- 5 :隻腕27話(01/17):2006/03/22(水) 22:11:02
ID:???
- その朝は、少女にとってごく普通の朝になるはずだった。
「んあっ……ん〜、今日もいい天気!」
窓から差し込む朝の最初の光を受け、少女はベッドの上に起き上がる。
このところお天気続きで、海の見えるこの家には存分に太陽の光が入ってくる。
気持ちのよい目覚めに、少女は大きく伸びをした。
オーブの外では戦争続きで、オーブから派遣された艦隊も全滅したと聞いている。
クラスメートの中には、軍人のお父さんが帰ってこない子もいて、素直に可哀想だとは思った。
街に出ればオーブに駐留する連合兵の姿を目にすることも多くなってきている。
けれど少女にとって、未だ戦争は「外の世界のこと」で。
前の戦争の時には、少女の一家はオーブの中でも戦場にならずに済んだ島に居たので、これもまた実感が薄い。
いや、しばらく前に1度だけ、彼女の身近に「戦争」が迫ってきたことがあった。
ユニウスセブン落下事件の直前、オーブの宇宙港がテロリストのアッシュに襲われた時のこと。
家族で宇宙旅行に行こうとしていた少女の一家は、マスドライバーの上でシャトルの発進を待っていた。
しかし、いつまで待ってもシャトルは発進せず。
不審に思って外を見れば、両腕を無くしたアッシュが、シャトルごとマスドライバーを潰そうと降って来て――!
「……そういえば、『フリーダム』も倒されちゃったんだよね。あのお姉ちゃんも……」
嫌なことを思い出してしまい、少女の顔が曇る。
普段あまりニュースに関心のない彼女が、食い入るように見入ってしまったその速報。
モビルスーツの名前などほとんど知らない彼女だが、自由を意味するその名だけは忘れようにも忘れられない。
せっかくの気持ちのよい朝、思わず憂鬱な溜息が出る。
枕元にあったぬいぐるみ、SD化されたフェルト製の「フリーダム」を、ギュッと握る。それは少女の大切な宝物。
と――ふと少女は、窓の外、海の上に何やら光るものがあることに気付いた。
朝日を浴びて、何だか金色に光っている。
よくよく見てみれば、海の上に浮かんでいる影はそれだけではない。他にもいくつもの影が飛び回っている。
飛び回りながら、光る線が飛び交っている。時折、丸い爆発の炎も空に咲いたりして。
「え……!? あれ、何……!?」
「――大変よ! 起きて、起きて!」
少女が状況を理解するよりも先に、少女の部屋の戸が激しくノックされる。慌てふためく母親の声。
少女の返事を待つより早く、扉は向こうから開けられる。
「戦争が来るわよ! 避難しなきゃ! すぐに着替えなさい!」
「……戦争?」
マユ ――隻腕の少女――
第二十七話 『 集結する光 』
- 6 :隻腕27話(02/17):2006/03/22(水) 22:12:09
ID:???
- たった1機のMSの出現が、戦いの行方を大きく変えようとしていた。
単機で飛び出した、黄金色に輝く目立つMS。当然ザフト側の攻撃はソレに集中するが……
弾速の遅いミサイルは、頭部の機関砲に撃ち落される。ビームは、弾き返される。
そして黄金のMSは、その手にしたビームライフルを連続して撃ち放つ。
威力はそのままに、速射性に優れたオーブ製新型ライフル『ヒャクライ』。
続けざまに放たれた雷のような閃光が、次々にザフトのMSの腕を、頭を貫き、無力化していく。
不思議と金色のMSの攻撃は、コクピットは撃っていない。
むしろ意識して外しているのか、一発くらい当たっても良さそうなものがまるで当たっていない。
センサーの集中する頭部か、武器を保持する腕か。バランスを取るのに重要な足か、飛行に不可欠な翼か。
その意図までは分からぬものの――撃たれた者は、戦闘の継続が困難な状況に陥って。
戦闘の継続を諦めて、母艦へと帰還する。あるいはコントロールを失い、フラフラと海面に落ちていく。
友軍機を見捨てるわけにも行かず、落ち行くバビを無傷のグフが拾い上げ、一緒に後方に戻る。
それが狙いとも思えぬが、しかしこの戦法、ただ撃ち殺すよりも多くの戦力を削っているのかもしれなかった。
たった1機のMSの出現は――しかしこのままでは、結局同じ結末へと向かうことになるのかもしれなかった。
確かに、金色のMSのいるその場所は、通れない。たった1機のMSとは思えぬ障壁となっている。
けれど、戦場は広い。ザフト軍は多い。
連合軍は相変わらず動こうとはせず、オーブ軍もやはり動けない。
オーブ本土からは、遠方から射程ギリギリの砲撃が放たれていたが、さほどの脅威にもなっていない。
アカツキが1部隊に足止めされている隙に、複数の部隊が大きく迂回してオーブに向かおうとする。
「くッ……! 彼らを行かせるわけにはッ……!」
キラは焦りの表情も露わに、奥歯を噛み締める。
たった1機で大軍を止めようという暴挙。最初っから無理のある話。にも関わらず、彼はなお諦めておらず。
アカツキの右遠方を突破しようとする部隊に、側面から牽制をかけようとして――
「――ッ!?」
突如、キラは殺気を感じて足を止める。咄嗟に構えた盾に、紙一重のタイミングで弾かれる光の刃。
フラッシュエッジ2、ビームブーメラン。弾かれてなおそれは回転を続け、自動制御で投擲した者の手元に戻る。
「ふぅん、イイ反応だ。機体性能頼りってワケじゃなさそうだなァ。少しは楽しめるか?」
――そこに居たのは、赤い翼を広げたMS。ふてぶてしい笑みを浮かべるシン。デスティニー。
さらに3つの影が宙を走り、アカツキをグルリと取り囲んで。
「多対1の戦いに慣れたパイロットのようだな。だが、我々4人なら」
「コイツは……この動きは、まさか!?」
「さすがオーブは悪趣味だな! この成金ヤロウ、叩き潰してやる!」
それはもちろん、レイのレジェンド。アスランの∞ジャスティス。コニールのガイアR。
ミネルバの精鋭4機が、アカツキ1機に狙いを定め――!
- 7 :隻腕27話(03/17):2006/03/22(水) 22:13:09
ID:???
「――ソガ一佐! 各部隊が前進の許可を求めています!」
「市民の避難、未だ完了していません! 一部で混乱が起きている模様!
