537 :付き人 1/14:2006/02/23(木) 22:19:18 ID:???

アーモリーワン……ここはユニウス戦役後プラントが建設した軍事工業プラントである。
その軍事ブロックでは多数の人々が、彼等の操るMSが、式典の準備に追われている。
明日は初のポストユニウス戦役型戦艦ミネルバの進宙式。
巨額の予算を注ぎ多数の新技術を採用し、更に前の戦争の戦訓をふんだんに組み込んだこの艦には、
ザフト軍の、いや、プラトン全国民の期待が掛けられている。
それに応えるように、明日の進宙式では盛大な式典が予定されていた。

もっとも、このことに強い懸念感を抱くものもまた存在する。
特に先の戦争でザフト軍と対峙した連合首脳部にその思いは強い。
まあ相手に脅威を認識させ行動を制限する抑止力も軍事力の役割の一つであることも考えると、
その反応は艦建造の趣旨に必ずしも反するとはいえないわけではあるが……
そんなむづかしい話とは一切関係ない逃走劇が、いまこのプラントの片隅で繰り広げられていた。


538 :付き人 2/14:2006/02/23(木) 22:21:47 ID:???


     歌姫の付き人

    第一話  未知の衝撃


「あー、もー、バカバカ、ミーアのおバカ」
栗色の髪の少女が、買い物袋を手に路地裏を駆ける。
「そんなこといったってー、ばれると思わなかったんだもん」
桃色の髪の少女が、目深にかぶった鍔付き帽子を右手で抑えて疾走する。
その後方には、彼女たちを捜し求める人々(主に男性)の姿が……

「何が『ばれると思わなかった』よ。
少しは今の自分がプラントの国民的歌手だって自覚を持ちなさい!」
「だってだってー」
「うるさーい! 喋ってる暇があったら足を動かせ!」
「あ、待ってよマユー」
「さっさと来て、気付かれたわよ!」

マユはミーアの手を引き道を急ぐ。
なんでこんなことになったのか……頭をかきむしりたい気分に襲われながら。
「出かける前にあれほどしつこく言っといたでしょ、
ピンクの髪は目立つから絶対帽子は取るなって」
「はーい、ごめんなさーい」


539 :付き人 3/14:2006/02/23(木) 22:22:53 ID:???



桃色の髪の少女、ミーア・キャンベルの職業は歌手である……
いや、正確に言えば彼女が舞台で演じる女性、ラクス・クラインが歌手なのだ。
だがこのラクス、確かに職業的には歌手に分類されるのかもしれないが、
やること、なすこと、その影響力は断じて単なる一芸人の持つそれではない。
出自からしてプラトン議会対地球穏健派の長、シーゲル・クラインの娘。
先の戦争中不運にもそのシーゲルが凶弾に倒れたあとは、急進的クライン派を取りまとめ自らも戦場に立つことで縦横無尽に活躍、
殲滅戦の様相を呈しかけていた戦争をついには終結へと導いた。
細かい業績は戦中の混乱で記録が定かではないが、プラントの誰もが認める大功労者である。
その後彼女の発言力、影響力は大いに高まり、その気になればプラント全てを牛耳れるほど……
に、なったのではあるが、当のラクスはそこで突然姿を消した。

困ったのはプラント上層部である。
自国の精神的支柱であるはずのラクスが行方不明、それを公表すれば国民に与える動揺は計り知れない。
やむなく彼等はこの事実を隠蔽、だがいくら隠しても、ラクス・クラインが表舞台に姿を現さないという状態は残る。
それが続けば、やはり国民の動揺は避けられない。
そこでプラトン評議会現代表、ギルバート・デュランダル議長が立てたのが、ラクスの影武者、ミーア・キャンベルである。


540 :付き人 4/14:2006/02/23(木) 22:23:58 ID:???

