- 223 :しのはら :2005/08/03(水) 22:15:06 ID:???
- マユ戦記 第一話
- CE73、6月。太平洋上を一隻の戦艦が進んでいた。
ザフト軍新造艦ミネルバだ。ミネルバは地球におけるコーディネーター保護及び平和維持活動のため送り込まれた船と表向きには発表されているが、新型モビルスーツの実戦試験艦としての一面も持ち合わせていた。
一カ月前に地上の中立国オーブが形骸化した世界安全保障機構を脱退して以来、世界は混沌の中にあった。
オーブの行動に感化された連合植民地で泥沼の内戦が始まったのである。
この事態にプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルは連合を激しく非難、地球在住コーディネーター保護及び難民支援を目的とした平和維持軍の派遣を議会で承認した。
- 224 :続き :2005/08/03(水) 22:27:19 ID:???
- ミネルバの艦内に警報が鳴り響く。 「コンディション・イエロー発令、全艦第一種警戒態勢」
オペレーターであるメイリン・ホークを聞いたクルーは慌ただしく行動を開始した。
ザフト軍に復隊したアレックス・ディノ(アスラン)はパイロットスーツを着るなり、愛機スラッシュザクファントムに搭乗する。
ミネルバに向かってきたのは105とダガーLからなる連合軍部隊だ。彼らはミネルバが領空侵犯をしていると主張、停船を求めた。ミネルバ艦長タリアは呆れを通り越した。
彼女たちのいる海域はカーペンタリア基地のあるオーストラリアと、ヘンダーソンベースの存在するガダルカナル島の合間に位置する非武装海域だった。
何よりもミネルバと連合軍が戦う理由など存在しない。
- 225 :しのはら :2005/08/03(水) 22:40:15 ID:???
- タリアはダガー隊に対し、海域から出ていくことを通達した。一度は了承したダガー隊だったが、司令部から一つの命令が下ったことで攻撃を開始した。
発射された対艦ミサイルをCIWSで迎撃したタリアは困惑するアーサーを無視し、反撃に出る。煙幕弾と閃光弾でダガー隊を封じた後、二機のザクを発進させる。ルナマリア・ホークとアレックスだ。
アレックスはルナを艦の守りに回し、自らはグゥルに乗ってダガー隊を切り裂いていく。だが多勢に無勢で、アレックスはミネルバのタンホイザーでダガー隊を一網打尽にしようと提案し、認められる。
ミネルバの動きに気付いたダガー隊は対空砲火をかいくぐってミネルバに肉薄する。アレックスは孤軍奮闘し、ルナも両手にライフルを持って撃ちまくるが数の力にはかなわない。
ブリッジに105がバズーカを向ける。その時、一筋のビームがバズーカを貫いた。
- 226 :ラスト:2005/08/03(水) 22:48:11 ID:???
- 太陽を背にして、見慣れない機影・・・ガンダムだ。恐るべき機動を見せるインパルスは次々にダガーを落としていく。
呆然とその光景を見ていたタリアは少女の声で我に返る。
「今です!タンホイザーを!」
タンホイザーが放たれ、陽電子がダガー隊の半数を消滅させ、撤退させた。
一段落ついた後、モビルスーツデッキには黒山の人だかりができていた。インパルスのパイロットが誰か気になって仕方がなかったのだ。
だから小さな少女がコクピットから出てきた時、クルーは腰を抜かした。
「今日からお世話になる、マユ・アスカです!よろしく!」
- 245 :しのはら :2005/08/04(木) 11:10:22 ID:???
- 第二話
連合軍とザフト軍が交戦したとの報告は瞬く間に地球圏を駆け巡った。デュランダル議長は巧みに情報工作を施して報道、連合を非難した。
一方連合側の実質的な指導者ロゴスは今回の件を逆手に利用し、月艦隊の発進準備を進める。
ミネルバは一路カーペンタリアへと針路を取っていた。ミネルバはあくまで試験航海を行っていたため、実戦はさほど想定していなかった。ミサイル残弾は半数を切り、タンホイザーはオーバーヒートとパーツ不足で使用不能であった。
新しくクルーとなったマユはすぐに打ち解けた。アレックスは良き教育係、メイリンは姉貴分、整備員のヨウランとヴィーノは友達として。
- 246 :しのはら :2005/08/04(木) 11:21:27 ID:???
- ただルナマリアだけは、マユにいい感情を抱いていなかった。必死に努力を重ね、シホ・ハーネンフースに続いて史上二人目の赤服パイロットとなったルナマリア。たった13のマユがインパルスに乗っていることがルナマリアは気に入らなかった。
ルナマリアは色々とマユに突っかかる。そしてルナが「ご両親が見たらさぞ喜ぶわね」の一言、マユは激怒しルナマリアを殴りつける。メイリンやヨウランが止めに入るが、二人は取っ組み合いを始める。
止めたのはアレックスだった。アレックスはルナマリアをクルーに任せ、マユを連れ出す。
風の吹くデッキにアレックスとマユはいた。
なぜそんなことをした、と聞くアレックスにマユは答える。自分の両親と兄はテロで惨たらしく殺された。自分は力を手に入れるためザフトに入り、実力でインパルスのパイロットになったと。
アレックスは頷き、一定の理解を示した。
- 247 :しのはら :2005/08/04(木) 11:33:55 ID:???
