用語集
- ■21世紀初頭に起こった戦争【歴史】
- 「未来からのメッセージ」で語られている戦争のこと。同作の主人公が原因の一端を担っているらしい。環境問題に対する各国の思惑のずれが、この悲劇をもたらした。
自然を守るという大義名分で余所の国の自然を徹底的なまでに破壊した、人類史上希に見る愚行として永遠に語り継がれることとなる。
- ■中性子爆弾【軍事】ちゅうせいしばくだん
- 原爆の一種であるが、爆発によるエネルギーよりも核反応により放出される中性子線に重点を置いた大量殺戮兵器。実際にこれを使うと、爆発による建造物の被害は小さいものの、大量の放射線により生物は大変な被害を被ることになる。
劇中では第三次世界大戦の末期、神聖大日本帝國軍により使用され、事実上世界は滅びた。
- ■冷凍睡眠【生物】れいとうすいみん
- 生物の身体を冷やし、人工的に冬眠状態にする技術。代謝活動が極端に抑えられ、個々の寿命を越えた時間を寝て過ごすことが出来る。「未来からのメッセージ」の主人公は、これで54年間の時を飛び越えた。
- ■微生物を用いた大気浄化システム【生物】
- 劇中世界で開発された、バクテリアによって大気の毒と放射能(放射性物質)を選択的吸着して固定化、除去するシステム。ある時期地上に大量に建造されたが、テロによって破壊されてしまう。バクテリアは様々な物質を分解する性質も持っており、生物の肺に入るとその肺の組織を分解してしまう。このため、バクテリアの漂う外を歩くには、防塵マスクが必要となる。
- ■ドーム状のシェルター【建築】
- 「はじめてのお・ふ・ろ」に出てくる、街全体を覆った隔壁のこと。半球体で、ガラス張りの構造物である。前述のバクテリアを避けるために、大きな町にはシェルターが設置されている。ちなみに普通の住宅では、出入り口等の開口部を全て気密構造にした上で、エアフィルターによって家の中のみ清浄な空気を満たす構造になっている。
- ■気密服【科学】きみつふく
- 空気を通さない服のこと。宇宙服みたいなもので、「はじめてのお・ふ・ろ」で主人公や友達が着ていた。素肌を決して外気にさらさない様、気密構造になっている。
- ■ガイア理論【科学】がいありろん
- 地球を一つの生命体であると捉える考え方。この理論を突き詰めると、環境破壊を引き起こす人類種はガン細胞の様な存在となるらしい。ちなみにシステムガイアとガイア理論は直接的な関係はなく、単に先ほどの人類=ガン細胞という皮肉な現実、そして地球の一意的管理を目標としてこの名を拝借した。
- ■疑似人格OS【コンピュータ】ぎじじんかくおーえす
- みぃの電子頭脳で動いているソフトウェア群の総称。
人間でいうところの様々な心の働きや脳の働き一つ一つを、サービスという小さなプログラムでエミュレートしている。ただしプログラムと言っても、実際は仮想シナプス結合を生成する制御プログラムのようなもので、サービス自体が思考しているわけではない。あくまで思考や演算は仮想シナプス結合と言われるハードウェアで行われる。
- ■有機チップ【コンピュータ】ゆうきちっぷ
- タンパク質等の有機材料を用いて作られた集積回路のこと。シリコンに比べ集積回路自体をソフトウェア的に作り替えるが容易で、かつ生体との接続が簡単である。ちなみにタンパク質を作るためのDNAは、みぃのものを使用している。
- ■電子頭脳【コンピュータ】でんしずのう
- みぃの頭蓋骨に入っているモノ。
名前に電子と付いてはいるが、金属やシリコンなどは余り入っていない。殆どが有機チップで構成されている。
- ■プローブ【電気】ぷろーぶ
- 電極などがついた測定器具。もしくはセンサー。
みぃの電子頭脳から情報を取ってくるものを、プローブと総称している。オシロスコープや半導体検査機のプローブとはあまり関係がない。
- ■管理用ダイレクトバス【コンピュータ】かんりようだいれくとばす
- みぃの首の後ろについているコネクタのこと。普段は見えないように、髪の毛で隠されている。
みぃの電子頭脳に直結していて、脳内で処理されている信号をそのまま取り込めたり、強制的にコマンドを投げたりすることが出来る。主にデバッグ目的で設置されている。
- ■データフローカーネル【コンピュータ】でーたふろーかーねる
- 疑似人格OSに組み込まれているカーネルプログラム(中心的なソフトウェア)の一つ。通常時、みぃを動かす基本的なプログラムである。主に仮想シナプス上で実行されるサービス群を統括している。人工知能の基本部分。ちなみにもう一つのカーネルプログラムはノイマンカーネルという。
- ■マスターコントローラ権限【コンピュータ】ますたーこんとろーらけんげん
- みぃを動かす事の出来る権限。この権限を掌握しているカーネルプログラムが、みぃの主体となる。
- ■無限ループバック【コンピュータ】むげんるーぷばっく
- エラー修復のために処理を少し戻し(ロールバック)、再び走らせたところ同じ箇所でエラーが置きまた少し戻し……と、同じ処理を永遠に繰り返す状態のこと。一旦この状態に填まる仮想シナプス統合に異常負荷が掛かり、電子頭脳が崩壊する。
- ■レセプター【科学】れせぷたー
- 外界からの様々な情報を受け取り、電子頭脳に送信する為生体内での電気信号に変換するもの。受容体とも言う。みぃに組み込まれたレセプターとは、外界からの様々な情報を受け取る個々の構成要素を示す。これらが纏まったものが、インタフェースとなる。
- ■インタフェース【コンピュータ】いんたふぇーす
- モノとモノとを結びつける部分のこと。みぃの電子頭脳に作られているインタフェースとは、外界と自分の境界線を意味している。この部分で外界からの様々な情報を取捨選択して取り込み、電子頭脳での思考に利用する。レセプターの集まり。
現実世界のでのインタフェースは、直接接続出来無い機器同士を共通の信号規格によって接続する部分を言う。SCSIやUSBやPCIなどが代表的な例。
- ■ノイマンカーネル【コンピュータ】のいまんかーねる
- 処理手順をメモリに蓄えて、それを読み出し逐次処理を行ってゆくという、一般的なコンピュータと同じ働きを持つカーネルプログラム。デバッグ用に組み込まれていて、このカーネルが表に出るときには人工知能が危機的な状況になっていることを意味している。データフローカーネルがエラーを出して止まったときに顔を出し、OSや仮想シナプス結合の異常部分を修復する機能を担っている。また生命維持に関する部分も受け持っている。
- ■連想記憶野【コンピュータ】れんそうきおくや
- 仮想シナプス結合で作られる記憶回路のこと。名が示すとおり、情報を正確に記録するのではなく、感覚や他の記憶との連携、差分などを記憶する。たとえば茶碗を見たことを覚える場合、目で見た茶碗の画像を記憶するのではなく、「茶碗を見た」という”思い出”を記憶している。
- ■リニアメモリ【コンピュータ】りにあめもり
- 連想記憶野とは反対に01で完全な情報を記録している部分。数少ないシリコンチップで構成されている。一般的なコンピュータのメモリと同じ。疑似人格OSが自らの意志でアクセスすることも出来る。丸暗記にとっても便利。なお、ノイマンカーネルはリニアメモリのみを参照できる。
- ■コアカーネルデバイスドライバ【コンピュータ】こあかーねるでばいすどらいば
- みぃの電子頭脳を統括する重要なプログラム群のこと。データフローカーネルやノイマンカーネルも含まれる。このプログラムは一度走り出すと、みぃが活動を停止するまで決して止まることはない。止まったときはみぃの死を意味する。
- ■エアー(Air)イーサ【商品名】えあーいーさ
- 現実世界にある広域イーサネットワーク(メトロイーサ網等)の無線版。劇中で地球規模で構築されている、世界中でどこにいてもインターネットに直接接続できる便利な仕組み。みぃは常時ネットに接続していて好きな時に情報を検索したり、暇つぶしにどこぞの企業のネットワークをハッキング出来たりする。
- ■認識子【生物】にんしきし
- 画像認識をするときに用いる、最小の識別情報(単位)のこと。人が見たものを理解するとき、最終的には識別子で現された図形(丸とか四角とか三角とか十字とか)の集まりとして構成要素を分解して形を理解するらしい。ちなみに人間の認識子の数は決まっていて数の増減は無いらしいが、みぃの電子頭脳は必要に応じて数を増やす機能を持っている。認識子の数が増えると画像処理の速度が向上し、結果ミサイルの迎撃などの精度が上がる。
- ■仮想シナプス結合【コンピュータ】かそうしなぷすけつごう
- 電子頭脳のニューロチップが作り上げた仮想的なシナプス結合のこと。脳が発達するに連れてシナプスは増えていくが、電子頭脳も同じく様々な経験や学習で仮想シナプス結合が増えてゆく。
- ■言語認識プロセッサ【コンピュータ】げんごにんしきぷろせっさ
- 電子頭脳に組み込まれている、言葉を理解する機能(サービス)。様々な言語を登録できるが、母国語として設定できるのは一ヶ国語のみ。みぃには日本語が母国語としてプリインストールされている以外には、他には何も入っていない。
- ■感情制御サービス【コンピュータ】かんじょうせいぎょさーびす
- 電子頭脳に組み込まれている、喜怒哀楽の感情を創り出すサービス。この部分のパラメータをカスタマイズすることにより、電子頭脳の持つ性格を自由に設定できる。
