」
スティングが返す。
「…おかげさまでな。こうして3人ともピンピンしてるぜ、ヘタレコーディネーターさま?」
「へぇ?エクステンデッドの癖に俺のこと覚えてやがっ…ぐぇ!」
「覚えさせたのはテメーだろうがコノヤロー!また会えると思ってなかったぜ!セナ!」
スリーパーホールドをかますスティング。
「ズディング!ぐるじい…」
「へっ!2年もたったのにおめーは相変わらずネボケたツラだな!」
照れ隠しなのかボディを叩きまくるアウル。
「ゲホッ!やめ…」
「セナ!久しぶり!」
右腕に抱きつきながらも嬉しそうにその腕に逆間接を決めるステラ。
3人の熱い祝福を受けセネカは配属初日にして医務室に運び込まれる羽目になったのは言うまでもない。
ブリッジの扉が開く。
「おう、来たか、坊主…なんだ?お前らもう仲良し子よしか?」
セネカは3人に取り囲まれている。
「はは、まあ、こうゆうのを調整するのが私の仕事ですから…ご安心下さい」
力なく笑って答えるセネカをネオがおかしそうに笑う。リーは怪訝そうな顔をしている。第一印象は一発で消し飛んだことだろう。
「…ウォホン!では全員揃ったようですしブリーフィングを始めます」
- 479 :通常の名無しさんの3倍:2005/09/24(土) 12:45:59
ID:???
- 翌日---。所変わってこちらはL4プラントアーモリーワン。そこにはオーブ国家元首、カガリ・ユラ・アスハの姿があった。
「分かってるなカガリ?決して話を急ぐなよ。順序よく、だ。」
そう隣で注意する男。
「分かっているさ。アスラ」
「アレックスだ。本当に分かってるのか?」言葉を遮りため息をつく---アレックスと名乗る男。カガリもイライラした感じで答える。
「大丈夫さ!順序よくだろ?突然切り出しても流されるからな!順序よく、順序よく、順序よく…」
そこに近づいてくるプラント評議会議長ギルバート・デュランダル。
「お待たせしてすまない、姫。」
「議長〜!あなたはいったいどーゆうおつもりですか!?」
「まったく…またダメだ」
アレックスのため息の数は増えるばかりだった。
そのころ空港には先程の3人の姿が。
「へぇ〜これがプラントねぇ。」
「スゴい…キレイ」
「おい、アウルもステラもフラフラすんなよ!俺たちの目的は」
「まあまあ!そう堅いこと言うなよ!せっかく小遣いも頂戴したんだし時間まで後3時間ちょい。のんびり敵地視察と行こうぜ?」
そう言って誰の物とも知れないキャッシュカードをスティングに投げつける。いつの間にすったのか。
眉間に皺を寄せじっくり考えたスティングの答え。
「ったく…しゃあねぇな。少しだけだぞ?」
「よっしゃ!先ずは腹ごしらえじゃん!適当な店まで競争してビリのやつは全員分オゴリな!ドン!」
走り出すアウル。
「は?勘定はこのカードでやるんだから関係な…」
「スティング…ビリ」
ステラまで走って行く。取り残されたスティング。ビリ。彼の最も嫌いな言葉だ。
「待てコラァー!!」
安い挑発と知りつつも走り出すスティングだった。
- 480 :通常の名無しさんの3倍:2005/09/24(土) 12:51:46
ID:???
- 中心街で買い物を楽しむ少女が2人。いや1人。
「お義姉ちゃん…私たちそろそろ帰らないと。レイさんに怒られちゃうよ…。私もインパルスの調整したいし…。ねぇ帰ろうってば…。」
黒髪の落ち着いた感じの少女が彼女の精一杯で必死にもう一方の少女を説得している。
「待ってよ、ユキ。プラントでの最後の買い物のよ?しばらく戻ってこれないかもしれないんだから色々買っとかないと…」
と、紫色の髪の活発そうな感じの少女は全くとりあわない。
有りがちな光景に普通なら目を逸らしてしてしまうだろう。
が、彼女らはどこか普通と違う。…服だ。軍服を着ている。それも赤い軍服。
何も知らない人が見れば女の子だから赤だ、と思ってしまうだろう。
しかし赤服とは軍学校で好成績残して卒業した者、すなわちザフト軍におけるエリートを表す。
その赤服を女の子が着ているのだ。なんとも不思議な光景である。
しかもどちらも感じは違えどかなりのもの。否が応でも目がいってしまう。
背の低い少女は視線を感じてか徐々に赤面してゆく。「ルナお義姉ちゃん…私、先行くから…!」感極まって、ついに堪えきれず1人走り出してしまった。
「ちょっと!待ってってば!もう!」
しかたなく後を追うように店を出るルナと呼ばれた少女。
- 481 :通常の名無しさんの3倍:2005/09/24(土) 13:09:05
ID:???
