- 743 :734:2005/07/23(土) 02:29:11 ID:???
- マユ種外伝
PHASE−01 分岐点Bルート
ジュン・クサナギが見たところでは、今日は朝からナナヤ家はいつも以上に忙しそうな雰囲気だった。
いや・・・・・・ナナヤ家の周辺の家も、何件かは忙しそうな雰囲気をしていた。
なぜなら今日は新造戦艦ミネルバの進水式が行われる日だ。
ザフト軍関係者が一般人よりもドタバタしているのは当然といえば当然である。
実際、ザフトの軍人であるジュンの両親は朝早く家を出ており、
今家にいるのはジュンと姉のマナ・ナナヤだけであった。
「それじゃあジュンちゃん。お姉ちゃん夕方までには帰ってくるからね」
「あぁ、俺も今日仕事あるから家に帰るのはそのぐらいだと思うよ。それより姉さん。基地に着いた後は気をつけたほうがいいよ。
居住区がこの忙しさじゃ、基地も相当忙しいかもしれないからね」
「うん。ありがとうジュンちゃん」
そんな会話をした後、ジュンとマナは家を出て分かれた。
姉は進水式場へ、そしてジュンは彼の仕事先である運送会社へ向かった。
ジュンがこのアーモリーワンで暮らし始めたのはちょうど1年ほど前だ。
彼は前大戦で実の両親を失った。その後、彼はマルキオ導師の仲介のもと、このコロニーで暮らすナナヤ家に引き取られたのだ。
本来、ジュンは養子として引き取られたが、彼は姓をクサナギからナナヤには変えなかった。理由は2つある。
ひとつは、死んだ実の両親の分までクサナギ家の子として生きようという自戒。
もうひとつは、自分がナチュラルであるということだ。
ナナヤ家の人たちも、ジュンが姓を変えないことはすぐに認めてくれた。
別にナナヤ家の人たちはナチュラルであるジュンを差別して姓の無変更を認めたわけではない。
ナナヤ家の人たちはちゃんとジュンを人種に関係なく息子として、家族として接してくれている。
ジュンにとってそれは本当にありがたいことだったし、彼もちゃんとナナヤ家の人たちを自分の家族だと思っている。
- 744 :734:2005/07/23(土) 02:31:16 ID:???
途中、進水式会場への道を偶然であった見知らぬ同年代の3人の少年、少女(少年が2人で少女が1人だった)に尋ねられたが、
その後は、何事もなくジュンは勤め先の会社に着いた。
会社に来た後すぐ、ジュンと仲間たちに仕事が来た。依頼は、ザフト軍からのものであった。
「ザフトからの依頼なんてめずらしいじゃない!」
同僚の少女、サツキ・コウサカはザフトからの依頼=大きな仕事=収入が多いと勝手に思い込み嬉しくて飛び跳ねた。
「・・・・・でも、その分危険なんじゃない?」
サツキの友人のアリス・カーシャリーが言った。
サツキもアリスもジュンと同じナチュラルで、なおかつ年が同じということでそれなりに仲が良かった。
確かに、どうしてサツキはなんでそこまで考えないのだろうとジュンは思った。
「いや・・・それが、報酬金は多いんだけどあんまり危険じゃなさそうなんだ」
「「「えっ?」」」
イッサ・マザーズデイの一言で3人は目を丸くした。
「なんでも、デブリ帯に依頼品を捨てていくだけらしい」
運送屋の若社長、ロイド・シュレーバーが付け足した。
「なにそれ? いつから私たちはゴミ処理業者になったわけ???」
ぶーぶーと文句を言うのはやはりサツキだ。
「でも、代金は払ってくれるんだから別にいいじゃないか?」
「俺もジュンに賛同」
「わ・・・わたしも」
「がーーーーーっ!! おまえらグルかぁぁぁぁ!!」
「・・・・ともかく。内容はどうであれ仕事は仕事。すぐに行くぞ」
- 745 :734:2005/07/23(土) 02:33:47 ID:???