避難経路のいくつかが、展開した軍に遮られています!」
「クッ……!」
国防本部。その悲鳴飛び交う司令室の中で、ソガ一佐は苛立ちを噛み締めていた。
急に現れた「アカツキ」とかいう黄金のMS。カガリの「弟」との噂のある「キラ・ヤマト」の出現。
ソガ一佐程度のポジションでは、キラのことはあくまで噂であり、詳しい事情までは把握していない。
どうやらカガリの弟らしい、とか、フリーダムのパイロットだった、とか何とか。
それ以上のことは知らないし、またソガの職務上、知る必要もない事ではあったのだが。
「ユウナ殿のご命令……だと?!」
そんな命令、聞いてはいない。全ての情報が集まるはずのこの国防本部に、情報は届いていない。
アカツキについてもキラについても、軍に参加し前線に出てくるなど、カケラも聞いていない。
聞いてはないが――「アカツキ」というMSの名前だけなら、ソガは既に知っていた。
確かムラサメと新型量産機の座を争った……というより、採用試験に間に合わなかった幻のMSの開発名。
出てきた場所もモルゲンレーテの施設だから、おそらくテスト機を引っ張り出したのだろう、とは思うが。
「――どういう事ですかな、コレは」
「い、いや、どういう事と言われましても、我々にも……」
連合軍士官の上げたキツい声に、ソガは思わず口篭る。
国防本部に、主の如き態度で居座る連合の大佐――オーブに駐留する連合軍艦隊の、副官的存在である。
階級的にはソガと同等の地位ではあるのだが、事実上の発言力の差は言うまでもない。
「他ならぬ国家代表代理の名で、戦闘に関しては我ら連合軍に従うよう命令が出ていたはずですが……
こんなことでは、貴国の信頼に関わりますな?」
「…………ッ!」
「見たところ、貴方がたもあの金色のMSを知らないようだ。
ということは、何者かが代表代理の名を騙っているのでしょうな。
その旨、周知徹底し、現場の混乱を抑えて頂かねば……」
どこか嫌味ったらしい大佐の言葉。俯くオーブ軍の士官たち。
命令さえ出てなければ、彼らは独自の判断で動けるのだ。連合軍士官さえ居なければ、自由に動けるのだ。
けれど、出された命令には逆らえない。逆らうわけにはいかない。少なくとも、ソガはそう考えていた
たとえ両手両足を縛られたとしても、その状況の範疇で努力する。それがソガの考える軍人像であった。
連合軍の連中に1つ2つ言い返すことはできるかもしれないが、彼らに逆らうわけには――
と、その時。急に扉が開き――
「――おいおい、何してんのさ。ちゃっちゃとMS出してちゃっちゃと防衛しちゃってよ。
それとも何かな、妙な命令がボクの名前で出ちゃってるのかな――?」
どこか余裕さえ感じさせる、楽しげな雰囲気さえ感じさせる口調。
シャワーを浴び、髭はすっかり剃られ、髪は整えられ、以前のシャキッとした身なりを取り戻した青年。
背後に兵士を引き連れた代表首長代理ユウナ・ロマ・セイランが、自信に満ちた笑みを浮かべて――
- 8 :隻腕27話(04/17):2006/03/22(水) 22:14:05
ID:???
青い地球を見下ろす形で、白い影が空を駆ける。
巨大なロケット状のパーツに下半身を埋めた格好の、Sフリーダム。
それは、MSを単体で大気圏外に脱出させるための、大型ブースターだった。
連合軍が試作したが、結局コストや使い勝手などの問題で採用が見合わされ、破棄されたもの。
ジャンク屋が解体処分する寸前だったのを、ロウが話を聞きつけ、サイが買い取りに行ったのだった。
非連合系MSであるSフリーダムのためにジョイント部分を少し改造したが、それ以外はほとんど元のまま。
ブースターの全長は、一般的なMSの全長を遥かに超える。
MSはその突端にあるコネクタに両足を突っ込む形で固定され、ブースターユニットを制御するのだ。
MS用の追加装備としては爆発的な推力を誇るが、積載重量はMS1機が限界。しかも1回こっきりの使い捨て。
これだけ大掛かりな装置を使い、たった1機のMSを援護もなしに宇宙に上げて、どうしようというのか。
こんな状況でもなければ、確かに使い用のない欠陥兵器と言えよう。
『コイツで一旦宇宙まで出ちまう。宇宙でブースターを切り離し、大気圏突入しながらオーブに直接降りる。
再突入の角度を定めるために、余計に地球を2周か3周はすることになるかな?
ま、速度が速度だから、数周余計に回ったとしても、大して時間はかからない。
面倒な連中がウジャウジャいる地上を行くより、よっぽど早いさ』
……とは、ロウの弁。
確かに遠回りだ。とんでもない遠回りだ。しかし、宇宙に出れば国境も戦線も空気抵抗もない。
誰にも邪魔されずに、オーブまで到達できる。
高緯度のスカンジナビアからオーブまで。一旦南半球の方に通り過ぎておいて、軌道を赤道近くに修正する。
修正しながら既に地球を2周して、マユの計算では、あと半周――
「大気圏再突入まで、あとちょっと……。そろそろ、減速とブースター切り離し準備を……」
オーブに降りるために、逆制動をかけるマユ。進行方向とは反対側に向かって、強いGがかかる。
パイロットスーツを着ずに飛び出してきた彼女の顔が、少し歪む。剥き出しの義手と義足が、少しだけ軋む。
それでもマユは、歯を喰いしばって前だけを見つめて――
「……?? あれは……?!」
そして、彼女は見た。遥か前方、減速したことで、ちょうど相対速度が同調することになった軌道上の存在。
マユと同様、今まさに地上に降りる準備を進める、無数の影。
それはあまりにもタチの悪い偶然。オーブ攻撃のために、地上へ降下しようとしているザフト軍の部隊だった。
数隻の戦艦がその腹の下に降下用ポッドをブラ下げている。ザフトの在庫を一掃する勢いで持ち出してきた物だ。
そして艦艇からはMSが次々と飛び出して、ちょうど今、そのポッドに乗り込もうとしている状況で――
マユは、下唇を噛んだ。この降下部隊、見過ごすわけにはいかない。彼らをオーブに行かせるわけにはいかない。
これだけの戦力が無防備な頭上から降ってきたら、オーブがどうなってしまうのか。考えただけでも恐ろしい。
「今彼らを止められるのは、あたしだけ……行くしかないッ……!」
彼女は大気圏再突入の作業を取りやめ、ザフト降下部隊と位置と速度を同調させる。
そしてそのままたった1機、恐るべき数の敵の中に、飛び込んでいく――!
- 9 :隻腕27話(05/17):2006/03/22(水) 22:15:12
ID:???
- マユの足元でも、オーブへの道行きを急ぐ者たちがあった。
青い空、青いインド洋。輸送機が3機編隊を組み、赤道に沿う形で東に向かって駆ける。
それぞれMSを1機載せられる積載能力。輸送機としてはズバ抜けた速度。用意した「足」も凄いのだが……
「な……なんで『まっすぐ』行けるんだ!? どうしてこんな、スムーズに……!」
「それが『サーペントテール』の力です」
先頭を行く輸送機の、かなり広いコクピットブロック。浅黒い肌の女性・ロレッタが操縦桿を握る1機。
唖然とするアマギ一尉たちに、サーペントテールの少女・風花は小さな胸を張る。
アマギたちがあの街から動けなかったのは、どの道を選んでも進路上に連合やザフトが展開していたからだ。
どちらと遭遇しても面倒な立場。なんとか海上まで出られたとしても、パトロールなどと出くわす危険があった。
それなのにこの3機の輸送機の編隊は、最短の距離を最速で進みながら、何者にも遮られることなく――!
