- 97 :しのはら :2005/10/01(土) 11:28:01 ID:???
- 第三十七話
- コペルニクス上空に展開したジブリール派の地球軍。
数回に渡る呼びかけに応じず、艦隊からMSが発進したことでタリアは命令した。
「全MS発進。゛こちらの゛地球軍にも連絡して!」
ザフトと地球軍MSが並んで発進し、敵へと向かっていく。作戦は単純だ。デュランダル議長の乗るミネルバが艦隊を抜け、コペルニクスへ着陸するだけだ。
ブラストインパルスがウィンダムを三機まとめて倒し、レジェンドとランチャー105ダガーの編隊が艦隊を沈めていく。
「そいつはガンバレルかアレックスさんよ?」
「似たようなものだが、誰でも使える」「誰でも?そりゃすげぇ!」
エール105ダガーがアレックスに迫るウィンダムを叩き落とす。
「どうも」
「後方にご注意」
ガンバレルダガーがダガーLを四方からのビームで撃破した。
モーガンは言う。
「悪く思うなよ。俺はジブリールとやらのワガママに付き合う気はない」
- 98 :しのはら :2005/10/01(土) 11:38:21 ID:???
- MS部隊が奮戦する間に、ミネルバは着陸シークエンスに入っていた。
皆が安堵しかけた時、突然艦体に爆発が起きる。
「ミネルバ!?」
マユはフルブーストでミネルバへ向かい、ブリッジに銃を向けるNダガーを真っ二つにした。
ミラージュコロイドを搭載した新型機は対空砲火を巧みに回避しながら、ミネルバに損害を与えていく。
マユがまた一機撃破した時、ミラージュコロイドで隠れていたNダガーがビームを放った。
「しまった・・・」
ビームはインパルスではなく、ソード105ダガー・・・クリスの機体に命中した。
「お嬢ちゃん、後は任せた!」
クリスはNダガーに特攻、道連れにして大爆発を起こす。
核の光を見たマユは覚醒した。
「うええい!」
ミネルバから対空硫酸弾頭ミサイルが放たれ、Nダガーの機体を丸裸にする。
マユはシルエットを分離して激突させると、それごと敵をジャべリンで突き刺した。
「ミネルバ、ソードシルエット!」
- 99 :しのはら :2005/10/01(土) 11:45:17 ID:???
- ソードインパルスは艦隊の中へ突っ込み、面白いように敵を倒していく。
ダガー隊とレジェンドは戦艦に集中攻撃を加えた。
「敵艦隊、後退します」
味方は撤退する敵を追跡しなかった。今はミネルバを護衛する方が先だ。
その日の夜、地球連合とプラントの間で停戦の実行が宣言された。
そしてジブリールがなおも抵抗を続けるアンザッヘル基地の制圧作戦が開始された。
デュランダルは演説する。
「我々人類、コーディネーターとナチュラルは今、共通の敵と戦う時なのです!」
- 101 :しのはら :2005/10/01(土) 11:56:56 ID:???
- 第三十八話
- 「ったく、今日からフェイトのアニメが始まるってのに」
「ほざくなアキラ。給料分の仕事くらいしやがれ」
「そうよ。ジョーの言うとおり」
「オカマは黙ってろよ、グレイシア」
「なんですって!?」
月軌道をパトロール中のハイネ隊。隊長の死後は名誉称号として隊の名前としていた。
ハイネ隊の前に、巨大なリングが浮かんでいる。
「しかしさあ、何よコレ」
「見て面白いものじゃないな」
リングからMSが近づいてくる。ウィンダム部隊だ。
「お客さんね」
「呼んだ覚えはねぇよ」
「くそったれ。゛姉ちゃんとしようよ!゛のとも姉攻略間近だったのに」
- 102 :しのはら :2005/10/01(土) 12:11:44 ID:???