ロイドの一言で依頼主の待ちあわせ場所兼会社の物資運搬船「イド」がある港に向かう一同。
港には既にザフトの兵が数名いた。
「依頼品は既に船に載せましたので」
「はい。わかりました」
「代金は指定の講座に振り込んでおきましたので。では、進水式がありますのでわたしたちはこれで・・・・」
「は〜い。毎度ありがとうございました〜♪ また何かございましたらいつでもどうぞ〜♪」
ザフトの兵たちに、本人曰く自分の仕事時の必殺技である営業スマイルをするアリス。
ナチュラルながらアリスの可愛さはジュンやサツキ、コーディネーターであるイッサやロイドも認めるほどである。
(特にイッサはアリスと出会ったばかりのころジュンやサツキに「本当に彼女ナチュラルなのか?」と何度か聞いてきた)
物資運搬船「イド」に乗りコロニーを出発してしばらくした後、積荷を確認した瞬間、ジュンたちは驚いた。
なぜなら依頼された積荷の正体は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おい。これって・・・・・・」
「すごい!! モビルスーツだぁ!!」
「でも、こんな機体見たこと無いよ???」
そう、積荷の招待はモビルスーツ(以下MS)・・・・・それも、ほぼ完成した状態のものであった。
「・・・・ジュール隊隊長のイザーク・ジュールが前大戦の第2次ヤキン攻防戦で乗っていた機体に似ているな・・・・・・
確か、地球連合のGATシリーズと呼ばれている機体だ」
「えっ、連合? ザフトにも似たような機体が数機いたじゃん」
「フリーダム、ジャスティスとかのことか? 確かにそうだが、あれももとは連合の技術も用いてつくった代物だ」
「さすが、元ザフトのMSパイロット。詳しいなぁロイド」
「ふっ・・まぁ俺も第2次ヤキン攻防戦で足を1本という代償を払ったからな」
そう言うとロイドは自分の左足を見た。彼の左足は前大戦の第2次ヤキン攻防戦において失われている・・・よって義足なのだ。
- 746 :734:2005/07/23(土) 02:35:38 ID:???
「でも、ほぼ完全な状態で渡さなくてもなぁ・・・・・・・」
機体の上に乗ったジュンは自分の下で寝ているMSを見ながら言った。
「確かに・・・バラバラにするの面倒だったのかな?」
「だが、エンジンとなる部分が外されている」
「・・・・・・・ってことは、こいつ動かないの?」
サツキが言った。
「いや。変わりになるもの・・・たとえばこの船のバッテリーと動力部を繋げば、OSぐらいは動くかも・・・・・」
イッサがそう言った瞬間、サツキは目を光らせた。そして一言・・・・
「じゃあ、繋いでみようよ!!」
「「「「はぁ!?」」」」
「わたし1度MSが動いているところ近くで見てみてかったんだ〜〜〜〜〜〜♪」
「おいおい・・・・・いくらなんでもそれは・・・MSはオモチャじゃ・・・・・・・」
ロイドは反対しようとした・・・・が
「・・・確かに、おもしろそうだな」
「うん」
「まぁ、暇だし・・・・ちょっとやってみるか」
「わ〜〜〜〜い♪」
「おいおい・・・・・・・・・・」
結局、4対1でMSを起動させてみることになった。
「すげえな、これがコックピットかぁ・・・・・」
最初にMSのコックピットに座ったのはジュンだった。
「ジュン。ちゃんとわたしたちにも変わってよ」
コックピットを覗きながらサツキが言う。
「わかってるよ」
「・・・・・・・よし」
イッサとロイドによるバッテリーと動力部の連結作業も終わった。
「ジュン、これでOSが起動するはずだ。やってみろ」
「よしきた!!」
近くにあったボタンなどをこれかと次々に押したりするジュン。
数回目でようやくOSが起動した。
「おおっ!! やったぜ!!」
「凄い!! 本当に動いた!!」
興奮のあまり、サツキもコックピットに入って、ジュンの前にあるOSのスクリーンを覗きこんだ。
「あくまでもOSだけだがな・・・・」
イッサが付け加える。
スクリーンに次々と文字が出てきた。その時・・・・・・・・・・
- 747 :734:2005/07/23(土) 02:37:41 ID:???
「およ・・・?」
「あれ・・・・・・・? おい、ロイド」
「どうした2人とも?」
「・・・・・・・・・・なんだこりゃ?」
「ん・・・?」
スクリーンを覗き込むロイド。そこに表示されていたのは何かのデータだった。
「なんだろうな? ザフトの軍事記録かなにかのデータだと思うが・・・・・少し調べてみよう」
そう言うと、ロイドはMSのOSのキーボードをナチュラルのジュンとサツキから見ればものすごい速さで叩きはじめた。
「あっ!! また何か出てきた!!」
「本当だ・・・・・・・・・・・・・・・・って、こいつは!?」
「・・!?」
「どうしたのジュン君!?」
「なにがあった!?」
ジュンの上げた声にロイドが振り向き、イッサとアリスもスクリーンを覗きこむ。
- 748 :734:2005/07/23(土) 02:38:43 ID:???