「リードの人脈と交渉で、開けられるところは開けてあります。
ルキーニから買った情報で、この海域にいる双方の海上部隊の動きも把握しています」
「やれやれ、とんでもない力だな。正規軍も顔負けだ」
「今回の契約では何度戦っても報酬は同じですから。持てる力を最大限活かして、効率的にやってるだけです。
以前劾が負けた時にも、同じような搬送をしましたしね。2度目ともなれば手際も良くなります」
カガリの呆れ混じりの賞賛に、風花は澄ました顔で答える。
そう、サーペントテールが「最強の傭兵」と謳われるのは、その直接の戦闘力のためだけではない。
この強力なサポートスタッフが「勝てる戦場」をお膳立てすることで、その最強神話を生み出しているのだ。
「とはいえ……我々の力でも、進路を確保できないエリアがありました」
「と、言うと?」
「見えてきました。もうすぐです」
風花の顔が引き締まる。見えてきたのは海峡の影。左右に陸地が広がり、狭い海路が正面に開いている。
同時に、輸送機のコクピットに通信が飛び込んでくる。厳しい口調の最終通告。
『こちらザフト・カーペンタリア基地。
接近する民間航空機に告ぐ。この空域は許可の無い立ち入りが禁止されている。
所属を名乗り、こちらの誘導に従うように。従わぬ場合、撃墜もありうる。警告は1度きりだ。
繰り返す、接近する民間航空機に告ぐ……』
「だからって、従ってあげるわけにも、撃墜されてあげるわけにも行かないんですけどね」
ブチッ。風花の小さな手が通信機に伸び、ザフトの通信を途中で断ち切ってしまう。
そう――ここはカーペンタリア湾のすぐ北側。オーストラリア亜大陸とニューギニア島の間のトレス海峡付近。
インド洋からオーブに到達するには、確かに最短距離になる進路。
けれど同時に、ザフト最大の拠点、カーペンタリアの庭先で――!
「でも大丈夫。サーペントテールは、最強ですから。……そうでしょ、劾、イライジャ?」
『簡単に言ってくれるなよォ。ま、やれるだけやるけどさ』
『我々が進路を切り開き、そのまま足止めをする。ロレッタたちは構わず駆け抜ければいい』
随伴していた2機の航空機からの通信。優男とサングラスの男が、それぞれ風花の言葉に力強く頷く。
やがて2機の輸送機からMSが飛び出す。改造された専用のザクと、ブルーフレームセカンドL。
彼らはカガリたちの輸送機の進路上、雲霞の如く湧き出してきたMSの群に、臆することなく飛び込んで――!
- 11 :隻腕27話(06/17):2006/03/22(水) 22:16:07
ID:???
オーブ本土に迫るザフト軍を横目に見ながら。沖合いで、4対1の激しい戦闘が繰り広げられていた。
黄金のMSに突っ込む、∞ジャスティス。リフターの上に片膝ついて乗った格好。
その右手から放たれたビームライフルの射撃は、アカツキのヤタノカガミによって正確に跳ね返されるが……
反射さえも読んでいたアスランは、左手のビームシールドで受け止める。
受け止めつつ、動きの止まったアカツキに∞ジャスティスは突進して……
リフターのビームウィングが、アカツキを両断しようと迫る。仰け反るようにして紙一重でかわすアカツキ。
「この戦術は……機体だけじゃない、もしかしてッ!?」
キラは相手の正体に思い至り、驚きの声を上げる。がしかし、それ以上考えるヒマも与えられず。
∞ジャスティスは勢いのままに通り過ぎてしまったが、息つく間もなく赤い四足獣・ガイアRが襲い掛かる。
体勢の崩れたアカツキに、別の角度からビームブレードを広げて突進する。
だがアカツキは姿勢を立て直すよりも先に、素早くその右手だけを伸ばし……
なんと、ガイアRの鼻先を押さえてしまう。
そのまま押さえた手を支点にクルリと回転。体操の鞍馬のような動きで背後を取り、鋭い蹴りを放つ。
ガイアRは頭部のバルカンを放つ間もなく衝撃を受け、海面に叩き落される。海面に上がる、大きな水しぶき。
しかしアカツキのキラには、赤いガイアのダメージを確認する余裕もない。
黄金の機体の背後を取っていたレジェンドが、これまた瞬時に次の攻撃を仕掛ける。
円盤から伸びる6本の可動式の突起、それが全てアカツキを狙い、ビームのシャワーを浴びせ掛ける。
本数を数えるのもバカらしくなるような、高密度のビームの束。
キラの指がコンソールを走るが、しかし本数が多い。全てを反射させる余裕はない。別の設定にして受け流す。
ビームのシャワーはアカツキの周囲を「避ける」ように曲がり、斜めに海面に突き刺さる。
そして激しい水煙が舞い散る中、動きが止まったアカツキにデスティニーが肉薄する。
ビームサーベルの二刀流。両肩に装備されていたフラッシュエッジ2の、第二形態。
素早くアカツキも双刀型ビームソードを2つに分離し、こちらも二刀流で迎え撃つ。
唐竹、逆袈裟、突き、袈裟切り、逆胴――常人には視認することすら困難な速度で、双方の剣が駆け巡る。
その全てが、互いに止められる。デスティニーの左腕の小型シールド、アカツキの左手の盾。双方互角。
否、デスティニーには右手の甲のビームシールドもある分、アカツキよりも防御に余裕があるようで。
深刻なダメージこそないが、アカツキの側は何発か掠められ、その黄金の装甲に何筋かのコゲ跡が残る。
鬼神の如きデスティニー、その迫力に、アカツキは少しずつ陸地の方に押されていく。
「き……キミは一体ッ!?」
「ハーッハッハァ! なかなかヤルなぁ、お前ッ!!」
激しい剣戟の中、キラは驚き、シンは赤い目を見開いて笑う。
笑いながら……デスティニーの右手のサーベルが、すっぽ抜けるように遠くに飛んでいく。
一瞬、デスティニー側の操作ミスかと思ったキラだったが、しかし次の瞬間にはその意図に気付く。
いつの間にかブーメラン形態となって、大きく弧を描いてアカツキの背後から襲い来る光の刃。
咄嗟にキラは、逆手に持ち換えた右手のビームソードで叩き落とすが……
次の瞬間、背筋に悪寒が走る。いつの間に抜いていたのか、頭上に光る巨大な刃。
ブーメラン迎撃で隙の出来たアカツキに対し、空いた右手に巨大刀アロンダイトを握り締め、上段から。
この距離、この姿勢では――避けきれない。防ぎきれない。
連携もチームワークも何もなく、力任せに4連続で襲い掛かっただけのミネルバチームだったが。
ついにその刃が、アカツキの黄金の身体を捉える!
- 12 :隻腕27話(07/17):2006/03/22(水) 22:17:16
ID:???