- ザフト艦隊は集結を終え、月基地への針路を取っていた。
空母ゴンドワナを中心にし、数にして百隻は下らない。
マユはアサルトシュラウドを装着しているインパルスの前にいた。
最終決戦を前にして、インパルスは増加装甲を身にまとい、機動力も大幅に強化されている。
「あ、マユ。ここにいたんだ」
「ルナお姉ちゃん」
ルナマリアはマユへと漂ってくる。
「どうしたの?」
「ちょっと謝らなきゃと思って」
ルナマリアはかつて、マユに両親を馬鹿にしたことを謝罪した。
「私もいないんだ、親」
「えっ・・・?」
「マンデルブロー事件で死んだわ。私とメイリンは食べていくために軍に入ったの。絶対一番になってやる、妹にいい生活をさせてやりたいと思ってね」
ルナマリアは自嘲する。
「それで人を傷つけるなんて、最低の女よ、私は」
マユはルナマリアに抱きついた。
「そんなことないよルナお姉ちゃん。私はルナお姉ちゃんが大好きだし、メイお姉ちゃんもそう思ってるよ」
「マユは優しいんだね・・・」
- 103 :しのはら :2005/10/01(土) 12:19:11 ID:???
- 「月、アンザッヘルから高エネルギー反応!」
「なんだと!?」
ハイネ隊の目の前に信じられないような光景が広がる。
「反射している?ビームが!?」
「メガトン級のな!」
中継地点リングを中継ぎにして、ビームが反射されていく。
「まずい、艦隊が!」
光の渦が放たれた。あらゆる物を飲み込む光はザフト艦隊を襲い、幾つもの光点が宇宙を照らした。
「艦隊より連絡、戦力の約三割を先の攻撃で喪失!」
グレイシアの報告を聞いたジョーが叫ぶ。
「オレンジショルダーの同志たち!あの忌々しいリングを潰すぞ!」
- 159 :しのはら :2005/10/02(日) 09:50:18 ID:???
- 第三十九話
- 「全滅!?第七艦隊が!?」
「残存艦隊はゴンドワナ及びミネルバを中心にして集結せよ!」
「ハイネ隊から入電、我敵大量破壊兵器中継リングを破壊」
戦力の三割を失ったザフト艦隊は現場指揮官たちの迅速な対応によって再編成され、アンザッヘル基地攻略作戦「トータライズ(しめくくり)作戦」は実行に移された。
「諸君ら一人一人の勇気がこの戦いの勝敗を握っている!」
デュランダルの演説が兵士たちを鼓舞し、士気は否応無しに上がっていく。
ミネルバMSパイロットたちのブリーフィングで、アレックスは皆に言う。
「絶対に生きて帰るんだ。何があっても帰って来い」
- 160 :しのはら :2005/10/02(日) 10:02:23 ID:???
- 決戦が始まった。
ゴンドワナから放出された百機近いMSは大量破壊兵器レクイエム中継リング破壊に向かい、ミネルバを中心にした第七艦隊は月基地を陥落させることを任務としていた。
「敵リフレクターMA確認!」
「接近戦で対抗しろ!」
グフとスラッシュザクがユークリッドを切り裂き、次から次へとやってくるウィンダムをガナーザクとドムが食い止める。
「みんな私について来て!」
マユのインパルス・アサルトシュラウドを先頭にして、MS部隊が防衛ラインに突入する。
マユ、アレックス、キラといったガンダムパイロットの任務は先頭に立って突破口を切り開くことだ。
「ものすごい数です!」
「ひるむな!突撃!」
「ウラーーー!」
数にして二倍はいるウィンダムとザフト軍決死隊の間で激しい攻防が繰り広げられた。
「スペース・ドム隊、あのデカブツをやるぞ!」
「聞いたか野郎共、ついて来い!」
ヤマト大尉のストライクフリーダム、赤く塗られたドム三機が連携攻撃で戦艦を撃沈する。
「ったく、焼け石に水だな。こりゃ」
「へルベルト、一時間もかけれは焼け石も冷たくなる」
- 161 :しのはら :2005/10/02(日) 10:18:15 ID:???
