641 :I and I and Iマユ :2006/05/26(金) 07:13:49 ID:???
今日は二本立て、「ガルナハン、再び」前後編!
ワタシは、コニール、そしてカズイさんとサイさんに再会した
そして、二度目のガルナハンで、ワタシ達を待っていたものとは……

642 :I and I and I(1/7):2006/05/26(金) 07:15:43 ID:???
誰かを守ること。
誰かを殺すこと。
誰かのためにできること。
自分のためにすること。
やり遂げるだけの力、理由、必要性……
ガルナハンまでの道のり、ワタシはそんなことを考えていた。



〜I and I and I〜 第十三話「ガルナハン、再び(前編)」



通路をシンとルナマリアは歩いていた。
「ヴィアだっけ、あの子」
「マ・ユ」
「でもザラ隊長はヴィアって」
「ヴィナなんて、名前がわからないからとりあえずつけただけだろ」
頬を膨らませて、シンはルナマリアを睨む。
「今はマユってわかってるんだ。だからルナも、マユって呼べよ」
「ふーん、そんなものなの?」
「そんなものなの。も〜…黙れよ、ルナには関係ないだろ」
「そのセリフ、二回目なんですけど」
マユはマユだ。
そうシンは思っている。
成長していても、右腕が亡くても、記憶が無くても、マユはマユだという事実は消しようがない。
「あ、噂をすれば」
ルナマリアが呟く。
シンが顔を向けると、そこにはマユがいた。
その横にはラドルがいる。見送り、ということなのだろう。
「シンさん」
「ん?君が、ヴィア…いや、マユ君のご兄弟か」

643 :I and I and I(2/7):2006/05/26(金) 07:17:53 ID:???
敬礼するシンの手が、ぴくっと動いた。
「シン・アスカであります」
「そうか。この状況だ、いつまで一緒にいられるかもわからない。一緒にいられる今だけでも、守ってやってくれ」
「は…はい!」
ラドルの言葉に、思わず返事が強くなる。
「それではマユ君、まだ出口まであるが、見送り頼めるかな?」
「あ、はい」
「それでは、失礼する」
シンとルナマリアは敬礼して、その場で見送るだけ。
シン達を見送りに同行させないための口実を、さも自然と出た言葉のようにラドルは言ってみせた。
ラドルとマユ、そしてラドルの部下達は、また歩きだす。
「守るということは、ただその者の安全を守る、というわけではないがね」
静かに、ラドルはマユに向かい、そう口にした。
「安全を守り、そして守りたいその者に辛い思いをさせない。それが真に守ることだと、私は思う」
シンにそれができるのかを、言いたいのだろうか。
見上げるラドルの顔は、しっかりと前だけを見ていた。
「オーブが敵陣に下る直前だったよ、二人が基地を訪ねてきたのは」
前を見ながら、またラドルは話を始める。
「ガルナハンの状態が危ないことを伝えると、彼等は飛び出していった」

644 :I and I and I(3/7):2006/05/26(金) 07:19:52 ID:???
カズイとサイ。
二人とそしてミリアリアと一緒に日々を、忘れてはいない。
「戦うことを辞めた自分達にできることは守ることだと、そう言っていた。
国籍など関係なく、人種など関係なく、ただ困っている人々を助けたいと」
彼等らしい言葉だった。
それを聞いて、マユの心は暖かくなる。
話のしている内に、いつの間か出口にも着いていた。
「我が隊もガルナハンに向かうが、恐らく彼等と最初に再会するのは君だろう」
左手を、ラドルは差し出す。
「真の守ること。見届け、そして君もそれができる人間になってくれ」
「…」
差し出された左手を、マユはしっかりと握った。
「わかりました」
マユの言葉に、ラドルは力ある笑みを見せ、握る手を解く。
ラドル達はミネルバを後にした。
守るということ、それを噛み締めて、マユは部屋に戻ろうと歩きだす。
考えることはたくさんある。
自分に何ができるのか。
人のために、人を守る。
それが自分のためにもなる。
そういうこと、なのだろうか。
「ヴィア」
不意に、声をかけられた。
ミネルバでヴィアと呼ぶのは、アスランしかいない。
「デッキに出ないか?潮風が気持ちいいぞ」