- その時、ミネルバに偵察用ディンから敵機接近の報が入る。
アレックス、ルナマリア、マユはそれぞれの機体に滑り込む。アレックスは機体の損傷が直りきらないため、ガナーウィザードで対空戦。ルナはブレイズを装備してグゥルに乗り、マユはインパルスで迎撃する。
ミネルバに襲来したのはガダルカナルから発進したGATー333レイダーだった。航続距離にしてギリギリ、タリアは思わず激励してやりたくなった。
三機のレイダーはダガーとは桁違いの機動力でルナを集中攻撃した。
PS装甲を持つインパルスに、実弾兵器しか持たないレイダーは劣勢だからだ。
レイダーはバルカンで気を引き、ミサイルで攻撃する一撃離脱戦法でザクを襲う。
ルナのザクはグゥルを破壊され、孤島へと落下していく。
レイダーはザクにトドメの対艦ミサイルを放った。ザクは足を損傷し、身動きが取れない。
ルナが諦めた時、インパルスがミサイルからザクを守った。
- 248 :しのはら :2005/08/04(木) 11:44:22 ID:???
- 「ルナマリアさん、大丈夫!?」
「なんで・・・マユ」
「死んでほしくないんです!」
マユはPS装甲が落ちても構わず突進し、腰のナイフですれ違い様に一機を両断。その機体を踏み台にして飛び上がり、下半身を切り離して激突させる。
バランスを崩して、アレックスに撃墜された。
もう一度合体したインパルスは最後のレイダーの頭にナイフを投げカメラを潰し、二本目をコクピットに突き刺した。
帰還して少しした後、ルナマリアは自分の無礼を謝罪した。マユは怒ることなく、ルナマリアを許した。気にしないで、と。
メイリンが二人を仲介する。
「ほら!もうおしまい!みんなでゴハン食べに行こう!」
- 259 :しのはら :2005/08/04(木) 22:18:36 ID:???
- 第三話
- カーペンタリア基地で修理と補給を行っていたミネルバ。VPS装甲エネルギー補充システムを装備し、インパルスのシルエットシステム積み込みも進めていた。
タリアは基地司令から新たな命令を受け取った。内容は世界各地のゲリラを支援し、連合からの独立を支援せよとだった。タリアはいぶかしむが、この裏にある思惑を察して苦笑いした。
買い物等を済ませて一時の休息を終えたクルーは艦に乗り込み、再び戦場に旅立つ。
カーペンタリアからほど近い連合軍の前線基地。地球軍のランドルフ少佐はミネルバを捕捉し、新型のモビルアーマー、ザムサ・ザーを投入する。
- 260 :しのはら :2005/08/04(木) 22:28:45 ID:???
- 先行していたグーンとジン・ワスプから「新型MAを確認、注意されたし」との通信が入る。ミネルバは直ちに戦闘態勢に入り、護衛のディン、バビ混成部隊も配置についた。
モビルアーマーを確認したミネルバは先手必勝でタンホイザーを発射。だがザムサ・ザーは陽電子リフレクターで防御、ダガー数機を撃墜しただけだった。
タンホイザー再発射までは時間がある。タリアはモビルスーツ隊を発進させた。ダガー隊からミネルバを守るのがアレックス、ルナに加えてグーン隊。モビルアーマーはインパルスとディン、バビが担当した。
ダガー隊は二人のエースと対空砲火で接近できずにいたが、モビルアーマーはザフトを圧倒した。ビームを跳ね返し、次々にディンを葬っていく。
- 261 :しのはら :2005/08/04(木) 22:40:23 ID:???
- マユは果敢に挑むものの、モビルアーマーは恐るべき性能でインパルスを翻弄。ついにPS装甲がダウンし、クローで右腕をちぎられた。
落下していくインパルスの中で、マユは意識を失う。しかし家族が死んだ光景がフラッシュバックした瞬間、マユの中で何かが弾けた。
マユは上半身を切り離してミサイルで攻撃、モビルアーマーに突っ込ませる。一瞬の隙を見逃さずにバビがビーム攻撃、バリアを破壊する。
「お嬢ちゃん、俺たちが援護する!早く準備しな!」
ディン隊に守られ、インパルスは空中合体装備換装。ブラストシルエットでダガーを叩き落とす。
マユはケルベロスビーム砲をモビルアーマーに放つ。モビルアーマーはバリアを張るが、不完全なシールドをプラズマビームは貫通した。
モビルアーマーを倒したマユ、そしてミネルバは一路マハムール基地へと向かう。ディン隊隊長はマユに回線を開いた。
「お嬢ちゃん、頑張れ。生き残るんだぞ」
「・・・ありがとう」
- 274 :しのはら :2005/08/05(金) 18:34:37 ID:???
- 第四話
- インド、マハムール基地に到着したミネルバ一行。そこでは支援物資を取り合う難民の姿が。マユはその姿をかつての自らと重ね合わせ、苦々しい思いを抱く。
司令部に通されたマユ、タリア、アレックス、ルナ。基地司令ラドルはミネルバクルーに現在の状況を説明した。
地球軍はユーラシア大陸においてザフトに対する一大反抗作戦を計画。
概要はまだ詳しくはわからず、時期も不明だという。
ただ防衛準備を進めるためにもジブラルタル〜マハムールのラインは確保しなければならない。だがラインの途中にはガルナハンゲートと呼ばれる一大要塞があり、ラドルはミネルバ及び神楽隊に基地攻略の支援を要請したのだった。
- 276 :しのはら :2005/08/05(金) 19:02:24 ID:???
