- 461 :1/9:2006/07/01(土) 21:22:34 ID:???
- SEED DESTINY ASTRAY M 第四話 「誓約vs.勇者」
私の目の前に現れたMS、ドレッドノートに乗る青年・カナードはイワンにかけられた
賞金が狙いだと言った。彼は機体に銃を構えさせて言う。
『教えてもらおうか。そうすれば見逃してやる』
どうやら相当自信があるようだ。確かに只者ではないのは威圧感で分かる。だけど。
「……悪いけど」
『ん?』
「見逃してもらう必要なんてない!」
こっちは既に戦闘準備を完了している。ガンダムからドレッドノートへウィルスを送付
しておき、話している間にモニターの映像などを偽の情報に書き換えておいたのだ。相手
が戸惑っている隙に素早くビームライフルを構え、撃つ。それで終わり……のはずだった。
だが、ドレッドノートはあっさりとビームを避けた。
「……な!?」
『効かん!
ダガーLが素通りしていった時にもう、オレはそのガンダムの能力を見切った。
ウイルスはコロイド粒子を媒介とする。そして、コロイド粒子はビーム兵器の磁場安定
にも使われる。ならば、ビームを展開するアルミューレ・リュミエールを広く機体全面に
展開しておくことで……』
そう言って彼は腰部のユニット・プリスティスをマウントさせている左腕を持ち上げた。
確かに……よく見れば光っている。
それだけではない。機体全体がどこか揺らいでいる。おそらくは極限まで薄く、そして
広くビームシールドを展開しているためだ。本来ドレッドノートに有り得ない装備と、
本来有り得ないアルミューレ・リュミエールの使用法。だから気付けなかった。
『ウイルスの送信を断てる!』
カナードが叫ぶと同時に、ドレッドノートはプリスティスと右腕の銃を撃ちこむ。ただ
のダブルトリガーではない。右腕の銃はハイペリオンと同じビームマシンガン。乱射して
動きを束縛して、マウントしたプリスティスのビームを目標へ撃つという戦法。
――避けきれない!
そう判断すると同時にPS装甲の電圧を上げ、マシンガンが撃ちこまれるコースへ飛び
込む。普通PS装甲はビーム兵器には無力だが、電圧を上げればその限りではない。赤く
なったPS装甲はなんとかビームマシンガンを耐え切り、ビームの弾幕から脱出した。
『面白い装甲だ! だが盾もなしに俺のガンダムの攻撃から逃げ切れるか!?』
「くっ……!」
- 462 :2/9:2006/07/01(土) 21:23:20 ID:???
- 本当は、トリケロス改という攻守兼用の兵器をテスタメントに付ける予定だったらしい。
だが、セットで付ける専用ストライカーパックがまだ未完成だったため、今回はノワール
ストライカーの飛行テスト(つまり実戦テストではない)を兼ねて任務をすることになり
ノワールストライカーに干渉するトリケロス改は外して出撃したのだ。
今思うと、トリケロス改を付けてほしかった。この相手に盾無しで戦うのは無謀だ。
「不満言ってても……仕方ないけどっ!」
次の攻撃が来る前に、素早く空に舞い上がってビームライフルを放つ。ドレッドノート
はアルミューレ・リュミエールを使って防御することもなく、避けた。ウイルスを防ぐため
に薄く展開しているため、防御に使うことはできないようだ。
つまりお互いに切り札を封じてられている状態と言える。だが……
『無駄だ、無駄だ、無駄だ!』
「きゃあっ!」
火力が違いすぎた。それも、相手が圧倒的に上。
圧倒的なビームの嵐をなんとか避ける。だが、避けきれなかったビームマシンガンが
コックピットに強い衝撃を与え、思わず私は悲鳴を漏らした。
――相手は背部のツイン・ビームキャノンと、両腕にマウントしてあるプリスティス、
更にビームマシンガンを同時に連射できる。その火力はフリーダムと互角か、それ以上だ。
対する私のガンダムはビームライフルと二連装リニアガン×2。数は同じだけど、威力が
違いすぎる。あっちは四つのリニアガン全てを喰らったとしてもPS装甲で耐えられるが、
私のガンダムが防げるのはマシンガンだけなのだから。
だからと言って逃げる気にはなれなかった。コイツはイワンを殺す気だ。止めないと。
なら――せめて勝ち目がある戦いを!