- 空の上、軌道上でも、激しい戦いが繰り広げられていた。
ザフトの降下部隊のただ中に、単身飛び込んだマユのSフリーダム・ブースター。
それに対しザフトの側は……
「なんだ、アレは!?」
「熱紋照合、該当なし……光学映像分析、フリーダムの派生機と思われます。大型ブースター装備の模様!」
「ザフト側の識別信号なし。味方でないなら、敵だッ!」
いささか混乱しつつも、降下ポッドへのMSの乗り込みを一時中断し、この正体不明の存在を迎え撃つ。
ザクファントムが、グフイグナイテッドが、その手にした武器を乱入者に向け、容赦なく引き金を引く。
無数のビームが、巨大なブースターを備えた、速い、しかし見るからに動きの鈍い存在に襲い掛かる。
巨大な爆発が、巻き起こる。
だが、やったか、と彼らが思った、次の瞬間……爆発の中から、一筋のビームが飛び出して。
そのビームは彼らを掠め、彼らの後方、戦艦の下腹に吊り下げられた降下ポッドを何基もまとめて貫通し。
「なッ!?」
「降下ポッドが……! なんて射程と威力だッ!」
彼らが驚く間もなく、爆炎の中からMSが飛び出してくる。そう、撃たれたのは咄嗟に分離したブースターのみ。
現れたのは、フリーダムであって、フリーダムでないMS。
力強い印象の手足。金色に輝く関節。8枚の翼。
そして、その右手に握られている、ロングライフルは……
『はっきり言って、この『Sフリーダム』は、全般的に性能がダウンしちまっている。
失われたザフト系の高級パーツを、オーブ系、アストレイ系MSのパーツで補ってるからな。
前よりも整備や修理はラクになったはずだけど、数字上のスペックで言えば、確実に落ちてる。
ただ、3箇所だけ……以前はなかった新機軸の武装を加えてあるんだ』
『マリューがマユの所に持っていこうとしてたのが、この3つの武器でね。
高性能とはいえ2年前の旧式であるフリーダムを、今の技術で強化するモルゲンレーテの試作品。
間違っても連合には渡したくないモノだったから、マリューもどう接触するか苦心してたらしいな』
ロウとバルドフェルドの説明が、マユの脳裏に蘇る。
3種類の新装備。1つはその8枚の翼。1つは前腕の装甲板。そして1つがこの、連結ライフル。
Sフリーダムは、降下部隊との距離を詰めながら、MSの身長ほどもあるロングライフルを連続して放つ。
長い射程。高い貫通力。精密な照準。ザフト側の作戦の要・降下ポッドが次々と破壊されていく。
『前の戦争でバスターを手に入れたモルゲンレーテが、連結砲の技術を流用して試作した新型ビームライフルさ。
連結すれば、長射程・高威力のロングライフル。分離すれば、速射と取り回しに優れた2挺のライフルになる。
ムラサメでの採用を狙って設計されたんだが……なにぶん、2挺拳銃を扱えるパイロットが居なくてなァ。
倉庫の隅でホコリ被ってたのをマリューが見つけて、フリーダム用に再調整したんだ』
降下部隊との距離が近づく。降下を妨げられたMS部隊からの攻撃が、密度を増す。
マユはライフルを分離させて両手に持ち替えると、そのまま両腕を前に掲げる。
ザクが放ったビーム突撃銃の閃光が、Sフリーダムを捉えるかと思われた、次の瞬間……
「な……ビームシールドだと!?」
「あれは、ソリドゥス・フルゴール? それとも陽電子リフレクター?」
- 13 :隻腕27話(08/17):2006/03/22(水) 22:18:07
ID:???
- 前腕から広がる光の壁がSフリーダムを守る光景に、ザフトのパイロットたちから驚きの声が上がる。
そう、それはビームの盾。連合とザフト、それぞれ別の進化を遂げた、現時点で最先端の防御兵装――
『最先端の武器だから、当然モルゲンレーテも研究していたわけでね。
大体、新しい技術が生まれる時ってのは、同じ時期にアチコチで同じような研究をしてるもんだ。
コイツはその『オーブ製ビームシールド』の試作第1号。
馬鹿みたいにエネルギー喰うから、今はフリーダム以外には使えないっていう代物だ。
……もっともその分、防御力は折り紙付きだがな』
バルドフェルドの言葉の通り、左腕に展開されたビームシールドは、降下部隊の攻撃を全て受け止めて。
2挺ライフルが、腹部ビーム砲が、両腰のレールガンが、逆にMS部隊に向けて乱射される。
腕を、頭を、足を吹き飛ばされ、MS部隊は次々に戦闘力を失っていく。
『ちなみに……性能低下が一番良く分かっちまうのが、この腰のレールガンさ。
ゲイツRにも採用が検討されていた試作タイプが手に入ったんで、使ってみたんだけどよ。
以前のフリーダムの3つ折り式に比べると、レールが短い分威力は低い。射程も短い。口径も小さい。
……ま、速射性と装弾数、整備性は良くなってるから、そうそう悲観したモンでもねェんだがな』
手数の多さでザフト側に立ち向かうSフリーダム。しかしそれでも、敵も素人ではない。
2機のグフイグナイテッドが、攻撃をかわしてSフリーダムの側面を取る。それぞれの手元から伸びる鞭。
Sフリーダムの右足が、左腕が、それぞれ赤く輝く鞭に絡め取られる。自由を奪われるマユ。
この機を逃さず、トドメを刺そうと襲い掛かるザクたちだったが――
『そして――最も強力な新型武装が、この翼だ。
前の大戦でクサナギを含む3隻が最も苦戦した敵MSの武器を、オーブなりの解釈で再現したもの。
と言っても、元の兵器は使う者を極端に選ぶ、使い勝手の極めて悪い代物だったんだが……
研究の結果、その部分をある程度プログラム的に補うことが可能になった。
最近になって『ある人物』が開発に参加したことで、一気に完成が早まってな』
片手片足を拘束されたSフリーダム、その8枚の翼が、弾ける。
光の尾を引いて射出された翼の一部。それぞれが独立した生き物のように宙を駆け、突端をザクやグフに向ける。
8枚の翼はそれぞれにビームを撃ち出し、ザフトのMSたちの手足を貫いてゆく。
Sフリーダムを拘束していた2機のグフも、それぞれに腕を撃ち抜かれ、Sフリーダムは自由を取り戻す。
かつてドラグーンに要求された、高度な空間認識能力。常人には不可能だった情報処理。
それを制御プログラムの方がある程度代行することで、より多くの者に使えるように仕立てたもの。
言ってみれば、従来型のドラグーンと自律行動ロボットとの中間のような存在だ。
従来型と比べるとその行動パターンはいささか自由度を失い、パターン化していたが……
しかし、エース級の敵を相手にするのでもなければ、これで十分。
それぞれのドラグーンが独立した生き物のように動き回り、グフやザクに襲い掛かる。。
……それでも、彼我の数の差は埋めがたいものだった。
Sフリーダムの新武装も、その最初の驚きが去ればやがて対応されてしまう。
前後左右から数で迫るザクとグフの群れ。密度を増す攻撃。次第に捌ききれなくなってきて。
はッと気付いたマユが振り返った時には、もう遅い。
ついにザクの1機が、Sフリーダムの無防備な背後を取り、ビームトマホークを振り上げて……!
- 14 :隻腕27話(09/17):2006/03/22(水) 22:19:02
ID:???
