- 350 :マユ戦記特別編「歌姫の復讐」 :2005/10/07(金) 19:13:50 ID:???
- 第一話
コズミック・イラ73に再び勃発した地球連合対プラントの戦いはその中で死の商人ロゴス、反コーディネーター組織ブルーコスモスも壊滅の憂き目に遭った。
ナチュラルとコーディネーターが引きつった笑いを浮かべながらも手を取り合って歩み出した時、思わぬ来客が訪れた。
ラクス・クラインを首謀者とした武装テロリスト集団「ネオザフト第四帝国」の出現である。
ネオザフトはラクス・クラインによる地球圏の統一を掲げ、無差別な攻撃を開始した。
ネオザフト軍はプラント評議会を「烏合の集」とし、アブリリウス・ワンへの武力侵攻を開始した。
- 351 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/07(金) 19:29:23
ID:???
- プラントの前面では、壮絶な戦いが展開されていた。
ネオザフト艦隊旗艦のエターナル艦橋でラクス・クラインは呟く。
「早くアブリリウスを潰してくださいな。お昼になってしまいますわ」
「核攻撃隊は敵防衛ラインを突破、現在第二防衛ラインへ進行中」
「・・・ブルーコスモスのエリートだっていうから使ってみたら、案外ダメですわね。やっぱり、ナチュラルはコーディネーターに劣る種ですわ!」
副官はラクスをたしなめる。
「ラクス様、問題発言はお控えください」
「事実を言ったまでですわ」
ラクス・クラインは先日、未だ残るクライン派により救出、二年間暗礁に潜んでいた私兵部隊と合流した。
「・・・世界は私によって統治されなくてはならないのです。ネオザフトの皆さん、何としてもあのプラントを破壊しなさい!」
- 352 :マユ戦記 特別編「歌姫の復讐」 :2005/10/07(金)
19:40:54 ID:???
- ザフト艦隊の旗艦、ミネルバ。先の大戦で「第二のアークエンジェル」と呼ばれた戦艦である。
「マユ・アスカ、インパルス発進位置へ!」
マユ・アスカはコクピットの中で目を閉じていた。
大戦を通じて活躍したガンダムエースの一人で、ダイヤモンド付きネビュラ十字勲章を授与された13歳の女性パイロットである。
「マユ、敵の中には核を搭載したMAも確認されているわ。それを最優先で狙って」
「了解!」
艦長タリアに、マユは強い調子で返した。
ハッチが開き、いくつもの命が輝いては消える宇宙が覗く。
「お兄ちゃん、みんな、私を守ってね」
一呼吸置いてから、マユは機体を踊らせた。
「マユ・アスカ、インパルス行きます!」
少女は再び戦場に旅立った。
コズミック・イラ73年11月、戦いはまだ終わらない。
- 377 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/08(土) 11:07:43 ID:???
- 第二話
- 発進したブラストインパルスはすぐさま、一機のジンハイマニューバを撃墜した。敵機はジンからウィンダムまで多種多様に揃っていた。
マユは遠くに位置するエターナルを見、不快な感触を覚える。全身を舐められるような、肌寒いプレッシャーだ。
「こちらはネオザフト軍、ラクス・クラインです。ザフト軍は直ちに戦闘行為を停止しなさい!」
マユは「ハァ?」と声を上げた。全く持って意味がわからない。
「・・・馬鹿じゃないの?ラクス様」
赤いブレイズドムトルーパーに乗るルナマリアが失笑したー周りで戦うザフト兵はラクスの言葉を、ただの戯れ言としか聞いていない。
今、ラクス・クラインは大戦を激化させた凶人としてプラント中だけでなく地球でも憎悪されている(ミーア・キャンベルは偽物だが、キャバクラ嬢からアイドルにのし上がったことで絶大な人気を誇っているが)
「マユ、馬鹿が移る前に仕事しましょ!」
- 378 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/08(土) 11:17:43
ID:???