- 「ハイネ隊の野郎共、いくぞ!」
六機のガナーザクが火力のありったけをリングに叩き込む。続いてジンが大型ミサイルを発射し、再チャージを終えたガナーザクがビームを放つ。
「キース、カルマ、もう一発いくぞソキ・・・」
フルパワー三発目で銃身が爆発を起こし、ウィザードを切り離した。
彼らの放ったビームはリングを貫通し、大爆発を引き起こした。
「ゼロ小隊はウィザードの装備を。俺たちは別のリングを潰す!」
第一防衛ラインを突破したマユたちに、最強の敵が立ちふさがった。
「デスティニー!?」
「ここから先は行かせないぞ、マユ!」
グフ三機がデスティニーをヒートロッドで掴むが、デスティニーは光の翼でそれを焼き切る。
「みんなは先に行って!この機体は私が!」
アグニの一射を装甲剥離で逃れ、切り結ぶインパルスとデスティニー。
「あくまでお前が立ちはだかるなら、俺はお前を殺す!」
- 163 :しのはら :2005/10/02(日) 10:31:17 ID:???
- 第四十話
- ミネルバはルナマリアザクと、新型のゲルググ・ヴェステージに守られながら戦線を進んでいた。
「潰し甲斐の無い奴ばっかりだぜ!」
「神楽隊長、油断は禁物ですよ」
神楽はグフからゲルググに乗り換え、そのスコアを伸ばしている。
「だがアホ毛、ここは異常な空間だぜ。吐き気がする」
神楽はダガーを落としながら、呟く。
「あのマユとか言う女、大丈夫か」
「・・・案外、いい人なんですね」
アンザッヘル基地の司令室では、ジブリールと基地司令がその戦況を見ていた。
「第二リングが破壊されました!」
「うろたえるな。艦隊さえ始末できればそれでいい」
ジブリールは当初レクイエムでプラント本国を撃つ予定だったが、出力の問題で艦隊攻撃だけに留めた。
「ザフトも必死ですな。まあ、それもあと少しでしょうが」
「ここで奴らの艦隊を潰しておけば、もはや我々の勝ちだ」
- 164 :しのはら :2005/10/02(日) 10:39:43 ID:???
- マユとネオは一進一退の攻防を繰り広げていた。
互いに覚醒し、明らかな殺意を持って襲いかかる。
「今、お兄ちゃんの中では戦いが始まっているんだよ!善と悪の」
「ほざけ!」
「私はお兄ちゃんを殺したくない!」
「口と行動が別だ、マユ!そして、俺を殺さなければ・・・」
光の翼が展開される。
「お前が殺されるだけだ!」
右手がインパルスに向けられた時、声が聞こえた。
(だめ、ネオ)
(カッコ悪いぜ、そんなの)
(他にやることあるんじゃねぇか?)
「何だ!?うわっ!」
ドラグーンがネオを襲う。アレックスのレジェンドだ。
「マユ、こいつは俺に任せろ!お前は基地突入部隊の援護を」
「はい!」
- 165 :しのはら :2005/10/02(日) 10:52:20 ID:???
- レジェンドはドラグーンを切り離し、ネオに攻撃を仕掛けた。
アレックスは回線を開く。
「お前は未来を殺す気か!?」
「未来?そんなものはどこにもない、俺にはな!昨日も今日も明日も明後日も!」
直感的機動なドラグーンを次々に切り裂き、ネオは言う。
「だから俺は決めたんだよ!」
ドラグーン集中砲火をシールドで防ぐネオ。
「コーディネーターの未来を奪ってやろうってな!」
「逆恨みもいいところだ、ウジ虫め!」「逆恨みで結構。なんとでも言え!」
アレックスはなおも攻撃の手を緩めない。
「妹はどうするんだ!?マユはまだお前を・・・」
ドラグーンフルバーストがデスティニーを狙い、翼を撃ち抜く。
「お前は妹の未来すらなくそうというのか!」
「黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇっ!お前に何がわかる!」
「何もわからない!だがわかろうと努力はしているつもりだ!」
アレックスは語る。所詮人は他人を理解できないのかもしれない。だが、理解しようとしてみる価値は充分にあると。
- 166 :しのはら :2005/10/02(日) 10:56:06 ID:???