このことは、もちろん国民には知らされていない。
表向きは長期休暇からの復帰と発表され、ラクス失踪を知るものには議長が彼女を見つけ出したとの報告がなされている。
影武者となったミーアの両親は先の戦争で亡くなっており、そこからばれることも考えられない。
真実を知るのは議長のごく周辺とミーア本人、彼女の活動をサポートする数人のスタッフ、そしてマユである。

ミーアとマユ、共に戦争で肉親を失った2人の間には、戦争終結前から既に家族同然の交流があった。
影武者の話がミーアに持ち出された時点でそれは当然マユも知る所となっており、さすがに議長側もそれを忘れろということも出来ず……
また、当時16のミーアよりさらに4つも年下のマユを単身で放り出せるわけもなく……
結果彼女もまた、真実を知るものの側へと引き込まれることとなった。
今のマユの立場はミーアの付き人、より正確に言うなら友達兼お目付け役、といったところであろうか。

なにしろミーア・キャンベル、人を疑うことを知らなければ人から疑われることも知らない。
その後先をあまり考えない行動は、常に周囲に騒動を振りまく。
いや、単なる一国民である分には何の問題も無いのではあろうが、
ラクス・クラインという立場は(たとえ偽者でなかったとしても)そのような甘いものではない。
今も買い物に出かけた店先で、不用意に変装用の帽子を取って……
ラクス・クラインの存在に気付いた熱狂的ファンに追いかけられ、マユに手を引かれて路地裏を逃走中、というわけである。


541 :付き人 5/14:2006/02/23(木) 22:26:35 ID:???

「で、もう今日は買い物はいいでしょ」
「えー、化粧品は買ったけどシャンプーがまだ……」
「それくらいあとで私が買っといてあげるから!」
「……分かったわよー」

必死に逃げながらの会話。かなりの速度で走っているのに、二人ともほとんど息を切らしていない。
さすがはコーディネーター……と、言いたいところだが、追いかけている相手もコーディなので、何のありがたみも無い。

「でもさ、明日の式典でやる予定だったサプライズコンサート、中止になったんでしょ?」
「うん、今朝議長さんから電話が会ったよ」
「じゃあ私、明日一日はオフなのよね」
「オフでもミーアにはやること一杯あるでしょ」

 細い道を右へ左へと曲がりながら、追っ手をまく。

「やること?」
「発声練習、歌の練習、踊りの練習」
「お、おにー!」
「鬼で結構!」

 そのまま路地裏から大通りへ、振り向いて後ろを確認して……
すると当然、前方は不注意になってしまうわけで、

「あー、ちょっと、マユ、前、前!」
「……まえもバカをやれよ、ば――おわ!」

とび出した通りの歩道で、マユは緑色の髪の青年に正面からぶつかった。


542 :付き人 6/14:2006/02/23(木) 22:27:47 ID:???

「マユ、大丈夫?」
「う、うーん、何とか」
倒れこんだマユを、ミーアが助け起こす。

「スティング、何だよ、これ?」
「俺に分かるか」
その横では、ぶつかった相手にその連れの青い髪の少年が話しかけている。
マユは起き上がると左手に持っていた買い物袋の中身の無事を確認し、
「やばい!」
路地裏から迫る追っ手の気配に顔をしかめた。

今ここでミーアがファンに取り囲まれる事態は、なんとしても避けたい。
とはいえ人の多いこの大通りで、鬼の数のほうが多い鬼ごっこに勝てるとも思えない。
ならばいったいどうするか……
あたりを見回したマユの目に、いまだ状況が飲み込めていない先ほどぶつかった緑毛とその連れの青毛が映った。

「ごめん、この子預かって! ミーア、私がおとりになるからそこで待ってて」
2人に有無を言わせずミーアを押し付け、そのまま大通りをわざと目立つように駆けてゆく。
ほぼ同時に、路地裏から何人かの男性がとび出してくる。
「おい、ラクス様どこいった?」
「わかんねーよ! ちくしょう、サインほしかったのに!」
「オイ、あの子……さっきラクス様と一緒にいた子じゃないか?」
「そーだそ−だ、あっちだあっち!」
彼等はマユを見かけると、彼女を追いかけて去っていく……男二人の陰に隠れたミーアのことに気付かないまま。

「スティング、アウル、あの男の人たち、なに?」
 ミーアが盾にした二人の男に、遅れてやってきた少女が尋ねる。今度の髪の色は黄色だ。
緑に青に黄色、なんか彩り豊かだなー……自分の桃色を棚に上げて、ミーアはそんなことを考える。
「さあ? 浮かれてる馬鹿だろ、本物の」
 スティングと呼ばれた青年が応える。その意見に、ミーアは内心で全面的に同意した。
「でもあいつら、あんたのこと追ってきたんだろ。そのわりにゃ落ち着いてるな、あんた」
 アウルと呼ばれた少年が、不思議そうに聞いてくる。
「ええ、慣れてますし。いつものことですから」
「……たいへんなんだな、お前も」
それを聞いたスティングが、心底同情するように言った。






543 :付き人 7/14:2006/02/23(木) 22:29:15 ID:???