- 基地を散策していたマユたちに絡む神楽・ゴールドバーグ・京介ら。
大のエリート嫌いである神楽はマユを「テレビゲームをやってるガキ」、アレックスには「出戻りスーパーエース」、ルナマリアを「ミニスカアホ毛」と揶揄した。
思わず彼を殴ろうとしたルナマリアは、彼の傷のできた頬、機械化された右腕に思わず息を飲んだ。だがマユは構わず神楽に回し蹴りを見舞うが、神楽は片手で彼女を投げ飛ばした。
ムキになって反撃するマユ。ルナマリアも加勢、神楽隊のヒックスてメリルめ介入した。
あわやという時、神楽隊のアビー・ウィンザーが神楽を制止する。
彼女はある提案をした。模擬戦である。
- 277 :通常の名無しさんの3倍:2005/08/05(金) 19:30:11
ID:???
基地外の演習場。ザフト兵、難民をギャラリーに迎えて模擬戦が始まった。
ミネルバ隊はインパルス、ザク(ルナ)、ザク(アレックス)。神楽隊はグフ先行量産型(神楽)、ジンオーカー(ヒックス)、ディンレイブン(メリル)
丸裸のジンオーカーを見つけたルナは撃つ直前、ミラージュコロイドを展開したディンに捕捉された。
隙を突いてアレックスがディンを攻撃、ディンは回避。アレックスはジンを撃破。
アレックスが動きを止めた刹那、砂中に潜んでいたグフがヒートロッドでザクを仕留める。
最後に残ったインパルスを探すメリル。赤外線でディンを見つけたマユはシルエットを囮にしてメリルを倒す。
ディンを撃破したマユにグフが襲いかかる。ヒートホークを投げつけ、シールドを弾き飛ばす。
- 279 :しのはら :2005/08/05(金) 19:47:58 ID:???
-
通信が入る。
「ガキがガンダム乗るたァ気に入らないんだよ!」
「バカにしないでよっ!」
ヒートホークと訓練用サーベルで切り結ぶ二機。左手でナイフを抜くが、グフの蹴りがそれを防ぐ。インパルスのパンチがグフの頭にヒット、すかさず殴り返す神楽。
姿勢を崩すインパルス。トドメとばかりにヒートロッドを射出するグフ。しかしマユは構わずヒートロッドを掴み、グフのコクピットにナイフを突きつけた。
勝敗は最後の結果もあって引き分け。ミネルバ隊は有利なドロー。神楽隊にとっては一矢報いたところだ。
その夜マハムール基地をミネルバを中心とした部隊が移動を開始した。目的地はガルナハン。
- 348 :しのはら :2005/08/06(土) 21:25:31 ID:???
- ガルナハン近郊に到着したミネルバ。現地連絡員の少女コニールを交えてブリーフィングが行われた。
ガルナハンゲートは峡谷に挟まれ、多数のMS、そして陽電子砲を擁していた。正攻法で攻略するのは不可能に近い。
コニールは要塞の弱点を説明した。要塞には内部に繋がる廃鉱が存在しており、飛行機一機ならなんとか通れるという。
アレックスはすぐさま作戦を立案した。神楽隊とミネルバがMS他の防衛戦力を可能な限り引き離し、その隙にマユのコアスプレンダーが内部に突入して陽電子砲を無力化、本隊が残存部隊を掃討する。
出撃前、アレックスはマユに話しかける。
「マユ、お前ならやれる。大丈夫だ」
神楽もマユを励ます。
「お前が失敗しても、俺たちが全部片付けてやる。気楽にやんな」
- 349 :しのはら :2005/08/06(土) 21:38:11 ID:???
- 第五話
- 連合側の司令官は攻撃が始まる直前までMSの増援を求めていたが、代わりに届けられたMAを見て愕然とした。
「戦いは数だろうが!このゲテモノはなんだ!?」
泣きそうになる司令官を横目にゲルス・ゲーはダガー隊を引き連れ発進した。
MS隊の組織的戦闘は双方が陽電子砲を撃ったことで終わり、クロスレンジの交戦が始まった。アレックスと神楽は不思議な連携を見せ、ダガー隊を叩き落としていく。
「凸、そっちに一機!」
「凸と言うな!」
「じゃあ出戻り、そっちのダガーを!」
ルナマリアはバクゥの背中を借り、峡谷のトーチカを潰していった。
コアスプレンダーはマユとナビのコニールを乗せて鉱動に侵入。視界ゼロの洞窟に二人の悲鳴が響き渡る。
- 350 :しのはら :2005/08/06(土) 21:55:09 ID:???