- ブリッジに入ってきた人物を見て、ラクスは喜んで駆け寄った。
「キラ!」
キラ・ヤマトはラクスを受け止める。
ラクスは悲しげな表情をした。
「私の話を、誰も聞いてくれませんわ・・・。私は無力です」
「そんなことないよラクス。彼らは聞かないんじゃなくて、わからないんだ」
「・・・そうですわね!」
「ラクスはいつだって正しい。君は世界の意志なんだ」
「キラ・・・」
「僕は行くよラクス。君を理解しない人間なんて、許せないじゃない?」
ラクスが頷き、副官は艦内電話を取る。
「格納庫、フリーダム出せ!ミーティアは出すな」
ラクスは艦長席へ戻る。
「まずやってみる」
副官は疑問を浮かべる。
「なんです?」
「そしてやり通す」
ラクスは微笑した。
「我々は正しいのです。だから戦っていい、そういうことですわ」
- 379 :通常の名無しさんの3倍:2005/10/08(土) 11:35:40
ID:3u5mFzEP
- 核攻撃隊を迎撃していたザフトMSが、突然戦闘不能にされてしまう。
手足をもがれ、達磨になる機体も多い。
「僕たちの邪魔はさせないよ」
現れたのはフリーダムだ。かつて大戦を終結に導いた、伝説的機体。
「タイムスリップでもしてきたの!?」
ルナマリアのドムが放ったビームはあっさり避けられ、反撃でドムの両手が破壊される。
「やめてよね。スーパーコーディネーターの僕に、君みたいな名無しが勝てるわけないだろ」
「そいつはどうかしら?」
ルナマリアは拡散ビームでフリーダムの視界を奪い、ミサイルを叩き込む。
「君は・・・どうしてっ!」
「マユ、このナルシストをさっさと始末しなさい!」
ケルベロスがフリーダムのライフルを溶解させる。
「あなたはヤマト大尉じゃない!」
「何を言ってるの?僕はキラ・ヤマトだ」
マユはジャベリンを抜き、フリーダムへ突進した。
「もしそうでも、私はプラントを守る」「・・・そう」
「それに、あなたみたいな人は大嫌いなの」
- 455 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/09(日) 10:26:25 ID:???
- 第三話
- ギルバート・デュランダルは議長室で逐一入ってくる情報を黙って聞き、冷淡な口調で指示を出していた。
「核攻撃隊を最優先で狙ってくれ。エターナルはこの際仕方ない。スタンピーダーは最後の手段だ」
電話を置き、デュランダルはミーアを見やる。
ミーアは気まずそうに顔を背けた。
「何、気にする必要はないよミーア」
「・・・でも」
デュランダルは苦笑する。
「君は素直でいい子だね。やはり、下を知る人間は違うよ」
最高の環境、最高の生活を送ってきたラクス・クラインは自らを神と考えているらしい。
タチの悪いことに、ラクスは妙なカリスマ性と財力を有し、それを利用して巨大なテロリスト集団を結成したのだ。
「なんとしても、彼らを止めなければ」
ミーアは強く頷いた。
「はい!」
- 457 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/09(日) 10:36:29
ID:???
- 「なんでラクスの邪魔をするの?」
フリーダムの攻撃は正確を極め、マユはギリギリの戦いを強いられた。
「邪魔しないほうがおかしいよ!」
放たれたレールガンをミサイルで迎撃し、ケルベロスを放つ。
火力だけなら、フリーダムよりブラストインパルスの方が上だ。
「ラクスは、みんなの意志を背負って戦っているんだ。君は、君はそれを・・・」
構わずマユは攻撃する。
「意志って何なの?話し合えばいいじゃない!」
ブラストのオールウエポンアタック。
「核ミサイル持ってきて、何がみんなの意志だよ!」
みんなの意志を語れるのは、戦場に散った無名兵士だけだ。
「でも・・・」
「でも何!?言ってみてよ!」
フリーダムをインパルスは攻める。アレックスから学んだ、「話術で相手を動揺→攻撃」の応用だ。
「ラクスは悲しんでるんだ!こんな世界が嫌で」
「・・・頭大丈夫?」
- 458 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/09(日) 10:50:06 ID:???