オーブ軍が、前進する。
遅まきながらも発せられた命令に従い、連合軍を置き去りにする格好で、前進して迎撃を始める。
動き出すのが遅かったせいもあって一部は陸地に到達されていたが、しかし多くは海上で。
シュライク装備型のM1が、ムラサメが、グフやバビたちと激しい空中戦を繰り広げる。
海中から迫る水陸両用機に、一部のムラサメがぶら下げていた大型対潜ミサイルが襲い掛かる。
我慢していたモノを解き放つようなその勢い。ザフトのMSたちは、圧倒される。
一方、連合軍の中にも、そのオーブ軍を支援するような形で動き出す者たちがいた。
ビルの陰から出て、海岸線から砲撃を開始するウィンダム部隊。山を降り、海上に飛び出すユークリッド。
「貴様ら! 命令に反するつもりか?!」
「オーブ軍が出ちまったからには、仕方ないでしょう?! 連携しないと」
「それに、このままここで戦って街を焼くのは、気分が良くないですしねぇ」
「貴様らッ……! こんなコーディと一緒に暮らしてる連中など、どうでも……」
勝手に動き、オーブ軍と共に戦いだした部下たちに、連合軍の隊長が怒鳴る。
先ほどムラサメ隊を馬鹿にし、嘲りの声を上げていた男だ。しかし、部下たちは……
「ソレですよ。いや、隊長がブルコスだろうが何を信じてようが構わんのですがね。
ソレで目が曇っちまうようなら、コッチはタマランですよ。
そもそもの作戦目的はザフトの撃退……連携取れなきゃ、勝てるモンも勝てんでしょうが」
「この土地はオーブの連中のモノですからね。普通に考えりゃ、連中に従って戦うのが一番効果的ですわ」
そう、連合軍の中でも、ガチガチのブルーコスモスシンパというのは、決して多くない。
ましてや、コーディネーターを認めている、というだけで、オーブのナチュラルまで憎むような奴というのは。
ただ多くはないが、組織の上層部に食い込んでおり、下に命令を下せる立場に居る。
居るのだが……しかしこのように、現場の兵は必ずしもそれを良しとしてはいなかったのだ。
彼らは軍人。真の意味での軍人。その本分は、力なき市民を守ること。
「後で軍法会議でも何でもして下さいや。営倉入りくらいは覚悟してまさァ。
ま、それもこれも、この戦いの後に生き残っていれば、の話ですがね。
隊長の偏見のままに依怙地張ってちゃ、生き残れるモンも生き残れませんわ」
「……ッ!!」
すっかり部下の信を失った格好の隊長機1機をその場に残し、ウィンダム隊は前進する。
そしてこんなやり取りが、この場のウィンダム隊だけでなく、連合軍のあちこちで見られて――
- 15 :隻腕27話(10/17):2006/03/22(水) 22:20:13
ID:???
- 「フゥ。なんとか間に合ったみたいだねェ。
いやさ、現状把握と戦力確保に時間喰っちまってさ。父に気付かれないよう準備を進める必要があったから」
国防本部、動き出した戦場を俯瞰しながら溜息をついたのは、ユウナ・ロマ・セイラン。
彼の背後には武装したオーブ兵。率いるのはレドニル・キサカ一佐。
ちなみにキサカは軍服ではなく、タンクトップにバンダナを巻き、小銃や弾帯を肩から掛けたゲリラ兵スタイルだ。
かつてクサナギに乗っていた宇宙軍所属の兵を、ユウナが臨時に緊急招集したのだ。
ウナトの方でも、もしユウナが何らかの動きを起こせば察知できるように手を打ってはいたのだが。
宇宙軍の兵士を、地上で歩兵として利用する――そのユウナの発想自体が、一種の不意打ちだった。
「それで――父は今、どこに居るのかな?」
「防衛は連合の方々に任せる、と言い残し、シェルターへと入られた模様ですが」
「ふぅん……セイラン本邸の地下には、居なかったしなぁ。コイツは見つけるのが面倒そうだ。
ジブリールの方はどうなってる?」
「我々はジブリール氏については把握していません。ただ恐らく、ウナト殿と行動を共にしているかと」
ユウナの問いにソガ一佐はスラスラと答える。
司令部の隅では、先ほどまで主人面をしていた連合の大佐が怒りに身を震わせていたが、眼中にない。
「――キサカ。ボクの方はもう大丈夫だろう。父も穴熊戦術を決め込んだらしい。
キミはこのままクサナギの兵を率い、父とジブリール氏を見つけ出してくれ」
「了解だ。ここは任せたぞ」
「片方だけでも捕らえたら連絡をくれよ。ボク自ら問いただしたいこともあるからね」
ユウナの言葉にキサカは頷き、兵を引き連れ国防本部を飛び出していく。
キサカの表情こそ岩のように変わらぬが、どこか生き生きとしている。根っからの前線指揮官なのだろう。
そして、その場に残されたユウナたちは……
「しかし……ユウナ殿が押し込められていたとは、我ら一同まるで知りませんでした。
カガリ様の不幸なニュースに、寝込まれたとは聞いてましたが……」
「まあね、それもあったのだがね。しかし絶望などしてられないよ。あんなニュースを聞いてしまえば」
「あんな……ニュース?」
ソガの嘆息に、ユウナは涼しい顔で微笑む。もったいぶってその事実を告げようとした、その時……
地の底から響くような声が、それを遮る。
「貴様ら……どこまでも我々を馬鹿にしくさりおって……!
このちっぽけな国がどうなっても構わぬとでも言うのか……!? 吹けば飛ぶようなこんな国がッ……!」
それはすっかり無視されていた連合軍の大佐。連合側の指揮官。
憤怒の表情は、それが単なる脅しでないことを告げていて。
物凄い形相でユウナたちを睨みつけるが、しかしユウナはどこ吹く風。
「ん〜、でもさぁ、どーせ近いうちにキミたちとの関係も終わりだろうしねェ」
「なッ!?」
「キミたち、最初の約束破ってオーブに軍を進めたろう?
ボクや父はともかく、あのどこまでも真っ直ぐなお姫様は、こーゆー裏切りを絶対に許せない人なんだなァ。
彼女の無事が分かっちゃった以上――オーブと連合の関係は、『ここまで』ってことなのさ」
- 16 :隻腕27話(11/17):2006/03/22(水) 22:21:08
ID:???