- 「ちょっと、何も見えないよぉ!」
「ライトかなんかないのか、おい!」
「データだけが頼り!?あのデコ、自分がイヤだから私にまわしたのね!」
射程距離に入ったザウート隊が火力のありったけを砲台に叩き込む。しかし着弾する前に、異形のMAがリフレクターを展開し反撃に出た。
次々に蹴散らされるザフト軍。あらゆる火器を跳ね返し、クローを振り回す。ルナマリアはオルトロスを撃ち込むが、MAは難なく無効化してしまう。
鉱道出口に到達したマユはミサイルで岩盤を砕き、外に飛び出す。その時破片がキャノピーを破壊、マユに激突した。マユは意識を失い、コアスプレンダーは落下していく。
コニールは後部座席から飛び出して操縦桿を取る。
「上がれ!」
必死に力を込めるコニール。もうダメかと思ったその時、マユが意識を取り戻した
- 352 :しのはら :2005/08/06(土) 22:07:12 ID:???
コアスプレンダーは防衛線の奥深く侵入し、丸裸の砲台に照準を合わせる。だが、ミサイルは先の激突で故障を起こした。陽電子砲は発射体勢を完了しつつある。
再びコニールが体を乗り出し、計器を殴りつけ直す。
「お上手、コニール!」
「ロシア式らしい」
あるだけのミサイルが陽電子砲に放たれる。エネルギー臨界に達した砲身の中にミサイルは入り、大爆発を起こした。
陽電子砲の爆発でMAはしばし隙を見せた。神楽隊ヒックスがグレネードを投げ、リフレクターを破壊。ミラージュコロイドを展開したメリルがMAの頭をもぎ取る。
それでも抵抗するゲルス・ゲー、神楽のヒートロッドが腕を絡めとり、アレックスの一閃がMAの体を真っ二つにした。
- 353 :しのはら :2005/08/06(土) 22:18:32 ID:???
-
基地司令官は「あと十機MSがあれば勝てた」と毒づいて基地から撤退した。
撤退し損ねた連合兵は暴徒化したガルナハンの人々に最後の一発まで抵抗し、惨たらしく殺された。死体は町を引きずり回され、ある者は吊し上げられた。
その凄惨な光景にマユは衝撃を受ける。神楽はマユにこう言う。
「気にしないことだ。これがお偉方の言う正義の戦争だ」
- 362 :しのはら :2005/08/07(日) 13:22:29 ID:???
-
第六話
ロード・ジブリールは怒りを抑えられずにいた。プラント本国へ攻撃を行うべく発進した艦隊は地球情勢悪化の煽りで月基地に撤退。地球ではザフト軍とゲリラが協力して連合軍を叩いている。
ひとまず落ち着きを取り戻したジブリールはある計画を実行に移す。
「ファントム・ペインのロアノーク大佐に繋いでくれ。大至急だ」
ジブリールはモニターを見ながら笑みを浮かべる。ザフト製と思われる三機のG、そして巨大なガンダムの設計図らしきものを。
「見ていろよ宇宙のバケモノ。最後に勝つのは我々だ」
- 363 :しのはら :2005/08/07(日) 13:30:48 ID:???
-
神楽隊と別れたミネルバがディオキアに到着した時、あたりは暗くなっていた。だが、ザフト軍基地の周辺はまるで昼間のように明るい。
上空を飛ぶディンから通信が入る。
「ようこそミネルバ。運がいい、今夜はラクス・クラインのライブがあるんだ」
間も無くピンク色のザクがエスコートされて降下。ライブ会場に少女を降ろす。
「こんばんは〜!ラクス・クラインでぇ〜す!」
軽快な音楽な鳴り響き、ラクスは楽しげに歌い始めた。
タリアはクルーに上陸許可を出し、マユはルナマリアとメイリンを連れてライブ会場に急ぐ。
「行かないんですか?ディノ隊長」
「急に胃が痛くなってきた・・・」
- 364 :しのはら :2005/08/07(日) 13:45:20 ID:???
- ディオキアから遠くない海域に停泊していたザフト軍潜水艦の艦内は地獄絵図と化していた。正体不明の侵入者は次々に警備兵を殺害し、格納庫の新型ガンダムの強奪に成功した。
「スティング、どう?」
「こっちはOKだアウル」
「ステラも・・・大丈夫・・・」
強奪成功の報を受けたネオ・ロアノークは一筋の傷が残る顔を苦笑に歪めた。
「マユが見たらなんて言うかな・・・」
下船したミネルバパイロットたちはこれまでの労をねぎらわれ、ディオキアのホテルに案内された。ホテルに着くなり、ピンクの髪の少女がアレックスに抱き付く。
ルナマリアはぷいとそっぽを向いて部屋に向かい、メイリンが慌ててついていく。
マユとアレックスは彼女の正体を知っていた。
「久しぶり、ミーアお姉ちゃん!」
「元気そうだな・・・ミーア」
- 365 :しのはら :2005/08/07(日) 13:52:40 ID:???
- 三人はVIPルームに通された。ミーア・キャンベルはクライン財団盟主として多忙な本物の代わりに、歌姫として活動していた。
三人は和気藹々と食事を楽しんだ。
その頃ルナマリアはメイリンにある疑問を投げかけた。
「メイリン、私ディノ隊長は絶対にアスランだと思うんだけど」
「・・・」
「メイリン?」
「お姉ちゃん気づくの遅い。みんな知ってるよ・・・」
第六話終了
- 399 :しのはら :2005/08/08(月) 21:50:55 ID:???