- プラント第二防衛ラインを突破したメビウス隊は、アブリリウスに向け躊躇なく核ミサイルを放った。
「さあ行け!今度こそ、青き清浄なる・・・」
「さて、オペを始めようか」
メビウス隊の直上から奇襲するジン・ハイマニューバ隊。
「ミハイル隊長、核ミサイルが発射されました!」
「腫瘍が勝手に切除されてしまったか。興味深い」
先頭のメビウスを切り裂き、次々に撃墜するハイマニューバ。
「オペは久々だが、腕は衰えていないようだ。まあ、当然のことだが・・・」
「隊長・・・勘弁してくださいよ」
「気にするな、保険会社には連絡してある」
「意味違うような・・・」
プラント最終防衛ラインに展開したナスカ級から、光が放たれる。
光は核ミサイルを飲み込み、メビウス隊をも消滅させた。
「さて、オペは終わりだ。本日休診」
「・・・ドクター」
- 651 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/11(火) 08:16:32 ID:???
- 第三話
- プラントへの核攻撃はニュートロンスタンピーダーにより阻止された。
核攻撃を阻まれたネオザフト軍主力は戦闘終了より前に離脱し、再び暗礁宙域へと消えていった。
プラント評議会はネオザフトをテロリストとして認定、全会一致で討伐が承認され、国民の大半がそれを支持することとなる。
ネオザフト討伐のためザフト軍が動き出した頃、地球では・・・。
「随分手荒なやり方だな、全く」
「それに関しては謝罪します」
アレックス・ディノは電気カミソリで髭を剃りながら、ヘリに揺らしていた。
「特殊部隊で休暇中の兵士を連れてくるなんて、俺はなにか悪いことでも・・・まあ、してるが」
「いえ、゛あなたの件゛ではありません」
係官はノートパソコンを起動し、モニターを見せる。
そこにはエターナルや、戦場を乱舞するフリーダムの姿が。
「これは記録映画か?」
「いえ、今から十七時間前撮影されたものです」
アレックスは係官に詰め寄る。
「本当か?」
「・・・残念ながら」
- 652 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/11(火) 08:33:35
ID:???
- 戦闘が終了してからしばらく警戒態勢に入っていたミネルバは、警戒任務をナスカ級に引き継いだ後、軍事ステーションへと入港した。
帰還してから部屋で仮眠を取っていたマユは起きるなり、タリアに呼び出される。
「失礼します、艦長」
「いいわ。楽にして」
タリアはマユの活躍を褒め称えたが、マユは喜ぶ前に問いたいことがあった。
ラクス・クラインについてだ。ミーア・キャンベルが彼女になりすまし、偽物としと人気を得ているのは知っている。だが、本物のことはあまり知らない。マユは大戦中のゴタゴタにプラントに移民したからだ。
「平和のために戦った、英雄よ」
「嘘ですよ」
「まあ、それは二年前の話で。平和のためにと言いながら、戦艦強奪に核エンジンMS奪取。あとは・・・」
「原稿用紙が埋まりそうですね」
タリアは苦笑した後、マユに新しい任務を伝えた。
「我々はネオザフト軍討伐のため、スペースデブリ帯に向かいます。疲れているだろうけど・・・」「いえ、行きます」
マユは毅然とした態度で言う。
「あの人たちは本当に危険だと思います。今のうちに叩かないと」
- 654 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/11(火) 08:45:04
ID:???
- オーブ近海にある三隻同盟軍海上基地では、大天使が動き出そうとしていた。
マリュー・ラミアスを筆頭にした旧クルーたちが共通の目的のもと集まったのだ。
「ミリアリアさんは?」
「ミリィはジャーナリストですから・・・」
「キラくん、いえ、ヤマト大尉は?」
「ミナさんの所にいます」
二人で話すマリューとサイに、一人の青年が割り込んだ。
「あの、ラミアス艦長でありますか?」「あなたは?」
端正な顔に傷を付けた青年は答える。
「今日付けで三隻同盟、アークエンジェルに配属された・・・」
青年は運び込まれるストライクMkUを見やる。
「ネオ・・・いえ、ゲン・へーアン少尉です。よろしく」
- 685 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/12(水) 12:53:45 ID:???