645 :I and I and I(4/7):2006/05/26(金) 07:21:58 ID:???
アスランの歩調にあわせ、マユは足を進める。
「ガルナハンに行くんですね」
「知っているのか?」
「えぇ、前に一度、支援活動を手伝っていた時に」
「確か、サイ・アーガイル…達と」
そういえばと、アスランは思い出す。
マユはアフリカ、ユーラシアと、戦災被害を受けた各地の支援活動の旅を続けていたのだった。
「難しい戦いになるとは思うが、ヴィアがまた倒れないように力を尽すよ」
「わかって…いたんですか?」
「なんとなく、だけどね」
死んだ者が見えるなら、という確信と呼べる確信はなかったが、そうであろうという気はしていた。
他人の死を感じて、心労が祟ったのではないかと。
デッキに出る扉の前に着く。
扉が開きデッキに出ると、そこにはシンがいた。
「一人で…どうかしたか?」
「いえ別に。貴方こそ大丈夫なんでありますか?いろいろFAITHは忙しいんでしょう?」
マユに気付いていながらも、シンはアスランに悪態をつく。
「本当に君は…突っかかるような言い方しかしないな」
短く溜息を吐き、アスランはシンを見た。
「そんなに気に入らないのか?俺がザフトに戻り、君を殴ったことが」

646 :I and I and I(5/7):2006/05/26(金) 07:23:27 ID:???
「殴られたのは大したことありませんけどね。この間までオーブにいたのに、いきなりFAITHだの上官だのって…」
「それは…認めるよ。確かに君から見ればそうなんだろう」
両者の真っ直ぐな瞳がぶつかる。
「だが、だから俺の言うことは聞かないし、気に食わないから従わない、と」
「いえ、そういうわけじゃ…」
アスランの追撃に、シンは思わず返す言葉を失った。
アスランのパイロットとしての力量は知っている。
その物事に対する姿勢も。
「オノゴロで家族を殺されたと言っていたな」
「アスハにって言ったんです。マユは生きてたけど、父さんと母さんは死にました」
「ああ、そうだな。ウズミ様やカガリに殺された、そう思っていたければそれでいい」
言い方は冷たい。
だが、真っ直ぐな瞳はそのままで、瞳の中には熱いものが流れていた。
「だから考えたというのか?力があれば、復讐するための力があればと」
「な!なんでそんなこと言うんです!?」
「自分の非力さに悔やみ、泣いたことのある者は、誰でもそう思う。多分な」
熱いものが流れる瞳のその影で、悲しい色が顔を出す。
「けど、力を手にしたその時から、今度は誰かを泣かせ、君と同じ立場にさせる側となる」

647 :I and I and I(6/7):2006/05/26(金) 07:24:58 ID:???
それは、後悔を表した言葉だった。
動揺するシン。
二人の言い合いを黙って聞いていたマユは、ゆっくりと口を開く。
「誰かを殺せば、殺された誰かの仲間や家族や恋人が、殺した誰かを恨む」
シンに取り巻いていた姿無き亡者達のことが思い出された。
そして自分が、闇に引き込まれそうになったことも思い出す。
「そして、その殺した誰かを殺したくなる。それが繰り返される」
アスランの顔が、苦しそうに歪んだ。
「ワタシが単に平和ボケしてるのかもしれないけど、それってどこか変ですよね。
殺された人を想う誰かが、他の人にはこんな思いさせちゃいけないって、思うはずなのに」
甘い考えなのだろう。
安易な理想なのだろう。
「そういうものじゃないんですか?違うの、かな…」
だが、決して出来ないことではない。
ただ皆が皆、それを理解して、解決できるというわけではない。
それが頭に浮かび、マユは自信なさそうに、呟いた。