ノワールストライカーの全砲門をドレッドノートの正面の地面一帯に撃ちこむ。派手に
上がった土煙が、数秒は相手の視界を奪ってくれるはずだ。バーニアを噴かして翼で空を
切り、左腕にフラガラッハ3・ビームブレイドを抜いて一気にドレッドノートへ接近する!
……だが、私は寸前で土煙の向こうにおぼろげに見た。
完全に視野が奪われた状態にも関わらず、こちらへ砲を構えるドレッドノートを。
「……!!!」
まずい。
既に何発もビームマシンガンを受けた今のガンダムでは、当たり所次第ではマシンガン
さえ致命傷になりかねない。ましてやビームキャノンなんてくらったら確実に……!
死の予兆に頭の中が真っ白になる中で……私の頭に浮かんだのは一つのイメージだった。
水面に『種』が落ち、そして割れる――
「させるもんかぁ!」
咄嗟にフラガラッハを前に構えながら、機体の体勢を捻る。発射されたビームはフラガ
ラッハが発振するビームとぶつかり、コースが逸れる。二連装リニアガンが一つ持ってい
かれたが、本体は無事だ。
そのまま機体の体勢を立て直し、捻った勢いを入れてフラガラッハを振り下ろす!
- 463 :3/9:2006/07/01(土) 21:24:09 ID:???
- 相手はそれを避けることもせず、背部ユニットを変形させた。ビームキャノンではなく
巨大なビームソードが発振され、フラガラッハを受け止める。
「……これは!?」
『ドレッドノートH・ソードモード! 接近戦なら勝てるとは甘い考えだな!』
そのままビームキャノン……いや、ビームソードを左手に持ち替えてドレッドノートは
切りかかってくる。ビームソードである以上柄が長ければ発振されるビームも強力になり、
柄の長さだけでなく刀身の長さも増加してリーチは大幅に伸びる。まともに斬り合えば
圧し負けるだけだ。だけど、柄の長いビームソードにもデメリットは確かに存在する。
エネルギーを多く消費すること、そして――
ビームライフルを犠牲にしながらもビームソードをなんとか避け、手が空いた右腕にも
フラガラッハを持たせる。つまり、二刀流だ。
そのままフラガラッハで敵の斬撃を防ぎつつ、今まで以上に接近を図る。敵の剣は巨大
だが、振るスピードはこちらと大して変わらない。柄の分しか重さがないビームソードは
刀身をいくら長くしても重さは増えないためだ。これはビーム兵器の利点。だが、ビーム
兵器特有の弱点もある。
『ちぃっ!』
「これでっ!」
懐へ潜り込もうとする私のガンダムを振り払おうと、ドレッドノートはビームソードを
振る。それに対して私は素早くノワールストライカーに装備されたワイヤーを発射した。
ビームソードの柄がワイヤーに巻き取られ、斬撃の軌跡が逸れる。その隙に、懐に一気に
潜り込む。
そう、ビーム兵器特有の弱点は柄の部分が実体剣同士での戦い以上に弱点になること。
柄が電子部品の塊である以上、柄が丈夫な構造になることは無い。そしてビームキャノン
をビームソードとして使用するドレッドノートはその長い柄の部分は武器として使えない、
つまり密着状態での取り回しが非常に悪いのだ。下手に振れば、自分を斬ってしまう。
相手もそれを理解しているのだろう、ワイヤーごとビームソードを引っ張った。体勢を
崩そうというのだろうが、私はもう予想済みだ。右腕のフラガラッハで素早くワイヤーを
断ち、左腕のフラガラッハをドレッドノート目掛けて振り下ろす。アルミューレ・リュミエ
ールを使えず、自由に動かせる武器が右腕にあるビームマシンガンだけの相手にはもはや
防げない……!
……だけど、それは幻想だった。
『ふん、残念だったな』
「これは……銃剣ッ!?」
左腕のフラガラッハが、ビームマシンガン上部から発生した光に止められている。
まさか、ビームナイフが仕込まれていた……!?
「だから二刀流をせずに、マシンガンを持ち続けていたってわけ!?」
『そういうことだ!
せっかくハイペリオンの支援をするんだったら、もう少しハイペリオンの武装について
調べておくべきだったな!』
「コイツッ!」
- 464 :4/9:2006/07/01(土) 21:24:54 ID:???