- その瞬間目が眩んだ。
「「ィッター!」」
不注意にも入り口をでてすぐ、水色髪の少年とぶつかってしまったのだ。
「イッターイ!!ちょっとあんた!どこみて走ってんのよ!」
「んだと〜?テメーこそ突然走って出てくんじゃねーよ!このアホ毛!」
「なんですって〜!?」
2人の口論をよそにユキはさっさと行ってしまい、後ろから緑髪の少年と金髪の少女も追い抜いてゆく。
「アウル…ビリ?」
「テメーで競争言っといて負けんなよ〜」
「なっ!待てお前らぁ〜!」
水色髪の少年も後を追って走って行く。
「何よ、アイツ…。少しは謝りなさいよ…!…でも少し…」
イイ男だったかも。そう思ってしまった見境のない自分に、少し自己嫌悪になりながらもユキの走った方向に走り始めるルナだった。
それからしばらくして---。基地ではカガリ達が施設を見学…せずにカガリが一方的に議長まくし立てていただけだった。施設には目もくれず、カガリはただひたすら主張している。
「オーブの難民を返せ」、「力は戦いを生むだけだ」と。しかし議長も反論する。「あくまで人道的保護であった」、そして「争いがなくならぬからから力が必要なのだ」と。
一瞬たじろいだカガリ。ため息をつくアレックス。
「そ!そんな、パラドックスみたいなこと話しても仕方ないだろ!とにかく早急に」
言いかけたその時、事件は起こった。
格納庫ではスティングがMSの中でキーボードを叩いていた。
「よしできたぁ!OSのインストール完了!どうだ!?アウル?ステラ?」
「OK!情報通り!」
「いいよ…」
「よし!行くぞ!適当に馴らしてサインがあったら帰艦する!機体に傷をつけるなよ!立ち上げろ!」
3機のGがその身に色彩を帯び、動き出す---。
- 482 :通常の名無しさんの3倍:2005/09/24(土) 13:25:15
ID:???
- 突然の衝撃に身構えるルナ。爆発の方角には基地があるはず…
「…『ガンダム』…!?」
ユキがそう読んでいたOSを搭載した機体。それが今、基地を破壊している。どうして動いているのか。誰が動かしているのか。
止めなくては。ルナはすぐに自分の愛機のある場所に向かって、走り出す。
その時、ユキは既にコアスプレンダーの中にいた。この機体だけの特殊な機能の調整をしていたのだ。
副艦長の通信が入りMSを破壊せずに止めろ、と言われ驚いた表情を見せたユキだがすぐに冷静になる。
その後すぐのユキの同僚のパイロットらしい男、レイ通信の内容のせいだろう。
「聞こえるか、ユキ。敵はこちらの最新鋭MS3機を乗っ取り、更に倉庫に残ったザク等、基地内のSステージ機は全て発進を妨害されている。
おそらく今まともに敵と戦えるのはミネルバに機体を置いた俺とお前とルナマリアだけと考えていいだろう。肝心のルナマリアもまだ到着していない。その上敵はかなりの腕を有している。十分に気をつけろ」
「わかった…!」
メイリンから発進のアナウンスがかかる。
<<ユキ・シラトリ、コアスプレンダー発進スタンバイ。全システム機動を確認しました。発進シークェンスを開始します>>
高まる鼓動。それを抑えるように、ネックレスを握りしめ、目を閉じ、ネックレスに向かって静かに語りかける。
「見ててね、マユ…私、絶対に世界を…!」
少女は目を開く。奪わせない。もう何も奪わせはしない。
<<…路クリアー。コアスプレンダー発進、どうぞ!>>
「コアスプレンダー、ユキ・シラトリ、出ます…!」
機体は加速、そのままプラントの空に飛び出して行く--。