- 第七話
ディオキアで補給を終えたミネルバに下った指令はオデッサ地区の強行偵察。地球軍の資源プラントがオデッサにはあるが、資源の枯渇により大した役割は持っていない。ただ付近で地球軍部隊が活発に行動していることから今回の偵察行となった。
ルナマリアとアレックスのザクを先導に進むミネルバ。まったりとした雰囲気の艦内に、突如警報が鳴り響く。
「モビルスーツ、数二十・・・いえ五十!まだ増えています!」
光学映像がブリッジに届き、クルーが青ざめる。ダガーと戦闘機の混成編隊。雲霞のごとく空を覆っていた。
タリアはすぐさまインパルス出撃の用意をさせ、タンホイザーを準備させる。
「艦長!地上でアレはマズくないですか!?」
「何を今更。私の庭じゃないわよアーサー」
- 400 :しのはら :2005/08/08(月) 22:00:50 ID:???
- インパルスのコクピットに収まったマユは機体を立ち上げながら、気乗りしていなかった。いつもの使命感や正義感は陰り、何か心が重苦しい。
「これがお偉方の言う正義の戦争だ」
神楽の言葉、惨殺される兵士たちが脳裏に浮かぶ。
マユは一瞬目をつぶった後、インパルスを発進させた。
「何が正義なんてわからない。でも私はミネルバのみんなを守りたい!」
アレックスは戦闘機を足掛かりにして面白いようにダガーを落とし、スラッシュウィザード装備のルナマリアは接近戦の技量もアピール。
「いいぞルナマリア!」
「忘れました?私も赤なんですよアスランさん!」
「・・・アレックスな」
インパルスも戦闘に参加、三機は素人同然の地球軍を叩き落としていく。
- 401 :しのはら :2005/08/08(月) 22:12:34 ID:???
タンホイザー発射準備が完了した。エネルギーが砲身に集まる。
その時、一筋のビームがタンホイザーを貫く。
大爆発を起こす陽電子砲を見ながら、男は微笑を浮かべた。
「上出来だスティング。あとでビールを奢ってやる」
「約束は守らせるぜ!ネオ」
「未成年だろ、ボケ」
「ステラ・・・お酒嫌い」
見慣れない三機の介入で戦況は大混乱に陥った。生命線のタンホイザーを封じられたミネルバ隊は数で劣り、いくら優秀なパイロットたちでもカバー仕切れる筈がない。
タリアは躊躇なく近辺にいるザフト軍部隊に救援を求めた。
- 402 :しのはら :2005/08/08(月) 22:26:30 ID:???
- ルナマリアはガナーに換装、ミネルバの対空火器と協力して水際でダガーを食い止める。
アレックスとマユは協力して三機の゛ガンダム゛に立ち向かっていく。幾多の死線をくぐってきたアレックスは彼らがナチュラルではないことを確信する。
「ヤク中?それともソキウスか?」
反応速度、動作一つとっても申し分ない動きだ。アレックスはカオスとアビスの二機を引き受けた。絶望的な戦いだが、未熟なマユは一機相手にできるかどうか・・・。
ガイアの戦いにインパルスは苦戦を強いられる。マユは知らないことだが、ガイアは陸戦を主眼に置いて開発された。
汎用機のインパルスは劣勢に立たされる。
とうとうビームが右手首をもぎ取る。ガイアは冷徹な動きでビームキャノンを放った。
もうダメだ、という時、三機のドム・トルーパーがインパルスへのビームを防いだ。
赤く塗られた隊長機らしきドムから通信が入る。
「こちら三隻同盟、キラ・ヤマト!大丈夫かインパルス!」
- 420 :しのはら :2005/08/09(火) 19:57:36 ID:???
- 第八話
加勢してきたドムは悪路走行試験中にミネルバの救援要請を受けた。
アレックスはキラの名を聞き、意外そうな声を上げた。
「キラ?キラ・ヤマトか?」
「アスラン・ザラ・・・久しぶりだ!」「よもやお前がザフトと共に戦うとは、時代は変わったな」「時代の変化で人間も変わるものだよ」「お前のことは隅々まで知ってるつもりだったんだがな・・・」
「大佐、今は戦闘中」
「俺はアレックス・ディノ隊長だ!」
「こっちはヤマト一尉とでも呼んでくれ」
キラは二機のドムをインパルスの支援に回し、自らはアレックスと組んで敵機に襲いかかる。
「これほど心強い味方はいないな」
「二年前に戻った気分か?」
- 422 :しのはら :2005/08/09(火) 20:15:59 ID:???
- アレックスのザクがカオスに迫り、アビスが背中を狙う。ドムが間に入ってビームシールドでザクを守り、スプレッドビームで視界を奪いビームバズを撃ち込む。
二機はまるで気心知れた仲間のようなコンビネーションで三機のガンダムを翻弄する。
マユは加勢しようとするが、アレックスは制止した。
「やめろインパルス!まともに戦える状態じゃない、下がるんだ!」
「戦えます!」
「死にたいのか!」
生憎フライヤーとシルエットは全て整備中、残った武器はバルカンとサーベル、ナイフだけだ。
アレックスの一言が決め手となる。
「いても邪魔なだけだ!」
マユはショックを受け、涙を流す。アレックスの言葉に傷ついたのではない。己の無力さ、邪魔扱いされる自分に。
- 423 :しのはら :2005/08/09(火) 20:28:35 ID:???