マハムール基地を出発し、一同はガルナハンの渓谷に入る。
しばらくすると、ミネルバは底部のハッチを開いた。
この作戦は、現地協力者による情報提供が必要不可欠である。

648 :I and I and I(7/7):2006/05/26(金) 07:26:35 ID:???
その現地協力者が乗ったカーゴを収容するため、ミネルバはハッチを開いたのだった。
ミネルバの中では、作戦会議のためパイロット以下主だったメンバーがブリーフィングルームへ向かっている。
マユも、シン達の後ろをついていった。
「けどさ、現地協力者って、レジスタンスのことだろ?」
「そうなんじゃないの。だいぶ酷いらしいから、助かるためならって感じでしょ、ガルナハンは」
シンの疑問にルナマリアは素気なく答える。
ルナマリアの言葉を耳にしたマユは不安になった。
前に一度訪れたガルナハンも、決して良い環境とは言えない。
それよりも更に酷い状況を想像し、マユはゾッとする。
「ヴィア」
そんなマユを、アスランが呼んだ。
マユが振り向くと、通路の角から顔を出したアスランが、笑って手招きしている。
不思議に思いながらも、マユはアスランに近付いた。
「どうかしたんですか?」
「驚かないようにな」
そう言って、アスランはマユの前から横へと場所を移動した。
「あ!みんなぁ!」
思わず、マユは声上げてしまう。
そこには、カズイ、サイ、コニール…懐かしき面々がいた。



649 :I and I and Iマユ :2006/05/26(金) 07:28:22 ID:???
まだまだ続く!I and I and I二本立てスペシャル!
チャンネル…じゃなくてスレッドは、そのまま!

650 :I and I and I(1/8):2006/05/26(金) 07:30:48 ID:???
何かのために、命を賭けよう。
今は、迷いはない。
それが違うって、正しくないって信じてるから。
ワタシの考えが間違ってるのかもしれない。
その時は、ワタシが間違っていたことを、素直に謝ろう。
ただ今は、目の前で起きているそれが、違うと言えるから。



〜I and I and I〜 第十四話「ガルナハン、再び(後編)」



数ヶ月前会っていないというだけなのに、もう何年も会っていないような感じがした。
思わず、マユはコニールを抱き締める。
「久しぶりっ!」
「あっ!わ!…久しぶりだな、ヴィア」
コニールはぽんぽんと頭を撫でた。
抱き締める腕は一本しかない。
目の前で何事もないように笑っている少女だが、何事もないわけではないことを再確認する。
「カズイさんも、サイさんも、無事で良かった」
「俺達は別に大したことはしてないから」
誤魔化すように笑って、カズイはそう言う。
「だって、ガルナハンは酷い状況だって…」
「そうだけど…だけどさ、俺達は戦ってたわけじゃないから」
サイのその言葉から、マユは悟った。
カズイもサイも守ることに徹していたということを。
「それで…町の皆さんは?」

651 :I and I and I(2/8):2006/05/26(金) 07:32:22 ID:???
恐る恐る訊いてみたマユだったが、カズイもサイもコニールも表情は思わしくない。
「ミス・コニール、そろそろ」
「あぁ、そうだな。じゃ、また後で」
アスランに急かされると、コニールはアスランと共にブリーフィングルームに向かった。
通路には、三人だけが残る。
「ミリィはいないけど、このメンバーで集まるのは久々だな」
カズイもサイも、再会を喜び、マユを見ていた。
「だが、なんでヴィアがザフトの戦艦に?」
「プラントにいたんじゃないのか?アスランも…」
不思議そうにするカズイとサイに、マユは苦笑して口を開く。
「プラントには行ったんです。それで、このミネルバに、お兄さんがいました」
とんでもない展開になっていることに、サイとカズイは唖然とした。
自分達も波乱に富んだ人生を歩んできたが、さすがにこんなことになっていると開いた口が塞がらない。
「た、大変だな…」
苦笑して何もない空間を見つめるサイ。
カズイは黙って、マユを心配して見続けている。
「ヴィア…」
マユと呼ぶべきなのか、言葉が詰まった。
だが、カズイは飲み込もうとした言葉を、尋ねてみる。
「その…記憶は、戻ったのかな?」