ちなみにみぃの場合、このサービスが初回起動時に割り当てたランダムな値をそのまま用いており、全くの偶然であのすっとぼけた性格が構築されてしまった。しかしその変な性格が分かった時点での修正は可能であったのだが、武由は決してパラメータをいじることはしなかった。曰く、人としての矜恃だそうだ。
- ■研究所 【固有名詞】けんきゅうじょ
- みぃの開発を行っている団体。実は民間企業で、国からの委託を受けてみぃの開発を行っており、また平行してシステムガイアの開発にも携わっている。ただ民間企業とはいえ扱っているモノがモノだけに、警備部の中には軍隊じみた組織も存在する。ヘタな役所よりも権限が強く、それだけに働いている社員は皆優秀な人材である。
- ■検定遺伝子【生物】けんていいでんし
- 放射能で汚染されていないことを、国家によって保証された遺伝子のこと。先の大戦が原因で一部の人間の遺伝情報は破損しており、これらの劣化遺伝子が無秩序に増えないように国で管理するために定められたカテゴリーの一つ。この遺伝子を用いて作られたプロダクトは、それが人間の領域にあるものなら自動的に国籍と人権を付与される。なお劣化遺伝子を持って生まれた人間が人権を剥奪されるかというと、決してそんなことはなく、取り立てて制限事項も無い。唯一、劣化遺伝子を用いて人工的に合成されたプロダクト(人造人間)に対しては結婚などに制限が加えられる。
- ■DNAシンセサイザー【固有名詞】でぃーえぬえーしんせさいざー
- 任意の塩基配列を合成する装置のこと。ATGCの4つのアミノ酸から、操作者の望む塩基配列を創り出すことが出来る。現実世界でも、大きめの大学で遺伝子を扱っているところには設置されている。なお劇中のDNAシンセサイザーはこれらのものより遙かに規模が大きく、人間の遺伝子すら合成するキャパシティーを持つ。
- ■DNAアクセラレータ【固有名詞】でぃーえぬえーあくせられーた
- 劇中世界で開発された、DNAとアミノ酸を用いて生物の身体を合成・培養する装置。通常の人工胎盤等の培養装置よりも非常に早い合成・培養が可能であり、アクセラレータの名を冠するにふさわしい性能を誇る。人間の身体は7日間で合成出来るらしい。
- ■DSP【コンピュータ】でぃーえすぴー
- Digital Signal Processorの略。データ変換を専門に行うLSIのこと。CPUでデータ変換を行うにはプログラムを走らせなければならないが、DPSはそれをハードウェアで(つまり電子回路を用いて)直接行う。そのため非常に速い動作が可能である。携帯電話などではDPSを用いてデジタル信号とアナログ信号を相互変換している。
- ■データフロー型コンピュータ【コンピュータ】でーたふろーがたこんぴゅーた
- コンピュータの動作を前もってプログラムという形で記憶させ、その順番の通りの処理を行うという一般的なノイマン型コンピュータと異なり、データにタグを付け、データの流れ着いた順番で処理を進めていく方式のコンピュータをデータフロー型コンピュータという。画像処理などでは高速化できるらしいが、プログラムが複雑で流行らなかったらしい。
- ■ニューロチップ【コンピュータ】にゅーろちっぷ
- 脳のシナプス構造を模して作られたICのこと。
- ■ネットはこうだい【アニメ】
- 攻殻機動隊(士郎正宗著)の最後で素子さんが言った決めゼリフ。「ネットは広大だわ」。
どうやらみぃは、前日攻殻機動隊のアニメでも見ていたらしい。脳みそ同士をネットで繋ぐなどという言葉も、この作品に影響されたのだろう。
- ■鍋大会【行事】なべたいかい
- 鍋などと言っているワリには、主役は鍋でなく酒というあたりは人類普遍の謎の一つに数えられるであろう。この研究所でもご多分に漏れず飲み会のことであり、しかもかなり過激な飲みっぷりを披露している。
酒を殆ど飲まない武由にとっては、ちょっぴり苦手な行事。
- ■政治的判断【政治】せいじてきはんだん
- 打算的な考え方に大義名分を付けるときにこんな言い方をする。ちなみにこの場での政治的判断とは、おっさん共がみぃにチョッカイ掛けたいが為に、小うるさい武由を彼女から引きはがすために付けた難癖である。
- ■反重力飛行システム【科学】はんじゅうりょくひこうしすてむ
- 対象物に働く重力をキャンセルし、わずかなエネルギー放射で空中に浮き、機動力を得るための装置。みぃを宙に浮かせている本体は青いアーモンドで、光の羽根は鹿沼の説明通り姿勢制御と方向制御を行うためのモノ。なお、その形は天使としての示威のため、鳥の翼を模している。
また空気抵抗を減らすため、みぃの進行方向前方に円錐形のバリアを展開し、摩擦熱等の発生を抑える働きも担っている。
- ■IPパケット【コンピュータ】あいぴーぱけっと
- 劇中世界において、全世界共通で使われている通信プロトコルであるIPの、一回に送るデータの最小単位。現実世界のIPパケットと同様な物。劇中の時代では、TCP/IPのIPv6を改良した物をIPと称している。
- ■プロトコルマスター【コンピュータ】ぷろとこるますたー
- 全世界の通信インフラを管理・制御・統括しているシステムのこと。みぃや武由の所属する研究所の地下深くに設置されているコンピュータ群。
本文中では暗号シードの配布が仕事と書かれているが、実際にはプロトコル自体の配布も行っている。つまりプロトコルマスターはプロトコル自体の欠陥に対応するため定期的にIPというプロトコルそのものを変更する。全ての通信デバイスはその変更通知を受け取ると、プロトコルマスターからの情報によりパケットの処理アルゴリズムや暗号アルゴリズム等を書き換えるよう設計されている。
このような仕組みのため、暗号通信の解読は唯一の例外を除いて事実上不可能なレベルまで高められている。
- ■暗号解読専門のAI【コンピュータ】
- 国家検定を通過していない違法AIモジュールにより作られているソフトウェアのこと。この時代、AIは初歩的な研究用以外は全て国の検定を通らなければならず(もしくは検定済みのモジュールを用いる)、犯罪に用いられる様な特殊な機能を付与されたAIは必然的に検定を通っていないAIモジュールを使用することになる。
ちなみにみぃは、ちゃんと検定済みのAIモジュールを用いている。頭の良し悪しと検定は関係ないのだ。
- ■マッハ【単位】まっは
- 音速(秒速340m)をマッハ1とする。時速約1200km。航空機の速度などを、良くマッハで表現したりする。旅客機の場合、だいたいマッハ0.7〜0.9である。
- ■ジャイロスコープ【科学】じゃいろすこーぷ
- 回転体がその回転軸の方向を一定に保とうとする働き(ジャイロ効果)を利用した、方向測定を行う機械。身近な例で言えば地球ごまのこと。フライホイールを回し、その軸に変位計を取り付け、システムの方向が変わったとき、向きを一定に保とうとするフライホイールの軸とシステムの間に変位が生じ、これを検知することにより自機の方向を知ることが出来る。現実世界でも、ロケットの姿勢制御装置の中心部分として使われている。
日本では回転軸の代わりに直進性のあるレーザー光の変位を用いたレーザージャイロが開発され、国産ロケットの制御装置に用いられている。
- ■北海道【地名】ほっかいどう
- このような地名が出るあたり、彼等の住む国は日本らしい。とは言いつつこの時代日本国という国は存在せず、事実上地球上は単一国家によってまとめられている。が、いつの時代もイデオロギーの違いなどは存在し、あちこちで内戦が起きている。
- ■電子音【科学】でんしおん
- ここで言う電子音とは、みぃの腹の中に埋め込まれた監視装置の警告音のこと。みぃの生命維持にとって重大な異常が発生した場合に、この警告音が発生される。
たとえばみぃのコアカーネルデバイスドライバが完全に停止した場合や、身体の半分が吹っ飛び生命活動を維持できなくなったときが該当する。
つまりこの音が鳴るときは、みぃはもう助からないことを意味する。
- ■消化音【生物】しょうかおん
- 主に腸の蠕動運動により生じる音。みぃの身体は骨格と電子頭脳を除いて、基本的に普通の人間と同じようなものであり、しかも身体部分の生命維持を行うには人と同様、経口による食物摂取が不可欠である。なので一日三食飯は喰らうし、出すモノも元気よく出す。ちなみに好きな食べ物は、チョコとアイスと酒。ベタである。
- ■デッドロック【コンピュータ】
- マルチタスクのコンピュータで起こるハングアップ状態の一つ。
リソース(資源)の所有権が排他制御(同時に一つのタスクしか所有権を持てない)である場合、二つのタスクがそれぞれ次の命令に進む条件が、それぞれ他方の所有しているリソースの解放であるとき、二つのタスクはお互いがリソースの解放を待ち合い永久に処理待ちになってしまう。このような状態をデッドロックという。
簡単な例を示すと、身代金を先に渡すか人質の解放が先かで、お互い牽制し合って事態が一向に進まなくなること。
- ■低レベルエラーメッセージ【コンピュータ】ていれべるえらーめっせーじ
- みぃの電子頭脳に異常事態が起こった時に、コアカーネルデバイスドライバよりみぃの口をついて出てくるエラーメッセージ。某窓OSで例えるなら、ソフトウェアの異常終了時に出てくるダイアログボックスのようなもの。なお、みぃの腹で鳴る電子音は、青画面に相当する。