- 第四話
- スペースデブリ帯、ネオザフト艦隊係留地点からほど近い宙域。
エターナルの艦橋ではラクスとキラが、会議という名の「確認」を行っていた。ネオザフトは事実上、キラとラクスによって統制される組織だ。彼女のカリスマと財力があってネオザフトは機能している。
(゛キラ゛は従順で優しい方ですわ。まさしく、人はこうあるべき見本です)
ラクスは心の中で呟くと、壁のモニターに視線を向けた。
画面の中ではデュランダル議長がネオザフト非難声明を発し、盛大な拍手を浴びている。
「なんで僕たちを、非難するんだろうね・・・」
「わかりませんわ。私たちは戦いをなくすために、こうしてここにいるというのに」
キラはにこやかに笑った。
「でもラクスや、僕は世界を守るために戦ってるんだ。それを非難するなんて許せないよ」
「世界を守るためなら、戦ってよい。私はそう考えています」
- 686 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/12(水) 13:10:05
ID:???
- カーペンタリア基地に到着するなり、アレックスはアークエンジェルとの合流を命じられた。
アークエンジェル格納庫に待機する三機のガンダムを、アレックスは見る。
ガイア、ストライクMkU、そしてアレックスのセイバー。
「レジェンドはさすがに使えないか・・・」
先の大戦で彼が搭乗したレジェンドガンダムは核エンジン、過度の重武装が平和維持活動には不要との理由で、現在はプラントにストライクフリーダムやデスティニーと共に保管されている。
ストライクから降りてきた青年に、アレックスは声をかけた。
「いい機体だな。こいつはストライクの後継機か?」
青年は丁寧な口調で答え、どこかで見たような印象を与える。
「いえ、マイナーチェンジ版ですよ。量産されそこねて、ここに来たらしいです」
アレックスは「ほう」と関心した後、青年に問う。
「少し前に会わなかったか?月あたりで」
ゲンは冷や汗を浮かべて言い返す。
「や、やだなぁ!気のせいですよ」
「おかしいな。あとジブラルタルあたりでも会った記憶がある」
「な、何のことだか全然わかりませんよ・・・」
ゲンはごまかした後、急いでそこから立ち去った。
- 687 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/12(水) 13:20:12
ID:???
- MSデッキで調整を行っていたマユのところに、ルナマリアがやってくる。
彼女は戦後も軍に残り、ミネルバ所属のパイロットとして日々を送っている。妹のメイリンとはうまくいっているらしい。
「調子はどう?マユ」
「大丈夫。ルナお姉ちゃんは?」
ルナマリアは親指を立てた。
「バッチコーイ」
「バッチグーだよ・・・」
「まあ、それは置いといてさ。全く意味不明よね!ネオザフトって」
ルナマリアはうんざりしたように言う。
「わかる人間なんていないよ・・・」
「正しく負債、世界の負債よ。平和平和って、しこたま核ミサイル用意して・・・」
その時、艦内に警報が鳴り響いた。敵艦隊らしきものをキャッチしたのだ。
「さあ、負債は早く処理しないとね!」
- 16 :しのはら ◆LFzv0/sNaQ :2005/10/13(木) 13:03:52 ID:???
- 特別編「ヤマト大尉の回顧録」
- 俺の人生はある所から狂い始めた。
中立国オーブのコロニーヘリオポリスで平和を享受していた俺たちに鉄槌が下ったのは、丁度コーディネーター対ナチュラルの争いが膠着状態に陥った頃だ。
地球軍のMSを秘密裏に開発していたヘリオポリスはザフト軍の奇襲を受け、そこから派生した戦闘で崩壊した。
流れで地球軍MS「ストライク」に搭乗するハメになった俺は友人たちを守りたい一心で、アラスカへ向かうアークエンジェルと行動を共にした(まあ、せざるを得なかった面も多少あったが)
俺は戦いの中で精神をすり減らす中、コーディネーターの自分とナチュラルの友人たちの距離を感じるようになっていた。
フレイ・アルスターと傷を慰めあったのも、丁度この頃になる。
オーブで内密に補給及び修理を得たアークエンジェルは、俺の親友アスラン指揮する部隊に奇襲され、俺は辛くも四機のガンダムのうち一機を撃破した。その機体はニコルとかいう少年のもので、アスランの親友だったらしい・・・。
次の戦闘で親友を殺されたのは俺の方だった。トール・ケーニヒ・・・断末魔の絶叫は今でも頭から離れない。
俺は逆上し、明確な殺意を持ってアスランに襲いかかった。その内容は未だに思い出せない、いや・・・思い出したくないのだ。
その戦いで俺はアスランの自爆攻撃を受け、MIAに認定されてしまった。
- 17 :しのはら ◆LFzv0/sNaQ :2005/10/13(木)
13:15:04 ID:???