ついにアカツキの身体を捉えた、アロンダイト――
しかし、斬り飛ばされたのは、その左腕だけで。
ゼロ距離で、アカツキの両脇の下から顔を覗かせたオオワシパックの大砲が火を噴く。
かろうじて左手の盾で受けたデスティニー、しかしその一撃で小型の実体盾は吹き飛ばされる。
弾き飛ばされるようにして距離が離れ、仕切りなおす形で向かい合う。
デスティニー。レジェンド。∞ジャスティス。
コニールのガイアRは未だ海に落ちたきりだったが、それでも3対1。
アカツキの側は左腕を半ばから失い、それと共に盾を失い。
一方のミネルバ側は、デスティニーが盾とフラッシュエッジ2を失っただけ。残る2機は全くの無傷。
キラの不利は、未だ変わらない。しかも――
「やはりあのビームの反射は、ゲシュマイディッヒ・パンツァーの応用だったようだな……
ビームと発振機の距離が近い『ビームの刃』に対しては、力負けして無力化するのも同様だ。
そして本数が多くなれば捌ききれないことから、おそらく自動処理ではなく、手動処理……
反射だけでなく、受け流すこともできたのは予想外だったがな。
それでも、反射や受け流しの最中は、動きが止まるのは重要な攻略ポイントだ」
レジェンドを駆るレイが、冷静に分析する。無敵にも思えるアカツキを、冷徹な観察で丸裸にする。
彼らとて無闇に攻撃を仕掛けていたわけではない。仮説を検証するための攻撃の数々だったのだ。
ネタさえ割れてしまえば、さほどの脅威ではない。ましてや盾を失った今、打つ手は色々と考えられる。
一方、∞ジャスティスのアスランは別のことで頭が一杯で。奥歯を噛み締めると、通信機に手を伸ばす。
「……その黄金のMS……乗っているのはキラ・ヤマトだな?」
「……!! やはり、アスラン?! アスラン・ザラなのか!?」
互いに名を呼び合う2人。どちらも気付いてはいたが、信じたくなかった邂逅。
2年間の時間を経て、改めて銃を向け合う。
「何故だ!? 何故お前が今頃になって、俺たちの邪魔をする!?」
「アスランこそ、何故!! 何故オーブに銃を向けるんだ!?」
「……そうやってこちらの質問には答えないんだな、お前たちは。
いつもそうなんだ。答えを持たず、問題を先送りし、目の前の事態に場当たり的に挑むだけ……!」
「あ、アスラン……!?」
俯いて肩を震わせるアスラン。戦場の只中ということも忘れ、彼の意図が掴めず首を傾げるキラ。
だが次の瞬間、∞ジャスティスは凄まじい勢いでアカツキに襲い掛かる。
隙を狙っていたレジェンドやデスティニーが手を出すヒマもない。
右手にビームサーベル、左手の盾にビームブレードを出して、アカツキに斬りかかる。
「だが――俺は違う! もう答えを引き伸ばしたりしない!
議長が『答え』を出したんだ! 2年前の『宿題』の答えを、出したんだ!
カガリを泣かせることになっても、俺は立ち止まるわけには行かないんだッ!!」
「なっ……アスランッ!? それは違うッ!」
アスランの頑なな信念、それに疑問を投げかけんとするキラの叫びは、∞ジャスティスの鋭い蹴りに遮られる。
激闘が再開される。再び3対1。ただひたすらに、アカツキは防戦一方――
- 17 :隻腕27話(12/17):2006/03/22(水) 22:22:15
ID:???
青い地球を眼下に抱き。Sフリーダムの背後で、ザクウォーリアの1機がビームトマホークを振り上げる。
この距離この体勢では、かわしようがない――!
「やられるッ……!?」
思わず悲鳴を上げるマユ。だが、いくら待ってもその衝撃は襲ってこない。
見ればザクは、斧を振り上げた姿勢で固まっている――否、その腕を見えない「何か」に掴まれて……!
「――やれやれ、援護もないのに無茶をするものだな。だが、嫌いではないぞ。そういう勇敢な戦士は」
虚空から入る通信。何もなかったはずの空間から、滲み出るように出現する黒い影。
Sフリーダムの背後を取ったザクの、さらに背後を取っていたその影は――
「アストレイ・ゴールドフレーム<アマツ>……! ロンド・ミナ・サハク、オーブの影の軍神!?」
「ほぅ、良く知ってるな。義兄のユウナから聞いたか?
セイランの娘だな? そのフリーダムはロウ・ギュールの手による改修と見た。
我がプロト01の技術を転用した金色のフレーム……全く、いつの間に技術を盗まれていたのだろうな?」
ロンド・ミナ・サハクの唇の端が、どこか楽しげに吊り上げられる。
ギリギリとザクを締め上げていた巨大な牙、マガノイクタチが、とうとうザクの腕を食いちぎる。
片腕と引き換えに解放されたザクは、しかしピクリとも動けずに漂っていく。
バッテリー内のほぼ全エネルギーを吸い出されてしまったのだ。無力化兵器マガノイクタチの、特殊能力。
「な――ミラージュコロイド、だと!?」
「しかし、1機が2機になったところで!!」
突如現れた乱入者に、ザフト側のMS隊は一瞬驚いたものの。いきりたって、一斉に襲い掛かる。
がしかし、ミナの余裕は揺らぐことなく。
「話は後だ。援護しろ、セイランの娘」
「は、はいッ!」
「では――踊れ、ザフトの者どもよ! 我らの手の中で!」
突っ込んでくるグフとザクの群れに、逆に嬉々として飛び込んでいくミナ。
先ほど牙のように敵を捉えていた背部のパーツが、翼のように広がって……その中から、何かが射出される。
ワイヤー付きのスパイク。先端部をPS装甲に覆われた強固な銛、マガノシラホコ。
左右の翼から放たれて、変則的な軌道を描いて敵を襲う。次々に貫かれてゆくザクウォーリア。
攻撃のために動きが止まった隙を見逃さず、グフの1機が大胆にも正面から迫る。上段から振り下ろされる剣。
しかし、振り下ろされたビームソード・テンペストは、天に届かない。途中で止まってしまう。
僅かに下がって間合いを外した天が、その先端の実剣部分を片手で捕まえていたのだ。
指2本での真剣白刃取り。超人的な反射神経。グフ渾身の剣が、ピクリとも動かない。
お返しとばかりに天の左腕の巨大な鉤爪、ツムハノタチが振るわれて、一撃でグフをズタボロにしてしまう。
圧倒的な近接戦の強さを見せる天。ならばとばかりに、ザフトのMSたちは射撃で仕留めようと距離を開ける。
だが、そうやって下がった敵は、今度はSフリーダムが撃ち抜いていく。ドラグーンを含めた無数の火線。
近づけば天、距離を置けばSフリーダム。即席コンビとは思えぬ巧みな連携が彼らを圧倒する。
- 18 :隻腕27話(13/17):2006/03/22(水) 22:23:09
ID:???
- さらに、戦闘続く宙域に、新手が現れる。遠方から接近してくる戦艦、その数2隻。
長距離から放たれた、太いビーム。イズモ級戦艦1番艦、イズモが搭載する陽電子砲の一撃。
それが、なおも降下ポッドを温存していたザフトの戦艦を、掠める。
閃光に飲み込まれ次々と弾ける降下ポッド。戦艦自体は中破程度の損傷だが、降下ポッドは全滅で。
そしてなおも接近する2つの戦艦から、いくつかの機影が飛び出す。
イズモからは、M1Aアストレイ、制式レイダー、ソードカラミティの3機が。
連合系の戦艦オルテュギアからは、ガンダムタイプのMSが1機と、少し時代遅れなMA・メビウスが10機。
それぞれ出撃して、ザフト側のMSに襲い掛かる――
「我が忠実なる僕・ソキウスの3人と、このために雇った傭兵部隊X。
元々、ザフトの降下部隊は我々の手で食い止めるつもりだったのだよ。
しかしフリーダム無しでは多少討ち漏らしていただろうな。感謝するぞ、セイランの娘よ」
ミナは手近な敵を蹴散らしながら、感謝の言葉を口にする。彼女には珍しい素直な言葉。
それぞれに高い個人技を見せるソキウスの3機。ドレッドノートHを中心に高度な連携を見せる傭兵部隊X。
戦闘は集団戦へと突入する。戦況は一気にひっくり返る。
余裕ができたところで、ミナは天をSフリーダムに寄せて。マユを庇うような姿勢で微笑む。
「セイランの娘、こやつらを止めるために来たのではないのだろう?