- ■スタックダンプ【コンピュータ】
- 先入れ後出しの記憶回路のことをスタック(書類入れのように、下にある書類=先入れが最後になって出てくる=後出し構造)という。
スタックダンプは、このスタックメモリの内容のことを言うが、みぃの電子頭脳のアーキテクチャであるデータフローアーキテクチャでは、主に短期記憶(暗記などで短期間だけ覚えている記憶。ある程度経つとすっかり忘れてしまう)のインデックス情報の履歴などを意味している。ちなみに短期記憶でも何度でも再生されると、長期記憶(もう忘れない記憶、つまり学習)になる。
- ■死のプログラム【コンピュータ】しのぷろぐらむ
- 一般的にはプログラム細胞死(アポトーシス)のことを言うが、この場合はコアカーネルデバイスドライバが電子頭脳に破壊命令を送り、自分自身を止めてしまうことを言う。ダイレクトバスコネクタによる再起動指令も受け付けない。
ちなみにプログラム細胞死とはDNAが酷い損傷を受け自己修復が効かなくなったときや、ある規定の回数細胞分裂を行った細胞が、自らのガン化を防ぐためなどに自己破壊することを言う。
- ■インストーラ【コンピュータ】
- コンピュータに何かしらのソフトを登録するための、小プログラムのこと。劇中では、みぃにOSを流し込むためのコンピュータ自体をインストーラと呼んでいる。インストール作業には、いくつもの暗号鍵をインストーラに登録して行われる。この作業をキーセレモニーと呼ぶ。
なお、電子証明書の発行局であるCA(Certification Authority)では、CA自体の秘密鍵の登録(キーペアの生成)などをキーセレモニーというらしい。
- ■セキュアエンベロープ【一般】
- 中に入れた物を封印できる封筒のこと。開けたり破ったりしたら一発で分かる。本文中で別々の人間がセキュアエンベロープの開封とPIN封筒の開封を行っているのは、暗号の本体が記録されたトークン(ディスク)とその暗号もしくはトークンを活性化させるモノ(PIN)が一人の手に渡ると、中身を悪用される可能性があるためだ。物理的にそれぞれを二つに分け、それを扱う人間も別々にアサインすることで、セキュリティを確保している(相互監視)。ディスクの中身は、国家検定署名(国で認められた、違法的な活動を行うためのアクセラレータ機能を持ってない、健全なAIである証明。頭の良し悪しは関係ない)の秘密鍵等である。このデータを悪用すると、非合法のAIでも合法であると詐称できたりする。
- ■PIN【コンピュータ】ぴん
- 暗証番号のこと。セキュリティ情報を格納したトークンを活性化(使える状態にすること)するために入力する。Peraonal Identification Numberの略。銀行のキャッシュカードを使うときに打ち込む暗証番号がおなじみ。
- ■ハッシュ値【コンピュータ】はっしゅち
- ある可変データを特殊な計算式により、固定長データに変換すること。また、変換後のデータから変換前のデータを類推することはほぼ不可能で、変換前のデータの1ビットのずれが、変換後では大きな違いとなり、近いハッシュ値同士からもとデータを類推したりすることが出来ない性質を持つ。
データの改ざん検知や、ファイルのダウンロードでデータ化けが無いかのチェックに使われたりする。現実世界ではMD5などが有名。ただしMD5は脆弱性が指摘されているので、電子署名などではよりセキュリティの高いSHA-2が用いられている。
- ■電子署名【コンピュータ】でんししょめい
- あるデータに対し、秘密鍵(電子証明書)で暗号化を掛けることを電子署名という。秘密鍵とは、公開鍵暗号法(RSAやPGP、楕円暗号が有名)で生成された鍵ペアのうち、公開鍵の対になるものである。秘密鍵で暗号化されたデータは公開鍵以外では復号できず、公開鍵で暗号化されたデータは秘密鍵でないと復号化できない性質を持つ。秘密鍵は個人で所有し、公開鍵はリポジトリ(電子証明書の発行局が用意する公開鍵を集めておくサーバ)に登録しておく。このような仕組みの元では、秘密鍵で暗号化されたデータは偽造の検知や本人性の確認が可能(その人の公開鍵のみ開くことが出来、かつその人でないと生成できない)となり、公開鍵で暗号化されたデータは秘密鍵を持つ人だけが復号出来るため、秘密鍵の所有者のみが閲覧出来る秘密通信に利用される。現実世界の暗号メールの標準であるS/MIMEの暗号化で利用されている。
なお、暗号には前述の公開鍵暗号法の他に、暗号化と復号化を一つの鍵で行う共通鍵暗号法(DESやAESが有名)がある。暗号自体の強度、計算速度は共通鍵暗号法が優れており、S/MIMEでは効率を考えワンタイムパスワードとメール本文のハッシュのみを公開鍵暗号法で暗号化し、メール本文はワンタイムパスワードを使い共通鍵暗号法で暗号化している。
- ■半二重通信【コンピュータ】はんにじゅうつうしん
- 二つの通信機器がお互いの情報をやりとりするとき、片方ずつしか情報を送れない通信を半二重通信という。身近な例では、トランシーバが挙げられる。
一方、両方がデータの送受信を同時に行える場合は全二重通信という。一般的な電話がこれに当たる。
- ■数世紀前の8ビットマイコン【コンピュータ】
- まだマイコンという言葉がMy Computerの略語として十分に通用した時代の遺物のこと。CPUにはその末裔が未だかつて大活躍中のZ80とか、その辺の連中を積んでいたりする。
本文中の数世紀前とは現実世界の1980年代を指しており、そのころのマイコン(8bitのパソコン)は専用ディスプレイ等あまり無く、普通のテレビに繋いで使っていた。なのでドットの荒い英字くらいしか表示できなかったので、本文中のような表現をしている。
- ■解答【一般】かいとう
- 問題は殆ど常識以前のレベルだったりするが、一応解答を。
A1 受粉
A2 労働、教育、納税
A3 みぃの解答にR>=0という条件が付く
A4 ライト兄弟
A5 万有引力の法則
- ■エミュレータ【コンピュータ】
- ある仕組みを別の仕組みを用いて動かすこと。よく使われるのが、ファミコンのプログラムをPCで動かすこと(自分が持ってるカセット以外のROMイメージを持つことは違法です!)。
基本的にコンピュータは別のCPUアーキテクチャ用のプログラムをエミュレートにより実行可能で、例えばPowerPCのMacintosh用のプログラムをWindowsで動かすことも不可能ではない。ただし、それをやるには著作権など様々なオトナの事情があり、かつアプリケーションの実行速度が極めて遅くなるため、特殊な用途以外では大して実用にならない。
ちなみに劇中では、開発中のシステムガイアのコアを使って、みぃの脳みそをエミュレーションを行っている。
- ■キャリブレーション【科学】
- 簡単に言えば調整を行うこと。機械やアナログデバイスは経年変化等で調整がずれてくるので、時々キャリブレーションをとったりする。もしくは、デバイスの初期設定時に行われることもある。
例を挙げると、たとえば印刷業務などで色の正確性が求められるディスプレイの場合、経年劣化や機差に起因するパネルの色のずれを、基準の色に合わせる必要がある。これをカラーキャリブレーションという。またHDDの場合、中で回っている磁性体の円盤が熱で膨張し、シリンダとヘッドとの位置関係が崩れるときがある。このためHDDは定期的にサーマルキャリブレーションと呼ばれる動作を行い、ヘッドの位置を補正している。某社のHDDは、ふにゃ〜かちんかちん、と妙な音がするが、これがサーマルキャリブレーションの音である(と思われる)。
本文中では、外してしまった弾の痕跡と持っていた銃の位置を計算し、正確に目標に当たるよう手の位置に補正を掛ける事をキャリブレーションと言っている。
- ■GPS【軍事】じーぴーえす
- Grobal Positioning Systemの略。高度2万キロに打ち上げられた24のGPS衛星から発射される電波で、地球上どこにいても自分の位置を正確に捕捉出来る便利なシステム。カーナビや船舶等の乗り物に取り付けられている事が多い。元々は米国のミサイル誘導等のために開発された軍事兵器だが、いくつかの信号は民間に開放されている。(軍事用の信号は暗号化されていて民間では使えない)
観測地点の位置を割り出す方法は以下の通り。
衛星から発射される電波には、衛星に積まれた原子時計の正確な時刻情報と衛星の軌道要素・位置情報が乗せられている。とある観測地点(GPS受信機)で3つの衛星からの電波を同時に受信した場合、それぞれの衛星の位置は電波により分かるので、受信機の持つ時刻情報と受信した電波の時刻情報のずれから衛星との距離を割り出し、原理的に受信機の位置を計算すことは出来る。ただしこの場合、受信機の時刻情報はGPS衛星と同等の原子時計レベルの精度が必要(普通の受信機の時刻はその辺の時計程度)であるので、実際には4つの衛星から電波を受信し、受信機側の時刻情報のずれを修正し、正確な位置を割り出している。
衛星と1カ所の受信機では誤差10mの精度になる。ディファレンシャルGPSと呼ばれる2カ所の受信機で位置情報を求める場合、片方の受信機の位置が既知であるなら、もう片方の位置は地上での衛星電波の差を比較する事になり、かなり正確に求めることが出来る。受信機が一カ所では、GPS衛星と受信機の間には電離層などが存在し、電波の速度が若干変わってしまい誤差になるが、地上同士の比較では、GPSの電波は2地点で同様な誤差を含み、結局差分をとると誤差を打ち消してしまうからだ。