- 一筋のドラグーンがデスティニーの足を止め、凄まじい砲火がネオを襲う。
これはアレックスの作戦だったのだ。
だがデスティニーは右腕を失いながらも月基地、マユのいるところへ向かっていった。
「アレックス隊長、第二防衛ラインが手詰まりよ。支援に向かってちょうだい」「・・・了解です」
- 243 :しのはら :2005/10/03(月) 19:00:04 ID:???
- 第四十一話
- 地球軍とザフト軍の戦いはこのアンザッヘル第二防衛ラインで死闘の極みに達していた。
「奴らもうここまで来やがった!」
「もうミサイルがない、ギャアアア!」「各艦、弾幕薄いぞ!何をやってるんだ!」
ドムが戦艦のブリッジを潰したがと思えば、105ダガーに真っ二つにされる。
グフとソードウィンダムが斬り合い、グフがヒートロッドでウィンダムを切り裂く。
誰もが必死で戦う地獄の中を、インパルスは駆け抜ける。
第二防衛ラインを突破したマユの前にザムサ・ザーが立ちはだかるが、マユはそれを一撃で倒す。
「邪魔しないでよ!」
覚醒したマユは次々にウィンダム、ダガーを葬り去っていく。
- 244 :しのはら :2005/10/03(月) 19:11:06 ID:???
- 第二防衛ラインを突破され、地球軍はレクイエムを再び放った。
中継リングを破壊されたため全滅は逃れたが、あと三発も撃たれたら完全にアウトである。
キラは自ら、レクイエムジェネレータ破壊を直訴した。
「自分が行ってジェネレータを潰します!自爆してでもっ!」
フルブーストのフリーダムに、MSが集まってくる。ドム三機に、ハイネ隊ザクだ。
「君たちはさがれ!俺だけでいい!」
「うぬぼれないでくださいな大尉。一人で戦局変えられる人間なんざクソアニメの主人公ですよ」
ハイネ隊からも通信が入る。
「ドナドナ歌われてきたんだ!付き合いますよ」
「ハイネ隊長の敵討ちだ!」
キラは思わず、自分を恥じた。
「すまない。俺の勘違いだったな・・・」
「さ、行きましょう!」
「面白くなってきた!」
「俺は死なないぜ。フェイトを見るまで!」
ストライクフリーダム、三機のドム、ハイネ隊六機のザクはアンザッヘルへと突撃した。
- 245 :しのはら :2005/10/03(月) 19:19:06 ID:???
- ミネルバは多数被弾しながらも、構わず前進し続けていた。誰もがノーマルスーツを着ている。
「ミサイルは一発も残すな!撃ちまくりなさい!」
タリアは手に息子の写真を握り締めながら指揮を執っていた。
「これで我々の来年度予算はゼロですね」
「来年度があればよアーサー!」
モニターにはレクイエムが映っている。再チャージまでの時間は少ない。
だがレクイエム最後の中継リングはガーディ・ルーを中心にした艦隊に守られ、容易に接近できない。
「時間がないわ!全艦、ボギーワンに攻撃を集中!」
「了解!」
- 247 :しのはら :2005/10/03(月) 19:28:59 ID:???
- 第四十二話
- アレックスは猛烈な対空砲火をかいくぐってガーディ・ルーに肉薄し、ドラグーンフルバーストを叩き込む。
だが陽電子リフレクターに守られたガーディ・ルーはそれを無効化してしまう。その時、懐かしい声が聞こえてきた。
「お困り?」
「新型に乗って何をやっているんだ!貴様!」
白いグフと黒いザクファントムだ。
「誰だ?炒飯とミスリルの軍曹か?」
「キツいね、全く」
「貴様ァ!このイザーク・ジュールを忘れたか!」
「思い出してしまった・・・クソ」
スピーカーから大声で叫ぶイザークの様子が目に浮かぶ。
ディアッカはイザークをなだめた後、アレックスに回線を開いた。
「まあ、加勢の一つでもしようってさ」「出戻り仲間と会えて嬉しいよ」
- 248 :しのはら :2005/10/03(月) 19:41:56 ID:???