「我々は中立国だ、自国の理念を……」
「それは我々とて同じです。しかし……」
「確かに議長の言われることも分かる、だがそれでも……」
 アーモリーワンの基地区画を歩きながら、一組の男女が論戦を交わせている。
長身長髪の男性がプラント評議会代表ギルバート・デュランダル、
彼と比べると二周りほども小柄な女性が、オーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハだ。
彼等から一歩下がった位置にいる護衛役の男性は、その会話を無視するように抜け目なく周囲を観察する。
会話の内容は、もちろん彼の耳にも入ってきている。それは彼の脳を刺激し、様々な思考を彼にめぐらせる。

――議長の言うことにも一理あるが……
――オーブとプラントの国力を比較すると、それは……
――おい、カガリ! 乗せられているぞ。あの言い方だと議長の思うつぼに……

彼の考えは会話の内容だけでなく、その進め方、政治的駆け引きの優劣にまでのぼる。
が、それが彼の口から発せられることはない。それを発する資格は彼にはない……少なくとも彼はそう考えている。
だから、周囲に目を走らせる。何も考えずにすむように……何も考えていない振りが出来るように。


544 :付き人 8/14:2006/02/23(木) 22:30:34 ID:???

「これが……ミネルバか」
「明日、これの進宙式を執り行う予定になっています。
代表と……そちらの護衛の方もよろしければ参加いただけませんか? 特等席を、用意いたします」
「そうだな……そうだ、アレックス、お前はこの艦についてどう思う?」

鋼の要塞……そんな言葉の似合う戦艦の前で、二人の足が止まる。
護衛のセオリーどおり数歩下がった位置で立ち止まった彼は、数瞬の推考の後よどみなく応える。

「かなり、硬そうな艦ですね。対MS用の火器も充実していますし、何よりも全面に施された複合装甲。
多少の攻撃をかけても平然と耐えきられそうで……少なくとも自分は相手にしたくはありません」

この話題なら、話せる。ためらわずに、話せる。

「なるほど、代表の護衛を勤めていらっしゃる方にそのような感想をいただけると嬉しいですな。
ですがその視点の持ち方は、ひょっとするとアレックスさんはMS乗りで?」
「はい、前の戦争では」
「では、この艦に乗る側の立場に立った場合何か気付かれませんか?」
「乗る側、ですか? そういえば、やけにカタパルトの数が多いような……
それにそれぞれのカタパルトの形式が微妙に異なっている」
「気付かれましたか、実はこの艦……」


2人の会話からカガリは抜け出て、フウと小さく溜息をつく。
自他共に男勝りと認めるカガリではあるが、それでもこの兵器について熱く語る『男の子』の気持ちという奴はよく分からない。
それでもいつになく饒舌に話す彼の様子に、半分呆れ、半分ほっとする。
そして、決意を新たにする。

あのアスランが心を開く相手なのだ、議長は決して悪い人ではない。
時間はかかるかもしれない、だが諦めさえしなければいつかはきっと、自分の熱意は分かってもらえる。





545 :付き人 9/14:2006/02/23(木) 22:31:23 ID:???

「あ、いたいた」
街を一周して追っ手をまいて、マユはミーアと別れた場所に戻る。
そこでミーアたちの姿を確認して……
「ぷっ!」
吹き出した。

「ちょっと、なによ、マユ」
「いや、なんか信号みたいだな、なーんて」
「信号? あーなるほどね」
 
スティング、ステラ、ミーアを眺めたアウルが、マユの意見に同意する。
確かにマユのほうから見ると緑、黄色、ピンクの頭がきれいに一列に並んでいる。
その意見にスティングが呆れ、ミーアが頬を膨らませ、ステラはわけが分からず首をかしげる。
と、いったところで改めて自己紹介、ミーアはもちろん『ラクス』として紹介する。

「へー、でもラクスってそんな有名な人だったんだ。もしかして俺ら、すげーラッキー?」
「そーそー、ラクスに会えるなんて滅多にあることじゃないんだからね!」
「いや、なんでマユが威張るんだよ? あ、だったらさ、サインくれよ」
「はい、お安い御用ですわ」