なお、GPSは軍事利用が前提であるので、有事の際は精度を意図的に狂わされる場合もある。1990年〜2000年では、電波に意図的に誤信号を混ぜ、GPSの精度は100mまで下げられていた。
- ■マニュアル【一般】
- 取扱説明書のこと。もしくは教本を指す。コンピューターや業務アプリのマニュアルはうんざりするような厚さのものが多く、作った人の熱意がユーザーにさっぱり伝わらない場合が殆ど。だからといってPDFなんかになっていたりしたら、余計読んで貰えないかも知れない。やはり紙媒体はなんだかんだ言いつつ便利である。
本文中にある鹿沼が書いたマニュアルも、ご多分に漏れず読む側をげんなりさせる迫力を持っているようだ。現実世界にもこれと似た不幸なマニュアルがいくつか確認されているが、その中でも有名なのがHP-U×のマニュアルだといわれている。OSのバージョンアップ時にはダンボール数箱のマニュアルが送られてくるのだが、誰も読まないので箱すら開封されず、サーバルームの隅にどんどん積まれていくのだそうだ。筆者も新品のままゴミ捨て場に捨てられた、可哀想なHP-U×のマニュアルを大量に見かけたことがあり、世の中無駄が多いなとつくづく感じさせられた良い(?)思い出となっている。
- ■モニタモード【コンピュータ】
- モニタモードと聞いてN88-BASICを思い浮かべた方は、きっと良い青春時代を送られたことだろう。N88-BASICで、主にマシン語をデバッグするときに使うものだ。劇中でも同様に、OSのデバッグをする時に用いるモードを意味している。
OSでAIが動いている場合、OSの異常はAIの持つ感情や常識に邪魔され覆い隠されてしまう場合がある。これでは異常箇所の特定に手間取ったり異常の判別が付かない場合があるため、一切の感情を排除し、OSの純然たる機能を見ることが出来るような環境を実現するためモニタモードを用意している。
- ■マウント【コンピュータ】
- 一般的にはUNIX系のOSで、ファイルボリューム(HDDのパーティションやリムーバブルディスク等)をシステムに認識させ、その中に構築されているファイルシステムを使えるように事を言う。Windowsではユーザがマウントを意識することはないが、システムが裏で自動でやっている(と思われる)。
劇中では、みぃのOSに組み込まれた様々な基本的なサービスを活性化させることを、マウントすると表現している。現実世界のWindowsにもサービスと呼ばれるプログラムの実行形式があるが、サービスを活性化させることをマウントするとは言わないので要注意。普通は「サービスを開始する」とか言う。
- ■実働部隊【軍事】じつどうぶたい
- 武由が働く研究所に所属している、主に治安維持的な活動を行う部署のこと。見た目はまんま軍隊で、実際に武器を所持し、反対勢力と戦闘になることも多い。劇中では、森林への無断侵入を防ぐための様々な設備を設置している任務が描かれているが、しかしこれは彼等にとって、とても平和的な作業である。普段はテログループの掃討作戦や地雷撤去など、常に死と隣り合わせな過酷な職業である。
ただし彼等の仕事も、システムガーディアンの実戦配備と共にその役割を終える予定。システムガイアが完成した時には、全ての攻撃的作戦はみぃの子孫達が行うのだ。
- ■ゴーストがそう囁く【アニメ】ごーすとがそうささやく
- 攻殻機動隊(士郎正宗著)の素子さんが言った決めゼリフ。「私のゴーストがそう囁くのよ」。
どうやらみぃは、攻殻機動隊のファンらしい。きっと自分とよく似た構造のキャラが出てくるのが嬉しいのだろう。ミソのレベルはあまりにも違うが……。
- ■寝技【武道】ねわざ
- 柔道で固めに入る際に掛ける技を寝技という。時々セクシャルな型があったりするので、女のコ相手にやるのは相当に勇気が要ることだと思われるし、そもそも普通は男女混合ではやらない。
けどみぃはそんなことも気にせず、ごっついオッサン共と一緒に寝技に投げ技と練習に励んでいるらしい。頑張り屋やさんなのかそれとも羞恥心がすっぽ抜けているのか、極めて判断に迷うところでもある。
- ■クリスマス【宗教】
- キリストの誕生を祝う日のこと。キリスト教国では教会に行ってお祈りをしたりとまじめに宗教行事なのだが、日本は何をどう勘違いしているのか、飲んだり喚いたり騒いだりホテルでやったりと、単なるらんちき騒ぎの大義名分と化している微妙な日だ。もしくは、サラリーマンの大切な給料日。年末調整が返ってくるので、ちょっぴりお財布が暖かい。
本文中では本当のキリストの誕生日と違うとみぃが言っているが、現実世界でも西暦1年より4〜6年後ではないかとか、旧約聖書の記述(羊飼いが野宿していたこと)より、春先〜初夏なのではないかといわれている。また、国によってはキリストの誕生日を1月6日としている所もある。日本で一般的な12月25日がキリストの誕生日という根拠は、その当時流行っていた宗教で、太陽神の誕生日が冬至の過ぎるこの頃だということにあやかったのだと言われている。
このように誕生日が定かでない理由は、誕生日を祝うという習慣がキリストが存命中の時代には無かったからだそうだ。ちなみに、キリストの誕生日が12月25日というのは、後の宗教会議で正式に決められた事なのだそうだ。
- ■天使【宗教】てんし
- 元々、天使は人々を守護するとかいった働きよりも、神様の伝令、もしくは人々を罰するといった働きが強かったそうである。
初期に書かれた天使は、裸の若い男性だったそうだ。それが芸術家達の感性によって姿が変わり、いつしか我々がイメージする、だぶだぶの白い服を着た、羽の生えた若い女性になったのだという。なお、弓矢を携えた小さな子供(キューピッド)は天使とはまた違い、ギリシャ神話のエロースの姿を子供にしたもの。
- ■貰ったチョコレートのグレード【一般】
- 劇中の店員は何やら気の利いたことを言っているが、一般的には3倍返しだのなんだかんだと言われているのは気のせいだろうか? また、たった100円のチョコレートのお返しに、数千円消費した男性諸君も少なくはないだろう。かといって、どこぞのオヤヂのように、いきなり高級な下着とか贈るのは人としてどうかと思う。
ところで、義理と本命の間には歴然とした差があるだろう。たとえば初めて本命チョコを貰ったりしたら、お返しに何を買おうかではなく、これからどういう身の振り方をせねばならないのだろうかと考えるのが、舞い上がった男の典型的な反応である。女性諸君は、何か微妙なお返しが帰ってきてもがっかりしないで頂きたい。たぶん、相手は人生の中で最大級に真剣に悩み、そして単に的を外しただけなのだから。
- ■AV【一般】えーう゛い
- 言わずと知れたアダルトビデオのこと。オーディオビジュアルとは何も関係ないオトナの嗜みである。ちなみに劇中で流れている作品は、全て「とあるAV男優の憂鬱」で出てきた物だ。もちろんやる気のない男優は、同作の主人公、西島克樹である。ヤってる本人はぶつくさ言っていたが、作られてから1世紀近く経った世界でも流通しているところを見ると、相当の名作だったのだろう。出来れば作者も見てみたい(ぉぃ)
ちなみに、AVはバレンタインのお返しにする物ではない。一応。
- ■微妙な店員【一般】
- 妙に正直というか、思ったことがそのままダイレクトに口から出てしまうと言うか、とりあえず接待業には向いていないと思われる店員である。実はそっくりなキャラが「未来からのメッセージ」に出てくるが、もちろん同一人物ではない。
一部では、未来から〜の店員の子孫ではないかといわれている。
- ■ホワイトデー【行事】
- 全国飴菓子工業協同組合という団体が、バレンタインデーのチョコレート拡販事例にあやかり、キャンディーの売り上げ拡大を目論んで提唱したイベントのこと。理論的には、バレンタインデーでチョコを貰った男性がお返しという形でキャンディーやマシュマロ、クッキーを贈る日であるとされるが、実際は何やら高価な物品をたかられる日であるようだ(偏見)。結局の所日本固有の行事で、海外では韓国や台湾、中国の一部でのみ通用しているに過ぎない。日頃のお礼を込めて一輪の花や簡単なプレゼントを相手に贈るといった、セント・バレンタインデーのように歴史的な謂われは全くないわけだ。なお、バレンタインデーとホワイトデーで愛を確認し合ったカップルが贈り物を贈り合う日として、4月14日にオレンジデーというのもあるらしい。欧州ではオレンジが子孫繁栄の象徴であることから、この名前の由来になっているらしい。
ちなみに、ゴールデンウィークは映画業界が売り上げ拡大の為に言い始めた行事である。
- ■ブルートフォースアタック【コンピュータ】
- 『ヘタな鉄砲、数撃ちゃ当たる』を地でいくような、総当たりの攻撃のこと。たとえば銀行のATMで、暗証番号を0000〜9999まで律儀に1万回ほど打ち込むことを言う。通常この種の攻撃を防ぐため、一定回以上の間違ったパスワードを入力すると、アカウントのロックアウト(一定時間その端末の操作ができなくなるとか、そのアカウントが一時的に無効化される)が行われる。先ほどの銀行ATMを例にとると、カードが吸い込まれて出てこなくなることだ。