- 基地に取り付いたマユのインパルスに、再びデスティニーが襲いかかる。
「ザフトになんか入らなければ、苦しまなかったのに!」
「苦しいのはお兄ちゃんの方だよ!なんでこんな、いっぱい人を殺すようなことをするの!?」
ネオはビームを避けながら、マユに言う。
「俺は理不尽な形で未来を奪われたんだ!だから、コーディネーターの未来を奪ってやる。ナチュラルはその後だ!」
「誰が喜ぶっていうの、そんなこと!」「俺は嬉しい!鳥肌が立つくらいにな!」
「そんなの間違ってるよ!」
マユは涙を流して訴えた。
「私は確かに未来を奪われたかもしれない。でもね、私は未来を自分で作ってみせる」
「戯れ言を!これは運命なんだマユ!誰も定められたレールから逃げられはしない!」
「違う!運命は・・・運命は!」
覚醒したマユの中で、再び何かが弾けた。
「自分で切り開くものなんだよ!」
ネオの対応が一瞬遅れ、デスティニーの両足が切り裂かれる。
光の翼を展開して、ネオは基地内部へ向かった。
- 249 :しのはら :2005/10/03(月) 20:02:57 ID:???
- 「突入する!」
インコムを始めとした、ありったけの火力がゲートを破壊、MS隊が内部に侵入した。
「ロストバージンだ!」
「うるせぇキース!」
内部の戦艦や並んだウィンダムを、面白いように撃破していくハイネ隊とドム。彼らはさしたる抵抗もなき、ジェネレータ中心部へと到達した。
「あたれぇぇぇぇ!」
ストライクフリーダムのフルバーストに続いて、
「行くよ野郎共!ジェットストリーマーアタック!」
「名前変わってないか?ヒルダ」
「世の中気にしねぇんだよ、んなこと」
三機連携でサブジェネレータを破壊し、監視システムをダウンさせた。
最後にハイネ隊六機が、
「ビューティフルドリーマーアタック!」
カルマ、キース、ゼロの三機がブレイズ装備でミサイルからビーム、最後にトマホークを投擲。
「俺たちはビューティフルドリーマーアタック゛TYPEーMOON゛だ!」
アキラ、ジョー、グレイシアのガナー装備で撃ちまくり、最後にウィザードを投げつけた。
「脱出するぞ!」
彼らは長居することなく、さっき来た道を全速力で引き上げた。
「ハイネ隊長見てますか?仇は取ったぜ・・・」
- 279 :しのはら :2005/10/05(水) 08:21:55 ID:???
- 第四十三話
- 地球軍とザフト軍の兵士たちはただひたすらに愛する家族、故郷、そして自らの名誉に賭けて戦い続けていた。
誰もが平和への願いを抱きながらも、引き金を引くのをやめない。
「いくぞ!ディアッカ、イザーク!」
「おう!」
「いつから俺より偉くなったんだ、貴様ァ!」
ザクファントムがガーディ・ルーの船体ギリギリを掠め、陽電子リフレクター発生装置を撃ち抜き、白いグフが主砲を二連続で破壊。
「いまだアスラン!」
「メインは貴様にくれてやる!」
「盛大に決めてやる、よく見てろ!」
機体から全てのドラグーンが切り離され、ガーディ・ルーを襲う。
「俺からのプレゼントだ!受け取れ!」
ビームスピア化したドラグーンがブリッジを貫き、直後に大爆発を起こす。
「グゥーレイトォ!」
「イーヤッハァ!」
「ざまあミロ!」
付近で戦っていた兵士たちからも、歓声が上がった。
- 280 :しのはら :2005/10/05(水) 08:40:10 ID:???