ここは我らに任せよ。代わりに戦ってやる。急ぎオーブへ降りて……」
「お願いが、2つあります」
「……ほう? この私に、お願いとな?」
ミナの言葉を、マユは途中で遮った。
笑うような表情の、しかし眼だけは笑っていないミナの顔を、真正面から見据える。
「1つめ……その、『セイランの娘』というの、やめてもらえますか?
私は、マユ・アスカです。セイラン家の養女としてではなく、マユ・アスカとして戻ってきたんです」
「ふむ。名門の名を捨てるか。ま、好きにするがいい。それも自由だろう」
「2つめ……できれば、できるだけ殺さないようにして貰えますか? 私の代わりに戦う、と言うのなら」
1つめの願いは軽く聞き流したミナだったが、2つめの願いには表情が変わる。目が細められる。
魂の底から凍りつくような、厳しい眼つき。前にも増した眼光でマユを射抜かんとする。
「戦っておいて殺したくない、か。これは笑わせてくれる。
何故だ? 何故殺すな、と? 偽善ぶりたいだけの甘えならば聞かぬぞ?」
「いいえ――偽善とか、甘えとか、そういうつもりじゃないんです。
殺さなければそれでいい、とも思ってませんし、他の人に要求するのが正しいかどうかも分かりません。
ただ……」
ミナの視線に全く臆することなく、真っ向から見返して。マユはきっぱりと言い切る。
「ただ私は、『恐怖』をできる限り減らしたいだけなんです」
「……恐怖」
「恐れでもって敵を、人を縛る。それは簡単で効果的な方法でもあります。
けれどそのやり方は、同時に怒りを生みます。憎悪を、復讐心を生みます。
恐怖と怒りと憎悪に縛られたヒトは、暴走します。新たな憎悪の連鎖を生み出します」
- 19 :隻腕27話(14/17):2006/03/22(水) 22:24:23
ID:???
- 「…………」
「私も、一度それに囚われました。囚われて、同じように恐怖で他人を縛ろうとしました。
けれど、それに気付いた今だからこそ、ここで止めたいんです。せめて減らしたいんです。
命を助けることで、どの程度恐怖と憎悪を軽減できるかまでは、分かりませんが……」
「…………」
言葉を選びながら、それでも上手く語りきれない様子のマユ。
恐怖と、憎しみの連鎖――それは、簡単に答えの出る問題ではない。まだマユにも消化しきれていない。
消化しきれないながらも、当面の「手段」として見出した「できるだけ殺さない」という「方法」。
それは期せずして、かつてキラ・ヤマトが戦場に舞い戻る際に己に課したルールと、同じものだった。
不十分との自覚はある。甘いのかもしれぬとの自覚もある。だが、それでも――!
闇に生き、裏の仕事を重ね、汚い世界を沢山見てきたオーブの闇。サハク家の娘、ロンド・ミナ・サハク。
そんな彼女にとっては、バカバカしく聞こえるかもしれない、マユの綺麗事。
だがミナは、軽く笑った。鼻先で笑い飛ばしたのではなく――浮かんだのは、実に柔和な笑み。
「そうか、『恐怖』で人を支配するな、か。――我が愚弟にも聞かせておきたかったな、その言葉」
「??」
かつて、他ならぬゴールドフレーム天で戦場を駆けたミナの双子の弟、ロンド・ギナ・サハク。
連合もザフトも無差別に襲い、「この屍の山が我らオーブの強さを伝えるのだ」と笑っていた彼。
恐怖を利用し覇権を目指した彼は、しかしそれを良しとしない者たちの前に敗北し――
愛する弟の敗北と死がなければ、ミナもまた、今でも同じような過ちを繰り返していただろう。
――もちろんそんな過去は、マユの預かり知らぬことであったのだが。
「良かろう。我らもできるだけ殺さぬように務める……それでよいな、マユ?
では急げ。そろそろ降下を始めないと、また余計に地球を回ることになるぞ」
「はい! ありがとうございます、ロンドさん!」
元気よく返事をすると、Sフリーダムは眼下の地球に向けて身を翻す。
その背を庇うように位置を取るゴールドフレーム天。マユを追おうとする敵の前に立ち塞がる。
ミナの口元が、苦笑に歪む。
「しかし、厳しい条件をつけてくれたものだな、マユ・アスカ――
『恐怖』をなるべく与えるな、というなら、ミラージュコロイドも迂闊に使えんではないか。
まあ、いい。アマツの力は、隠身だけではない。正々堂々、存分に戦ってやる。
……ソキウス! それに傭兵! マユの言葉、しかと聞いていたな?!」
『理解しました。戦闘パターンを修正します』
『冗談じゃない、と言いたいところだが……どうせ命令するんだな?』
「その通りだ、カナード・パルス。出来うる限り殺すなよ。マユの頼みだ」
『依頼主のご命令ならば仕方ありません。作戦途中での条件変更に伴う追加料金、しかと頂きますよ?』
ミナの言葉に、ソキウスが、カナードが、そして傭兵部隊Xのサポートスタッフ・メリオルが、返事をする。
ミナは頼りになる部下たちと共に、それでもなお数に勝るザフト部隊と真正面から向き合って。
地上に向かう流星と化したSフリーダムを横目に、ミナはニヤリと笑う。
「では――改めて踊れ! 我が手の中で!
怒りに捕らわれることなく、恐怖に捕らわれることもなく――ただ無力を噛み締め、この場を諦めろ!」
- 20 :隻腕27話(15/17):2006/03/22(水) 22:25:35
ID:???
海岸線を中心に、激しい戦闘の続くオーブ攻防戦。その激戦区から、少し離れた海岸に、巨大な影が上陸する。
濡れそぼった赤いボディ。砂浜を踏みしめる4本の足。
アカツキに海中に叩き込まれた、ガイアRである。
「まったく、えらい目にあった……。コクピットの中まで塩水だらけだ」
コニールはぼやく。パイロットスーツのお陰で直接肌は濡れていないが、気分の良いものではない。
海中から上に出るその瞬間こそ、最も敵に狙われ易い無防備な瞬間。
だからコニールは、少し戦場から離れたところまで離れてから、上陸したわけだが。
「しかし、どーしたもんだか……ん?」
シンたちの所に戻り一緒に戦うか、それともこのまま手近な敵に襲い掛かるか。少し悩んだ彼女だが。
ふと、通信機から飛び込んでくる音声に気付く。
それは先ほどまで一緒に戦っていた、∞ジャスティスが誰かと交わす怒鳴りあい。
見上げれば、ここからも見える遠くの海上で、両者が激しくぶつかり合っている。
『……ガガッ……んでお前は分からないんだ!』
『だからって! ……ガガッ……が居るんだ! ごく市民に巻き添えを出して、何が正義だ!』
「こいつは……こいつらはッ!」
その内容に――その、ちょっと聞いただけでは何でもない会話に、コニールの怒りが沸騰する。
アスランと怒鳴りあっているのは、おそらくあの成金趣味のMSのパイロットだろう。オーブの者だろう。
文脈は良く分からぬが、市民の巻き添えが出る、とアスランを、ザフト側を非難している……
しかしそれこそ彼女には許しがたい言い草。端的に言ってしまえば、
「お前らが言うな……! お前らだけはソレを言うなッ……!