- 思わぬ援軍にチェックメイトを逃したネオは撤退を決意した。
アウルとスティングは了承したものの、興奮状態のステラは赤いドムを追い続けていた。ネオはやむをえない、とスティングに連絡した。
「ステラ、撤退するぞ」
「うるさい!すぐに仕留める」
「・・・死にたいんなら好きにしな」
ガイアが突如動きを止めた。キラの攻撃をアビスが防ぎ、カオスがガイアを牽引して運び去る。ダガー隊も後退を開始した。
ミネルバ側ももはや限界、タリアは撤退信号を上げた。ザク、ドムが着艦していく。タリアを始めとしたブリッジクルーは疲弊しきっていた・・・。
インパルスのコクピットでマユは泣き続けていた。
「私、もうダメなのかな?インパルス・・・」
- 444 :しのはら :2005/08/10(水) 21:47:53 ID:???
-
第九話
後退したミネルバは東欧のザフト軍基地に到着した。
基地司令はミネルバが増援でないことに少々落胆したが、出来る限りの支援をタリアに約束した。
とりあえずの休養をとるクルーたち。だがマユだけは部屋に引きこもった。
夜は眠れず、食事も喉を通らない。それでも喉は乾き、マユは部屋を出た。
自動販売機の前でマユはキラにぶつかり、尻餅をついてしまう。
マユが立ち上がるとすぐに逃げ出した。
「待って!」
キラはマユの手を掴み、少し話がしたいと申し出た。それと食事を奢るという。マユは断ったが、タイミング良く腹が鳴ってしまった。
- 445 :しのはら :2005/08/10(水) 22:07:30 ID:???
- 食事を終えた後、マユとキラは展望デッキで会話していた。マユは少しずつ語った。自分は自信がなくなった、ちゃんとできない自分に腹が立つ、誰も守れないんじゃないか、と。
「そんなに気負わなくてもいいよ。君はよくやってる」
「でも・・・!」
「マユ、フリーダムのパイロットはどんな人だったか知ってる?」
「電波入った偽善者って噂されてますよ」
「厳しいね。そのパイロットは自分で全部抱え込んだんだ・・・」
キラはフリーダムのパイロットが自らの考えだけで行動し、たくさんの命を奪ったと。
「でもフリーダムは戦いを終わらせたんですよ?」
「・・・結果的にね」
- 446 :しのはら :2005/08/10(水) 22:27:16 ID:???
- 部屋に戻ったマユは机の上に小さな紙包みを見つける。
「ごめんなさい。アレックス」
マユは手紙を破り捨て、休憩室のアレックスに紙包みを投げた。
「直接自分で渡して下さいね!」
その夜、ヨーロッパ全域で地球軍部隊が進撃を開始した。「春の夜明け」作戦である。
- 481 :しのはら :2005/08/11(木) 22:01:07 ID:???
- 第十話
- 地球軍の大部隊は圧倒的物量をもって各地の戦線を突破した。航空優勢の下始まった進攻にザフトは善戦して多大な出血を強いたが、各地で戦線は突破された。
ザフト軍ヨーロッパ方面司令官オロフスキーは焦ることなく命令を伝えた。
「各部隊は戦力の損耗を最低限に後退せよ」
三倍近い戦力を保持する地球軍。まともに考えて戦えるものではない。だがオロフスキーにはある考えがあった。
それは地球軍を可能な限り前進させ、伸びきった補給ラインを遮断して壊滅させるというものだった。
- 484 :しのはら :2005/08/11(木) 22:25:33 ID:???
- ミネルバに下った任務は進攻する二つの軍団のうち一つを足止めすることだ。 ミネルバはオーブ軍と共同で進攻遅延作戦を開始した。
作戦前にオーブ軍司令官のカガリ・ユラ・アスハ准将がミネルバを訪れ、クルーに挨拶した。堅物の印象を持っていたマユやルナマリアは彼女の気さくな物腰に好意を抱き、アレックスは脂汗を流した。
ブリーフィングを終えた後、パイロットたちはそれぞれの機体へと向かう。オーブ軍のムラサメは母艦の不備からミネルバに収容されていた。
出撃前、アレックスはカガリに呼び止められた。そして股間を掴まれる。
「縮んでるのは相変わらずだな、凸」
「・・・アレックスだ」
「わかった。アレックス・凸」
- 485 :しのはら :2005/08/11(木) 22:36:11 ID:???
- ムラサメ隊はカガリを先頭にして太陽の中から襲いかかった。作戦はムラサメ隊が一撃離脱で敵編隊を崩し、インパルスと二機のザクが各個撃破する。
ムラサメ隊は空中焼夷弾で先頭のウィンダムを焼き払い、ダガーの数を減らす。オーブ軍兵士とムラサメの組み合わせはナチュラルとは思えない動きでダガー隊を狩る。
「畜生め、いくらでも来る!」
カガリ専用に赤く塗られたムラサメが二刀流でウィンダムを切り裂く。
アレックスはグゥルから飛び上がり滞空しながらガトリングを撃ち再び着陸。
「腕は落ちてないな、アスラン!」
「カガリこそ、知らない間に随分と上手になった」
「夜の方も上達してるぞ」
「そいつは夢のある話だ。近くに無人島はないかな?」
- 486 :しのはら :2005/08/11(木) 22:49:43 ID:???