- レクイエムジェネレーターを破壊され、敗北を知ったジブリールはアンザッヘル基地からの脱出を決意した。
基地司令はジブリールを呼び止めた。
「逃げるんですか?」
「違う!勝利への撤退だ」
「ごまかさないでください、ジブリール理事」
司令室にいる兵士たちが、ジブリールに視線を向けた。口々に非難の言葉を叫ぶ。
「あんたのせいでこんなことになったんだ。責任取ってくださいよ」
「自分だけ逃げるなんで卑怯ですよ!」
ジブリールはそれを圧倒するように、声を上げる。
「黙れ!私が失われれば、あの宇宙の化け物たちは・・・」
司令官は冷ややかな目でジブリールを見、回線を開いた。
「ロアノーク大佐に連絡、ジブリール理事の脱出を支援せよ」
言った後、司令官はジブリールを押して部屋から叩き出した。
「ザフト軍に連絡しろ。我々は現時刻を持って、全ての戦闘行為を停止するとな」
- 281 :しのはら :2005/10/05(水) 08:51:42 ID:???
- それまで戦っていた地球軍部隊は、即座に戦闘を停止し、投降を始めた。
武器を捨て、手を上げ、コクピットから降伏した兵士が出てくる。
「ジブリールを探せ!基地内部にいるはずだ!」
マユはデュートリオンビームでエネルギーを補充、ソードに換装してアンザッヘル基地内部へ侵入した。
「シャトル!あれかな?」
投降した基地司令官からの情報で、ジブリールの乗ったシャトルの位置は伝えられていた。
シャトルに最も近いのはマユのインパルスだった。
シャトルを向かった時、一筋のビームがインパルスの直前を貫いた。
「・・・お兄ちゃん」
応急処置で両足を修復されたデスティニーだ。
「運命が自分で切り開くものだというなら・・・」
対艦刀を引き抜くネオ。
「俺を倒して証明してみせろ、マユ」
- 295 :しのはら :2005/10/05(水) 19:07:06 ID:???
- 最終回
- 静寂を切り、二機は激突した。
「いえああああ!」
「てえええーい!」
インパルスは二本の対艦刀を振り回し、デスティニーに接近戦を挑んだ。
アグニの一射を間一髪避け、懐に潜り込む。
「俺が殺せるか?マユ!」
切られたアグニをパージし、残像を残しながら、デスティニーはインパルスの背後に回った。
「私が殺すのはネオだよ!」
機体を分離して斬撃を避け、お返しにビームライフルを叩き込み、バックパックを潰す。
「ネオ・ロアノークの呪縛から、シン・アスカを救ってみせる!」
「戯言を!甘さは自分を殺すぞ!」
ハイネ、ステラ、クリス、そして散っていった名も無き兵士たちがフラッシュバックしていく。
「それでも、それでも・・・!」
ブーメランが痛んだデスティニーの右足を切り落とす。
「私はお兄ちゃんにいてほしい!大好きだったシンお兄ちゃんにいてほしいんだよ!」
- 296 :しのはら :2005/10/05(水) 19:17:42 ID:???
- 「ふ、ふざけるな!」
ネオ・・・いや、シン・アスカは動揺し始めていた。
「俺は妹なんていらない!」
(嘘はダメ、ネオ)
ステラの声が聞こえた気がした。シンは妹代わりの、痩せた優しさの矛先をステラに向けていたのだ。
「うるさい!何なんだ!」
シンが取り乱す間に、デスティニーは損傷の激しさを増していく。左腕はなくなり、アグニも残っていない。
「ネオ、何をやっているんだ!?」
ジブリールからの通信も耳に入らない。
「うわあああああっ!」
ネオの中で何かが切れ、ライフルを捨ててインパルスに突進していく。デスティニーには最後の武器が残っていた。
「しまった!」
ライフル、そして機体のエネルギーが尽きた。VPS装甲が落ち、機体が灰色に変わる。
「終わりだ!」
パルマフィオキーナに光が迸る。今コクピットに直撃されたら、完全に終わる。
- 297 :しのはら :2005/10/05(水) 19:24:12 ID:???