 はしゃぐアウルを呆れ顔で見ていたスティングが、ふと腕の時計を眺める。

「おい、そろそろ時間だ、行くぞ」
「時間……仕事?」
「あ、ちょっと待って……」
「はい、出来上がり!」

 ミーアが携帯していたペンで、アウルの上着の裏地に名前を書き込んでやる。

「さっさとしろよ」
「今行くって! ありがと、じゃあねー」
「はい、お気をつけて」

ミーアの言葉にスティングが、無言のまま軽く右手を上げて答える
……目を離すとどこかに行ってしまいそうなステラを左手で抑えながら。
それを見たミーアは、くすりと笑う。

「どうしたの?」
「ううん、なんでもない。スティングも大変なんだなーって思って。
じゃあ、私たちも行きましょう」
「うん」


546 :付き人 10/14:2006/02/23(木) 22:32:35 ID:???
買い物袋を手に持って、大通りを行く。
ついつい帽子を取ろうとしたミーアを、マユが蹴飛ばす。

「そういえばマユ、なんで明日のコンサートって中止になったの?」
「えーと、確か議長さんは面倒な人たちが来ちゃったとか言ってたよ」
「ふーん」

二人が入っていったのは軍事区画の片隅の倉庫。
中のソファーで暇そうに雑誌を読んでいた男が、2人に気付いて顔を上げる。

「ただいま、キングさん」
「おお、早かったやないか。無事に買い物終わったんかいな?」
「それがきいてよ、ミーアったらさあ」
「あ、ちょっとマユ!」
「またファンに気付かれて、追い掛け回されて大変だったんだから」
「はー、そいつは災難やったなー。
ほんまミーアも一応年上なんやから、あんまマユに迷惑かけたらあかんで」
「なによ、その一応って!」

頬を膨らませたミーアを無視して、マユは倉庫の中央に向かう。
そこにはカタパルトに備え付けられた機体が四体、構造は一体一体が異なっている。
明日のコンサートでステージ代わりにするはずだったものだ。

「そういや、明日のコンサ−ト中止になったんやて?
こいつせっかく運び込んだのに無駄になってもうたなー」
「私もせっかく練習したのになー」
「大丈夫よ、あわてなくても。
来週にはまた別のコロニーでコンサートあるんだから、その時は操縦よろしくね」
「うん、まっかせなさーい!」
「でもこれ、なしてPS装甲なんぞ付いとるんや?」
「さあ? でもミーアのこと乗せるんだから、頑丈なほうがいいんじゃない?」

いつも通りのたわいもないおしゃべり……しかしそれは、突然の爆発音で遮られる。

「な、なんやー?」
「なんか今、すっごい音が……」
「なんだろ……ちょっと待ってて」

マユは倉庫の窓に駆け寄り、外の様子を覗いてみる。
窓の外に広がる軍事施設、そのちょうど中央で二度目の爆発が発生する。
上がる炎、立ち昇る煙、そして煙の中から人型の兵器が姿を現す。





547 :付き人 11/14:2006/02/23(木) 22:33:29 ID:???
「おい、アウル、早すぎるぞ!」
「はあ? スティングが遅ーんだろ」

 その兵器、アビスに乗っていたアウルは、早々にOSの立ち上げを終了させ、スティングの静止も聞かずに周囲への攻撃を開始する。

「有名人に会えてサインも貰えたし、今日の僕は絶好調!」
「お前なあ……」
「ステラ……出来た、出る!」
「お、おい、ステラまで……えーい、もういい、勝手にやれ!
ただしあまり離れすぎるなよ。それと、迎えの時間には遅れるな」
「分かってるって!」

煙の中からさらに二体、MSが出現する。それらが放つミサイルが、ビームが、ザフト軍の事態に対する対応能力を急速に奪い去っていく。

「ああ、強奪だ! カオス、アビス、ガイア、三機とも!
冗談? んなわけないだろ、そっちでも爆発音ぐらい聞こえねーのか?
ああそうだ、演習じゃあないぞ。セカンドシリーズの三機が奪われたんだ!」