- 気付いた時、俺は大いなる罠の中へ入っていた。
俺は大火傷を負い死にかけていたところを通りすがりのジャンク屋に拾われ、何を間違ったかプラントに来てしまっていた。
ピンクの・・・いや、悪魔の歌姫ラクス・クライン
俺はラクスの邸宅にかくまわれ、彼女に洗脳されてしまった。「彼女は正しい」という思考を植え付けられたのだ。
彼女は言った。
「思いだけでも、力だけでも駄目なのです」
今考えると、ある種のコメディだ。その二つを両立させるのは不可能だ。できたとしても、一人で行えるものでは到底ない。
その後俺は洗脳されたまま、アークエンジェルクルーや親友のアスランをも仲間に引き入れ、戦いを終わらせるために戦う「テロリスト集団」に仲間入りした。
俺たちの活動は確かに戦いを終わらせたかもしれないが・・・。
- 18 :しのはら ◆LFzv0/sNaQ :2005/10/13(木)
13:25:23 ID:???
- 戦後、ラクスや三隻同盟の仲間たちはプラントから逮捕された。
ラクスが頑なに自分の正当性を訴える一方で、「被害者」たちは口裏を合わせて彼女を批判した。
誰だって他人のせいで銃殺されたくはない。
ギルバート・デュランダル議長の弁護もあって俺たちは死刑を逃れた。
アスランはアレックス・ディノとしてザフトに出戻り、ディアッカは親友イザークの監視下で彼の隊に入った。
俺、キラ・ヤマトは帰る場所もなく、ザフト支援組織「三隻同盟軍」大尉として現在に至る。
そしてラクスは超危険分子として軟禁され・・・帰ってきた。世界への怒りを胸にして。
今ネオザフトには「キラ・ヤマト」がいるらしい。勘弁してもらいたいところだ。
だから俺は過去にケリをつけることにした。
・・・許せないから
格納庫のハッチが開き、無限の宇宙が広がる。
俺はムラサメAを飛翔させた。
「キラ・ヤマト、出る!」
- 152 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/17(月) 12:56:59 ID:???
- 第五話
- スペースデブリ帯を進むミネルバに襲いかかるネオザフトMS部隊。
ネオザフトの機体は例外なくピンク色に塗られ、識別されている。
だがルナマリアやマユはただの馬鹿としか、この塗装を思っていない。
「見やすくて助かるわ、弱いくせに」
「なんでピンクなんだろうね・・・」
ルナマリアのガナードムトルーパーは一気にジン二機を撃ち抜き、間髪入れずストライクダガーを叩き落とす。
ネオザフトの機体は一部を除いて旧式機が多く、士気こそ高いものの練度は低い。
ハイマニューバの刀を掴み、腕ごともぎ取るドム。武器を失ったジンのコクピットをパンチで潰して、他の機体へ投げつける。そして、トドメにオルトロス。
「平和への願いだけじゃ戦いには勝てないわよ!」
ルナマリアは不敵に笑う。
「もっとも、平和なんて望んでるのかしら?」
- 153 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/17(月) 13:06:20
ID:???
- エターナルの格納庫では、ネオザフトに合流した「問題児」が騒ぎを起こしていた。
「ですから神楽隊長、機体は全てピンクに・・・」
「テメェは馬鹿か?あんな色にしたらいい的だろうが!」
大戦終結後、プラント側につく傭兵部隊の隊長に就任した神楽は仲間のメリルとヒックスと共に、今はネオザフトで仕事をしていた。
「何を騒いでいるのです?神楽隊長」
ラクスが現れ、神楽は唾を吐く。彼はピンクの歌姫が大嫌いだった。
ラクスは整備員から話を聞き、神楽に言う。
「あなたは私たちの仲間ではないのですか?共に世界を・・・」
「アーアー聞こえないね。俺はそういうの嫌いなんだ」
神楽はラクスにそう言い、愛機のグフ・イグナイテッドへと向かう。
そして演技めいた口調で、
「我らの世界を守るために、人を殺して参ります。・・・お姫様?」
- 154 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/17(月) 13:18:18
ID:???