劇中では、研究所のサーバ群は結局ブルートフォースでハッキングを許してしまったのだが、これは研究所のセキュリティポリシーによる結果である。アカウントのロックアウトは、不特定多数の人間にアクセスされる環境では当たり前である。しかし研究所のサーバは、ごく一部の限られた人間からしかアクセスされることはなく、かつ外部のネットワークからも基本的に切り離されている。このため、サーバは処理速度+使い心地最優先で、余計な処理は一切走らせないといったユルい運用から、このような結果となってしまった。ただし、一応であるが手動で管理者権限を持つアカウントのパスワードを暗号化(更新)して、ブルートフォースから逃げる機能は持っている。ただし、みぃの計算速度の前では役に立たなかったようだ。
- ■プロトコルスクリーニング【コンピュータ】
- 劇中世界の通信プロトコルであるIPは、2点間のルータがお互いを認証し生成したワンタイムパスワードによって、全てのパケットを暗号化している(OSIの階層としては、ネットワーク層で暗号化)。これをプロトコルスクリーニングといい、上位のアプリケーション層では平文でやりとりしているように見えても、パケットスニッファ等で抜き取ったパケットは暗号化されているので中身を全く解析できない。
この暗号化のため、ハッキング等侵入者の痕跡を調べるためには暗号解読が必要となり、もし解読の為の暗号解析を行うコンピュータの計算能力が足らなかった場合には、パケットの解析が追いつかずに有用なデータが霧散する事になる。このため、侵入者追跡には強力な暗号解析システムが不可欠となっている。ルシファーαとは、研究所が独自に開発した、暗号解析に特化したAIだ。ちなみに国家検定を通っていない違法AIでもある。お国にバレると極めてまずい事態となるのだが、プロトコルマスタを管理する側としては、諸刃の刃たる違法AIも管理上必要であるとの認識だ。研究所のネットワーク管理者達は、侵入者の痕跡を捜すため、ルシファーαを使ってパケットの超高速解析を行った。
しかし、結局みぃが侵入したアクセスポイントまでしか割り出すことが出来ず、さっさと逃げた彼女本体までは追跡することが出来なかった。
- ■中継基地【通信】ちゅうけいきち
- ネットワークケーブルの分岐点、もしくは信号増幅を行う機械が設置されている場所のこと。劇中の中継基地には、ハブやルータ、光トランスポンダなどが置かれている。また劇中世界で使われているIPプロトコルは、暗号化で用いる鍵の交換などが頻繁に行われるため、オーバーヘッドが極めて大きい。このため、テラビット級の光回線を数十本束ねるような極めて太い基幹回線が、世界中のあちこちに張り巡らされている。
これらの回線の継ぎ目などに中継基地が必要となり、かつ回線はなるべく最短距離で引っ張っていくため、どうしても地理的に不利なところに中継基地を作らざるを得ない事もある。光ケーブルといえども長距離の伝送では信号が劣化するので、ある一定の距離の間隔で中継器(信号劣化を修復して送り出す機械)を設置しなければならない(現実世界でも、例えば海底ケーブルは40〜100km毎に中継器を付けている)。ちなみにテロリストに攻撃された中継基地は、冗長化された区間の光トランスポンダ設置基地だった。このため全体的には通信が途絶するような事は無かったが、もう片方の回線にトランザクションが集中し、輻輳(回線が混み合うこと)を起こしてスループットが落ちてしまった。
- ■衛星回線【通信】えいせいかいせん
- 通信衛星を使った通信回線のこと。以前はケーブル代わる次世代の通信回線だと言われていたが、回線品質が悪い、レイテンシが大きい、セキュリティに弱いなど、一般的なデータ通信に使うと欠点が多くなってしまい、最近ではあまり用いられていない。どうしてもケーブルが通せないとか、一対多(特に片方向通信)の通信路ならば利点がある。
現実世界では、主に放送系や衛星携帯電話、一部の通信に使われている。特に災害時には、地上の状況に因らない通信インフラであるため極めて有用である。
- ■三河屋【固有名詞】みかわや
- 某長寿アニメ番組に出てくる酒屋さんの名前。いつも裏口から「ちわーす!」と注文取りにやって来て、ついでに宅配までしてくれるという顧客満足度を刺激するサービスを行っている。
みぃはきっと、このアニメも見ていたのだろう。なかなかに芸の細かいヤツだ。
- ■脊椎反射【生物】せきついはんしゃ
- たとえば熱い物を触った場合、脳が熱いと感じる前に、瞬間的に手を引っ込めるような動作のこと。いちいち脳が処理していては火傷を負ってしまうため、早急に危険回避を行うための、生物に組み込まれたフェールセーフ機能である。ちなみに名前が示すとおり、手を引っ込める動作は脊椎(背骨の中の神経)が制御している。
なお、本文中には脊椎反射でみぃをうなり散らしたとあるが、普通はこんな事あるわけ無いので誤解無きよう。あくまで、隊長のアンニュイな気分が誘発した、ちょっとした感情の爆発である。
- ■凄み【生物】すごみ
- 『僕の言うこと聞いて、お願い』という感情を、相手に強制的に分からせるための表情の一つ。それなりの人がそれなりのやり方でやるととっても効果覿面なのだが、ボケ顔でぷくぷくほっぺのみぃがやっても全然迫力はなく、単に「あっぷっぷー」とにらめっこをしているような物だ。
ちなみに、時と場所と相手を選んでやらないと、文字通り痛い目に遭うので要注意。
- ■チンダル現象【化学】ちんだるげんしょう
- 本文中の説明の通り、溶媒の中に含まれる微粒子が光を反射(レイリー拡散)し、光の筋が見える現象のこと。もやの掛かった場所で、雲の切れ目から差し込む太陽光が筋を描くのも、チンダル現象の一つである。
レーザー光を写真で取ったりする場合、普通だと全然映らなくて面白味に欠けるので、線香を焚いて光の筋を出すようにするのは割と有名である。
- ■踏み台【コンピュータ】ふみだい
- 高いところの物を取るために乗っかる台のことではない。あるコンピュータをハッキングするとき、他のコンピュータを経由することがある。この時経由に使われたコンピュータを踏み台と呼ぶ。なぜ他のコンピュータを経由するのかというと、直接ポイント・ツー・ポイントでハッキング行為をした場合、相手にも自分の情報が伝わり、すぐに足が着くからである。プロのハッカーの場合、6カ所くらいのコンピュータを経由して本命のコンピュータに侵入したりする。
たとえば、以前流行ったftpサーバを用いた踏み台は、以下のようにして行われていた。まず、匿名接続が出来、なおかつセキュリティの甘いftpサーバに接続する。このようなサーバはローカルのファイルだけでなく、他のサーバのファイルまで取ってこれるようになっているので、get www.hogehohe.com/yabayaba/eroero.jpg等というget命令を発効した場合、ちゃんとhogehoge.comのサーバからeroero.jpgを取ってきてくれたり、最悪そのファイルが存在するかどうかの確認が出来たりする。ここで、www.hogehoge.comにとっては、あくまで接続してきているのはハッカーがいじっているftpサーバなので、直接ハッカーがばれてしまうようなことはない。
もちろん今時こんなダメダメな設定のまま放置されているftpサーバは皆無だし、それにこの程度ではすぐにばれてしまうので真似しない方が良い。こんなftpの踏み台とか、プロキシサーバを悪用したりというのを何重にも重ねて、ハッカーは日夜情報収集にいそしんでいるのだ。
ちなみに本文中では侵入者を一律ハッカーと呼称しているが、厳密には単に余所様のネットに侵入してファイルをかっぱらったりセキュリティーホールを突いていく連中をハッカー、システムをぶっ壊して悦に入ってるバカ共はクラッカーと区別しているので、誤用無きよう。
前置きが長くなったが、本文中での踏み台は、科学計算をさせるための高速な演算が出来るハイパーコンピュータを乗っ取るため、ファイルサーバのいちじくやにんじんにウィルス(パスワード解析プログラム)を流し込んで、ハイパーコンピュータのパスワードやファイヤウォールを無効化させることを意味している
- ■物理プロセッサ【コンピュータ】ぶつりぷろせっさ
- 名前の通り、実際に基板に刺さっているCPUのこと。仮想化技術やマルチコアなどの技術により、最近ではパーツとしてのCPUの個数とOSで見えているCPUの個数が違ったりしてきている。一部のCPUに組み込まれているハイパースレッディングなどが良い例。
劇中では、数千発のCPUの内、92%がみぃの叩き込んだプログラムに占有されてしまっていることを示す。他のプログラムは全部プロセスを凍結されたか、メモリ上から飛ばされてしまった。
- ■割り込みベクタ【コンピュータ】わりこみべくた
- 正式な名称は割り込みベクタテーブルとか言う。一般的なOSの場合、物理メモリアドレスの0番近くに存在する特殊なメモリイメージのことを指し、様々な割り込み処理が入ったときの、飛び先のメモリアドレスが記憶されている。例を挙げると、割り込み30番の場合、割り込みテーブルの30番目を見ると、それに対応したルーチン(プログラム)が格納されているメモリの先頭アドレスが入っているので、30番の割り込みが発生したら、CPUはそのメモリアドレスのプログラムを実行する、といった感じ。