- マユは負けじとインパルスを駆けた。カオス・アビス・ガイアとの敗戦してからの間、マユはキラやアレックスを相手に訓練を重ねてきた。今の彼女にはフリーダムを倒せる、とキラは笑いながら言った。
シルエットを切り離して激突させ、バランスを崩したダガーを狙撃する。
「ヤマト大尉、私頑張るよ!」
その時ルナマリアのザクにウィンダムがクナイ爆弾を投げつけ、ザクは一瞬無防備になった。マユはダガーを斬り伏せ、落下していくザクをカバーする。
「つかまえた、ルナ」
「ありがとう、マ・・・」
ウィンダムの通信が混線して入る。
「こっちもな」
シールドミサイルとクナイ爆弾の連続攻撃、インパルスは頭を潰され落下していく。
ザクはムラサメに助けられたが、インパルスは間に合わず地上へと落下していく。あそこは連合の支配地域だ。
「マユ!マユ!」
ルナマリアの悲鳴だけがあたりに響き渡る。
「マユゥゥゥ〜!」
- 518 :しのはら :2005/08/13(土) 19:15:07 ID:???
- 第十一話
- 「インパルスが落ちた!」
その報はすぐさまミネルバに伝わった。いつもはアーサーをたしなめるタリアが青ざめる。
インパルスが落ちた区域は地球軍戦線の奥深くだったからだ。アーサーは救出を提案したが、メイリンが敵の増援を知らせ、タリアは唇を噛み締めて撤退を下令した。
「ダメ!マユを助けなきゃ!」
ルナマリアは撤退命令に関わらずマユを助けようとした。行く手を阻むウィンダムは時間と共に増えていく。アレックスの制止をも振り切ったルナマリアを止めたのはカガリであった。彼女は毅然とした態度で言う。
「マユが救った命をここで無駄にするつもりか!」
「でも・・・」
「マユに加えてお前まで落ちたらミネルバはどうなる!」
- 519 :しのはら :2005/08/13(土) 19:31:36 ID:???
- 墜落したインパルスの中でマユは目を覚ました。機体の損壊は少ないが、動かすけとはできない。
軽傷のマユは手当てをするなり機体の自爆装置を仕掛けライフル片手に機体を離れた。
味方との通信は不可能、発光信号や発煙も敵に見つかるため使用できない。
しばらく歩いて、マユは河川敷に出ると、金髪の少女が笑いながら踊っているのが見え、マユは毒づく。
「世も末ね・・・」
マユの軽蔑は少女が川に転落したことで驚きへと変わった。少女は川に落ちるなりジタバタと溺れ始めたからだ。
「お、泳げないの!?」
マユはライフルを隠して少女の元へ走った。飛び込んですぐ少女を抱きかかえる。少女はマユより年上だったが、体は驚くほど細い。
「もう、死ぬ気!」「死ぬ!?」
「えっ・・・?」
「イヤぁー!」
少女はマユを殴って川の深いところへ行こうとした。マユは急いで少女にしがみつく。
- 520 :しのはら :2005/08/13(土) 19:43:55 ID:???
- 「ダメだよ!ダメぇ!」
マユは強引に少女を岸に上げた。それでもし少女は怖がり、泣き叫ぶ。
彼女は戦災孤児か何かだ、とマユは悟る。でなければ死をここまで恐れるわけがない。
マユは少女を抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫だよ!あなたは私が・・・、私が守るから!」
「守・・・る?」
「うん、私が守るよ!」
少女は安心した様子で眠ってしまい、マユも緊張と疲労で意識を失った。
ミネルバ艦内ではマユ救出を敢行しようとするるルナマリアをクルーがようやくなだめたところだった。
デッキでげっそりとうなだれるアレックスにカガリはコーヒーを差し出した。
カガリはルナマリアを諭し、一応の了解を得た。
デッキでうなだれるアレックスに、カガリはコーヒーを差し出す。かつて二人は共に戦い、今は別れたが心を通じ合わせた関係でもあった。
- 521 :しのはら :2005/08/13(土) 19:56:32 ID:???
- 「お前は戦士としちゃ有能だが、人間関係は全然ダメだな。相変わらず」
「自信なくすよ…ホントに」
「お前がそれでどうする。部下はすぐ見破るぞ」
「また脱走するか?女の子つれて」
「二回目は間違いなく殺される。そんなことしないよ」
「それはともかく、マユの救出は私がやる。お前は休んでろ」
「しかし・・・」
カガリは語った。自分は父の罪を背負っていると。だから自分は軍ね最前線に身を置き続け戦っていると。
「私は父の罪を背負って生きていく。それが運命だ」
目を覚ましたマユは隣にステラがスヤスヤと寝ていることに安心したが、自分の置かれた状況に困惑した。
「ここは地球軍の戦艦・・・?」
部屋にただ一つある窓からは幾重にも並んだモビルスーツが見えた。
第十一話
終わり
- 547 :しのはら :2005/08/15(月) 18:53:36 ID:???