652 :I and I and I(3/8):2006/05/26(金) 07:34:17 ID:???
静かに重く、そう尋ねられ、マユは真剣な顔で首を横に振った。
「そうか…じゃあ、まだヴィアだね」
親が子を見るような優しい顔に変わり、カズイはマユの頭を撫でる。
「カズイさんっ!」
マユは、カズイに抱きついていた。
何も言わず、顔も見ず、カズイの腹に顔を埋めている。
マユであること。それが少くなからず負担になっていた。
ラドルと再会し、そしてカズイ達と再会したことによって、マユとしていなければという緊張が和らぐ。
「間もなく作戦開始地点ポイントBです。各員スタンバイお願いします」
スピーカーから、メイリンのアナウンスが聞こえた。
「ヴィア、俺達もコニールのところに行かなきゃ」
カズイがそう言うと、マユは顔を埋めたままで「はい」と一言、呟く。

作戦が始まった。
モニターの置かれた別室で、マユ達は作戦の状況を見守る。
「シンさん、頑張って…」
口にした応援は、妹が兄にかけるものではなかった。
見守るその表情も。
「あのシンてパイロット、お前のなんなんだ?」
マユの応援と表情に、コニールは少々眉をひそめてそう訊いてくる。
「え…お兄さん、だけど」
「えぇ!?それ本当なの?」

653 :I and I and I(4/8):2006/05/26(金) 07:36:29 ID:???
驚きながら更に訊くコニールに、マユはこくこく頷き続けた。
まだ兄とは思えないでいる。その言葉は、言えないでいたが。
「どうしてお前の兄さんがあんなヤツなんだ!まったく…」
唸りながら、コニールはモニターを凝視する。
ガルナハンの街を取り返してほしいと祈るその瞳は、そのままで。
マユ達も、作戦の成功を祈った。
ミネルバは、敵拠点に向けてタンホイザーの発射態勢を取り始めた。
「陽電子砲?ローエングリンかな?」
「それは連合の名称だよ。この艦のは確か、タンホイザー?」
モニターを見ながら、カズイとサイが話す。
ミネルバの前方には、リフレクターを装備したゲルズケーが姿を現した。
タンホイザーが撃たれるが、受け止められ、反動にミネルバは激しく揺れる。
「うわっ!」
「ヴィア、平気?」
「な、なんとか…」
「私の心配もしろ!というか、陽電子砲を持ってるのはこっちだけじゃない!!」
敵拠点の砲台から、ローエングリンが放たれた。
回避するためにミネルバはまた激しく揺れ、マユ達はショックに備えるのに必死だった。
それでも、マユに前の戦闘のような影響がないのは、側にカズイ達がいるからなのだろう。

654 :I and I and I(5/8):2006/05/26(金) 07:38:11 ID:???
絶体絶命に近いには変わりないが。

インパルスがローエングリンゲートを陥落させたのは、それから間もなくしてからのことだった。
作戦の成功に沸き立つ艦内、そしてガルナハンの街。
退艦の許可が下りると、高揚したコニールはミネルバを飛び出した。
マユ達もそれを追う。
マユは何か、嫌な予感がしていた。
街は騒然となり、決起した住民達が連合の施設に乗り込み、そして兵士を襲った。
逃げ惑い、捕まり、殺される。
その惨状を見て、マユの体は震えた。
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ありったけの声を振り絞り、叫ぶ。
広場から、マユの声が辺りに広がっていった。
住民の手が止まる。
水面に波紋ができたかのように、徐々に街の騒ぎは収まった。
皆、マユを見ている。
「あなた達が受けた苦しみは、確かに許せることではないけど…」
前にガルナハンを訪れた時を思い出された。
足をくじいたミリアリアを守るために、マユは撃たれそうになった。
「でも、同じことを相手に返して、それで満足ですか!?」
やられたらやり返せ。
今それを行うのが正しいのか。
マユは正しくないと感じる。
感じるからこそ、住民達に叫んだ。