「なんなんだよ・・・・・・・こりゃあ・・・・・・・・・・・・・」
「ねぇ・・・・これって・・・・・・・・・」
「嘘・・・・・・・・・・・・・・・・」
「マジかよ・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
スクリーンに表示されたのものは・・・・・・・
「・・・・・・・・・・少女の肉体、器官、脳の調査記録」
ロイドが呟いた。
「あぁ・・・・それもつい最近までの・・・・・・・・・・・」
「しかも、なんて内容だ・・・・・・薬物とか催眠術で過去の記憶を調べたりとか、
腹とかかっさばいて器官を取り出して1つ1つ調べたりとか・・・・・・・・・・・・・・」
「酷い・・・・・・・・・」
「まさかザフトがそんなことをしていたとはな・・・・・・・・・・・・・・」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
わずかな沈黙がMSのコックピットという狭い空間を支配した。
その時、全員思っただろう。
『見てはいけないものを見てしまった』と・・・・・・・・・・・・・
最後に5人は調査対象であった少女の名前を確認した。
その少女の名は・・・・・・・・・・・・・
「マユ・アスカ・・・・・・・・・・・!!」
「どうやら俺たちは・・・・・とんでもない仕事を引き受けちまったな・・・・・・・・・・・・・」
PHASE−02につづく・・・・・・・・
- 797 :マユ種外伝:2005/07/24(日) 02:00:56 ID:???
PHASE−02 巨人の王(前編)
話を一度、アーモリーワンでミネルバの進水式が行われる日より数日ほど前に戻し、舞台となる場所も変えさせてもらおう。
「なぜ、あの機体をプラント・・・・ザフトなどに渡すのですか!?」
地球連合の士官は通信モニターに映る自分の上官に講義した。
「向こうも、アレの軍事利用は一切しないと言ってきているのだ。よって、あのようなモノは別にくれてやってもよかろうと判断したのだ」
モニターに映っている上官が答えた。
「確かに、核エンジン搭載MSの使用はすでに条約で禁止されておりますし、
核搭載機開発の技術もザフトのほうが上ではありますが・・・・・しかし!! 万一の場合・・・・・・・」
「確かに、あの機体の開発には君に全権限を与えた・・・・・・生みの親ともいえる君の気持ちもわかるが・・・・・」
「でしたら、すぐに・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・君には悪いが、単刀直入に言わせてもらおう」
「えっ?」
「・・・・あの機体をザフトにくれてやるよりも、あんな未完成品を保管し続けるほうがよっぽど金が掛かるのだよ」
「!?」
上官のその一言は、士官を論破するには絶好の言葉であった。
「・・・・・・・・・・・」
士官はもはや反論できなかった。
(何故・・・・何故、私はいつもMSというものに関しては運に見放されるのだ・・・・・・・!!)
地球軍士官こと、ユーラシア連邦の宇宙要塞『アルテミス』司令・・・ガルシアは己の不運を心底憎んだ。
- 798 :マユ種外伝:2005/07/24(日) 02:01:49 ID:???
話と場所を元に戻す。
物資運搬船イドでは、依頼品のMSをこれからどうするかということで議論していた。
「やはり言われた通り、処理するべきだ」と言うイッサと
「あのMSとデータを処理したら、あの調査対象にされた少女が喜ぶのか?」と言い、MSの処理に反対するサツキ。
「どちらの言い分も正しい」と中立の立場をとるロイドとアリス。
そしてジュンは・・・・・・未だにMSのコックピットにいた。
「マユ・アスカ・・・・前大戦の地球軍オーブ侵攻の際、肉親を失い戦災孤児に・・・・・
その後、プラントに渡り、さらにその後ザフトに・・・・・・・ね」
データを自分なりに整理するとジュンはコックピットから出た。
コックピットから出た瞬間、サツキとイッサに問い詰められるジュン。
「ねぇ、ジュンはどっちの意見に賛成?」
「俺だよな?」
「私よね?」
「・・・・・・・・とりあえず俺も今は中立。デブリ帯に着いてから決めるさ」
その後イドはデブリ帯に到着。
しかし、例の「MSをこの先どうするか?」という話は未だに決まらずにいた。
そうこうしているうちに、イドはユニウスセブンの付近を通過する。
モニターでかつての戦争の傷跡・・・・・宇宙に漂う巨大な墓標を悲しげに見つめるジュンたち。
「こうして見るとさ・・・・世界って本当に壊れやすいモノなんだなぁって思うよ」
「どうして?」
「・・・・だって、あんなに大きなコロニーが核ミサイル1発であんな風になっちゃうんだぜ」
「そうだな・・・・・」
暗い雰囲気になる一同であったが、アリスの一言で雰囲気は一変する。
「・・・・・・・・あ、あの。せっかく来たんですから、お花か何か添えていきませんか?」
- 799 :マユ種外伝:2005/07/24(日) 02:02:56 ID:???