なので、ここのメモリイメージを壊されると、コンピュータは壊滅的なダメージを受ける。ちゃんと保護が効いてるOSは、たとえば「例外が発生しました。”アドレス0x00000000に対する不正な書き込みです”」とか何とか言ってプログラムを止めてくれる物だが(今のはありがちなNULLポインタに対する書き込み)、DOSなどのレガシーなOSでは保護が効いていない為、そんな処理がちゃっかり通ったりする。で、やらかすとハングアップしたりシステムが不安定になったりHDDをぶっ壊して色々終わる。本文中では、スーパバイザシステム(ハイパーコンピュータの監視を行ってるPC)の割り込みテーブルを破壊して、そのPCのOSをすっ飛ばしてしまった。
- ■プロトコルチェンジ命令【コンピュータ】ぷろとこるちぇんじめいれい
- 劇中世界での、ルータやNICに対してIPプロトコルを変更させるための命令。プロトコル自体に欠陥が見つかった場合に、ネットワークが自律的にプロトコルを変更し、脅威に備える機能。それにより暗号アルゴリズムが変わったりするので、脆弱性を突くようなハッキングが出来なくなる。
みぃはプロトコルマスタを手中に収める為強制的にIPプロトコルを変更し、周りのセキュリティシステムからの通信を途絶させ、防御システムを完全に無効化しようとした。
- ■シード【コンピュータ】
- 乱数発生の元となる乱数、もしくはCBC暗号(次の項目を参照)の初期ベクトルのこと。ばれると即暗号が解かれるという事はないが、だからといって外部には漏れない方が良い物。
暗号鍵とシードがばれてしまうと、セキュリティの強いCBC暗号も簡単に解読されてしまう。
- ■CBC【コンピュータ】しーびーし
- Ciper Block Chainingの略。ブロック暗号(データをある決められたバイト数ずつに区切って暗号を掛けていくこと。ビットごとに連続して暗号化するのはストリーム暗号という)の一種で、あるブロックの暗号の結果を、次のブロックの鍵にしたりシードにしたりとフィードバックし、一つのブロックから暗号鍵が割れたとしても全てのブロックが解読されてしまわないようにしている。
なお、よく使われているDESのCBCモードでは、前の暗号演算の結果を次のブロックの平文と排他的論理和演算し、その結果をDES暗号している。シードの所で出てきた初期ベクトルとは、一番最初のブロックの平文と排他的論理和をする値のこと。
はっきり言って、こんなもん普通はリアルタイムで暗号解読なんて出来ない。初期ベクトルとDES鍵両方分からなければ平文に戻せないし、それに辞書攻撃(後述)も途中で排他的論理和演算を行っているため不可能だからだ。
ちなみに初期の無線LANはCBCでなくEBC(Electric Book Codeの略。全てのブロックで同じ暗号キーを使う)で暗号化しているので、TCP/IPヘッダなどの既知の平文と暗号文を比較することにより暗号鍵を割り出し、簡単に中身を解析されてしまう。このように、既知の平文と暗号文の組み合わせを保存し解析することを辞書攻撃と呼んだりする。このため、最近の無線LANはセキュリティを上げるためにワンタイムパスワードを使うWPAが主流となり、よりセキュリティを高めるためにRADIUSなどの認証サーバと端末で鍵交換を行う802.1X等が使われる様になっている。
- ■SAES暗号【コンピュータ】すーぱーえーいーえすあんごう
- 劇中世界で一般的に使われている共通鍵暗号法のこと。もちろん現実世界には無い。現在一般的だがコンピュータの発達により脆弱になりつつあるDESに代わる暗号法として、AES(Advanced Encryption Standard)という暗号方式が標準暗号法として決まりつつある。SAESはこの発展版と思われる。
現実世界の暗号では、鍵長は長くて数キロビットだが、SAESでは数百キロビットの鍵長を使う。このため、CBCでなくとも非常に解析が難しい。
みぃはこれらの暗号を、人間が連想ゲームを解くような感じで簡単に解読してしまうのだ。
- ■IFF【軍事】あいえふえふ
- Identification Friend or Foeの略で、敵味方識別装置のこと。戦闘機などでは、レーダーからでは敵か味方か分からず戦局が混乱する為、相手機のIFFトランスポンダから返信があった場合を友軍と識別する(返信がないからといって敵軍とはしない)。またこの信号を一意の物にすれば、味方機を個別に識別可能となる。
現代の戦争には無くてはならない装備である。
- ■教会【宗教】きょうかい
- 一般的にはキリスト教の礼拝堂のことを指す。我々日本人には結構身近と思われるキリスト教ではあるが(しかし信者が1%を超えないという”1%の壁”というものが存在するらしい)、カソリックとプロテスタントのちゃんとした区別が出来る日本人は実はあまりいないのではないだろうか。(作者もさっぱり分かりません)
ローマ法王を頂点とした一つの巨大な組織がカソリックであり、教会には神父さんやシスターがいて、マリア様の像が飾ってあったりする。一方、プロテスタントは複数の宗派に分かれており、教会には牧師さんが居て、マリア様の像はない。カソリックの神父さんは神と個人の仲介役、牧師さんは教会のまとめ役といった、それぞれ役割が違うのだ。なお、神父さんやシスターは結婚しないが、牧師さんは結婚できるとのこと。また、カソリックでは聖書に出てくる人を聖人として信仰の対象とするが(それ故聖母マリアの像がある)、プロテスタントは父と子と精霊の三位一体のみを信仰の対象とするため、マリア様の像はない。
ちなみに作中のは礼拝堂にはマリア様の像が飾ってあり、神父さんが出てくるところを見ると、カソリックの教会で結婚式を挙げたのだと思われる。
なお、キリスト教の信者ではないのに教会で式を挙げることも出来るらしいが、基本的に2〜3回は講習会を受けなければならないので、その辺教会との打ち合わせが大切であろう。
- ■オギノ式【医学】おぎのしき
- 荻野久作博士が提唱した、排卵時期を知り妊娠しやすくするための学説を、周りの人間が勝手に取り違えて避妊法の代名詞にしてしまったもの。荻野博士は、オギノ式を避妊法と思われることに対し「迷惑だ」と言っていたそうだ。
ちなみに避妊法としては不確実とされており、パールインデックス(1年間その避妊法を実践して失敗する率)は9%程度。正しく使ったコンドームに比べて3倍以上の妊娠率である。
参考程度に簡単な考え方を載せておくと、月経周期のうち最短周期Aから18を引いた日(A-18)が危険日の1日目、最長周期Bから11を引いた日(B-11)が危険日のの最終日となる。つまり、月経周期の(A-18)日〜(B-11)日にえっちなコトをしなければ子供は出来にくいと、そういうわけである。
- ■基礎体温法【医学】きそたいおんほう
- 排卵日を中心として月経を分けると、前半が排卵期、後半が黄体期という風に分けられる。黄体期では黄体ホルモンの働きで体温が0.5〜1.0程上昇するので、この体温差を調べて排卵期を知り、避妊に役立てるという方法。黄体期に入ってから4日目以降にえっちなコトをしても妊娠しづらい。
前述のオギノ式にも言えることだが、この方法は月経の周期が安定していることと同時に、相手の我慢強さが鍵を握っていると言えるだろう。つまりコンドームやピルの様にえっちなコトをしつつも妊娠しない様にするのではなく、「今日はヤバイ日だから我慢我慢」と、”何もしない”のをその方法とするからである。ちなみに相手の妊娠のリスクも考えずに刹那的な射精感だけを追い求めるスケコマシ野郎は、はっきり言って人間のクズなので即刻別れるべき。そういうヤツは決して女性を幸せには出来ない(極めて偏見)。
あと、女性の「今日は安全日なの♪」は結構ウソが多い(後述のキセイジジツや、オギノ式や基礎体温法を全然理解してなくて間違った計算をしている場合が多いらしい)から、そんな女性とコトをいたすと人生を棒に振るゾ男性諸君!(極めて差別)
ちなみにこの方法のパールインデックスは3%程度。コンドームと同程度だが、月経周期が安定している必要があり、それに毎日専用の体温計で体温を測らねばならず、簡単な方法ではない。
- ■独りモン共【人生】ひとりもんども
- 華の独身貴族の蔑称。もしくは恋人が居ない奴らの愛称(違)
ちょっと前まで「彼女は作らん!」とかほざいていたくせに、みぃとチュウして簡単にジョブチェンジしたヘタレ武由が、漢の道を貫く同僚らに向けて言った罵詈雑言である。彼女が出来るととたんに言ってることとやってることがひっくり返る野郎は多い。男の友情なんて所詮そんなモンだ(意味不明)
- ■家族計画【医学】かぞくけいかく
- 受胎調節のこと。もしくはコンドームの宣伝文句。確かに良い嫁さんはしっかり家族計画を行えるかも知れないが、その前に嫁になることが大切である。
基本的に、1つの例外を除いて100%の避妊方法はない。なのでしっかりとした家族計画を行うためには、複数の避妊法を組み合わせるのがよいとされる。それにより、避妊率を100%に近づけることが出来るのだ。
ちなみに唯一の例外とは、そのものズバリ「何もしないこと」である。ヘンなクスリや道具を使わず出来るので、人体にとっても優しい。ちゃんとしたオトナは自分で処理できるものですよ?