655 :I and I and I(6/8):2006/05/26(金) 07:39:46 ID:???
「そうだ!!連合はみんな死ねばいい!」
「それにお前に何がわかる!俺達の苦しみなんざ知らんくせに!!」
返ってきた激しい罵倒。
だが、マユの顔は、訴え続けた時と変わらない。
「確かにワタシは何も知りません。でも、何かを恨んだり、憎んだりしたことはある」
マユは上着を脱ぎ捨てる。
何も通すもののない右腕の袖が、風になびく。
「こんな風に、なりたくなかった」
腕のことだけを言っているわけではなかった。
記憶を失ったことも含んでいる。
マユであることが、きっと当然なのだろう。
ヴィアとしてのマユが決していい存在ではないと、そう思ってしまう。
そんな思いするくらいなら、こんな風になりたくなかった。
ヴィアとしてのマユの、叫び。
「だけど、何かに恨んだり憎んだりしたままじゃ駄目なんです」
こんな風になりたくなかった。
だが、こうなったから、得たものがあった。
「こうならなかったからワタシは、どこかで戦争なんか他人事に思って暮らしていたと思う」
正しくない自分ではなかったら。マユのままだったら。
そんなもしもを考えたこともあった。

656 :I and I and I(7/8):2006/05/26(金) 07:42:01 ID:???
「ワタシは、大切な人達にたくさん出会えました。たくさんの思い出があります」
それは、カズイ達との出会いであり、シンとの出会いである。
そして、コニールとの出会いでもあるのだ。
「恨んだり憎んだりしてもいいです。でもその後は、笑いましょう?」
マユは、微笑んで、そう言う。
「きっとそっちの方が、ずっとずっと楽しいはずですから」

「では地球連合軍の士官達は、我々マハムール基地の面々が責任をもって、丁重に捕虜として扱いましょう」
「お願いしますわ、ラドル司令」
ミネルバの艦長室で、ラドルとタリアの熱い握手が交される。
「それにしても驚いたわ。まさか、あの子の言葉によって、街が沈静化するなんて」
タリアは、マユに心底驚いていた。
「まだ子供なのに…私でさえ、あんなこと言えないもの」
「いえ、幼いから、なのかもしれません。様々なものが見えますからな」
マユは地球連合の兵士達の命を守った。
そして、憎悪や憤り、それだけに満ちていた住人達の心を、動かしたのだ。
「もし彼女がいなければ、逃げ切れなかった士官達は恐らく皆殺しにされていたでしょう」

657 :I and I and I(8/8):2006/05/26(金) 07:43:29 ID:???
「全くね。敵だけど、そういうものは無い方が良いに決まっているわ」
「同感です。では、私は自分の艦に戻りますので、失礼」
ラドルは艦長室を出て、出口へと向かう。
もう二度とこんなことがないよう、心の中で強く願った。
「ラドル司令」
「おぉ、ヴィア君」
出口では、マユが待っていて、ラドルを迎える。
「お別れですね」
「あぁ。ミネルバはディオキアに向かう予定だそうだな」
「あの、ガルナハンはもう大丈夫なんですか?」
マユの言葉に、ラドルは力ある笑みを見せた。
「ザフトが駐留部隊を置くことになった。これで、地球連合も迂濶に手出しはできなくなるだろう」
「そうですか、良かったぁ」
安心するマユの笑顔に見ながら、ラドルは口を開く。
「最後は私達も街の住民達も、皆で笑えるように、しっかりと守ろう」
そう言うと、ラドルはミネルバを後にした。
そんなラドルの背中には、頼もしいほど力強さが溢れている。
ガルナハンの街から、張り詰めたような殺伐とした空気は、消えていた。