- 宙域で次々に敵を倒すザフト軍に、三機のグフが攻撃を仕掛けてきた。
JG26のマーキングが施されたグフは他に目もくれず、ドムにヒートロッドを射出、手足を絡めとる。
「まず・・・」
「ルナお姉ちゃん!」
インパルスがドムを助けようとするが、グフのビームバルカンが行く手を遮り、近づけない。
混線する通信から、聞き慣れた声が耳に入る。
「耐電シートは入ってるかぁ!?」
神楽だ。かつて味方として戦ったエースパイロット。
マユは射線を交わしながらヒートロッドを切り、グフに肉薄した。
「あなたは・・・神楽隊長?」
「おやおや、これはスーパーエースのマユ・アスカちゃんのお出ましか!」
「どうして彼を味方するんですか!?」「なぁに、簡単な理由だ」
サーベルを抜き、切りかかるグフ。
「俺はプラントに捨てられたんだよ!」
- 226 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/19(水) 21:17:42
ID:???
- 第六話
- 神楽のグフは量産機とは思えない機動でインパルスを翻弄した。
機体の性能はインパルスがわずかに上回っているが、パイロットの技量は天と地ほどある。
「それでは問題だ、ダイヤモンド付きネビュラ勲章授与者、マユ・アスカ」
ヒートロッドを回転させてザフト軍MSの攻撃を完全に防ぎ、逆に切り伏せていく蒼き鬼神。
神楽の楽しげな声がマユの耳に入り、不快な感触を与える。
「今君と戦っているパイロットはなんて人かな?」
「私たちと一緒に戦った誇り高い軍人、神楽隊長!」
「ブゥ〜!違うんだなこれが。その評価は嬉しいがね」
ヒートロッドでザクを引き寄せ、サーベルで一刀両断にし、インパルスの放った直撃コースビームもあっさりと避けてしまう。
「命まで捧げた国家に裏切られた、哀れな男。それが俺だ、OK?」
マユは説得しようとしたが、それは無理な話だった。
わかるのだ、神楽は自分の意志のみで行動し、戦いにのみ己の価値観を見いだせる人間。
グフが指をくいくいと動かし、マユを挑発する。
「早く遊ぼうぜぇ?濡れてきちゃった」
- 227 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/19(水) 21:30:08
ID:???
- ミネルバが戦い続ける戦闘宙域からほど近い場所、三隻同盟軍アークエンジェルの格納庫では発進準備が進められている。
アレックスはセイバーの調整が終わった後、ストライクの整備を進めているゲンの元へと向かった。アレックスは思い出した、ゲンの正体を。
「少尉、ミネルバが交戦中だ」
「・・・そうですか」
「中にはインパルス・・・確かマユ・アスカもいるらしいな」
OSをいじっていた手が止まる。
「どうした?続けてくれよ」
「・・・マユ?」
アレックスはにやりと笑い、確信を得た。
「地球連合軍大佐、ネオ・ロアノーク。そしてマユの兄、シン・アスカ。そうだな?」
ゲンは気まずそうに視線を反らす。
アレックスは気さくに笑いかけた。
「何、一緒に戦うならそれぐらい聞いてもいいかなと。仲良くしよう。ちなみに俺の本名はアスラン・ザラだ。まあ、デコとヅラ以外ならなんとでも呼んでくれ」
「・・・」
- 228 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/19(水) 21:42:51
ID:???