- 第十二話
マユがいたのは地球軍の陸上戦艦ボナパルトであった。
マユは自分の置かれた状況を考え、とりあえず行動は控えることにし、ベッドな横になる。
(ルナお姉ちゃん、カガリさん、デコ・・・じゃなくてアレックスさん心配させちゃってるかな)
マユがうとうとしはじめた時、二人の少年が部屋に入ってきた。一人は鋭い目つきをした緑の髪、もう一人は女の子にも見える青い髪の少年だ。
緑の方はスティングと、青い方はアウルと名乗った。
二人はステラを探しに行き、そこで゛民間人の少女゛とステラが倒れていたところを見つけたという。
マユは様々な情報をつなぎ止めた。
(彼らは地球軍の兵士だろうけど、制服の着こなしや口調から正規軍じゃない。年は十代半ばくらい、強化人間ね)
マユの意に反し、スティングたちは好意的に接してくれた。マユは民間人を装ったまま時間を過ごした。
- 548 :しのはら :2005/08/15(月) 19:13:34 ID:???
- インパルスとマユを捜索よりもオロフスキーは防御陣地の構築や敵の足止めに戦力を割いた。一機のガンダムより三機のザクである。
「全く議長は何が良くて試作機の捜索なんぞ命じるのだ。前線ではジンで戦う兵もいるというのに・・・」
マユは快調したステラ、スティング、アウルと共に艦内を案内されていた。新型のモビルスーツや見たことない装備を可能な限り目に焼き付け、関心を装ってマユは歩を進めた。
ある場所に来たとき、マユは驚愕する。
(これはカオス、ガイア、アビス!?)
格納庫に駐機する地球軍とは明らかに違うMS。マユと戦い、苦しめた機体だ。
さらにスティングは自分たちの機体だと語り、マユの驚きは倍増させた。
マユは「そっかぁ、すごぉい!」と演じてその場をしのいだ。
- 550 :しのはら :2005/08/15(月) 19:31:51 ID:???
- ミネルバに新しい命令が下った。現在は人の居住しないベルリン市街地に進出し、友軍部隊と共同して市街地で敵を攻撃。その間にジュール隊を中核にした部隊が地球軍の補給ラインを寸断し、市街地の敵を壊滅させるというものだ。
この命令にタリアは異を唱え、オロフスキーに二日間の猶予を認めさせた。
「二日間・・・食えない男ね」
艦内を一通り見て回ったマユは最後に、スティングたちの指揮官であるネオの元へと案内された。
マユはネオの姿を見るなりその場に尻餅をついた。
「どうしたんだ、お前」
「お・・・兄ちゃん?」
- 591 :しのはら :2005/08/18(木) 20:39:09 ID:???
- 第十三話
- マユは愕然とした。目の前に座る地球軍の軍人は彼女が幼い頃テロで失った兄のシン・アスカと瓜二つだったからだ。
「ネオ、いつの間にこんな可愛い子妹にしてたんだよ?」
「勘弁してくれアウル。確かに、まあ・・・可愛いコだが・・・」
ネオは苦笑しながらコーヒーを入れ、スティングたちに退室を頼んだ。
二人になった後、ネオは切り出す。
「お兄ちゃんとはなんだ一体?俺に兄弟はいないはずだが」
「すみません・・・!つい、似ていたもので、兄と・・・」
血の繋がらない妹なら大歓迎と冗談を言い、ネオは笑う。
「俺は地球連合軍のネオ・ロアノーク大佐。君のお兄さんじゃない」
そしてネオはマユに銃を向ける。
「ザフト軍人、インパルスのパイロット。マユ・アスカ君?」
- 592 :しのはら :2005/08/18(木) 20:52:42 ID:???
- ネオは銃を一旦下ろす。
「まあ、せっかく話す機会ができたんだ。ゆっくり話そう」
ネオはある疑問を投げかけた。戦場でモビルスーツが撃墜された、ではその機体は一体幾らするのか?
ネオは続ける。こうしている間にも戦場ではミサイルが撃たれ、船が沈み、モビルスーツが破壊される。そして国家はまた、新しく兵器を作る。
「とんでもない儲けになるだろ?戦争というヤツは」
ネオは衝撃的事実をマユに突きつける。地球連合の影にあるブルーコスモス。ブルーコスモスの影にある組織ロゴスについて。
ロゴスは世界中に、意図的に戦火を広げさせたのだ。オーブの連合脱退も、ロゴスに通じるセイラン家の働きによって引き起こされたのだ、と。
「ブルーコスモスはコーディネーターを化け物扱いしてるが、コーディネーターの俺から言わせれば奴らの方がよほど怪物じみてる」
- 593 :しのはら :2005/08/18(木) 21:04:14 ID:???
- 一通り話終わった後、ネオはマユにインパルスで脱出するように言った。インパルスは連合内では最大の敵として憎まれている。そのパイロットが捕虜になっていると知られたら、想像に絶する行為が加えられるのは間違いない。
マユは戸惑いながらも了承し、人気のない通路を通って格納庫へと向かう。
インパルスのコクピットに収まったマユはネオに共に行こうと呼びかける。だがネオは首を降った。
「マユの知っているお兄ちゃんは死んだ・・・」
そう言ってネオはマユの頭を撫でる。懐かしい感触だった。
「頑張って生きろ。お兄ちゃんから言えるのはそれだけだ」
ハッチが閉まる。ネオは演技で倒れ、警備兵の注意を引く。マユは格納庫のハッチをビームで破壊、脱出した。
飛び上がるインパルスの中で、マユは大粒の涙を流す。
「神様、なんであなたはこんなに残酷なことをするですか・・・?」