アリスの意見は全員一致で決まり、イドはユニウスセブンに徐々に近づいていく。
しかし、突然警報がなった。
警報とほぼ同時で、数機のMS・・・黒いジンがイドに襲いかかってきた。
「こんなところで宇宙海賊かよ!?」
「逃げる?」
「それ以外ないだろ!!」
一目散に全速力で、宙域の離脱を試みるイド。
しかし、ジンたちはみるみるうちに追いついて来る。
もはやこれまでかと思ったその時、1機のMSがイドとジンたちの前に現れた。
そして、その機体は・・・・・・・・・
「・・・・・ところどころ違うけど似てる。俺たちが今持っている機体と・・・・・・・・・・・・・」
PHASE−03につづく・・・・・・・・
- 942 :マユ種外伝作者 :2005/07/27(水) 16:29:33 ID:???
PHASE−03 巨人の王(後編)
謎のMS(以下アンノウン)はジンたちに向かって突撃。
ジンたちもすぐさまビームライフルをアンノウンに向けて撃つ。
しかし、アンノウンはその攻撃を軽くかわす。
そして、反撃とばかりに装備していたビームサブマシンガンを撃つ。
その攻撃によりジン2機が戦闘不能にされる。
その後もジンはビームライフルや装備されていた日本刀のような実剣でアンノウンにつぎつぎと攻撃をしかけるが、
アンノウンはその攻撃をことごとくかわしていく。
その際、ジンの流れ弾が(さりげなく、ジンたちに気づかれぬようにこそこそと低速で逃げていた)イドを何度かかすめた。
1発でも高エネルギーのビームが被弾したら民間用の船であるイドはひとたまりもない。
「あの機体に乗っている奴・・・そうとう腕の良いパイロットだな・・・」
やはり元パイロットだからか、冷静にアンノウンの動きを見るロイド。
「「んなこと言ってる場合じゃねーだろ(ないでしょ)!!」」
そして、彼を突っ込むのはサツキと操舵のイッサだ。
数分後ジンのパイロットたちは相手の技量を悟ったのか、
それとも機体のEN切れかは分からないが、突然、撤退していった。
・・・・・最終的に、アンノウンはジンを3機も撃破していた。
「・・・・・・・・終わったのかな?」
ぼ〜ぜんとアンノウンを見つめるアリス
「みたいだけど・・・・・・・・・・」
『大丈夫?』
「えっ?」
イドに通信が入ってきた。
「あ、はい。大丈夫・・・・・って、お・・・女?」
ジュンたちは少し驚いた。
モニターに映るアンノウンのパイロットが女性だったからだ。
- 943 :マユ種外伝作者 :2005/07/27(水) 16:30:51 ID:???
ジュンたちはMSのパイロットと直接話をするため、彼女の機体をイド収容した。
女性がパイロットスーツのヘルメットを取ると茶色で綺麗なロングヘアーが姿を現した。
「はじめまして。私はマーシャル・ビビア。傭兵よ」
女性・・・マーシャルは、外見からして歳は二十歳ぐらいだろう。
顔もスタイルもなかなかのもので、明らかに『大人の女』というイメージがあった。
「傭兵・・・・・もしかして、サーペント・テール?」
「まさか。彼らと比べたら、私なんかきっと足元にも及ばないわ」
「・・・・・ロイド、なんだサーペントテールって?」
イッサがロイドに尋ねる。民間人であるイッサやジュンたちには(当たり前だが)聞いたことのない名前だからだ。
「超1流の傭兵たちの集団だよ。俺がザフトにいたころはたびたび耳にした」
「ふ〜〜〜ん・・・・・」
「・・・ザフトってことは、あなたもコーディネーター?」
「あ・・・はい。俺とこいつ・・・イッサは」
「こいつはねーだろロイド。・・・・・・・・あなたもってことは・・・・・・」
「えぇ。私もコーディネーターよ」
にこりと微笑むマーシャル。
「・・・・だろうなぁ。さっきの戦闘の時のMS操縦といい・・・・・」
「あの外見だもんねぇ・・・・・・・・・・・・」
マーシャルをじ〜っとうらやましそうに見つめるサツキとアリス。
「あ・・・コーディネーターといっても、私が強化されているのは中身・・・つまり能力だけよ。
外見・・・身体は、自然のタマモノだから」
「えぇ〜〜〜〜〜〜っ!!」
「なんですってーーーーーーー!!」
大声を上げる少女2人。
「いったい何を食べればああなるのかしら・・・・?」
「ぎゅ・・牛乳を1日にいっぱい飲むとか?」
ひそひそと女同士の会話をする少女2人。
「・・・さて。話は本題に入るけど、私はある任務でこの船に来たの」
「・・・・・で? その任務って?」
ジュンがマーシャルに尋ねる。
「・・・・・あのMSのことなんだけどね」
「「「「「!?」」」」」
マーシャは少し前にジュンたちが調べた曰く付き未完成MSを指差した。
「あのMS・・・・・ですか?」
ジュンは緊張した表情でマーシャルに聞いた。
(・・・・・・・・まさか、あのデータを・・・・・・・・・・・・・・・・)
「そう。私はユーラシア連邦・・・・宇宙要塞アルテミスからの依頼で、あの機体を返しにもらってきたの」
- 944 :マユ種外伝作者 :2005/07/27(水) 16:32:23 ID:???