- なら力ずくで押し切ろうと右腕のフラガラッハを振り下ろそうとしたが、無駄な足掻き
だった。それが到達する前に、ドレッドノートのビームナイフは左腕のフラガラッハの
実体剣の部分を両断した。
まずい、と思った。
相手はリーチの長い剣とリーチの短いナイフを併せ持っている。距離により使い分ける
というわけだ。密着状態でも離れていても駄目。相手のナイフがマシンガンと兼用である
以上、今更射撃戦に持ち込んでも負けるのはこっち。相手の技量も、半端じゃない。今の
私は今までにない程集中できているし、高い実力を発揮できているが……カナードはそれ
さえ上回っている。
……だけど。
『どうした? イワンの行き先を喋る気にでもなったか?』
「誰がっ!」
残ったフラガラッハを両手で握る。
今退く訳にはいかない。退けば、こいつとイワンが遭遇してしまう可能性が高い。
もちろん違う方向に引きつけながら逃げるという手もあるが、ドレッドノートの火力では
引き付ける途中でやられかねない。
イワンでもこいつは絶対に倒せない……だから、戦わせちゃいけない。イワンが町から
完全に離れるまで、ここで私が時間を最低限稼がないと!
敵のビームソードを避けつつフラガラッハを振る。距離関係はギリギリビームナイフが
届かない距離。そして、ビームソードのリーチの優位性が薄れる距離。
かといって相手のビームソードのもう一つの優位性――強力な出力が薄れる訳ではない。
片腕で振っているにも関わらず、私のガンダムが両腕で振ったフラガラッハを受け止めた。
このまま押し合いをすれば、対艦刀タイプの剣であるフラガラッハの刀身が持たない。
だから押し合いをせず、剣と剣が触れたらすぐに違う場所へ連続して斬撃を入れる!
「たああああああっ!」
『チッ!』
私が剣のぶつかり合いを避けている以上、お互い剣撃は避けるしかない。下へ来た斬撃
を足を上げて避け、同時に頭部へフラガラッハを振る。ドレッドノートはスウェーバック
でそれを避けながら、後ろを回り込みつつ剣を振り上げる。私はすばやく向きを変えて、
同時に距離を保ちながらそれを回避、胴体へフラガラッハを振った。だがドレッドノート
は華麗にステップを踏んで避ける。ほんの一瞬の攻防でお互いの位置関係が入れ替わった。
そのままフラガラッハとビームソードで斬り合うこと数秒間に十数回。頭、腕、胴、足。
互いに様々な場所に斬撃を散らし、互いにそれをギリギリで避ける。だけど、限界が来た。
目の前に迫るビームソード。避けるのは間に合わない。受け流すこともできない。なら、
受け止めるしかない。フラガラッハとビームソードの鍔迫り合い。コロイド粒子が激しく
火花を散らす。
『まだ退かないのか? 大層な覚悟だ、いくら任務とはいえそんなに偽物の『英雄』を
庇いたいのか?』
「なんですって!?」
接触通信で入るカナードの声。通信が開きっぱなしだったため、さっきから既にやたら
うるさかったが挑発以上の物では無かった。だけど、今回は挑発以上の物だった。馬鹿に
した様子で彼は続ける。
- 465 :5/9:2006/07/01(土) 21:25:41 ID:???
- 『傭兵の中では噂が流れている……イワンの後ろには何か大きな組織がいると。
大方お前はその組織に雇われて、何か任務をやっているんだと思ったが……
そこまで必死になる辺り、偽者の『英雄』だと知らずにイワンに陶酔するただの馬鹿か?』
「……!」
カナードの言葉を否定しようとしても、できない。
そう……イワンが偽者の『英雄』だというのは、私が一番よく知っている。
さっき、偽者である証拠を私が行ったばかりなのだから。
『まさか本当にただの馬鹿のほうだったのか? ならはっきり言ってやる。
所詮奴は偽の情報で『人の想い』を集めた偽の『英雄』にすぎない。
既にこんな噂が傭兵内で流れているんだ、いつか民衆もイワンの正体に気付くだろう』
「……私は」
……彼が偽りの『英雄』だって、分かってる。
だけど、私は彼を見捨てる気にはなれない。なぜ?