彼等の足もとで、生き残りの警備員が状況を伝達する。
それは周囲の軍事施設に迅速に伝えられるが、
有効な対策を立てられる前に三機の破壊が施設を襲う。

唯一対応出来たのは、皮肉にも本来三機の母艦となるはずだった戦艦ミネルバ。
進宙式を明日に控えていたこの艦から、二機のMSが発進する。

「ルナマリア・ホーク、ザク、行くわよ!」
「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」
「それにしても、なんでセカンドステージの機体が三機全部……」
「無駄口を叩くな、ルナ。同じ新型でもこっちは量産機、油断するとやられるぞ」
「分かってるわよ!」

『聞いてると思うけど奪われたと思われる機体はカオス、アビス、ガイアの三機、
六番ハンガー付近の他の機体は全て破壊された模様。
一番ハンガーから増援が出ることになってるけど、現場到着までに時間がかかるわ。
きついと思うけど、それまで2人で抑えてちょうだい』

ミネルバ艦長、タリア・グラディスが艦内から指示を下す……ミネルバに寄せられた情報に基づいて。
が、二機が現場に着く前に、そこでは新たな展開が発生していた。





548 :付き人 12/14:2006/02/23(木) 22:34:14 ID:???

「なんでこんな……くそ! 議長は」
突然起こった爆発に、カガリは戸惑いを隠せない。

「カガリ、こっちだ」
「おい、アスラン!」
「今は議長よりお前だ!」
 
護衛役のアスランが、カガリを引っ張って建物の影に。生じた爆発からとりあえず逃れる。
が、相手はMS、当然足もとなど見ていない。このままではいつ潰されてもおかしくない。
対策を求めて巡らせた視線が、乗り手がないまま置き捨てられた緑色の機体を発見する。

「来い!」
「え?」
「生身でうろついていたら危険すぎる!」

カガリを機体に押し込み、自らも中に。そのまま、機体を立ち上げる。
彼の判断は間違っていない、間違っていないがだからこそ同様の判断をするものもいるわけで、
そして彼はそのことをまったく認識していない。





549 :付き人 13/14:2006/02/23(木) 22:36:24 ID:???

「あれ、MSじゃ……って、マユ?」

 窓から外を覗いていたマユは、ミーアの手をとり機体の方へ。

「ここにいたら踏み潰されちゃう……出すから乗って!」
「乗ってって、これで出るの? 式典用でしょ、この機体」
「それでもここにいるよりはまし! キングさん、この子、発進させます!」
「なんやてー! つうてもこんな所でミーア死なせるわけにもいかへんし……
しゃあない、緊急的処置や! MS、発進させるで!」

狭いコクピットにマユとミーアの2人が詰めて座り、キングが倉庫のシャッターを開け放つ。
「エンジン始動、エネルギー状態良好、発進準備完了!
キングさん、カタパルト始動させたらすぐに逃げてください!」
「当たり前や! こんなとこにおったら命がいくつあっても足りんがな。
ほなマユ、悪いけどミーアのことよろしく頼むで!」
キングの操作によってカタパルトが始動、
三体の無人機と2人を乗せたコアスプレンダーがコロニーの空へと射出される。

「お願い、インパルス!」





550 :付き人 14/14:2006/02/23(木) 22:37:26 ID:???

「ねえレイ、報告よりも一体増えてない?」
「ああ、まさかザクまで奪われたのか……ルナ、左だ! 識別コードにない航空機、数4!」
「ちょっと、まだいたの!」

コアスプレンダーがチェストフライヤー、レッグフライヤーと接続、一体のMSへと姿を変える。

「赤と白の機体……型はこれと同じ、ザフト軍か?」
「おいアスラン、あれ……合体した!?」

さらにシルエットフライヤーを背に付け、PS装甲を起動させる。

「……赤、白、緑……もう一機!」
「ステラ、アウル、気をつけろ、新型だ!」
「はあ? なんだよそれ。ネオの話じゃ新しいのはこの三機だけだって……」
「いるんだからしょうがねーだろうが!」

そのまま姿勢を崩さず、コロニーの大地に降り立っ……たのはいいが――

「ねえマユ、なんかみんなこっち見てるみたいなんだけど……どうするの?」
「え、えーとー……どうしよう?」
「ちょ、ちょっとー!」

 六体のMSに睨まれたインパルス、そのコアスプレンダーのコクピットで、2人の少女がなんとも情けない声を上げた。