「「「「「え・・・・・・・・・?」」」」」
思わずポカンとする一同。
「ユーラシア連邦???」
「アルテミスぅ〜〜〜〜??? ザフトじゃなくて???」
「えぇ。あの機体はザフトのものじゃなくて、もともとはユーラシア連邦の機体なのよ。
・・・・・まぁ、フレームとか装甲とかを作ったのは大西洋連邦なんだけど」
「・・・・・・・じゃあ、なんで地球軍製の機体がザフトに?」
「・・・・・あの機体は前大戦の末期にもともと核エンジン搭載機として開発されたんだけど、
地球軍がプラントに核ミサイルによる総攻撃を決定すると開発が中止になったの。
その後もユニウスセブンの条約とかで核が禁止になったから最終的には凍結。
それで、使わないのならもらう。軍事利用はしないから譲ってくれとザフトが言ってきたから、
ユーラシアのお偉いさん方が、それならあげちゃおうって言ってザフトにあげたわけ」
「なるほどね・・・・・・・でも、なんでまた取り返しに来たんですか?」
「・・・・実は、この依頼はあのウトガルドの開発責任者であるアルテミス指令のガルシア少将の独断によるものなの。
ガルシアはウトガルドの技術が連合に漏れること等を恐れていたの。
それに・・・・ガルシアはMSというものにどうも執着していたみたいだから・・・・・・・・」
「なるほど・・・・・ところで『ウトガルド』って?」
「あのMSの名前よ。なんでも、北欧神話に登場する巨人の王の名前からとったとか・・・・・・」
「巨人の王ねぇ・・・・・・・ところでマーシャルさんのあの機体は?」
「マーシャでいいわ。そのほうが呼ばれ慣れているから。
あの機体はハイペリオンと言って。ウトガルドよりも少し前にユーラシアが開発した機体の3号機よ。
1、2号機の行方は分からないんだけど、あれはアルテミスで凍結されていたものを報酬としてガルシアからもらったのよ。
使われずにお偉いさんの命令でスクラップにされるくらいなら、傭兵にくれてやったほうが良いってね」
「・・・・・MSに執着している割には、随分と矛盾した人だなそいつ」
- 945 :マユ種外伝作者 :2005/07/27(水) 16:34:36 ID:???
「・・・・・ねぇ。ひとつ聞いていい?」
「ん? いいですけど?」
「・・・・なんでザフトは譲り受けてもらったばかりの機体を破棄しようとしたの?」
「・・・・・・・・・・・・」
本当のことを言うべきかとジュンは思った。
・・・しかし、この人なら別に知っても問題は無い・・・・・と勝手に判断した。
ロイドたちに目を合わせる。
全員「喋っても構わない」という顔をしていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・実は」
ジュンはマーシャに真実を話し始めた。
「・・・・・なるほどね。確かに、データを処理するならMSは絶好の金庫になるわね。
普通のコンピューターじゃ、データを消しても修復される危険もあるから・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「それで? 貴方たちはこのMSをどうしたいの?」
「まだ分かりません・・・・・でも。このままこいつを処理して本当にいいのかと今は少し思ってきています」
ジュンは目の前に横たわるMS・・・ウトガルドをじっと見つめた。
「・・・・そういえば。貴方たちアーモリーワンから来たんでしょ?」
「えっ・・・・? はい。そうでうけど・・・・・・」
「じゃあ、ご存知? ・・・・・・・・・・数時間前・・・・と言っても、もう昨日と言ったほうがいいんだけど・・・・・
アーモリーワンにおいて謎の集団による破壊活動とMS戦闘があったこと・・・・・・・・・・」
「「「「「!?」」」」」
PHASE−04につづく・・・・・・・・