――一年と半年。「サーカス」にいた日々。そこでの思い出。
――地獄のような場所で、私を助けてくれた彼。
そう、理由は簡単なんだ。彼はサーカスの仲間だったから。彼は私に色々世話を焼いて
くれたから。かつて、シン兄さんがそうしたように――だから!
「本物の英雄かどうかなんて関係ない! 私は彼に借りを返す――」
言うと同時に、バーニアを吹かした。ガンダムがフラガラッハごとビームソードを押す。
「それ以上でもそれ以下でもないし、必要ないッ!」
そのままビームソードを一気に押し切った。ドレッドノートは後ろに弾かれて、フラガ
ラッハは勢い余って地面に突き刺さる。
「しまった!」
ドレッドノートは自ら後ろに跳んだのだ。
咄嗟に体勢を立て直しフラガラッハを構えるも、再び前進したドレッドノートはビーム
ソードを振り下ろし、フラガラッハは再び地面に叩きつけられた。私のガンダムの腹部に
はビームソードで付けられた傷痕がくっきりとある。だけど……
「浅いッ!」
エラーを無視してそのままフラガラッハを振り上げる。流石に予測できなかったか、
ドレッドノートのマシンガンをナイフごと斬り裂けた。これで相手は密着状態での接近戦
には対抗できない。
しかしこっちが接近するより先に、相手は右腕で私のガンダムを殴りつけた。こっちの
赤いPS装甲は相手の蒼いPS装甲より硬い。だが衝撃までは緩和できず、思わず後ろへ
後ずさる。
- 466 :6/9:2006/07/01(土) 21:26:33 ID:???
- 『ザコの分際で、オレのガンダムに傷を付けただと!?』
激昂したらしいカナードの声が聞こえる。機体に何か思い入れでもあるんだろうか。
だけど、私にはそんな事を思いやるつもりも余裕も無い。
相手がもう一本ビームソードを抜いたのを確認し、急いで後退する。キャノンとして
背部ユニットを使えない以上、火力の不利は縮まった。とりあえず一旦下がって間を取る
べきだと判断したのだ。もっとも、私のガンダムには遠距離用のビーム兵器はもう無い。
つまりあいつを仕留めるためには、接近戦をしなければならない。
カナードもそれを分かっているらしく、再び砲撃戦型に変形する様子は無い。おそらく
ソードモードって奴でこっちの接近を待ち構える気なのだろう。キレてるくせに冷静な奴。
――おそらくは、次で最後。
お互い言葉も無いまま、剣を構えて立つことぴったり12秒。
フラガラッハを構えたままの私のガンダムが、リニアガンを放つ。狙いは相手のビーム
ソードの柄。同時に相手目掛けて一気に前進する。
ドレッドノートはリニアガンを両肩で受け止めつつ、二つのビームソードを一気に振り
下ろした。相当な衝撃があるだろうに、それをうまく調整して振り下ろせる辺りは流石だ。
だけど、完全に衝撃の影響を無視できるわけじゃない。僅かな斬撃の軌跡のズレへ機体を
滑り込ませる。右腕を犠牲にしながらビームを潜り抜けると同時に、相手のビームソード
の柄を踏みつけた。これで相手は武器が使えない。後はフラガラッハを振り下ろすだけ。
……しかし。
「…………なッ!?」
『武器があれだけと思うのは早計だったな!』
ドレッドノートはあっさり柄から手を離した。そして、両腕のアルミューレ・リュミエ
ール発生基部からは槍の形をした光が生み出されている。振り下ろしたフラガラッハは、
あっさりとその槍に貫かれて折れた。そのままもう一つの光の槍がこっちへ迫る……!
とっさにコンソールへ指を滑らせた。私のガンダムは回避行動と共に、ある動作を行う。
避け切れなかった光の槍が深々と機体の脇腹に突き刺さり、モニターがブラックダウン。
同時に起こった激しい衝撃で、私の意識は闇へ落ちた。
- 467 :7/9:2006/07/01(土) 21:27:37 ID:???