- ■キセイジジツ【一般】
- 一般的には、わざと子供を作って結婚する言い訳にすること。”出来ちゃった結婚”の前にもてはやされた言葉だ(違)
作者は冗談で「キセイジジツでカレシをゲッツ!」と書いたつもりだったのだが、後日電車の中吊りで殆ど同じキャッチコピーを発見。最近そんな捨てッぱちな人生の女性が増えているそうである。全く末恐ろしい世の中になったモンだ。
敢えて書かせて頂くが、そんな小細工を使って無理矢理結婚しても、将来ロクな事にはならないので止めた方が良い。妊娠なんて理由がないと結婚できないカップルは、すぐに離婚するのがオチだ。男は自分の子供に愛着が湧くのに時間が掛かるし、それにそこまで耐えたとしても、愛されているのは妻ではなく子供だけだ。
- ■子は鎹【一般】こはかすがい
- 夫婦の縁は子供がつなぎ止めると言うこと。鎹とは、建築に置いて木材同士をつなぎ止める部品のことで、一般的には金属で出来ていてコの字型をしている。ホッチキスの針に様なものだ。
何やら先ほどのキセイジジツと反対なことを書いている様だが、愛し合って結婚して子供が出来て倦怠期になっちゃった夫婦と、初めから愛が無くて子供が居るからくっついた夫婦ではバックグラウンドがそもそも違うので要注意。
- ■個体の多様性【生物】こたいのたようせい
- 同じ種類の生物の中にも、色々な遺伝的な多様性があること。簡単に言うなら、世界には同じ顔の人間が3人しかいないということ。
同じ種の生物に遺伝的な多様性がなかった場合、たった一つの病原菌のおかげ種が一つ全滅することもあり得る。逆に遺伝的な差異ががあれば、そのおかげである個体はその病原菌に対して耐性を持っていて、種がまるまる全滅することは無いだろう。生き物に有性生殖が多いのは、なるべく様々な遺伝的性質が混ざり合い、結果として子孫により多くの多様性を持たせるためであると考えられる。
- ■古風な考え【一般】こふうなかんがえ
- 古風とは言っても、だいたい明治時代あたりに流行った考え方。江戸時代から前の日本という国はフリー・セックスは当たり前で、町の共同浴場などはもはや今で言うところのソープランドの様相を呈していたらしい。元々我々日本人は生粋の農耕民族であり、そういう連中は飢えの心配があまり無いので人生穏やかに子作りに専念するのが遺伝子に刻まれているらしい(だからスケベが多い)。逆に白人などの狩猟民族は常に獲物を求めて戦いの毎日であり、余り子供を作らないというのが遺伝子に刻まれている様だ。
話を元に戻そう。明治時代日本では、欧州などの列強各国に追いつけ追い越せと富国強兵政策を打ち出し、近代化をガンガンおし進めていた。このような状況下で性風俗に乱れまくったままでは近代化に差し障るというわけで、時の明治政府はそれまでのオープンな風潮を厳しくふん縛り、慎みと貞淑を求める考えを広めた。これが古い日本人の持っている考え方のおおもとであり、最近の性風俗の乱れは若者やオヤジが堕落しているのではなく、本来の日本人の性質を取り戻しつつある過程なのかも知れない。
- ■アイスクリーム【一般】
- 牛乳に卵や砂糖、香料をぶち込んでグルグルかき回しながら凍らしたおいしい食べ物。みぃの好物である。
一般的に甘くて冷たくて牛乳が入ってそうな食べ物をアイスというが、厚生労働省が定めるところのアイスクリームとは乳固形分15%以上(うち乳脂肪が8%以上)のもので、それ以下はアイスミルク(乳固形分10%以上、うち乳脂肪3%以上)、ラクトアイス(乳固形分3%以上)、氷菓(乳固形分が入っていないか、3%未満)となる。
作者がよく食べる、値段が安いワリにはカップがデカイのは殆どラクトアイスである。
- ■F-T5【兵器】えふてぃーふぁいぶ
- Tが付いているが、もちろん練習機ではない。劇中世界で起こった第3次世界大戦末期に作られた、戦略戦闘機のことである。正式名称でバージョン5とあるとおり、T5は黄昏シリーズの第5世代機だ。
当初、純国産として開発された黄昏バージョン1は、戦闘機としてはその時代のありふれたものであった。しかし世代を重ねるにつれて最高速度を増していき、それに伴うエンジンの大型化に合わせ、機体も大きくなっていった。シリーズ中一番大きかったのはF-T4であり、実は殆どの性能はT4が一番である。T5はT4をスケールダウンし、それに伴いコスト減と俊敏性の向上を目指したものだった。
T5が最強最悪などと言われているのは、単にT5の量産体制確立と戦争の時期が重なっただけであり、事実上の最強の戦闘機はT4である。また、T5の後継であるT6も、設計図だけだが存在する。T6はより機体を小さくし、また反重力システムとダイレクト・ブレイン・コントロール(思考だけで操縦をするための支援システム)を積極的に用いたもので、実際に作られていればT4をも凌ぐ戦力を持っていただろうと言われている。
なお、T5の詳しい説明は本文中に出ているので省くが、コックピットについて少々補足しよう。この戦闘機、有人タイプではコックピットは球形の全方向型ディスプレイの真ん中にシートが付いていて、雰囲気としては「トップをねらえ!」のガンバスターとか「ほしのこえ」のトレーサーみたいな感じである。ちなみに戦闘機のコンピュータはシステム管理としてWind○wsが起動し、その後アプリケーションとして火器管制システムやら機体制御システムが立ち上がる。なお、それらのソフトはWind○wsの管理するCPUで動くわけではなく、別付けのアクセラレーションユニット(球形ディスプレイへの画像展開や火器管制、戦闘機の各種制御を専用ハードで行うための、ベクトルCPUとか3Dアクセラレータの固まり)上で動く。
一応AIと言えそうな戦闘支援システムは搭載されているが、だからといって雪風みたいに、自己主張が激しかったり人間様を乗せたままで超絶気ままにアクロバット飛行をする様なことはしない。というより、そんな機能はない。あくまでパイロットが居てナンボの戦闘機である。(指示すれば自分で基地に帰ったりは出来る)
余談だが、コックピットには7.1chのサラウンドシステムが搭載されていて、とあるパイロットは自分の大好きなアニメソングをかき鳴らしながら、ノリノリな気分で爆撃を行ったそうである。
- ■ラムジェットエンジン【機械】
- 一般的なターボジェットエンジン(ターボファンエンジン)は、よりスピードが増すとエンジン吸気口からの空気の流量に対してターボファンの圧縮能力が足りなくなったり、ファンの回線数が上がりすぎて構造上耐えられなくなる。そこでラムエンジンという、エンジンの筒自体の内径を砂時計の真ん中の様にすぼめたり筒の真ん中に三角錐状の構造物を設置して、吸気の通る道を狭めることで圧縮し、そこに噴射した燃料に点火プラグで火を付ける構造のものが考えられている。これだと構造が簡単で、吸気ファンを回さなくてもいいので超高速を実現できるのだ。もちろんラムエンジンが動作可能なのはエンジン自体が音速を超えて飛行中の場合であり、そこまで加速するために普通のエンジンが必要である。
なお、スクラムジェットエンジンとラムジェットエンジンの違いは、圧縮後の空気が音速を超えているか越えていないかであり、スクラムジェットエンジンは圧縮後の空気も音速を超えている。また、コンバインドとは一般的なターボジェットエンジンとラムエンジンを組み合わせた混合という意味。
ちなみに黄昏に付いているエンジンのターボファン部は、一般的なそれとは違い、ターボファンを超伝導モーターで回している。このため敵機の衝撃波に巻かれたり失速したりしても吸気が止まらないので、エンジンが停止することもなく安定した運行を行える。
ターボファンエンジンをスクラムジェットエンジンの切り替えは、エンジン吸気口近くの圧縮機構(ここではディフューザー)にあるバイパスフラップ(切替弁)を開け閉めするタイプのものではなく、ターボファン部がそのまま横にずれて機体に入り込み、エンジンの内径を特殊材料で操作することでスクラムエンジンを構成する(内径の一部がすぼむようになっている)。そして点火プラグの代わりにプラズマ発生器を用い、空気と燃料をプラズマ化させ効率の良い燃料の燃焼を行っている。
F-T5は最高速度でマッハ21(ちなみにF-T4はマッハ22)であるが、普通こんな速度でモノを飛ばしたら隕石よろしく瞬間的に燃え尽きる。これらの戦闘機は機体表面を電磁バリアで覆い(みぃも同じようなものを展開しているので、マッハ36を出しても焼きみぃにならず済んでいる)、熱が直接機体に影響を及ぼさないようになっている。このためバリアの発生装置が壊れると、一瞬のうちに流れ星になってしまう。
- ■軍ヲタ【風俗】ぐんをた
- 軍隊や軍備や兵器が好きでたまらない連中の総称。どうやらみぃは、強い兵器を見ると拠点防衛兵器としての血が騒ぐらしい。このため黄昏がエンジン噴かして爆音を轟かせている中、一人「燃えー」とか言って喜んでいた。
なお、以下の問いに答えられたら、作者がアナタを立派な劇症軍ヲタと認めます。1.F-15Jは米軍のF-15とアビオニクスが違うそうですが、JのアビオニクスのCPUの型番は? 2.CIWSは通常劣化ウラン弾を用いるそうですが、日本では使えません。さて海自で使っているCIWSの弾の重さは? 3.どんなガタガタ道でも決して砲が揺れないと噂の90式戦車。履帯の枚数は?