- マユは死を覚悟した。光が目の前に広がっていく。
たがパルマフィオキーナはコクピットの直前で止まっていた。
「マユ、俺の名前を言ってくれ・・・」「シン。シン・アスカだよ!」
「そうだったな。マユ」
「・・・えっ?」
シンは機体の方向を、シャトルへと向けた。
「ネオ!何をやっている?早くそのMSを・・・」
「俺は・・・」
デスティニーの目に光が宿る。
「俺は・・・」
光の翼が無限に広がっていく。
「俺はシン・アスカだ!」
「やめろ!」
デスティニーは基地内壁を切り裂きながら、シャトルをパルマフィオキーナでジブリールもろとも宇宙の塵へと変えた。
- 298 :しのはら :2005/10/05(水) 19:31:00 ID:???
- 戦いが終わり、デスティニーがインパルスに近付いた。不思議と恐怖は感じない。
「ごめんな・・・と言っても、許してもらえないな」
「・・・ううん」
ネオは死んだ。今いるのは、あの優しかった兄のシンだ。
「お兄ちゃん?」
「そうだ、マユ」
ヘルメットを外したマユ。無重力に涙が浮かぶ。
「泣くなって言っても、無理だよな・・・」
「もう泣かないって決めたんだけど」
その時、館内放送が鳴り響いた。
「レクイエム、第二ジェネレーター稼働」
- 299 :しのはら :2005/10/05(水) 19:37:39 ID:???
- ネオはデスティニーを駆けた。
「お兄ちゃん、どこへ行くの!?」
「第二ジェネレーターを潰しに行く」
「でも、その機体じゃ・・・」
「ここに一つ、アンリミテッドパワーが残ってる」
マユはネオの意志を悟った。核爆発でジェネレーターを吹き飛ばすつもりなのだ。
「ダメだよ!お兄ちゃんは助ける!」
「・・・もう助けてくれたよ。ありがとう」
二機はゲートをくぐり抜け、ジェネレーターへとたどり着いた。途中何回もマユは説得を試みたが・・・。
「これが最低の兄にできる、最高のことだ」
デスティニーが近づき、ハッチが開く。そこからシンが出、マユもハッチを開けた。
二人は漂い、手を掴んだ。
- 300 :しのはら :2005/10/05(水) 19:45:40 ID:???
- マユの目から、涙がとめどなく流れた。シンはマユをそっと抱きしめる。
「泣くなマユ。俺の知ってる妹はもっと強い」
「・・・でも」
「お前は俺を守ってくれた。今度は俺がお前を守る番だ」
シンはそう言って、デスティニーのコクピットへ戻っていく。
マユもインパルスへと戻る。
「馬鹿だなあマユ。お兄ちゃんが死ぬとでも思ってんのか?」
笑いながら励ます顔は、あの頃のままだった。
「さっきは妹なんていらないと言ってゴメンな。マユは俺の一番大切なものだよ」
デスティニーは急加速でインパルスに迫り、さっき来たルートにインパルスを放り投げた。
「愛してるぞ、マユ」
- 301 :しのはら :2005/10/05(水) 19:59:42 ID:???
- 「艦長、インパルス、マユは!?」
アレックス、キラ、ルナマリア、神楽が口を揃えて言い、タリアは首を横に振る。
「先ほど基地内部に突入してから、連絡がないわ」
直後、アンザッヘル基地が凄まじい爆発に包まれた。
「そんな・・・マユ」
「マユ!」
「ウソだろ、オイ!」
基地のあちこちで爆発が起き、戦艦やMSの残骸が吹き飛ばされていく。
その爆発の中から、一機の飛行機が飛び出した。
コアスプレンダー、マユだ。
マユから通信が、宙域全体に響き渡った。
「こちら、ミネルバ所属、マユ・アスカ。ミネルバ、聞こえますか?」
震えるメイリンの声が聞こえてきた。
「こちらミネルバ。こちらミネルバ、マユちゃんの帰還を待ってます!」
MSがコアスプレンダーへと向かっていく。
マユはコクピットの中で呟いた。
「ステラ、アウル、スティング・・・私はなんとか生きてるよ」
キャノピーを上げ、ミネルバに視線をやる。
「また、会えるよね?お兄ちゃん・・・」
機動戦士ガンダムSEED DESTINY ーマユ戦記ー
完