- 「……ふん、終わったか。ここまでオレを手こずらせるとはな」
PS装甲がダウンし、灰色になりながら地面へ倒れこむ敵のガンダムを見ながら思わず
オレは呟いていた。
アルミューレ・リュミエールによる光の槍、リュミエールランスはとっておきの武器だ。
シールドを武器として転用する以上は、確実に仕留められるタイミングでしか使えない。
今回も、あれを避けられたらウイルスを送り込まれて負けていた。
もっとも……避けられないタイミングで使った以上、そんなことは有り得ないのだが。
「後はイワンだな。バルサムの時のように、リュミエールランスを使えば簡単に……」
呟きながらレーダーを見て、オレは愕然とした。
……レーダーが映っていない。
「まさか、あの一瞬でウイルスを……!?」
慌ててOSを確認する。
ウイルスに侵されたのはレーダー、バーニア操作のOSと、そして戦闘履歴。前二つが
駄目になっていてはイワンを追う事などできない。そして、戦闘履歴を抹消していれば、
データが無い以上ここで行った戦闘は無かったことになる。結果イワンの背後にいる組織
の存在を立証することもできない。
……つまり、あのガキは攻撃を避けきれないこと、ウイルスを防いでいたアルミューレ・
リュミエールの防御が解けたこと、そしてウイルスを送ってもリュミエールランスを防ぐ
のには間に合わないことを知るや、素早く戦闘の後のことを考えイワンを探せないよう、
そしてイワンが『英雄』でいられるよう置き土産を残したというわけだ。
「ザコの分際でやってくれる……。
だが、火器を封じずに他の部分を封じた以上、死ぬ覚悟もできているんだろうな!」
オレのガンダムにプリスティスを向けさせる。奴の脇腹には盛大な穴が開いているが、
コックピットからは大きくずれている。まだ生きている可能性は高い。トドメを刺そうと
コンソールへ指を滑らした瞬間……オレの手の上にもう一つ手が重なった。
『…………カナードさん』
「……なぜ止める、プレア」
後ろに立つプレア――それが幽霊なのか自分の幻覚なのかは知らない――に声をかける。
プレアはゆっくりを口を開いた。
『彼女の『想い』は、本物なんだ――偽の情報になんか踊らされたりなんかしてない。
僕は彼女の言ったことに心を動かされた。だから、見逃してあげてほしいんだ』
そういうプレアの表情は、生前のそれと何も変わってはいない。おぼろげなだけで、
どこまでも穏やかな表情だ。
そんなプレアの表情に、思わずオレも穏やかな笑みを浮かべてしまう。
「いいだろう。オレも熱くなりすぎていたしな」
『ありがとう……』
- 468 :8/9:2006/07/01(土) 21:28:22 ID:???
- そう言ってプレアは消えていく。
オレもガンダムにビームソードを回収させ、その場を離れることにした。
「大した奴だ……プレアを動かすまでの『想い』か。
プレアが言った以上は、オレもお前を見逃さなくてはな。
今度会うときは味方であってほしいものだ、死なれるとプレアが悲しむ」
- 469 :9/9:2006/07/01(土) 21:29:08 ID:???
- 「テスタメント、回収した?
え? ついでだから右腕はトリケロス改が付いたものに取り替える?
そうね、やってもいいけど……それよりもまずウイルスよ。
光波シールドでも防げないように改良して」
あれから数日後。マティスは自室で事後処理に関する指令を出していた。
テスタメントの修理、情報の処理、目撃者の消去……やることは山ほどある。そのまま
彼女は続けた。
「それより、イワンの背後の組織に関する情報はどれくらい有名なのか調査した?
……ええ、そう。分かったわ。近々どうするか伝えるから」
それを言うと同時に回線が落ちる。
彼女は笑顔でため息を吐いてイワンの写真を手に取った。
「予想以上に役に立ってくれたわね、イワン。
そろそろ手を切らせてもらうわよ……あなたは活躍しすぎたの。
それに私にはじゅうぶん手駒が揃った以上、扱いにくい『道化』はいらないのよ。
あなたと同じ「サーカス」出身の、あなた以上に利用しやすい二人がいるものね……」
言いながらマティスはイワンの写真を捨て、二つの写真を取り出した。
その写真にはそれぞれ写っている人間の名前が書いてある。片方にはマユ・アスカ、
そしてもう片方にはイルド・ジョラールと……
- 470 :86:2006/07/01(土) 21:32:41 ID:???
- 投下終了。
とりあえず「試合には負けたが勝負には勝った」な感じで。
いくらなんでもカナードに勝つのは無理っぽいですし。
オマケ話として、初期段階ではカナードが「無駄無駄無駄ァ!」と叫ぶとか色々ネタを仕込んだりしてしました。
あまりにも雰囲気にそぐわないので変えましたけど。