ちなみに正解は……作者はそんなこと知りませんよ?(ぉぃ)
- ■近接信管【兵器】きんせつしんかん
- 一般的にミサイルは目標にぶち当たってから爆発すると思われているが、近くまで飛んでいって爆発しても十分致命傷を与えられるものだ。爆発時に飛び散った破片が敵機に無数にめり込み、機体やパイロットに損傷を与えられる。特に弾頭に劣化ウランでも入っていると威力が増して具合が良い。
このように、ミサイルが目標物に接近したときに起爆させる働きの信管を、近接信管という。
ちなみにミサイルが爆発したときに自機や味方機が近くに居た場合も、先ほどの破片をめいっぱいに浴びてしまうことになる。このため、黄昏はミサイルがある程度自機に近づいた場合、そのミサイルに対し自爆信号を送り、万が一にも爆発の余波を喰らわない様にしている。
- ■メソッド【コンピュータ】
- オブジェクト指向プログラムなどで、クラスの中にある関数のことをメソッドという。劇中では、何かしらの機能の主体をメソッドと表現している。現実世界ではこういう言い方はしないので要注意。
なお、クラスの中の変数はプロパティという。オブジェクト指向プログラムのクラスについては、プログラムの入門書等を参照のこと。
- ■ハード・ア・スタボー【海事】
- 正確に言うなら、「ハード・ア・スターボード」で、取り舵いっぱい!!(船首を左に向けろ)という意味である。スターボード(サイド)は右舷のこと。
ちなみに船の世界では、もしも2隻の船がこのまま進めば正面衝突するというときは、お互い右に避けるという約束事がある。しかし時々左に避けたりするボケた船が居たりして、こういうのが良く衝突を起こして転覆事故を誘発したりする。ちなみに、左舷のことはポート(サイド)という。
かの豪華客船タイタニック号が右舷を氷山にぶつけかけたときに、乗組員が「ハード・ア・スタボー!」と言ったことはワリと有名である。
- ■ローリング【航空】
- 飛行機の機体をプロペラのようにくるくる回転させること。超有名ロックバンドの短縮形ではない。
このとき黄昏がこのような機動を取ったのは、単に「ヘタな鉄砲数打ちゃあたる」を実践しただけのことだ。ランダムに飛び回るみぃにはランダムにレーザーを打ち込むのがいいと判断したようだ。あまり頭の良くない戦法であるように思われる。作者は戦闘機なんて乗ったこと無いので良く分からんのですが、目の前をチョウチョのようにフラフラ飛ぶ目標というのは撃ち落としやすいのでしょうか?
- ■ターボファン【航空】
- もちろんターボの掛かった気狂いアイドルファンのことではない(ぉぃ)。ターボファンエンジンの前部に取り付けられている、吸気のためのファンの部分のこと。ターボファンエンジンは燃料を燃やした排気以外に、大量に吸い込んだ空気をそのまま吐き出し推進力を得ている。つまり、エンジン内に吸気した空気の内、燃料の燃焼に使われる空気は一部分で、残りは排気と一緒にエンジンの後部ノズルから吐き出されるのだ。エンジンの排気を空気でくるむ様に排出すれば騒音を減らしたり出来るため、旅客機のエンジンなどは殆どがターボファンエンジンになっている。
一方、戦闘機のエンジンはターボファンが無く、直接コンプレッサで吸気を圧縮し、殆どの空気を燃焼用に用いる。このようなエンジンをターボジェットエンジンという。一般的には、ターボファンエンジンは風量が多いが勢いは無く、ターボジェットエンジンは風量が少ないが勢いがあるという。
黄昏のエンジンはターボファンエンジンではあるが、もちろん旅客機のような大きいファンは付いていない。一般的なターボジェットエンジンよりも吸気を多くするための補助として、小さなファンを搭載している。
- ■パワーディストリビュータ【電気】
- ラックマウントのコンピュータや楽器など電源を供給する専用の機械のことをいう。テーブルタップをラックにマウントにした様なもので、集中スイッチが付いていたりラインフィルタが組み込まれている。
劇中では、みぃの背負ってるバッテリーに組み込まれたスイッチ部分を指す。ただし、スイッチといっても負荷に応じて電源の容量配分をしたり出来るので、乱暴な言い方をすれば出力を無段階に変えられるインバータ回路みたいなものだ。
みぃはバッテリーの有効活用のため、適時パワーディストリビュータを操作し節電に努めている。
- ■シェル【コンピュータ】
- シェル(Shell)はそのまま殻という意味で、OSの外面を覆うUI(User Interface;人間が操作をするための画面やコマンドインタフェースのこと)を意味する。たとえばWindowsならExplorer、MS-DOSならCOMMAND.COMの事である。本文中のシェルをすげ替えるというのは、たとえばWindows95でWindowsXPのExplorerを動かすような、あり得ないシチュエーションを意味する。無理です、マジで。
- ■おしゃれ【一般】
- みぃは普段化粧はしないし、武由が買ってきたネックレス程度しかアクセサリーは持っていない。それに彼女曰く”ピチピチお肌”なので、寝る前に適当な化粧水でも軽くはたいておけば、後はすっぴんで勝負が出来る大女優なのだ。
そんな極めて漢らしい彼女は、それこそ放っておけば武由の着古しのジャージなぞ着て研究所の廊下を歩くため、可愛い服や肌のお手入れなどは鹿沼が担当していた。さすがに武由も、どうしても教えられない女の花園があるのだ。
- ■セシウム原子時計【科学】せしうむげんしどけい
- 原子が放出したり吸収する光の波長で正確な時間を計るというのが、原子時計の基本原理だ。ちなみに、「秒は、セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍の継続時間である」と定義されている。セシウム原子時計は、レーザー冷却(多方向からのレーザーで原子を固定して、原子の運動を押さえ込む事によって温度を下げること。温度は原子の運動量に比例する)したセシウム原子に可変波長レーザーを当てたとき、電子の状態が変化するレーザーの周波数が9,192,631,770Hz(約9.1GHz)という事から正確な1秒を測っている。
当たり前のことだが、みぃの腹の中には原子時計など入っていない。ただ単純にGPSから時刻情報を拾ってきているだけである。
- ■ブラックアウト【航空】
- +方向へGが掛かったとき(頭をてっぺんにして真上にすっ飛んだときなど)に、頭から血が下がって目の前が真っ暗になったり息がしにくくなったりすること。他の意味では、停電とか酔っぱらって記憶がすっ飛んだとか、船の操縦が出来なること。
戦闘機のパイロットなどは急機動でのブラックアウトを防止するため、太ももなどに圧力を掛ける機械(血圧計の腕に巻くバンドみたいなの)を装備している。これで血管を絞って脳に血が行くようにするのだ。
- ■プラズマ【科学】
- 作者は昔プラズマとイナズマは仲間かと思っていたのだが、もちろん違う。電気的に正負に分かれた粒子が一様にあり、全体的に電荷がゼロになっている状態をプラズマと言う。放電管の中とか、超高温の炎がプラズマ状態であるといわれている。ちなみ電気的に正負が分かれた粒子とは、気体物質ではイオン化した気体分子(原子)と電子がそれぞれ相当する。このためプラズマ化した気体は極めて反応しやすく、窒素のように通常では化学反応しない物質もプラズマ化すれば反応を起こすようになる。たとえば超硬質の窒化膜(窒素と基材を反応させた膜)を作る場合には、窒素のプラズマ雰囲気中に基材を晒す。ちょっと前に流行っていた金色をしたゴルフクラブのチタンヘッドは、チタンをプラズマ化した窒素で反応させ、表面に窒化膜を形成したものである。
- ■高度5万メートル【一般】こうどごまんめーとる
- 成層圏と中間圏の間くらいの高度。気温は-2.5〜0℃、気圧は約1hPa。普通の人間がそのまま行くと、普通に死ぬ(ぉぃ)。
気象観測とかの気球などが上がれる最高高度らしい。ちなみに現在の戦闘機とかではいくら頑張っても2万5千メートルまでしか上がれない(そこまで上がる意味もないらしい)。
その高度での風景は本文の通り、殆ど宇宙空間の趣らしい。万が一作者がみぃのお友達なら、まず連れて行って欲しい場所である(笑)