ガルナハンを蹂躙した貴様らに、ソレを言う資格はないッ……!」
それはある意味、言いがかりに近い憎悪だったのかもしれない。難癖に近い憎しみだったのかもしれない。
ガルナハンの一件でも、オーブ軍はあくまで暴走する連合兵を止める立場だったのだ。
けれど、コニールの中では、あれは全てオーブ軍と……が悪いことで。
「なら、アンタらも無力を噛み締めろッ! そんなに守りたいというソレを、アンタらの目の前で……!」
『そうだ、コニール。それでいい。今の話、聞こえていたな?』
狂気の混じった表情でブツブツと呟くコニールに向けて、入る通信。
コニールの所属する隊員2名のMS部隊・アスカ隊の隊長。シン・アスカだった。
∞ジャスティスとアカツキの激しすぎる戦闘に、デスティニーも手出し出来ずに見守っていたのだが。
彼もまた壊れた笑顔のまま、恐るべき指令をコニールに出す。
『どっか適当に探して、オーブの一般市民を見つけ出せ。1人や2人、きっとその辺に居るだろう。
見つ出して、奴に見える所で、奴に分かるように踏み潰せ。
金色からの攻撃には気をつけろよ。そっちに気を取られた隙を見て、俺が背中から斬って捨てる』
「フフフ……! なるほどね。了解だ、シン!」
そして赤いガイアは、そのモノアイをギラリと光らせて……!
- 21 :隻腕27話(16/17):2006/03/22(水) 22:26:32
ID:???
オーブ首長国連合は、ザフト軍の攻撃を受けていた。
沖合いに居並ぶザフトの艦艇。襲いくるグフとバビ。迎撃するウィンダムとムラサメ。
閃光と爆発が飛び交い、あちこちに火の手が上がる。
オーブは、揺れていた。
そんな激しい混乱の中、山の中を駆ける家族の姿があった。
夫婦と少女。港に向かって駆けてゆく。
彼らが本来最初に向かうべきシェルターへの道は、連合軍の部隊が遮っていて。
父親は先導するように駆け、母親は幼い少女の手を引いて走る。
と、少女は木の根に足を取られかけ、たたらを踏む。
転倒こそしなかったものの、片手に大事に抱えていたぬいぐるみが、こぼれおちる。
斜面に沿って転がり落ちていく、フェルト製の2.5頭身MS。角と翼を持った白いボディ。
「あーッ! あたしのフリーダム!」
「そんなのいいから!」
「いやーッ! フリーダムーッ! ひーろーうーのー!」
駄々をこねて手を延ばす少女。引き止める母親。しかし短い腕を伸ばしたところで届くはずもなく。
駆け続けた一家の足が、一瞬止まる。山道の途中で、無防備な姿を晒す。
と――急に頭上が陰ったかと思う間もなく。
一家のすぐ近くに、大重量が着地する。激しい振動。踏み潰されて消える、フリーダムのぬいぐるみ。
見上げればそこには、巨大な赤い四足獣。怪獣映画のワンシーンのような、奇妙に現実味のない光景。
赤い獣は、ギラリとモノアイを輝かせると、その巨大な前足を、一家の頭上に振り上げて……!
「や……やめるんだッ!?」
キラは叫ぶ。脳裏に蘇る、守れなかった者たちの姿。撃ち抜かれるシャトル、撃ち抜かれる避難艇。
∞ジャスティスやレジェンドやデスティニーに背を向け、その手を伸ばすが――もう間に合わない。
「お……お前ら、何をッ!?」
無防備なアカツキの姿に追い討ちをかけることもせず、アスランは叫ぶ。叫ぶが、何もできない。
まさか、シンたちがこんな非道な作戦を平然と行うとは、アスランの想像を超えたことで。
「クハハッ……! 強いクセに、弱っちい奴らに引きずられやがってッ!」
背を向けたアカツキの姿に、シンは哂う。哄笑しながら振り上げるのは、自慢の対艦刀アロンダイト。
巨大な刃が、アカツキを一刀両断しようと迫る。
「ぬくぬくと戦争を知らずに生きてるというだけで、万死に値するッ!
ガルナハンの恨み、その千分の一でも……思い知れッ!」
そしてコニールの暴走する憎悪の叫びのままに、その赤い前足が――!
- 22 :隻腕27話(17/17):2006/03/22(水) 22:27:26
ID:???
ガイアRが、その足を踏み下ろさんとした、まさにその時――
真上から降ってきた一本の光が、赤いガイアを貫く。
3本の足で立っていたガイア。その左の後ろ足を貫かれ、右前足を振り上げた姿勢のまま横倒しになる。
踏み潰されそうになっていた一家は、間一髪で難を逃れて。訳も分からぬまま、頭上を見上げる。
はるか上空、今まさに宇宙から舞い降りてきた、白い影。
フリーダムであって、フリーダムでないMS。
力強い手足。金色に輝く関節。8枚の翼。
その手にロングライフルをたずさえたまま、4本のシャープなアンテナの下、ツインアイが周囲を睥睨する。
「あッ……ああッ……! あれは……!」
「フリーダム……なのか……?!」
戦場の視線が、突如出現した1機に集中する。
オーブ兵が、ザフト兵が、連合兵が。
オーブの市民が、国防本部の者たちが、そして助けられた一家が。
ことごとくSフリーダムの姿を仰ぎ見る。
「ふ――フリー、ダム? で、でも、あれは……!」
そしてその出現に誰よりも衝撃を受けていたのが――デスティニーを駆るシン・アスカ。
目の前のアカツキ、その無防備な背中に剣を叩き込むことも忘れ、凍りつく。
シンの唇が震える。目が見開かれる。デスティニーの手から、力なくアロンダイトがこぼれ落ちる。
「あ……ああッ……あああああああッ! マユッ! マユなのかッ!?
でもマユは、俺がこの手で……こ、この、手で…………うわぁぁぁあぁぁぁぁッ!!」
シンは頭を抱えて、大きな叫びを上げる。
それは強化の代償。封じられたはずのトラウマの暴走。
強化人間エクステンデッド、そのブロックワードに対する、過剰反応――!
全ての視線がSフリーダムに集中し、戦場の動きが止まった、その時。
この最高のタイミングで、別の方向、西の海上にも、新たな機影が現れて。
戦場の動きが止まっていることを見て取った彼女は、これ幸いと戦場の全員に向け通信を放つ。
『――オーブ軍、ザフト、連合軍、全軍に告ぐ。即刻、戦闘を停止せよ。
私はカガリ・ユラ・アスハ。オーブ派遣艦隊の生き残りである。
繰り返す、両軍即刻戦闘を停止せよ。私はカガリ・ユラ・アスハ――』
単機オーブに帰還した、見慣れぬ黄色いムラサメ。
画面の向こうには、誰もが見間違えようのない、カガリ本人の姿。
Sフリーダムの登場とのダブルパンチの衝撃に、戦場の誰もが、思わずその動きを止める――!
第二十八話 『 新たなる道 』 につづく