- グフは損傷した味方機を捉え、インパルスに投げつけてきた。
「なんてことをするんですか!」
「馬鹿に対する最も効果的な治療だよ。死ななきゃ直らんからな」
もつれ合う二機、そこに乱入者が割って入る。
「神楽、何をしてるんだ。ラクスは悲しんでる!」
「・・・また馬鹿が来た」
介入したのはフリーダムと、電波の化身(マユ談)だった。
神楽は大声で叫ぶ。
「お前はどうしていいところに来るんだよぉ!消えな!」
「どうして君は・・・」
「お前なんぞに君呼ばわれされたかねぇよ!アーアー聞こえない!」
グフは宙域から離れる。
そしてキラはマユに言う。
「君が戦うのは・・・何で?何で戦うの・・・?」
「二回も同じこと言わないで下さい。単純にこれしか食べていく方法知らないからです」
「・・・君は・・・いいの?それで」
「良くなければしませんよ」
「よく言ったぞ。マユ」
声が聞こえたか聞こえなかったか、フリーダムのライフルが撃ち抜かれ、青と白に塗られたムラサメがフリーダムを蹴り飛ばした。
「偽物お疲れ様だったな。俺は三隻同盟軍大尉キラ・ヤマト」
「え・・・」
ヤマト大尉は不適に笑う。
「同じ人間は二人もいらない。特にキラ・ヤマトはな」
- 383 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/25(火) 16:58:14
ID:???
- 第七話
- 戦いは神楽が抜けた後、更に混沌の度合いを増していた。
インパルス、フリーダム、セイバー、ガイア、ストライクMkU・・・五機のガンダムが戦場を駆ける。
そして二人の「キラ」は邂逅を果たした。最悪の形で。
デュートリオンビームの補給にインパルスが戻る間、ムラサメとフリーダムは激しく交差する。
フルバーストで放たれたいくつものビームを軽々と回避するムラサメを、フリーダムは捉えられない。
「君はいったい・・・」
「俺が聞きたいくらいだ。兄弟がいた覚えはない!可能性はあるだろうがな」
フリーダムのライフルがあっさりと切り落とされる。
二機はサーベルを引き抜き、鍔迫り合い。
「お前は誰だ!?」
「僕は・・・僕は・・・キラ・ヤマトだ!他の誰でもない、スーパーコーディネーターだ!」
「嘘をつけ。俺はそんなことは言わない。他人の婚約者を二回も奪い、自分の力に酔いつぶれて全てを失った腐れコーディネーター、キラ・ヤマトだ」
- 384 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/25(火) 17:07:45
ID:???
- エターナル艦橋でラクスはつまらなそうに頬杖をつき、撃墜されていく味方機を見て失望の表示を浮かべる。
彼女は慈悲や優しさという言葉を知らない。俗人という生き物は一握りの天才・・・つまり自分によって支配されなけばならない、それが彼女の考えだった。
「やはり人間は私に管理されなければなりません・・・」
ラクスは立ち上がり、宙域全体に回線を開いた。
「皆さん、私はラクス・クラインです。あなた方は自分が何と戦っているか、本当におわかりですか?」
ラクスは毅然とした態度で演説する。
「人の生きる未来、私達は未来を守るために戦っています。私達は世界の意志、正義なのです。正義に刃向かうのは悪、つまりあなた方は世界の敵なのです」
「私達は世界の敵であるザフト、プラントを許しません。直ちに軍を引き、投降しなさい」
- 385 :マユ戦記特別編 「歌姫の復讐」:2005/10/25(火) 17:24:04
ID:???
- 宙域のあちこちから、呆れを通り越した声が聞こえてくる。
「マユ、テロリストに世界の敵扱いされたわよ」
「ルナお姉ちゃん、この人おかしい」
アレックスは苦笑してゲンに通信を開く。
「少尉、馬鹿末期の人間はこうなるいい見本だ」
「こんな奴が世界を支配したら、考えただけで恐ろしいですよ。アンディ隊長はどう思います?」
「まるでケバブに・・・」
「いえ、結構です」
対峙する二人のキラ、ヤマト大尉は腹を抱え、涙を流して大爆笑した。
「人は変わるものだと思うけどな、前よりひどくなってる!こいつは傑作だよ」「ラクスは正しいんだ。何より、君はそれがわからないのか?」
「わからないよ。人にはわかることとわからないことがあるんだ。スーパーコーディネーターでもな」